朝日が上り、まだ辺りが静かな時、リンは綴の家に入ろうとしていた。
「さて、今日の朝食何しようかな?.....ッ?!」
そう考えながらリビングに入ったリンは驚いた。電気もつけずに綴が椅子に座っていて、それだけなら良かったが、背後にどす黒いオーラが滲み出ていた。
「ど…どうした綴?」
冷や汗が止まらないリンだったが、勇気を出して声を出した。
「んぁー分からないのかぁー?」
今のリンの言葉を聞き綴はキレたのか威圧感が増した。
「い…いや…昨日は、ご、ごめん」
その言葉を聞き、綴はどす黒いオーラを消し、ため息を吐いた。
「ハァー。分かってるならいい。あんまり心配かけさせるな。それより大丈夫か?」
「あぁ。大丈夫さ」
そう言ったリンの笑顔は痛々しく、そんなリンの姿を見た綴はリンを優しく、子供をあやすように抱きしめた。
「まったく、無理するな。私は家族だろう?」
リンを胸に押し付け抱きしめながら右手で優しく頭を撫でていた。
「……あぁ。ありがとう」
(かなわないなぁ)
リンはそう思いながら、しばらく綴の優しさに甘えていた。
あの後はいつも通り、ご飯を食べ、武偵高に着いたリンは異変を感じた。
「ハァ。やはりか…」
まるで化け物を見るような回りにリンは思わずため息をこぼしていた。
「落ちこぼれの時は馬鹿にし、力を示せばこれか」
あんな試合を見れば恐怖の目で見られるのも仕方なく。だが、理由もなくリンが暴れる訳がない。怒りで我を忘れたリンだが、武偵高に神の教団のスパイがいないか確かめるために目立ち昨日1人で1日を過ごしたのだ。
「リンリーン」
「ッッ!」
そんな事を考えていたら、後ろから声がかかり、振り向いた時、理子がリンに飛びついていた。リンは痛みを我慢しながらもしっかり理子を受け止める。
「り…理子...危ないだろう?」
「リンリンが昨日帰っちゃうからだよ!理子は昨日からプンプンガオーなんだぞ」
理子が怒っていると体全体を使って表現していた。それを聞いたリンは申し訳無さそうな顔で謝る。
「ごめんな。色々と心配かけた」
「いいよ。リンリンがいつも通りで安心した」
そう言い理子はリンの手を強く握りほっとしていて、リンも少し驚いたが、理子の手を握り返し頭を撫でた。
「ありがとな」
「う、うん。そ、それより早く行こうよリンリン」
「お、おい」
そう言ったリンを見た理子は恥ずかしかったのか、手を握ったまま引っ張り学校に一緒に向かい走り出した。
リンと理子が教室に入った時、騒がしかった教室が急に静まり返った。
「リン来たのか?」
「おいリン!昨日どこいってやがった」
リンに気を使ってか、キンジと武藤が話かけていた。それに伴い、教室に騒がしさが戻る。
「理子がリンリンを連れてきたんだよぉー」
「良くやった理子二等兵!」
「ラジャーです軍曹」
そう言って馬鹿をやってる武藤と理子をリンは無視しながらキンジに謝る。
「すまないなキンジ…色々あったんだよ。それより、お前の後ろにいるぞ」
リンはキンジの後ろを指差す。その先には猫が威嚇しているような感じのアリアがいた。
「キンジ!奴隷なんだから私を起こしなさいよ!」
「ア…アリアまぎらわしい言い方をするな」
「キンジ!お…お前もうそんな事まで?!」
「きークン大胆。グフフ」
武藤が驚き、理子は煽るように言い周りを巻き込む。
「まじかよあいつ!」「キンジ君凄い積極的なんだね」「不潔」「恋人いいな」
周りから止めどなく冷たい目で見られるキンジは冷や汗をかきながらも、必死に否定し頑張るが、アリアの一言でキンジは絶望した。
「あ…あんたら…風穴あけられたいの!私とキンジは、こ、恋人、なんかじゃなくて…ただの奴隷と主人の関係だけなんだから!」
「そ…そうか。悪かった」「まさかそうゆうプレイとは…」
教室が凍りつき、皆が余り関わらないようにし、リンさえも何も言わず席に着き、懐から本を出し読み始める。
『キンジはドMの変態』
皆の心が一つになった瞬間だった。
放課後、キンジの誤解が解けリンは夕食を作りに寮に来ていた。
「今日はあいつの好きなハンバーグにしてやろう」
余りにもキンジが可哀想だったので好きな物をリンは作ろうと、そう考えながらリンはドアを開けた。一番最初に視界に入ったのはキンジがアリアを押し倒していて、服も捲れてアリアの綺麗な肌が見えていた。
キンジとアリアがリンに気づき、目があった。
「すまない。気が利かなかったな」
そう言いリンは静かにドアを閉めた。
リンが出て行き暫くキンジとアリアは固まっていたが、やがてお互いが顔を赤くし離れた。
「あ…あんたのせいで、ご、誤解されたじゃない!」
「そ、それはこっちのセリフだ!」
そう言い合ってる内に、ドアが開く音が鳴り、再びリンが戻ってきた。
「キンジ…頑張れ。俺は暫く綴の家にいるからアリアと仲良くな」
「ま…まて、ご、誤解だリン」
リンはそう言い寮を後にした。リンが去った後、アリアとキンジは暫く言い合っていた。
辺りは大分暗くなり、喉が渇いたリンは公園の自販機で飲み物を買いベンチに座りながら喉を潤わしていた。
「疲れたな…」
今日1日周りから見られていたためか、精神的にリンは疲れていた。
「リンさんどうかしましたか?」
「ん?レキか。どうした?こんな時間に買い物か?」
リンが顔をあげるとレキがいて暗闇で分かりにくいがその手にはスーパーの袋が両手に握られている。
「はい。食料を買って帰る所でリンさんを見つけました」
「そうか。それにしても相変わらずそれ、カロリーメイトか?」
レキのスーパーの袋の中には大量のカロリーメイトで埋まっていた。リンの目から見るに色々な味のカロリーメイトが見え顔がひきつっていた。
「すべての味があります。栄養もこれひとつですべてまかなえます」
心なしかレキの声に力がはいっており、レキの珍しい光景にリンは思わず微笑んでしまう。
「何かおかしいですか?」
「いやいや、たまにはきちんとした食事をとらないといけないと言ったはずなんだがな」
「……心がけます。それより、もう大丈夫ですか?」
そう言ったレキの声は心なしか心配そうだった。二年前の事を思い出しているのだろう。体の事じゃなくてリンの心を心配してるのが分かったリンは軽く頭を撫でる。
「あぁ..おかげさまでな。」
「…大丈夫なら何よりですが、あまり自分を傷つけないでください。あなたが傷つけば悲しむ人がいます」
レキは心配していた。リンはいつも他人を気遣い助けるが、自分には無頓着なのだ。むしろ嫌っていルようにも見えた。だから平気で自分を傷つけるリンにレキは見ていられなく釘をさしたのだ。
「…善処するよ」
それを聞いたリンはばつが悪そうな顔をした。思い当たる節があったのだろう。
「それなら結構です。私はそろそろ帰ります」
「あぁ今日はありがとな。嬉しかったよ」
「…それではまた明日」
そう言いレキは袋を持ち立ち去った。残ったリンは公園でしばらく夜空を眺めた後、綴の家に向かって歩き出した。
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レキは帰路につきながらリンの事を考えていた。
「リンさん…」
他人や私を助けてくれるのに、リンさんは自分に無頓着だ。あの試合も刀と銃を避けようと思えば避けれたのに、わざと当たり平気で自分を傷つけていた。まるで存在してはいけないみたいに、そんな姿なんて見たくなかった。して欲しくなかった。だからリンさんに忠告した。これ以上自分を痛めつけないように。そんな姿を見たくない自分のために。
「あなたは私が守ります」
そう自分に言い聞かせレキは歩を進めた。
あれから数日が経ち、色々な事があった。昨日キンジが強襲科に戻ってきたのだ。相変わらずキンジは皆の人気者だとあらためてリンは実感していた。アリアのおかげだと、そんな事を考えながら朝の訓練で遅刻しながらも武偵高へと通学していたリンだが急にアリアから電話がきた。
「もしもし」
「リン。事件よ!手伝って。C装備で女子の屋上に集合来て!
「わかった!すぐ行く!」
よく分からないが、アリアの声が急いでいたのですぐにリンは女子寮の屋上を目指し走り出した。
リンが着いた頃にはキンジやレキ、鬼気迫る表情をしたアリアがいてすでに先に話は始まっていた。これだけのランクの高い武偵を集めるという事はそうとうやばいとリンは感じていた。
「Sランク3人にAランク1人呼ぶとはどれほどの事件だ?」
「来たのねリン。バスジャックよ。それも犯人は『武偵殺し』よ。武偵高の通学バスに爆弾がしかけられてるわ」
「!!そうかそれでこれからどうすればいい?」
リンは驚いたがすぐにどう行動すればいいかアリアに聞く。
「バスに乗り込むから準備して期待してるわリン」
「了解した」
女子寮の屋上に降り立ったヘリに乗り込んだリン達はそれぞれが銃のチェックを行っていた。
「見えました」
レキの声が聞こえリン達は銃から防弾窓へと視線を移す。
「何も見えないぞレキ」
「私には見えます。ホテル日航の前を右折してるはずです。バスの窓に武偵高の制服が見えます。
「よ、よく分かるわね。視力いくつよ?」
「左右ともに6.0です」
それを聞いていたキンジとアリアは顔をあわせていた。
「さすがレキだな」
リンはたのもしそうにレキを見ていた。レキの言ったとおりの場所にヘリを向かわせるとそこに武偵高のバスが走っていた。
「空からバスに乗り移るわ!リンはバスの上から敵がこないか警戒して、私は外側で爆弾を探すわ。キンジは車内で状況を確認、レキはヘリでバスを追跡しながら待機」
「もし中に犯人がいたらどうするんだ。人質があぶないぞ」
「『武偵殺し』なら車内にはいないわ」
「もしかしたら違うかもしれないだろ!」
キンジとアリアが言い争い始めたためリンが止めに入った。
「いい加減にしろ!今はそんな事で争ってる暇はないだろう!レキ。俺は先に行ってくる」
「分かりました。気をつけてください」
リンはヘリから降りバスの屋根に着地し、瞬時に周囲に危険がない確認しているとキンジとアリアが降りてきた。
「リンすまない」
「もう気にするな。それより早く解決するぞ」
「私は外側に爆弾があるか探すからキンジは車内を詮索して」
3人がそれぞれ行動を開始しようとした時、レキから連絡が入る。
「リンさん気をつけてください。後ろからトラックが物凄いスピードで来てます。そのトラックの上にフードを被った人がいます」
その言葉を聞き後ろを見るとトラックの上に赤いフードを被った幹部がいた。
「なんだあいつは?」
「なんだわざわざこっちに近づいてくるのよ!」
キンジとアリアが疑問に感じていると突然それは起こった。
「う…なによこれ!」
「なんだこれ…起き上がれない…」
「ッ!!くそ!」
キンジとアリアは体が急激に重くなり、何かに押さえつけられるように立っていられなくなりバスに叩きつけられるように倒れた。リンも食らって入るがなんとか耐え、すぐさま銃弾を敵に打ち込む。
銃弾は敵に当たるとおもいきやそのまま勢いをなくし下に落とされたが、三人にかかっていた圧力がなくなる。
「キンジとアリアはこのバスを頼む!俺はあいつをなんとかする!」
リンは銃弾を打ち込みながらバスからトラックへと飛び移りすぐさま銃を相手にむける。
「神の教団がこんなところに何のようだ?」
「いえ、組織で有名なあなたを見に来たついでに挨拶をと思いましてね。私はXIII機関のNo. IX 空間の支配者と呼ばれているライネルと申します」
礼儀正しく礼をし、男にしてはずいぶん細く、声も比較的高く感じられた。
「大層な二つ名だな」
「私を気にかけていていいのですか?」
その言葉を聞きバスの方を見てみるとバスの横に車があり、無人の座席にあるウージーがバスに狙いを定め、銃弾をばら撒きながらバスの窓を破壊していた。急いで向かおうと思ったが銃弾が飛んできてリンはそれを剣で弾き、後ろに下がる。
「邪魔をするな!」
「あなたの相手は私ですよ。余所見をしている暇はありませんよ!」
ライネルがそう言った瞬間、何本もの剣や銃弾、ナイフなどが浮かび上がり、それが一斉にリンに襲い掛かる。
「クッ!なんて数だ....」
トラックの上で逃げ場のないリンは避けれず、避ければ前を走るバスにあたるかもしれないため剣で弾くしかなかった。急所だけはなんとか避けているリンだが少しずつ傷が増え動きがにぶくなり血があふれ出す。ブリッジ付近までリンはその猛攻を耐えていたがついに剣を弾かれてしまった。
「しまった!」
「剣を弾かれ、この狭いトラックの上じゃもうなにもできませんね。止めといきましょう。いくらあなたが頑丈だろうと頭を狙えば終わりで…ッッ!」
ライネルが止めをさそうとした所でどこからか分からないが銃弾がライネルを襲い集中を切らしたのか銃弾やナイフが落ちる。
「リンさん今です」
レキの声を聞きリンは感謝をし、今がチャンスだと思いライネルに近づき、拳を振るうが、ライネルは後ろに跳んだ。
「おしかったですね。私は早くは動けないですが空をも飛べるのですよ」
それでもリンはかわされたのを気にせず飛んでいるライネルに向かい跳ぶ。
「その距離じゃ届きませんよ」
リンとライネルとの距離は5mほどあり届いておらず、ライネルは余裕をもって銃を構えたがその一瞬の油断をリンは見逃さなかった。
「な!?」
「落ちろ!!!」
リンは瞬時に足に魔力を溜め、足場を作り踏ん張り、ライネルに向かい再び跳び回転しながらライネルを上段から蹴りを振り落とし海に叩き落とした。
「グハッ」
リンはそのまま道路に叩きつけられ、意識が遠くなるのを抑えられなかった。リンが意識を失う前に見たのは爆弾が吹き飛ぶ所だった。
リンが意識を失う少し前キンジとアリア、レキはそれぞれの行動を実行していた。
「アリア!リンが敵を引き付けてくれてる内に爆弾を解除するぞ!」
「…そうね私は外側を探すからキンジは中をまかせるわ!」
アリアは外側を探し、キンジは中に入り情報を探そうとしていた。
「よお武藤友達を見捨てたバチが当たったな」
「勘弁してくれキンジ。それよりあの子だ」
武藤が指した場所にはメガネをかけた少女が携帯を持って震えていた。
「ととととっと遠山先輩助けてっ。携帯がすり替わってて…それが喋りだして」
「速度を落とすと爆発しやがります」
遠隔操作がされているためキンジは何もできずアリアに連絡を入れる。
「アリア聞いてくれ。バスは遠隔操作されている。そっちは何かみつけたか?」
「爆弾を見つけたわ。プラスチック爆弾よ!炸薬も3500立方センチはあるわ!」
これだけの物ならばバスじゃなく電車ですら吹っ飛ぶほど過剰な炸薬量なのだ。
「潜り込んで爆弾の解体を試み.....あっ!」
「大丈夫かアリア!?」
爆弾の解体を試みようとした所で車がバスに衝突していた。そしてバスの横に着け、UZIがバスに的を向けた。キンジは反射的に声をだしていた。
「伏せろッ!!!」
その声に反応しバスに乗っていた武偵の生徒達は伏せた直後、バリバリバリバリッ!
無数の銃弾が、バスの窓を後ろから前まで、一気に粉々にした。その影響でバスが揺れ運転手が銃弾を浴びて怪我をして意識を失っていた。
「武藤運転頼む!」
「俺後1点しか違反できないんだぞ!」
キンジは武藤にヘルメットを被せアリアを探しに行き、運転しながらも愚痴を言う武藤はバスを右折しレインボーブリッジに入った時、後ろのトラックにリンが傷だらけでいる事に気づいた。
「リンが襲われている!」
その言葉にバスに乗っている生徒達は視線を後ろに移し、リンを見ていた。全身血だらけながらも浮いて襲い掛かってくる剣や銃弾を裁きながらずっと耐えている所だった。
「俺らの乗るバスに当たらないようにすべて弾いてるのか!」
武藤はリンが何故避けないのか気づき声を張り上げた。いくら足場が狭いといっても少しは避けれる筈なのにリンは自分達を守るために避けずにすべて弾いているのだ。
「リンッ!!!」
ついにリンの剣が弾かれやられそうになり、武藤が叫んだ時、一発の銃弾が鳴り響いた。
レキは自分の心を落ち着かせていた。建物があるため銃が撃てなく、それでもスコープで状況が見えていた。リンがあの時の敵の組織と戦っているのだ。全身が血に塗れながらも必死に耐えていてレキは自分でも気付かない内に強く銃を握り締める。あの時の事が頭に浮かぶが振り払い集中する。キンジやアリアのの方も、アリアがキンジを庇い怪我をおい、状況が悪くなるばかりだった。
リンの剣が弾かれた瞬間レキは自分の頭が真っ白になりすぐさま銃を構えた。
「私は一発の銃弾」
「銃弾は人の心をもたない。ゆえに何も考えない」
「ただ目的に向かって飛ぶだけ」
レキが放った銃弾はフード男の銃を叩き落し、何発の銃弾を敵に向かって撃つ。集中を切らしたのか浮いていた物もすべて落ちていた。
「リンさん今です」
レキは無意識に言葉がでていて、その言葉をきいたリンは敵を倒したが、道路に叩きつけられ、レキはすぐさま向かおうとしたが、まだ事件を終わらしていない事に気付きすぐさま先ほどの台詞を吐きバスの爆弾を破壊した。
レキはすぐさまリンに声をかける。
「リンさん私の声が聞こえますか?リンさん」
その返事は返ってくることはなく、こうしてバス事件は終わりを向かえた。
すいません投稿遅れました。