理子は最近、楽しくて仕方なかった。りんが来て一週間、最初は計画を邪魔しないか調べるために近づいたのだが、今ではほぼ毎日リンと楽しんでいる事を理子は自覚した。なんだかんだいいながら話を聞いてくれるリン。最初の頃はさけられていたのは自覚しているし、それでも別にかまわないと思っていた。
でも最近そんなリンが私を見て、少しだけだが笑ってくれるのだ。 そんな笑顔がまた見たくて頑張ってる私がいて、いつのまにか気づかず内にリンを目で追っている。この気持ちは分からないがリンは私の大事な友達だとそれだけは確信できた。
今ではキーくんとリンと私で三人でいるのが当たり前になっている。私の暴走を止めようとするキーくんそれを横で苦笑いで眺めるリン。それがどうしようもなく楽しいのだ。そんな毎日が永遠に続けばいいのにと思うのと同時にそんな関係を壊すかもしれない自分。
そのことを考えた時、理子が一番感じた感情は恐怖だった。リンに幻滅されるかもしれない。嫌われるかもしれない。そう考えるだけでどうしようもなく体が震えた。こんなに人から嫌われる事が怖いとは思いもしなかった。まだ時間はたくさんある。そう自分に言い聞かせ理子は眠りについた。その目には涙が流れていた。
リンは今地面に仰向けで倒れている。強襲科で組み手をやっていたのだが、目で攻撃が追えているのだが体が着いていかず投げられていた。相手はAランクの不知火亮とゆう男で、銃、格闘、すべてにおいて能力が高く万能型なのだ。毎回、相手がいない自分と組み手の相手を誘ってくるのだ。
「悪いな。毎回毎回、ペアを組んでくれて練習にならないだろ?」
一瞬驚いた顔をした不知火だが、すぐにいつものニコニコした顔に戻った。
「そんなことないよ。むしろかなり勉強になるよ」
そう言われたリンは驚く。
「毎回、組み伏せられる記憶しかないんだが…」
力の出せないリンは何回も投げられていた。
「そうでもないよ。リンは僕の攻撃見えてるでしょ?最後のも見えてるのに体が着いて行かなかった感じだよ?それに僕の動きを読んでるみたいに攻撃する前に避ける体制に入っているよ」
図星をつかれリンは驚く、不知火は観察眼もそうとうな物だとリンは悟った。最初は適当にしてすぐに負けようと思いもしたが、真剣にやってくれる不知火に悪いと、リンは今出せる全力を出していたのだ。
「おそらく先生も気づいてるはずだよ。もっと実力がある事に。でもリンは真面目にやってるから疑問もあるけど確信もないから聞けないんだろうね」
不知火も気づいていた。立ち振る舞いや歩き方、まるでどこに攻撃するか分かっているような動き、力を隠していようと強者の特有の雰囲気がにじみ出てるのだ。
「買いかぶりすぎさ。俺は今出せる全力で頑張っているさ」
「リンがそうゆうなら別にいいさ、でもまた相手して貰っていいかな?今の全力のリンにも学べる事がたくさんあるからね」
不知火はリンが言った『今出せる全力』の言葉の意図に気づき、ニコニコしてリンに組み手を再戦を申し込んだ。
「了解。あと15分よろしく頼む」
リンは不知火とのこんな関係も悪くないと思いながら今出せる全力で立ち向かっていった。
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放課後、リンは屋上にいた。東京武偵高に来て一週間リンは今までで二度目の幸せを感じていた。よく分からない関係の不知火、リンの実力に気づいてる人間だが聞いてこずお互いが組み手を純粋に楽しんでいる。自分と同じ部屋の女嫌いなキンジ。根暗な感じがしたが、喋ってみるとそうでもなく、よく自分に気を使ってくれたり今ではお互い毎日遊ぶ仲だ。そしていつも自分を引っ張りまわそうとする理子。最初は苦手だったが、今では理子に振り回されるのも悪くないと思っている。笑った理子。怒った理子。ころころ表情が変わる理子を見ているのは楽しい。こんなに学校が楽しいとは思ってもみなかった。
その一方でリンは罪悪感を感じていた。リン自身、原因は分かっている。リンは自分の正体を誰にも言っていない。それが皆を騙しているみたいで、罪悪感が沸いてくる。だが自分の正体を言える訳がない。それを言ってしまったら皆離れていくかもしれない。またあの頃に戻ってしまうとそう考えるだけで苦しいのだ。
リンは頭を振り、暗い事は考えるなと自分に言い聞かせた。それと同時にもう一つの感情が浮かんできた。それは寂しさだった。この学校に来て色んな友達ができたが、物足りないのだ。どんだけ過ごそうとも満たされる事はない。その原因をリンは分かっている。綴がいないのだ。どれだけ楽しもうともそこに綴がいなければ駄目だとリンは思っている。
「やめだ。こんな事考えてもきりがない」
そう言いリンは空を眺めた。その時、屋上のドアが開く音が聞こえた。誰だと思い振り向いてみるとリンが会いたいと願い続けた彼女がいた。二年ぶりに見る彼女にリンは頭が真っ白になったが、会ってずっと言いたかった言葉を伝えた。
「ただいま。綴」
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綴は武偵高に帰ってきていた。職員室に入り、自分の席へと座り、今までの疲れを癒すため煙草をつけた。
「どうしようかなぁー」
煙草の煙を吐き出しながら綴はこれからの事を考えていた。これ以上は調べられる事などなく、手詰まりだった。それに魔剣の件もあり、しばらくは何も出来ないと思い憂鬱な気分になる。
「なんや、帰ってきたとおもったらぁ疲れたような顔して」
顔を横に向けると強襲科の教師の蘭豹がいた。
「んぁーらんらんかぁー
色々問題があって疲れてるんだよ。らんらんはこんな時間にどうしたんだぁー?」
今の時間は放課後でとっくに帰っているはずなのだが、ここに蘭豹がいる事に綴は疑問に思ったのだ。
「あぁー高天原センセーにききたいことがあってなぁー。」
そう言った蘭豹は高天原先生をこっちに呼んでいた。呼ばれた高天原先生は頭をかしげた。
「蘭豹先生どうかしましたか?」
「あの銀髪男なんやけどな。ほんとにランクDなんか?」
「銀髪?…あぁ転校生の事ですか?そうですね。ジャックさんからはそう聞いていますけど、何かありましたか?」
「えっとなぁー普通に見ればDランクなんやけどなぁー雰囲気や歩き方、戦い方がどう考えてもAかSはありそうな感じなんやけどなぁー。本人は真面目にやってるっぽいし確信がないから聞けんのや」
その矛盾で蘭豹はリンを問い詰められないでいた。
「そうなんですか。しかし、私は他には何も聞いてませんね。ただそちらに一人送るとしか聞いていませんでした」
それを聞いていた綴は気になった。
「転校生がこの時期に来たのかぁー?」
「んぁ。そういえば梅子は仕事でえんかったなぁー。そや、あのジャックが送ってきたやつやから何かあると思ってるんやけどなぁー」
「あの有名な情報屋が送って来たのかぁ?珍しい事もあるもんだなぁー」
それを聞いた綴は驚く。ジャックはあまり人と関わらない。自分に興味がある事と強いやつの事しか興味がないのだ。そんな人間が送ってくる人間だ。何かあると思うのも仕方がなかった。
「それでもリン君はとってもいい子だと私は思いますよ。」
その名前を聞いた瞬間、綴は思わず煙草を落とし高原先生につめよった。
「リンだと!?リンがこの学校にいるのか!?」
「え…ええ。一週間ほど前にこちらに転校してきました」
それを聞いた綴は急いで職員室を後にしリンを探すために走り出した。
「あんな梅子はじめてみたわ…」
「わ…わたしもです…あんなに必死になった事なんて見たことありません」
走っていく綴を見て蘭豹と高原はしばらく呆然と走っていく綴を見おくっていた。
綴は走っていた。さっき生徒にリンの居場所を聞き、屋上を目指すべく、呼吸も整わないままかまわず走る。屋上の扉を見つけドアを思いっきり開け放った。
その音に気づいたのか、そこにいた彼はこちらに振り返った。向こうも驚いたような顔をしたが、二年前、初めて会った時に見せてくれたあの見惚れるような眩しい笑顔を見せながら言った。
「ただいま。綴」
その言葉をを聞いた時、気づけば綴は走り出しリンに抱きついていた。
「どうして…どうして勝手にいなくなった!あの日からずっと探したんだぞ!ずっと…ずっと…ずっと…」
綴は涙を流しながら、そう吐いた。リンに会えた事で喜びもあったが、今まで我慢していた気持ちがあふれ出していた。
「全然…探しても見つからなくて…もしかしたらもう死んじゃったんじゃないかとも思った!そう思うと怖かった…。ずっとずっと…会いたかった…わたしは!…わたしは!…」
綴はさらに強くリンを抱きしめ顔をリンの胸に埋める。綴は組織を調べて行くうちにリンを狙う組織の大きさに気づき怯えていたのだ。もしかしたらもうリンは殺されたのかもしれない。そう考えた時どれほどつらかったか、身が張り裂けそうだった。
「ごめん。どうしてもやらなくちゃいけない事があったんだ」
綴はその事を分かっている。自分を巻き込まないためにリンは別れた事を。それでも言わずにはいえなかった。気持ちが抑えきれなかったのだ。もう綴はリンがいないと生きていけないのだ。リンのいない世界など考えられない。
「俺も綴と離れるのはつらかった…。それでもまた会えると願い。俺はこの二年間、綴と会うために頑張って来れたんだ。綴がいたから俺は今日まで生きてこられた。綴のおかげで今の俺があるんだ…俺もずっと綴と会いたかった…会って抱きしめたかった…」
そう言ったリンも強く綴を抱きしめ泣いていた。それを聞いた綴はリンも自分と同じ気持ちだったと、それだけでどうしようもなく嬉しかった。こんな自分を必要としてくれて、今まで生きてきてくれて、涙が止まらなかった。
「わ…わたしも…リンが生きてくれて嬉しい…嬉しくて涙がとまらないよ…」
「あぁ…俺もだよ。綴」
お互いが涙を流しながら微笑んでいた。あの時別れた道がこの瞬間また交差した。リンはまた綴に会うために、綴はリンと会うために、お互いが一緒な思いが通じた瞬間だった。それを祝福するかのように綺麗な夕日が二人を照らしていた。
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しばらく抱き合っていると、冷静になった綴は今の状態に気づき、顔が真っ赤になっていた。綴は今、リンに頭を撫でられながら抱きしめられていた。それに今までの行動も思い出し恥ずかしくなりリンから離れた。
「もう一度言うよ。ただいま。綴」
「おかえり。リン」
綴に笑顔でそう言ってもらったリンは幸せだった。リンはこれを聞くために二年間頑張って来た。願いが叶いリンは嬉しい気持ちがとまらなかった。そして決意する。この笑顔を守っていくと心に刻む。
「ネックレス身に着けてくれたんだな」
リンは自分のネックレスを着けてくれた事を嬉しく思った。
「私とリンを繋ぐ思い出の品だからな」
そう言いながら綴はネックレスを外しリンに渡そうとする。しかし、リンはそれを受け取ろうとはしなかった。
「いや、それは綴に持っていて欲しい」
「リンにとってこれは母親のゆいつの形見で大切な物なんだろ?いいのか?」
「大切だからこそ、綴に持っていて欲しい」
本当に大事だからこそ綴に着けていて欲しかった。それにネックレスは綴にとても似合っていた。
「分かった。着けておくよ」
そう言って綴は十字架のネックネスを付け直した。
「よく似合ってるよ」
「あ…ありがとう」
リンにそう言ってもらえて綴はとってもうれしかった。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだな」
夕日が落ち、辺りが暗くなっていた。リンと綴は屋上を後にし、それぞれのことを話し合っていた。
「リンはこの武偵高に入ったのか?」
「そうだな。武偵高に綴がいるから入った」
そういわれた綴は顔が少し赤くなっていた。あまりにも真面目にそう言うリンに胸が高鳴っている。綴はこの初めての感情にうすうす気づいていた。どうしようもなく綴はリンが好きなのだ。やっとその気持ちに気づいたのだ。だから綴は決心する。たとえ何があろうと自分はリンの隣にいようと。
「そうか。それは嬉しいな…」
「またこうして綴に会えるなんて今でも夢みたいだよ」
「フフ。なら確かめてみるか?」
そう言って笑う綴はリンの頬にキスをした。
「なぁ?!」
リンは顔が熱くなるのを感じた。それと同時に嬉しさもあった。しかし、この感情はまだリンには何か分からなかった。
「ちゃんと会いに来てくれたお礼だ」
そう言った綴も顔が赤くなっていたが、笑顔でリンの手を握り歩き出す。リンも驚きながらも綴の手をしっかり握っていた。リンも綴もお互いの手の温もりを感じながら今日とゆう日に感謝しお互いが幸せを感じていた。
やっと五話終わりました。かなり眠いです…この再開シーンはずっと書きたかった所です。このリンと綴の再開シーンを書くためだけに緋弾のアリアの小説書いたぐらい。これで最終回でも後悔はない!(え?)何回も書き直しましたが、うまくいかず自分的にはあまり満足できるものができなかったかなぁ~っと思っていますが。でも一生懸命書いたので楽しんでもらえると嬉しいです。綴可愛いですよね。2年か3年前アニメ見たときにびびっと体に電気が走りましたね。自分大好きですよ。いつも書きながら綴は好きな人にはこんな感じだろうな~っと想像しながら書いています。しかし。ちょっと変わりすぎたかと思ってしまった。