緋弾のアリア 悲しみの悪魔   作:osero

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第十三話『互いの気持ち』

お互いが銃を発砲した後、リンと理子は両方が同じような行動を取った。銃口から来る場所を予測し、最小限の動きで銃弾を避け、駆け出す。近接戦を始め、互いに銃を向け撃ち合う。

 

 理子が銃をリンに向ければ、射撃線を避け、かわし、リンが銃を向ければ、理子は自分の腕でリンの腕を弾き打ち返す。それの繰り返しだった。

 

「こんな怪我を負ってるのにまだこんなに動けるんだね」

 

 重傷を負っているのに自分の動きに着いてくるリンに驚きながらも理子は感心していた。

 

「まぁな。大切な友達を止めるためだからな」

 

 二人とも軽口をいいながらも、手は緩めず、むしろより一層、激しい近接拳銃戦を繰り広げていた。

 

 それでも銃弾は当たる気配すら見せず、周りの壁や床に打ち込まれていく。

 

 もし、リンと理子のその戦いを見ていた人がいたなら、誰もが見惚れていただろう。それぐらい美しく、激しく、格闘技であり、ダンスを踊っている様な光景だった。互いが場所を入れ替え、巧みにかわし、腕を弾き合い、ワルツを奏でていた。銃弾の音がBGMとなりより一層、それを際立たせており、まるで命の取り合いをしているとは思えないほど美しかった。

 

 しかし、その光景はとても悲しさを帯びていて、理子もリンも銃を撃つごとに辛そうな表情をしており、無理に自分の感情を押し殺し、リンの紅と理子の茶色の目が何回も交差しあい、互いに身を削る思いで引き金を引いていく。

 

 だが、それも終わりを向かえ様としていた。理子が持つ、ワルサーP99は弾が16発の二丁で32発、それに比べリンの銃は8発の二丁で16発しかなく、弾が切れた時、蜂の巣になるのは目に見えてるため、弾が切れた瞬間リンは仕掛ける。

 

「ッ!?」

 

 そのまま近づいて銃で殴ろうとした所で、理子の髪が動き、リンの両方の銃を弾き飛ばす。

 

「そうくるのは分かってたよ!これで終わり」

 

 リンの銃を弾き飛ばした理子は驚いて隙だらけのリンに銃を向けようとした所で、今度は理子が驚愕する番だった。

 

「ッな!?」

 

 驚き、隙だらけだと思っていたリンは最初から理子に弾かれる事すらも想定済みで、銃を弾き飛ばされた直後、すぐさま体制を低くし懐に入り、理子が自分に向けてくる銃を持っている右手の手首を掴み、自分の方に引き寄せ動きを封じ胸に肘打ちを入れる。

 

「ッ!」

 

 リンが右手首を押さえているため、後ろに衝撃を緩和する事ができず、防弾服ごしでも相当の衝撃が理子襲い、さらにリンはそのまま一本背負いで理子を床に叩きつける。 

 

「カハッ!」

 

 叩きつけた後、宙に舞う理子が手放したワルサーP99を掴み理子の額に突きつける。

 

「チェックメイト」

 

「……さすがリンだね。最初から狙っていたのかな?」

 

 痛みを我慢しながら理子は疑問に感じた事を聞く。

 

「この状態じゃ長く続かないからな……弾が無くなって自分が仕掛ける時、理子ならそれに気づき何かしてくると信じてたんだよ……案の定、俺の行動を読んで銃を弾き飛ばした。人は決まったと思った瞬間が一番油断するんだよ……それを俺はついたのさ」

 

 リンは悲痛な顔をしながら、狙っていた事を言い、それを聞いた理子は笑う。

 

「敵になったあたしを信じるなんて……どこまでもリンは優しいんだね。もし気づかなかったらどうするつもりだったの?」

 

 理子の言う通り、もし理子がリンの仕掛ける事に気づかずそのまま銃を撃っていたならリンは大怪我どころじゃなかったはずなのだ。

 

「その時はその時さ。実際に勝っただろう?」

 

「フフ。そうだね……でもね、あたしは最後まであきらめないよ。あたしを掴むまで」

 

 リンに額に銃を突きつけられているにもかかわらず、理子は諦めていない。それに疑問を持った所で、飛行機がぐらり、と揺れリンはバランスを崩す。

 

「ぐッ」

 

 体制を崩した所を理子は見逃すはずもなく、腕の力で起き上がりすぐさまリンが持つワルサーP99を弾き、蹴りを見舞った。

 

「く……くそ」

 

 理子の蹴りが綺麗に入り、壁に叩きつけられたリンはすぐさま体制を整えようとした所ですぐさま両手両足を撃たれる。

 

「そのままおとなしくしててね。あたしはリンを殺したくないから……それに体もう限界でしょ?さっきの銃撃戦も動きがだんだん鈍っていたしね」

 

 それはリン自身も分かっており、だから短期決戦で勝負をつけたかったのだが、油断でひっくり返されてしまった。

 

「やっぱり今の俺じゃ無理だったか……だが、俺の代わりにキンジとアリアがやってくれるさ」

 

 アリアと言う言葉に理子が不快感を出すが、すぐに笑い出す。

 

「アハハ。さっきあれだけやられたのに勝てるわけないよ」

 

「何事もやって見ないと分からない事もあるさ」

 

 お互いが意見を主張し合い、引かなかった。それから沈黙が部屋を支配し、理子はゆっくりと部屋を出るため歩き出すが途中で止まる。

 

「これで会うのは最後だね。今までリンと会えて楽しかったよ。サヨナラ」

 

 そう言って振り向いた理子の表情は狂気の笑顔ではなく、いつも見せていた綺麗な笑顔だった。

 

 

 

 理子が部屋から出た後、壁に背を預けながら、リンは自分に怒りを感じていた。あの場面、本当に止める覚悟があったなら手足を撃って動きを封じれば理子を止められたのだ。そのはずなのにそれがリンにはできなかった。理子を撃ちたくないと、だから額に銃を突きつける行動しか取れず、自分の甘さが招いた結果だった。

 

「俺は……」

 

 後悔が押し寄せるが、それでも、とリンは壁に手をやりゆっくりと立ち上がろうとしたが、体に限界が来たのか、そのまま体制を崩し倒れた。

 

「くそ……こんな時に……」

 

 目が霞み次第に視界が閉じていく。必死に意識を保とうとするが、抵抗も虚しくリンは意識を失った。

 

 

 

 

 リンが意識を失って少し時間が経ち、理子とキンジ達との決着もついていた。ヒステリアモードになったキンジとアリアの連携により、理子は後退させられ、飛行機を遠隔操作し、何とかその場を逃げてきたのだ。

 

「くそっ!仕留め損なった!」

 

 理子は苛立っていた。アリアを仕留め損ない、挙句の果てには自分が逃げている今の状況に。しかし、すぐに気持ちを落ち着かせ、まだチャンスはあると自分に言い聞かせ脱出するべく、一階のバーに戻ってきていた。すぐさま爆弾を仕掛け、自分を追うキンジが来る前に逃げる準備を整えておく。

 

「ん?」

 

 すべての作業が終わり、ふと視線をバーの端の方に理子が向けるとリンが血を流しながら壁を背に寄りかかっていた。おそらく、体を酷使したせいで気絶したのだろうと推測した理子はリンに近づく。

 

「……ごめんね。リン」

 

 自分が撃った箇所の傷口を布などを使って応急処置を施す。治療をしながらも理子は先ほどのリンとの戦闘を思い出す。あの時、自分はリンに情けをかけられた事を理解していた。額に銃を向けられたあの時、理子はリンは優しいから自分を撃てないとそれだけは確信していて、それを自分は利用したのだ。

 

「あたしって最低な女だよね……」

 

 罪悪感が襲い、リンの顔をまともに見れず、視線が下がる。自分がリンを傷つけている。それがとてつもなく苦しく、胸が張り裂けそうだった。リンの笑った顔、不機嫌な顔、悲しい顔、リンの過ごした日々が頭をよぎる。

 

「あれ……なんで……」

 

 気づけば理子の目から涙がこぼれ、リンのコートを濡らしていく。必死に涙を止めようと手で拭うが、止まる気配は見せずあふれ出す。

 

「どうしよう……涙が止まらないよ」

 

 もうすでに、理子は自分が何がしたいか分からくなってきていた。大事な友達を傷つけて大切な居場所を壊してる今の自分自身に。

 

「それでもあたしはもう……戻れないから」

 

 背後から迫ってくる足音が聞こえ、理子はなんとか涙を止め、気持ちを切り替え、立ち上がる。後悔もある。未練もある。謝りたい気持ちもある。しかし、理子はそれらすべてを飲み込んで、すべての気持ちをこめるようにリンの頬にキスをおとす。

 

「ん……」

 

 名残惜しい気持ちを我慢し、満足した理子はリンから離れ壁際に寄り、バーに着いたキンジと対峙する。

 

(必ずあたしは自分自身を勝ち取ってみせる!)

 

 迷い、逃げてきた問題に直面し、大切なリンとの戦いでやっと理子は覚悟を決める事ができたのだ。自身の原点。それを成功させるのは改めて難しいのを自覚し、より一層強く思うことがリンのおかげできた。

 

 そのおかげで理子本人は気づいていないが、雰囲気が変わっていた。明確な意思を持った強者がそこにいた。

 

 同じ力同士が闘えば、差がつく所は、覚悟を決めた者、覚悟を決めていない者、それによってかなりの差が出る。大事な場面であればあるほど、そこのあるかないかが鍵を握るのだ。今の理子ならば、どんな敵と戦おうと100%もしくは120%と自分の限界以上に戦えるだろう。それぐらい覚悟と決意といった物は大事なのだ。

 

 覚悟を決めた今の理子はアリアやキンジになど負けるなど微塵も思っていなかった。今の自分ならば、何事にも動じず、敵と闘えるそんな感覚が理子を駆け巡る。

 

「どこへ行こうっていうんだい、仔リスちゃん」

 

 追いかけて来たであろうキンジが理子にガバメントを向けるが、理子はいたって冷静だった。

 

「それ以上近づくと危ないよぉ?」

 

 キンジもその言葉で気づいたのか、歩むのをやめる。理子の周りには粘土のような物質があり、それが爆弾だと言う事に気づいたのだ。

 

「ご存じの通り、『武偵殺し』は爆弾使いですから」

 

 ちょこんとスカートをつまんで少しだけ持ち上げお辞儀をする。

 

「もう時間がないから今回の戦いはお預けだよ。今のあたしならキンジやアリアに負けない」

 

 理子は今の自分状態を試したいと考えていたが、時間が無いため、今回はあきらめることにしたのだ。

 

「逃がすと思うのか」

 

 すぐさまキンジが距離を詰めようとした所で、理子は炸薬を爆発させ、身を空へと投げ出す。

 

 空へ投げ打った理子はリボンを解き用意していたパラシュートで空を飛びながら自分でも分かるくらい顔をにやけさせる。

 

 あの爆発で飛行機からでる瞬間、リンの方を見ると意識を取り戻していて、自分に笑顔を向け口パクで『ま.た.な』と言ってくれた。騙して、銃を向け、リンを傷つけたのにもかかわらず。サヨナラじゃなく『またね』と、別れの言葉じゃなく、また会おうと言う意味で言ってくれたのだ。

 

(あんなに傷つけたのに……ほんとにリンリンは馬鹿なんだから)

 

 そう言う理子だが、顔は笑顔で、心は幸せで満たされていた。心地よい気持ちに身を任せながら理子は暗闇の空に姿を消していった。

 

 

 

 「ん....」

 

 意識を失っていたリンだが、頬に何かが触れたような感触を感じ、目を覚ます。

 

「そうだ。俺はたしか……」

 

 意識が覚醒していなかったが、しばらくすると戻り、意識を失っていた自分に気づく。そして辺りに視線を向けるとキンジと理子が対峙していた。

 

「キンジがここに来たと言う事はアリアは無事か」

 

ひとまず、アリアが無事なのが分かりほっとしたリン。自分の懸念事項が一つ減り、精神的に余裕ができた。

 

 ふと、自分の手を見ると怪我をした場所に手当てがしてあり、血が止まっていた。その事に気づき、リンは理子に視線を向ける。不適な顔をして、キンジと向き合っている理子。

 

(理子が手当てしてくれたのか……)

 

 傷口に巻いてある布を触りながら理子を見続ける。何か吹っ切れたような様子で纏っているオーラが違った。きっと何か理子にとって大事な事があったんだろう。

 

 そう考えていると、理子がこっちを見た。きっとこのまま理子は行ってしまうのだろう。ならば、サヨナラは言わない。また会える事を願い。

 

「ま..た..な」

 

 口パクで理子に今の自分の気持ちを出す。理子は目を見開き驚いた表情をしたが、すぐさま背後を爆破し、その身を空に投げ出していった。

 

「ック!?」

 

 爆破で穴が空いた飛行機は室内の空気が一気に引きずりだされるように、窓に向かって吹き荒れる。バーあった色んなものが外にはじき出される。

 

 それはリンも例外ではなく、浮遊感を感じ危険だと感じたが、腰に紐が着いており、それのおかげで外に弾き飛ばされずにすんだ。

 

「まったく、お前の方が甘いじゃないか」

 

 自然にリンは笑みを浮かべ。キンジの方も無事で、理子が去っていった場所を窓から見ていた。そして何を見たのか、キンジが驚愕の表情を浮かべた直後、

 

「ッ?」

 

 轟音と共に、激しい振動が自分達を襲った。

 

「キンジいったい何が起こった!?」

 

「リン!無事だったのか!理子が逃げた直後、ミサイルで左右のエンジン1基ずつ破壊された!」

 

「……かなりやばいな。急いで操縦室に行こう。それじゃないと始まらない」

 

「俺もそう思っていた所だよ。アリアもそこにいる」

 

 キンジは自分が無事なのに驚いていたが、そこはヒステリアスモードのキンジ。今はそんな事をしている状況ではないのに気づき、互いにどう行動すればいいか分かっており、頼りになるとリンは思った。

 

「わかったすぐ行こう」

 

 こうして危機を切り抜けるため、アリアがいるであろう操縦室に向かった。

 

 




えっと……本当に申し訳ない。武偵編終わる所か、ぜんぜん進んでない状況に……戦闘の所も少ない……全然腕が進みませんでした。これがスランプなのか!?っと思いながら書いてました。次の更新で武偵編は終わらせたいと思います。
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