空港に着いたリンはバイクを止め空港内に走る。チェックインを武偵手帳を見せ、通り抜けブリッジを突っ切る。目の前にキンジが入り込むのが見えた。
「キンジ!そのままドアを開けといてくれ!」
「リン!?わ、分かった」
なんとか間に合った事に安堵し、今の状況を考える。
「今すぐ、離陸を中止しろ!」
隣にいるキンジがアテンダントにそう叫び呼びかけたがおそらくもう無理だろうとリンは予測していた。
「キンジ……おそらくもう無理だろう。武偵殺しの事だ、俺達が乗った事すらもうばれているかもしれない」
そう言った後、アテンダントが急いで戻ってきた。
「だ、ダメでしたぁ。き、規則で、このフェーズでは管制官からの命令でしか離陸を止めることは出来ないって、機長が……」
「やはりか……」
「どうすればいいんだ……」
案の定、離陸は出来ず納得するリン。キンジもどうすればいいか考える。
「キンジ……もう離陸はあきらめるしかない。俺達はここで武偵殺しと戦うしかもう手はないさ。まずは対策を練るためにアリアと合流しよう」
「それが一番いいか……」
そう結論したリンとキンジはアテンダントを落ち着かせて、アリアのいる個室に案内してもらう。
「キンジお前は先に中に入ってろ」
「リンはどうするんだ?」
「俺は乗客に部屋に出ないように伝えてくる。お前はアリアと状況確認と作戦を考えていてくれ。……それにいいたい事が色々あるだろう?」
リンはキンジがアリアに色々動いていたのを知ってるし、色々言いたい事もあるだろうと気を遣っていた。
「そうだな……そっちはまかせた」
そう言ってキンジはアリアの部屋に向かいリンは乗客一人一人に事情を説明しに行く。
「そうですね。大丈夫ですから、部屋から出ずに待っていてください」
最後の部屋の人に伝え終えた。リンはアリアの部屋を空けるとキンジとアリアが手を握りあっており、悪いタイミングで来たとリンは自覚した。
「……作戦を立ててるんじゃなかったか?」
誤魔化す為にそう切り出す。それを聞いたキンジとアリアは急いでお互いが手を離し反論して来る。
「べ、別に特別な事なんてしてないわよ!」
「これには色々深い事情が……」
二人があたふたしながら言い合っていると、
パン!パァン!
「「「ッ!」」」
外からいつも聞きなれている拳銃特有の音が鳴り響き、キンジとアリア、リンそれぞれが警戒し、狭い通路に出るとリンが警告していただけはあってパニックは起こっていなく、静かだったが、それが逆に不気味さをかもし出していた。
銃声のした機体前方を見るとコクピットが開け放たれている。
「ッ!やられたな……最初からばれていたか」
そこにいたのはさっきの間抜けなアテンダントであり、右と左に機長と副操縦士が引きずり出されていた。最初から自分達が来ていた事はばれていた事を知り、リンは警戒し銃をすぐさま向ける。
リンが銃を向けた事により、動揺していたキンジもすぐさま拳銃を抜いた。
「動くな!」
そうキンジが声を張り上げるとアテンダントは顔を上げると、にいッ、と、その特徴のない顔で笑い。
「お気を付けくださいであがります」
そう言った後、ピンを抜く音が聞こえカンが転がってくる。
「ガスだ!急いで部屋に戻れ!」
カンから煙が出ており、リンは危険を感じ叫びキンジとアリアを部屋に戻るよう呼びかけ自分も部屋に飛び込むように戻る。
「偽物だったか……」
特に体に異常が見られず、ただのガス弾だと分かった。
「やっぱり、『武偵殺し』が出やがった」
「やっぱり?あんた、『武偵殺し』が出ることが、分かって」
「キンジはお前の為に色々頑張って調べたんだよ。な?キンジはできるやつだろ?」
リンはアリアにそう言った。
「そ、そうね。少しは認めてやってもいいわ」
それから、キンジはこれまでの事を話した。自分の兄がシージャックで『武偵殺し』にやられた事を、『武偵殺し』は小さい乗り物から最後は3回目の本命に自分で乗り込み、自分自身の手で武偵を殺している事を。
「今回もそれだ。自転車からバスへ、バスから飛行機と、最初からアリアお前が狙われていたんだ」
「……!」
「……最初からアリアはあいつの標的に選ばれてたって訳か、そしてこのハイジャックで直接やるつもりだったんだな」
その事にアリアは悔しそうに歯をくいしばっていた。
その時、ベルト着用サインが、注意音と共に点滅し始めた。
「和文モールスか……こいつ誘ってるな」
『オイデ オイデ イ・ウー ハ テンゴク ダヨ オイデ オイデ ワタシハ イッカイ ノ バー ニ イルヨ』
そう意味をなしていて、それを聞いたアリアは闘争心を燃やし、スカートの中から左右共に銃を取り出し、立ち上がる様子が見えた。
「上等よ。受けて経つわ!」
「俺もついていく。今の俺じゃ役に立つかどうかは分からないけど」
キンジもアリアもそう決断した様子を横で見ながら、リンはどうすればいいかを考え、どれが一番良い結果を出せるか思考し、自分の答えを出す。
「俺も行……」
「ダメよ!」
行こうと言おうとした所でリンはアリアによって止められた。
「何故だ?相手は『武偵殺し』だ。戦力があって困る事はないだろう?」
「今のリンは動くのもやっとの重体に変わりないわ。今の状態じゃ来ても逆に足手まといだわ!だからリンは乗客や機長と副操縦士の様子を伺ってきて。」
「おい。アリア!」
アリアの言葉にキンジは言いすぎだと思ったのか、声を上げる。リンはこの状態でもアリアのために駆けつけてくれたのだ。それをこの言われように我慢ならなかった。
「落ち着けキンジ。俺はアリアの言ったとおり機長と福操縦士の様子や周りの乗客の事に専念しよう」
「いいのかリン?」
「あぁ、アリアが言ってる事はただしいからな。それに……いや、そのかわりちゃんと『武偵殺し』を捕まえて来いよ」
アリアは自分の為にまたリンが怪我をさすのが嫌だったのだ。それをリンは分かっており、今何を意見しても通らない事が分かっていたため素直にうなずく。
「あぁ、わかった」
「おとなしくしてなさいよ!」
アリアとキンジはそう言い一階のバーに向かっていった。
キンジとアリアを見送った後、リンはアリアの言った通りに機長と福操縦士の状態を伺っていた。
「やはり眠らされているか……それよりいい加減でてきたらどうだ?」
「いつからばれたのですかね?こう見えても気配を消すのは得意なのですが……」
リンがそう言うとバスジャックで交戦したライネルが姿を現した。
「さっき俺達が話している最中に『武偵殺し』の話がでた時、一瞬だったが、気配を感じた」
もともと違和感を感じ、明確に把握はできなかったが、先の話で一瞬気配が分かったのだ。
「さすがですね……私もまだまだだと言う所ですかね」
「『武偵殺し』とは何かがありそうだな?仲間か?」
「冗談はやめていただきたいですね。まぁ、これぐらいなら別にいいでしょう」
相変わらずの動作一つ一つが丁寧であり、貴族かと思うぐらい整っていたが、それがリンには胡散くさく見えた。
「『武偵殺し』は我らの敵対している組織のメンバーなのですよ。あなたもEU(イ・ウー)ぐらいは知っているでしょう?」
「まさか、あのイ・ウーのメンバーだと!?」
リンが驚くのも無理はなかった。あの組織はすべてが謎とされていた。それに組織の一人一人のレベルが高く。イ・ウーに狙われたなら生きる事はできないと言わせる程なのだ。
「えぇ。まさか私もここでそのメンバーがいるとは思いもしませんでしたよ。かれらには色々と困っていますよ。犯罪者集団であり、神の教団も尋常な被害を被っていますよ。向こうの規模もそうとう大きいですからね」
「それでさっき、気配を乱したのか」
「えぇ、油断してしまいましたね。話を聞き、始末しようとも思いましたが……ここは引いておきましょう。あなたがいるんじゃ分が悪いですからね」
「逃がすと思っているのか?」
みすみす逃がすつもりなどなく、リンは銃を取り出し、いつでも対応できるように構える。
「今のあなたじゃ、まともに戦う事は出来ないでしょう。いくら悪魔のあなたでも、数日じゃ、傷は治らないはず、それにお仲間は大丈夫なのですか?イ・ウーのメンバーと戦っているんですよ。今すぐ行った方が言いと思いますがね」
「クッ」
ライネルの言った通り今のリンは怪我が治りきっていなく、激しい戦いなど、できるはずもない。それに今アリアとキンジはイ・ウーのメンバーと戦っているのだ。逃がすのは痛いが、今はキンジとアリアを優先するしかなかった。
「答えは出たようですね。それじゃ私は行かせて貰います。また会いましょう。紅い死神君」
そう言いライネルは飛行機のハッチを開け、空に身を飛ばした。リンはその後を覗くように見たが、ライネルはパラシュートも使わず、空を飛んでいく所が見え、
「厄介なやつだな」
厄介な力におもわず言葉がでていた。
「早く向かわないとあいつらが危ない……」
キンジとアリアの元へ急ぐため、リンはすぐさま一階のバーに向かう。
「なんだ、これは……」
一階のバーに着いたリンは目の前の光景が信じられなかった。血を流すアリア、それを抱きとめるキンジ、それを狂った様に笑う理子。
(嘘だ……ありえない……)
自分が見ている光景を否定したいが、硝煙の匂いが現実だとリンに突きつけていた。
「リン……来たんだ?」
理子から視線を受けるリン。その射抜く様な視線はいつもの軽い感じじゃなく、理子からは強者特有の雰囲気がでていた。リンはなんとか動揺を抑え、現状の把握を図る。
「キンジ。アリアを連れて一旦お前らは引くんだ……俺が時間を稼ぐ」
「だが、そんな傷じゃ理子には勝てないぞ!」
キンジは理子との戦いで狂気を見た。狂った様に笑う理子にキンジは恐怖を感じ化物だと震えが止まらなかった。それにリンは怪我が酷くまともに戦えるとも思えない。
「いいから早く行け!アリアの治療が先だ!」
「すまん。ここは頼む!」
キンジは迷っていたが、アリアを担ぎながら、リンの横を通っていく。それを黙って見送る理子。
「いいのか?『武偵殺し』最初からアリアを狙っていたんだろう?」
気持ちを切り替え、戦闘のスイッチに切り替える。
「……そうだね。でも、リンが通してくれそうに無かったからね」
『武偵殺し』と言った時、一瞬では合ったが、理子は顔を顰めた。それを見ていたリンは覚悟が鈍りそうになる。
「何故……こんなことを?」
「アリアを倒す事で、私が私を証明する証拠なんだよ」
「証明?」
「理子・峰・リュパン4世--それが私の本当の名前」
リンは教科書で見た、フランスの大怪盗を思い出す。武偵で有名なシャーロックホームズとの対決で引き分けたなら誰もが知っているだろう。
「でも……家の人間はみんな利子を『理子』とは呼んでくれなかった。呼び方がおかしいんだよ……4世。4世。4世さまぁー。皆が私をそう呼ぶんだよ。誰一人、私を見てくれない!」
理子の悲痛な叫びと視線がリンを貫く。
「だれもがあたしを見てくれないんだよ。だから、曾お爺さまを超えなければあたしは一生あたしになれない!だから、イ・ウーで手に入れたこの力でシャーロックホームズの子孫アリアを倒してあたしはあたしを手に入れるんだ!」
理子の話を黙って聞いていたリン。周りからずっと比べられて生きて来たんだろう。辛かったのだろう。アリアを倒す事で自分を始められると。それでも、とリンは思う。
「俺が理子個人を見てる。それだけじゃ駄目か?あの理子と過ごした日々、楽しかった……こんな自分に気兼ねなく話しかけてくれて、色んな世界を見せてくれたり、俺にとって理子は大切な人なんだ。……だから、アリアを殺すのはあきらめてくれないか?」
これがリンの気持ちだった。理子との過ごした日々はとても楽しく、欠かせない物にまでなっていた。しかし、それを聞いた理子は悲しい目をしながら無駄だと言う。
「それじゃ駄目なんだよ……たしかにそれを選べば楽しいだろうね。今まで通り、リンを連れまわして、困らせて、それでお互い楽しんで、そう考えるだけで幸せだよ……でもね、それじゃあ本当の自由は得られないんだよ……無理なんだよ」
どこかあきらめの入った理子のその言葉を聞いたリンは目を閉じ、覚悟を決め、目を開ける。
「そうか……なら、俺は友としてお前を止める」
「今のリンじゃあたしに敵わないよ。その怪我じゃまともに戦えないでしょ?」
理子の言った通り、今のリンの状態じゃかなりきついが、リンは微塵も負けると思っていなかった。理子を止めると、それだけのために。
「言葉はもう不要だろ?決着はこれでつければいい」
「そうだね。これで今の迷いも弱さもすべて振り切ってアリアを殺すよ」
お互いが決意を示し二丁の銃を構える。静かな時が流れ、睨み合っていたが、ガシャンと音がなり、お互いが動き出す。お互いが銃を発砲し理子とリンの悲しい闘いが始まった。
今回も時間かかりました。というより、書き直しを何回もしていました。前の話を更新した次の日出来上がっていたのですが、原作通りすぎて、主人公がいらなくなってた。最初から、理子の所に三人行ったら理子に勝ち目ないな。とか思ってしまってたり、それで急遽、ライネル君を登場させてました。やはりオリジナル入れないと駄目ですね。3回の書き直しをしてました。