緋弾のアリア 悲しみの悪魔   作:osero

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第十七話『強襲科』

 ガン!ガン!

 

 銃声が鳴り響く。意図も容易く人の命を刈り取る事が出来るであろう弾がリンに向かい一直線に吸い込まれていく。リンはそれをジグザクに避けながら接近を試みる。それをさせないと相手はリンの行くであろう場所を読み、手に持つ二挺の黒と銀の装飾が輝くガバメントが火を噴く。

 

「ッチ!」

 

 舌打ちを零し、リンはバク転を二回繰り返し、また距離が開く。しかし、相手はそれを待っていた。すぐさま、接近し、銃をしまい。背中に収めてある刀を右手と左手で引き抜き、左右から、ばつを描くように小太刀を振り下ろす。

 

「甘い!」

 

 銀の軌道の描いた刃が襲うが、リンはその軌道を見切り、状態を逸らす。相手の刃はリンに当たる事なく空をきる。ならばと、相手は次の一手を打とうとするが、衝撃が襲う。

 

「ッ!」

 

 いつのまにか、自分は宙を舞っている事に気づいた。すぐさま、空中で体制を整え、硬い地面に着地をし、立ち上がろうとした所で、膝を着く。必死に、脳に命令を送るが、なかなか、立ち上がれず、膝ががくがくと震え痙攣していた。それを見ていたであろうリンは助言する。

 

「しばらくは無理だぞ。顎を蹴り上げたから脳が揺さぶられてしばらくは動けないはずだ」

 

「どうやって……」

 

 しっかりと見ていたはずなのに、いつのまにか自分が攻撃された事に動揺を隠せず戸惑う。

 

 それもそのはず、リンは上体を逸らした後、そのままムーンサルトの要領で、下から、つまり相手の死角から顎を蹴り上げたのだ。周りから見れば、何が起きたか一目瞭然だが、戦っていた相手は解るわけがない。

 

「これで終わりか?」

 

 どこか残念そうに言うリンにぎしりと歯を軋ませ、吼える。

 

「まだよっ!!」

 

 会話している最中に回復させ、奮い立たせ、駆け抜ける。

 

「今度は近接拳銃戦か……うけてたとう」

 

「その余裕……へし折ってやるわっ!!!」

 

 遠距離では当てられないそう判断をし、弾丸のような速さで懐に入り、右手のガバメントを押し付け、引き金を引こうとした所でその腕が弾かれる。銃弾はリンを捉える事無く、まったくの別方向に飛んでいく。

 

「余所見をしてていいのか?」

 

「っは!?」

 

 リンの声が聞こえ、今度は自分に向かい銃が突きつけられる。同じガバメントであろうその銃は普通ではなく、改造してあり、くらえばひとたまりもないほど、通常よりも大きかった。

 

 その銃口が自分に向けられてたが左手で手を払うように弾く。それの繰り返しだった。時には不意をつく蹴りを叩き込むが、あっさりと片方の手で防がれ、自分の方が早いのにも関わらず、リンはそれについてきており、まるで、自分の動きを読まれている様なそんな錯覚を感じた。

 

 しかし、それは実際には錯覚ではなかった。リンからして見れば、やりやすい相手であった。たしかに射撃、格闘術、剣術、どれもが一流であるが、ただそれだけなのだ。たしかに基礎は大事だ。しかし、教科書通りの戦い方ほど次の攻撃が解りやすいものはない。

 

 それでもひたすら、くらいつこうと必死な相手であった。より早く、より的確に相手の急所、目で捉えた情報をいち早く脳に刻み、命令を送る。だが、均衡状態が変わる事など無く時間だけが過ぎていく。

 

 それもリンの突然の行動によって終止符が打たれる。

 

「足元がお留守だぞ?」

 

「しまっ!?ぐあっ!!」

 

 リンは腕の動きに視線を向けている相手に右足で足を払い、撃つ場所に気をつけつつ回る彼女に銃の引き金を躊躇無く引く。

 

 銃弾が発射され相手は避ける事もできるはずもなく、弾丸が貫き、まるでボールのように勢い良く吹き飛ばされる。

 

「まだ……ぁ……」

 

「チェックメイトだな」

 

 必死に起き上がろうとした相手に右手に持つ、銀色に輝く自分の銃を額に押し付け、その勝負は決した。

 

「すげー……」

 

 周りで観戦していた一部から歓喜の声が上がる。それほどまでに彼らの戦いは滅多に見れるものではなかった。

 

 動き一つ一つにしても互いに精練されており、回避するときの最小限の動作。避けられないときの対応、冷静に状況を把握する能力。すべてが参考になるのだ。そして、何より驚いたのは、リンの相手事、Sランクのアリアが敗れたことだった。たしかに、最初はアリアが優勢に見えた。近接拳銃戦も圧倒的に手数はアリアの方が押している様に見えたが、その状況が一瞬でことごとく覆えされあまつさえ、リンは終始余裕そうに佇み戦っていた。っというより、自分のペースで戦えていたというべきだろうか。

 

「ほら立てるか?」

 

 周りのことなど気にせずリンは男とは思えないほど繊細で綺麗な手を差し出す。

 

「あんたのその体にどこにそんな強さがあるのよ」

 

 どこかふてくされながらも繊細で綺麗なリンの手を掴み、起き上がるアリア。

 

「まぁ、見た目は鍛えている様には見えないけどしっかり命がけで鍛えてきたんだよ」

 

「ふぅーん。嘘はついてないようね……どうしたのよ。そんなに離れて」

 

「いや……無自覚なのはわかったが距離が近いんだ。周りを見ろ。

 

 アリアにしてはリンが嘘をついていないか、ルビーの様に繊細で存在感を放つ紅い目を見つめ、覗き込んだだけだが、その距離と位置が悪かった。

 

「おいおい、あいつらそういう関係か?でも……たしかアリアはキンジと付き合ってるんじゃなかったか?」

 

「たしかに俺もキンジと付き合ってると耳に入ってるぞ」

 

「あれってキスしてるの?」

 

 次々と、周りが囃し立てる。

 

「ッ!うぅー!ふ、ふざけんじゃないわよっ!べ、別に、リンとなんか、つ、付き合ってないわよ!」

 

「おいおいリンだってさ」

 

「呼び捨てとは……」

 

 顔をリンゴのように赤く染め怒るアリアだが、むしろ逆効果であり、拍車をかけはやしたてる。

 

「風穴!許さない!」

 

 ついに限度を超えたのか、アリアは銃を囃し立てる輩に標準を合わせ、今にも引き金を引きそうだった。銃をむけられ、冷や汗をかく周りの輩。しかし、リンがアリアの手の上に自分の手を置き、止める。

 

「よせ」

 

「何よ!あれだけ言われてるのよ!」

 

「ああいう輩はほっとくのが一番だ。必死に否定するほど付け上がるものだ」

 

「でも!」

 

 駄々を捏ねる子供みたいなアリア。アリアの方も分かってはいるのだが、それでも言わずにはいられないのだろう。その葛藤が見て取れてリンはポンポンと優しく頭を叩く。

 

「分かった。分かった。俺がこの場を押さえるから落ち着け、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」

 

「!!うぅ。子供扱いするなっ!」

 

 視線を横に向け、どこか照れたような表情を浮かべ、反抗的な言葉とは裏腹にどこか嬉しそうな表情が印象的だった。

 

「うるさいな……」

 

 リンの行動でさらにうるさくなる外野を黙らせるべく、銃を上空に向け放つ。

 

 あれだけ煩かった状況が、今や静寂が場を支配する。

 

「これ以上、騒ぐなら俺はお前らを黙らせる。分かったな?」

 

 凍ったように動かない外野を見渡しリンは踵をかえし、コートを靡かせながらその場を去る。しばらくは誰もが、その場を動くことはできず、それほどリンの威圧感は強烈で何より、彼の紅い目で睨まれては立ち尽くす事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「おーい」

 

「ん?不知火か。どうした?」

 

「どうしたもないさ。相変わらず、すごい威圧感だね」

 

「不知火も強くなれば嫌でも身に付くさ」

 

「そうかな?それよりもあれはやりすぎじゃないかな。みんなしばらく動けないよ」

 

 そう言ってなんでもないかの様に笑う不知火はやはり優秀なのだろう。

 

「実際になんとも思わないやつらもいる。お前みたいにな」

 

「それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 苦笑いを浮かべながら隣を歩く。

 

「相変わらず、良く分からんやつだな」

 

「リンははっきり言うから分かりやすいね」

 

 終始笑顔を崩さない不知火をリンはピエロ(道化)を連想した。何を考えてるか分からないほど、戦闘で怖いものはない。っとリンは持論持っている。

 

「それでさっきの戦いだけど、何かしてたの?なんか戦いに違和感があったけど」

 

「そうだな……先ほどの戦い、どちらが優勢に見えた?」

 

「それはアリアだね。手数も早さもアリアが押していた様に見えたけど……」

 

 顎に手をやり、先ほどの光景を思い出すように不知火。

 

「けど、結果は覆っただろう。まぁ、経験と言うよりも経験と予測両方だな」

 

「予測は経験とは違うのかい?」

 

「ほぼ一緒だな。経験があると相手が何をするか、分かるだろう?俺はそれが体が覚えているんだ。アリアで言うなら最初は様子見で遠距離から正確な射撃で敵を追い詰める。それができないと判断したなら、隙を見つけ小太刀に二刀流で接近戦を仕掛けるといった具合だな」

 

「なるほど……相手がどう行動するか、分かってた訳だね。ある程度同じレベルであれば、どんな攻撃が来るか分かれば避けるのは難しい事じゃない」

 

「そういう事だ。後は、避けて隙だらけの体制に死角から顎に蹴りを叩き込んだ。アリアのレベルだと、隙を突こうが反応してくるからな。相手の見えない死角からの攻撃だな」

 

 先ほどの不知火の違和感はこれだったのだ。主導権はアリアが握っている様に見えたが、実際はその逆、リンがその戦いを支配していたのだ。

 

「まぁ、これを身に着けるのは実践あるのみだ。頭で考えようとすると先の事を考えすぎて最初の攻撃の対処がおざなりになるからな」

 

「強いもの同士ならそれを逆手にとって戦術を組む事もありそうだね。それにリンはアリアと戦っているとき、アリアを観察してたね。手札を晒さず、最低限の行動をしてたのもそれが原因か」

 

 優秀な不知火に思わずリンは軽く笑みを零す。

 

「そうだな。それが分かれば一歩また成長した証拠だよ。アリアも次は同じ手はしてこないだろう。多分今度は、意図的に戦術を変えて挑んでくるだろうな」

 

「……さすがとしか言いようがないね」

 

「まぁ、経験と予測両方と言うのは実践して見るのが……早いか!!」

 

 そう言い隣に立つ不知火に問答無用で回し蹴りを放つ。

 

「ッ!」

 

 不知火はすぐさま反応し、頭に放たれる蹴りを腕で防ぐが、

 

「ほらな。今のも経験で防げたが、その後のことを予測できなかったな」

 

 たしかに蹴りは防げていたが、リンはいつの間に抜いていたのか、左手に銃を持ち不知火の腹に照準をむけていた。

 

「その攻撃一つ一つ意図があるかもしれないから常に考えろと言う事かな?」

 

「常に何があるか頭で考えておくのも大事だ。その攻撃からどう繋げていくのか、その武器でどういう行動を取るのか、常に予測を立て、頭に留めろ。たしかに通用しない敵もいるのかもしれないが、それでも心構えは大分違うだろう?」

 

「敵わないなぁー」

 

 笑顔がなりを潜め。思わず零れ落ちた不知火の本音。それを聞いたリンは目をぱちくりさせ、言う。

 

「何を決め付けている。この世界に絶対はない。不知火も実践をつめばここまで来れるさ。俺がそうだったからな」

 

「そうだね……ならこの武偵高校にいる間中にリンに膝を着かせようようかな?」

 

 挑発的な笑みを浮かべる不知火。

 

「やって見ろ。いつでも俺は相手になってやるさ」

 

 そんなやりとりをしながら二人は歩を進めた。




約二週間ぶりにパソコンをつけ、今回はアリアと不知火をなんとなく出したくなった。不知火ってあまり出てきてないのですが、中々能力が高いと思うんですよね。万能型で何か一つの長所があれば、Sランクも伊達じゃないと思うんです。そして何気に鋭そうですよね。キンジのHSSには劣るかもしれないのですが、観察眼はそうとうだと自分は思います。経験と予測に関しては自分の考えですね。

実際にナイフを持った敵と良く分からない武器を持った敵とじゃ、自分は良く分からない武器をもった敵の方が怖いですね。
ナイフなら、刺す、切るとある程度予測が可能ですが、自分が知らない武器をだされると対処のしようがなく、後手に回るしかないんですよね。それが飛び道具なら一瞬で終わりますしね。銃とかもその構成を知っていれば十分対策が取れる。その銃は弾が何発撃てるとか、リロードに時間がかかるなど、その知識があるかないかで、大分変わりますよね。

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