ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:戦犯
そんなお話。
(
目の前の
しかし、いくら考えてみても先程出した結論は覆ることは無いとわかった。
(確かベル君が恩恵受けるようになってから・・・二週間弱くらいだったかな?そんな短期間で『ステイタス』が伸びるとは考えにくいし・・・スキルのおかげなんだろうけど、読めないなぁ・・・。)
エイナが読めたのはアビリティの数字のみであって、スキルに関しては読めなかったのだった。何度かステイタスの強制開示の機会に立ち会ったことのあるエイナであったが、これまでもすべて読めていたわけではなかったのでそういうものであると諦めていた。
これは、公開されている神聖文字があまり多くないことが影響している。
「エイナさん?」
「・・・これなら確かに十階層に潜るだけの力量はあります。けど、無茶はしないこと!特にベル君はソロなんだから対処できないことも多いんだからね?・・・そういえば、パーティーは組まないの?」
「えっと・・・この間【ファミリア】の人に聞いてみたら数日待って欲しいって言われて、明日か明後日くらいにLv.2の人がリーダーのパーティーに少し入れてもらう予定です!」
「うん、それがいいんじゃないかな。そうなると今日は一人になるけど、ぜっったいに無茶しちゃダメだからね?何回もいうけど冒険者は冒険しちゃ・・・って、逃げるなー!」
「また聞きまーす!」
そう言ってベルはいつも長くなるお説教から逃走するのだった。
「全く・・・・・・・・・・・・強制開示、許可貰ったけどまずかったかな・・・神ロキになにか言われるかな・・・」
この懸念通り、ベルの次の更新の時にロキが気付いて問い詰めることになるのだが、エイナの今までの担当した冒険者に対する手厚い補佐のことを知っていたこと、リヴェリアが説得したことにより注意を受けるだけで済んだのは少し先の話。
そして、翌日の早朝。
「あ、おはようございます。アイズさん」
食堂で朝食を摂ろうとした時、既に食べているアイズを見てそう挨拶をするベル。
「おはよう。ベルは・・・強いね」
「はい?」
急にアイズにそう言われ、つい素で聞き返してしまう。
考えてみてほしい、毎日ボコボコにされ、吹き飛ばされている相手からのこの言葉である。
しかも、明らかに本気を出していないのである。
ベルがその俊敏を生かして動き回るのに対してアイズは必要以上に動くことは無い。
「いやいや、そんな事ないですよ!まだアイズさんに攻撃が届いたことすらないし・・・」
「それでも、すごいよ。・・・どうして、そんなに頑張れるの?」
「えっと・・・、どうしても追いつきたい
「そっか・・・私と。一緒なんだね」
その言葉に引っかかりを覚えたベルだったが、食器を持って立ち上がってしまったアイズの格好を見たことで驚き、質問をかけ損ねてしまった。
「あれ、こんな朝早くからダンジョンに行くんですか?」
「・・・うん。少し、深くまで潜るから」
そう。今のアイズは完全な戦闘用の服であり、腰にはしっかりと«デスペレート»が刺さっていたのだった。
ちなみに、ベルの朝は異常に早い。
つい最近までは普通に他の団員たちが起きる時間帯に起きてきていたのだが、朝食はしっかりと食べるようにというロキの理念があるため、食堂で食事を摂ることになる。
そして、他の団員たちと時間が合うとどうしても混む。すると毎日続けているトレーニングの開始時間が遅くなってしまう。
なら、早く起きて誰もいない時に行けばいいんじゃないかと考えた結果、料理人が食堂に来るギリギリの時間帯に来るようになったのだった。
余談ではあるが、ベルは食事をとても美味しそうに食べる。
食堂のレベルが高いのもあるが、朝から笑顔で「美味しい!」と言ってくれるベルに対して料理人達の印象はとても良かった。
「そうなんですか・・・頑張って下さい!」
「ベルも、今からダンジョン?頑張ってね」
「アイズ」
そういったやり取りをしていると入口からスッとリヴェリアが現れた。
アイズと同じくベルが前に見た遠征の時と同じ格好であり、しっかり武装していた。
「ごめん、すぐ行く」
それでアイズとリヴェリアが二人でダンジョンに行くことが察せられた。
食器を片付けているアイズを横目にベルのそばに近付いてきたリヴェリアはベルにしか聞こえない声で囁いた。
「・・・しばらく、アイズがいる時は『ステイタス』の紙を見えないところにしまっておいてくれるか?」
「へっ?は、はい!・・・僕の『ステイタス』がどうかしたんですか?」
「いいや、何も問題は無い。これからもその調子で頑張るんだぞ」
そう言ってベルの頭を少し撫でた後にアイズと一緒に食堂から出て行った。
「・・・?」
その後、ベルはいきなりのリヴァリアの行動に動揺を隠せないまま食堂に取り残されたのだった。
「ふっ!」
「ギギャァァァ・・・」
ダンジョン第十一階層。
今しがた倒したモンスターから落ちた魔石を拾いながら頭を巡らす。
(もう少しで十二階層…ポーションよし、武器の損傷なし、
ナイフを鞘に収めて再び歩き出す。
次の曲がり角を曲がれば階段が見えるはず・・・と、考えたところで冒険者になり上がった聴力が離れたところからの音を捉えた。
「・・・・・・、・・・っ!」
「・・・っ、い・・・・・・!」
(なんだろ?すごい急いでるみたいだけど・・・)
曲がり角からひょこっと顔を出すと凄まじい形相でこちらへ走ってくる数人のパーティーと思われる集団が見えた。うち一人は負傷しており、先頭を走る一番大柄な男の冒険者が抱えている形であった。
ダンジョン内ではほかの冒険者には関わらない、そんな言葉がベルの頭をよぎるが反射的に声をかけてしまった。
「どうかしましたか!?」
しきりに後ろを気にしていた冒険者たちは声をかけた瞬間こちらに顔を向け、男の冒険者は一瞬迷ったような素振りを見せたがすぐに仲間に向かって叫んだ。
「同業者だ!なすり付けるぞ!」
「し、しかし、桜花殿!」
「知らない奴とお前らなら俺はお前らの命を選ぶ!責任は俺がとる、急げ!」
大急ぎで目の前を通り抜けた時、男の冒険者以外が目を伏せていたのが印象的だった。
何が起こっているかわからず冒険者達の背中を呆然と見送っていたが、後ろから新たな音が聞こえ、振り返ることでその冒険者達のやり取りの意味を理解することになる。
暗闇の奥に光る赤い目。重量感のある足音と共に階段から上がって来たのは・・・
「ヴガァァァァァァァァアア!!!」
「く、黒い・・・ミノタウロス・・・!?」
その巨体に見合わぬ驚異的な速度で突撃してくるミノタウロスに急に反応することは叶わず、咄嗟に腕を胸の前で交差させて後ろに飛ぶことしか出来なかった。
「がはっ・・・!」
元々ベルのアビリティの中でも二番目に低い(一般的には決して低い訳では無い)耐久である。振るわれた拳の衝撃をすべて受け流し、耐えれるわけもなく吹き飛ばされ、壁に打ち付けられて息が詰まる。
それでもすぐさま起き上がり、すぐ後ろにあったルームへと退避する。
そこで新たな嬉しくない発見があった。
(前見たやつよりだいぶ大きい・・・)
加えてその丸太のように太い右腕に握られているのは無骨な大剣。明らかに元は冒険者のものとわかるそれは下の階層での犠牲者なのかと奪われたかもしれない命に思いを巡らせている暇もなく、目の前のミノタウロスが息を大きく吸い込み胸を膨らませる。
『ヴォォォォォォォォァ!』
『
モンスター固有のスキルであり、格上相手には効果のないそれも今この状況では非常に効果的なスキルである。
その声を聞いたベルの身体は硬直し、再び無防備な姿を晒すこととなる。
そんな中、震えるベルを見ながら嘲笑うように眺めているだけのミノタウロスは、待ってやっている。と言わんばかりに肩に担いだ大剣を叩くようにして佇んでいた。
情けない。
そう感じた瞬間、『咆哮』の効果が薄まった気がした。
それでも、この絶望的な状況は変わらない。
先日出会ったミノタウロス。脳裏に圧倒的な力の差がよぎる。
しかも今回のミノタウロスに関して言えば、大きく黒い身体、通常個体とは違うその特徴から導かれる答えは・・・
「強化種・・・っ!【
再びニヤリと笑ったミノタウロスに背を向け、逃走を開始するベル。
勝てるわけがない、そう思った。
全力でかけ上がればもしかしたら間に合うかもしれない、
そう考えての行動だったが、上へと戻る道を見た時に思い出した先程の冒険者達。どこの【ファミリア】の団員かは分からないが彼らでは勝てないから逃げ出したのだろう。
それだけではない、これより上の階にこのミノタウロスと闘える人はどれくらいいるのだろうか?
自分のように助けが入るとも限らない冒険者がいるところへこいつをつれていってしまっては・・・
そう考えると寒気がした、間違いなく死者が出る。
今回は自分にも助けが入るとも限らない、むしろ前回が幸運すぎたのだ。
「な、なんだあれ!」
「ミノタウロス!?なんでこんな所に!」
「さっきの奴らが言ってた
逃げ始めて少しした時、前からそんな声が聞こえた。
見てみれば、自分とそう変わらない、もしくは自分よりも下に見える先ほどとはまた違う三人の冒険者パーティーがいた。
このまま引っ張っていけば危険が及ぶ。
決意し、
二本のナイフを引き抜き、後ろから追ってくる存在に立ち向かう。
「おい、あいつ戦う気か!?」
「見るな!早く逃げるぞ!」
「でも、あいつだってなすりつけられた側だよな・・・。俺らも加勢すれば・・・どうにかならないか?」
「馬鹿!何言ってんだ!無理に決まってるだろ!」
後ろでそんな口論が聞こえる。
他人を救おうと思う
幸い、まだミノタウロスはベルしか見ていない。
息を吸い、大声で叫ぶ。
「早く逃げてください!僕が時間を稼ぎます!」
その言葉に全員驚いた顔をしていたが、一人、二人と逃げ出していき、最後まで残っていた一人が悔しそうな顔をして叫んだ
「すぐ、絶対助けを呼んでくるからな!」
そう言って去っていった三人。
深く息を吸い直し、魔法で強化された身体能力を使って駆け出した。