ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:戦犯

12 / 24
限界突破

笑い声が聞こえる。

それは笑うと言うよりもむしろ嗤う、に近いものだったが。

すぐに見つかる、逃げないと。

だが、足は動かない。長い杭が深く突き刺さり、血が流れ出ている。

近付いてくる声、もうすぐそばまで来ている。

血が不足し、意識が遠のいていく。そんな中、最後に朱い髪が見えた気がした。

 

 

ーーーーー

 

 

「遅くなってごめんね。じゃあ、始めよっか」

 

その言葉に応えるように二本のナイフを逆手に構え、強く足を踏み出す。

 

ーー【ロキ・ファミリア】所属の冒険者になってから今日で六日、目に映る世界は大きく変わった。

それまででは考えられなかったようなスピードや跳躍力。動体視力も上がり、驚くほど周りが良く見えるようになった。

そしてその変化に驚いているのはベル本人だけではない。

【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと共に冒険者登録をするためギルドに現れた新人。

その目立ちすぎると言えるデビューに少なくない人が注目し、街の中、あるいはダンジョンの中でその特徴的な容姿も相まって興味を持たれていた。

そして、人だけではなく神々からも興味は向けられていた。

日に日に目に見えて強くなるその少年に抱く感情は賞賛か、嫉妬か、それとも・・・疑念か。

なんにせよ、本人が満足しているかと聞かれると、否である。

 

届かない。

元からあった壁が高すぎて。

数字としても、経験としても目標との距離を遠ざけるのだった。

 

どれだけ知恵を振り絞って立ち回っても、隙をついて攻撃してみても、軽くいなされてしまう。

何度も吹き飛ばされ、倒れた。絶望的なまでの力量差である。

 

それでも、()()()()()()()()()()()

 

「立てる?」

 

訓練中、何度もかけられたその言葉に立ち上がることで応える。

初めの頃。と言ってもほんの数日前の話だが、その時のように気絶する回数が確実に減ってきている。

本人の自覚はともかく、相対する憧憬(アイズ)にはそれがよく分かった。

ナイフを握る手に力を込め、その深紅(ルベライト)の瞳に憧憬を写し、再び少年は駆けるーーー

 

それからの一週間は驚くほど早く過ぎていった。

朝早く起き、ダンジョンに潜る。

何度か豊穣の女主人で食事をして、シルにからかわれたり。

 

そしてベルの生活には少し変化があった。

暇な時や就寝前、アイズが本を読みに来るようになったという点だ。

慣れというのは恐ろしいもので初めは動揺して文字が頭に入ってこなかったが、今となっては割と落ち着いて読むことが出来る。

ちょくちょく出入りしていることについてリヴェリアやロキから問い詰められたこともあるが、喜ぶべきかはわからないが特に問題ないと判断された。

 

ロキから言い渡されたペナルティの期限は三日。

四日目からはアイズも本人の成長のため、あるいは未開の深層への挑戦へと向かい、一緒に潜ることはほとんど無くなったが、朝の訓練は毎日続けていた。

本来、アイズ一人で行っていた訓練。

城壁の上の影は二つになり、キン、キン、と剣を打ち合わせる音が響くようになった。

もちろん、剣だけを練習しているわけではない。

お互い付与魔法の使い手としての魔力制御のコツであったりを教えてもらったりもしていた。

そこで初めてアイズの【エアリアル】を見ることになったのだが・・・

 

(前、僕の魔法の方がすごいなんて言ってたけど・・・全然そんなことない・・・!)

 

膨大な魔力量を完璧にまとめあげ、望んだ所へと集める。

フィンとの模擬戦でベルが使った技術と同じではある。が、練度が違いすぎる。

付け焼き刃とは違う、洗練された魔法にまた憧れは増していく。

 

そうした日々がすぎる中、ダンジョンに潜り終わった後ベルが今いるのは冒険者ギルド本部。

いつも通り騒がしい室内に、ハーフエルフの受付嬢の怒声が響き渡った。

 

「じゅっかいそう!?あのねえ、いつも言ってるでしょ!冒険者は冒険しちゃいけないって!」

 

 

・・・事の発端は先ほどの会話。と言うよりもベルが持ち込んだドロップアイテムが問題であった。

エイナはギルド員として、ダンジョンの知識をある程度持っている。

そのおかげかウキウキと換金をしようとするベルの手元の違和感に気づけたのである。

 

「ねえ、ベル君。それなあに?」

 

「あ、エイナさん!見てくださいこれ!オークが落としたんです!」

 

「・・・ベル君?君は一体どこまで降りてるのかな?」

 

「えっと、今日は十階層です!」

 

そして、上のように叫ぶに至った。

 

「で、でも!神様が中層までなら潜ってもいいって・・・」

 

「神ロキが?・・・うーん。ベル君、ちょっと来て!ミーシャよろしく!」

 

「いちゃつくのもほどほどにね〜」

 

「もう!そんなんじゃないってば!」

 

顔を赤くして同僚にそう叫んだエイナに手を引かれてギルドの裏へと連れこまれる。

 

「服!」

 

「は、はい?」

 

「ギルド員として絶対に口外しないから!【ステイタス】見せてくれないかな?」

 

「え、でも隠蔽が・・・」

 

「あれ、隠蔽をはがす薬があるって言われたことない?」

 

そう言って取り出したのは小さな瓶。

・・・ここでさらっと取り出したが、この薬は割と高い。

もちろんこんな物騒なものをエイナが個人で所有しているわけはなく、ギルド本部からくすねて来たものである。

もちろんこれを持っていても神聖文字が読めなければ意味は無いが、エイナはある程度なら読むことが出来た。

蛇足だが、ここでギルド員としてと発言しているが完全に独断であり、個人的感情がちらちらと見えていたのは言うまでもない。

 

(気をつけろって言われてるけど・・・エイナさんならいっか)

 

ベルはそう結論づけて背面の上着をたくしあげていく。

見た目よりも引き締まっている身体に赤面するエイナが見えなかったのは残念だったと言える。

特殊な薬品をベルの背中に垂らせば、ロキによって隠されていた【ステイタス】が浮かび上がってくる。

その数値を見て、思わず息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ベルの部屋。

 

「・・・・・・・・・」

 

さも当然といった様子でベッドに寝転びながら本を読むアイズの姿があった。

開けた窓から入ってきた風に心地よさげに目を細める。

 

パサリ

 

と、机の上にあった紙が床へと落ちた。

 

(・・・ステイタスの、紙?)

 

マナー違反とは分かっていながらも寝転んでいたベッドから起き上がり、裏返しになっているそれを手に取る。

 

取って、しまった。

 

(・・・!)

 

 

ベル・クラネル

LV.1

 

力:E489→A892

耐久:D532→S953

器用:D511→S963

敏捷:C689→SS1065

魔力:A814→SSS1103

 

 

《魔法》

【ホーリー】

・付与魔法

・詠唱式【輝け】

 

《スキル》

(【情景一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する

・懸想が続く限り効果持続

・懸想の丈により効果向上)

 

光加護(ライト・ブレス)

・戦闘中、魔力のアビリティ上昇

・ーーーーーーーー

・ーーーーーーーー

・ーーーーーーーー

 

 




日刊1位ですって、びっくりしました。
読んでくれる皆様のおかげです、ありがとうございます。

エイナさん、神聖文字読めたかよく覚えてないですがこの作品内では読めることにしときます。

補足ですが、()内が見えるのはエイナだけです。

4/25 一文加筆しました。物語に影響はありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。