緋弾のアリア 悲しみの悪魔   作:osero

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第九話『悪魔の傷痕』

 

 真っ白い病室にリンはいた。あの後、リンはすぐに武偵病院に運ばれ治療が施された。全身至る所に血を流し、さらに走行中のトラックから落ちたのだ。軽傷である訳がなく、ほとんどの場所に包帯がまいてあり、点滴の管もいくつか見られた。そんなリンが眠る病室にレキとキンジは来ていた。

 

 機会音がだけが木霊する静かな空間で、レキもキンジもなにも言わず無言でリンを見つめていた。そんな時ドアが開き綴が入ってきた。

 

「リンは大丈夫なんですか?」

 

「あぁ……命に別状はないよ。ただしばらくは絶対安静だと言われたよ。全身に切り傷があり出血もひどく、走行中のトラックから落ちた際に腕で庇ったから腕もそうとうひどいらしいからね」

 

 そう言った綴は壁に寄りかかり険しい表情でリンを見て心配していた。

 

「リンと戦ってた敵はどうなってるんですか?」

 

 キンジが疑問に思ってた事を聞く。

 

「まったく見つからないらしいよぉー。敵が使っていた銃弾やナイフ、それさえも見つからなく、お手上げ状態らしいよぉー。まあそんなんだろうと思ってたんだけどさァ」

 

 綴はもちろん心辺りがあり、リンを狙う組織などあの組織しかいないと予想はついていた。

 

「綴先生はリンを狙ったやつを知ってるんですか!?」

 

「一応あたしは知ってはいるが、あんたが知ることではないよ。生半端な覚悟じゃ首を突っ込んでいい問題ではない」

 

 そうきっぱり言う綴にキンジは驚愕し、綴がここまでいっさい軽い調子ではなく真剣に言っている事にそうとう危ない相手か組織なのだろうとキンジは思い何も言い返せず口を閉ざす。

 

 それからしばらくしてリンの病室に人が訪れた。

 

「失礼します」

 

 入ってきたのは理子でいつもの元気な姿はなりをひそめており、むしろ何かに苦しむように顔を顰めていた。

 

「リンリンは大丈夫ですか……?」

 

 花を横に置いた理子はリンの傍により様子を伺っていた。

 

「命に別状はないらしい。ただ重傷とゆうことには変わりがないらしいけどな……」

 

 レキと綴は喋ろうとせずただただリンを見ていて、綴は何かを考えてるのか思考しており、レキはあれからずっとリンを見つめていたためキンジが変わりに答えていた。

 

 「リンリン……」

 

 それを聞いた理子は悲しそうに俯きリンの名前を吐いた。それを見たキンジは今まで気になっていた事を聞いた。

 

「綴先生、一つ聞きたい事があったんですが、リンはどうして……」

 

「どうして、自分を犠牲にしてばっかりか?だろ?」

 

 キンジの言葉を途中で渡り、キンジが言おうとした台詞を言った。

 

「なんで分かったんですか?」

 

「言わなくても分かる。あいつは誰にたいしてもそうだからなぁー」

 

 煙草を口に咥え綴はだるそうな感じで言っているが雰囲気は真剣だった。

 

「あいつはいつもそうだ。自分がつらくても、苦しくても他人を優先して。二年前だってそうだったよ。私に迷惑をかけまいとかってに離れていった。あいつの中には自分が大切なんて物はないんだよ。自分よりも自分の大切な人の方が大事なんだ。もし、あいつは自分の命と大切な人の命どっちかしか助からないと分かった時、あいつは悩みもせず、大切な人をとるだろうな」

 

 その事を聞いたキンジと理子はリンの異常な物を感じ驚愕し、レキは相変わらず表情すら変えず綴の話を聞き、さらに綴は続けた。

 

「あいつは言ってたよ。気がついた時から一人だって、それ以上は語ろうとしなかったが、顔を見れば分かったよ。その時のリンは怯えていてまるで子供みたいに震えて。相当酷い事があったはずなんだ。平気なはずがないのに、自分の事より私達の事ばかり気にかけてる。きっとあいつの心は壊れかけてるかどこか壊れているんだろうな。だから自分を大切にできないんだ。だから私は誓ったんだ自分に、何があろうともあいつを支えるとな。だからお前らに言っておく、中途半端な気持ちでリンと関わるな。リンが傷つく姿なんて私は見たくないから言っておく......そこのドアの向こうにいるお前らもな」

 

「うあっ!」

 

「んぎゅっ!」

 

「やはりばれてましたか」

 

 綴がそう言いながら足音を立てず、入り口のドアを開けるとそこには急にドアを開けられ倒れた平賀と武藤、その後ろで苦笑いの不知火がいた。

 

「お……お前らどうしてここに?」

 

 キンジが問いかける。

 

「お見舞いに来たんだけど、真剣な話をしていたから入りづらくてドアの向こうで聞いてだよ」

 

「そうなのだ!けして盗み聞きしようだなんて思ってなかったのだ!」

 

「まぁそうことだよキンジ!俺達だってリンを心配してたんだよ」

 

 三人共リンが重傷だときいて急いで来たのだ。

 

「お前らも聞いてたように中途半端な覚悟でリンと関わるなよぉー。私は荷物を取りに一回家にかえる」

 

 いつものだるそうな感じに戻った綴は部屋を後にしようとした時、今まで黙ってリンを見ていたレキが綴の方を見て声を発した。

 

「……たとえ誰がなんと言おうと私は傍にいてリンさんを守るだけです」

 

 そう言ったレキは相変わらず感情のない声だったが、綴は何かを感じたのか笑みがこぼれた。

 

「フ。そうかぁーそれなら別にいいさぁー」

 

 そう言い綴は部屋を後にした。

 

 あの後しばらく、皆がいたが夕方になり、それぞれが帰る中、理子とレキだけが残っていたが、理子も帰ろうと思い席を立った。

 

「レキレキ、私も帰るね。リンリンが起きたらよろしくいっといてね」

 

 部屋を後にしようとドアに手をかけた時、ふと理子は声をかけられた。

 

「……理子さん。あなたはリンさんをどう思っていますか?」

 

 そう聞かれた理子は良くわからないかったが、今の自分の素直な気持ちを伝えた。

 

「あたしにとってリンリンは大切な友達だよ。それじゃあねレキレキ」

 

 レキの返事も聞かず、理子は部屋を出て行った。部屋に残ったのはリンとレキのみだった。

 

 

 

 レキは動く事もなくただひたすらリンを見ていた。何故こんな事をしているのかもレキは自分でも分かっていなく、ただ分かっていたのはあの一年前。風の声だけにしたがっていた自分とは違うとそれだけは自覚していた。

 

 あの時リンが殺されそうになった瞬間、レキは自分の頭が真っ白になったのを覚えている。初めて恐怖とゆう感情を感じ自分の何かが失うと思い、それからは無我夢中で勝手に体が動いていた。始めて感じる感情にレキは戸惑い苦しかった。

 

「リンさん……」

 

 その感情が分からなく不安でレキは俯きただリンの名前を呼ぶことしかできなかった。

 

「……れ……き……?」

 

 レキは自分を呼ぶ声で視線をあげるとそこには目が覚めたリンが紅い瞳で自分を見つめていた。

 

「目が覚めましたかリンさん」

 

 リンが目を覚ました瞬間、レキは安心感に包まれさっきまでの不安がなくなり、嬉しさがこみ上げてきた。

 

「ここは……?ッ!」

 

 体を起こそうとしたリンだが、体に走る激痛に顔を顰める。

 

「寝ていてください。リンさんは重傷なんですから」

 

「そんなことよりもキンジ達は無事なのか?」

 

 そのレキの言葉にリンはあの時の事をすべて思い出したのか、レキにキンジとアリアの安否を聞いた。

 

「キンジさんとアリアさんは無事です」

 

「そっか……無事だったのか……良かった」 

 

 その言葉を聞いたであろうリンは安堵し、そんな姿を見たレキはさっきの綴の話を思い出していた。『あいつは自分を大切にできない、あいつの心はどこか壊れているんだよ』その言葉がレキの頭を木霊する。

 

「……リンさん約束……守ってくれると言いましたよね。もっと自分を大事にしてください」

 

 レキは一年前のあの時から綴から言われた事など分かっており、だから約束したのだ。

 

「……ごめんな。だけどああするしかなかったんだ。それしか俺にはバスを守れる方法は思いつかなかった……」

 

 リンはレキの言葉に謝り申し訳なさそうで、しかしリンは言葉を続ける。

 

「だけど……死んだと思ったけど俺はこうして生きてる。レキがあの時助けてくれたから。だからありがとうレキ」

 

 そう言ったリンはレキに微笑んだ。今生きていられるのはレキのおかげだと気持ちを伝えるように。

 

「私はあの時からあなたを守ると約束しました……守れて良かったです……」

 

 レキはリンの笑みを見て守れたのだとあらためて実感し微笑むリンを見つめていた。その時感じた気持ちはレキにはまだ分からなかったが、その気持ちを大事にしようとレキは思った。

 

 

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