ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:戦犯

18 / 24
少し遅れました、すいません。

前日22:00に前話を投稿しておりますのでご注意下さい。


パーティー

神会(デナトゥス)

 

普段下界に降りている神が天界へと集まり行われる話し合い、もとい軽い食事会のようなものである。

全員ではないにせよ、多くの神が集まり決め事をする際に開かれる。

そして偶然定期的に開かれている神会の数日前にランクアップしたベルの二つ名もまた、ここで決められようとしていた。

 

「じゃあ、この子の二つ名『卍黒騎士卍』で決定でいいな!」

 

「「「「意義なし!」」」」

 

そして、この場所ではある意味センスの溢れる痛々しい二つ名が決められることもしばしば。

自分の眷属にその二つ名をつけられることを止められなかった神はその場で項垂れることとなり、もはやそれは恒例の光景となっていた。

 

「じゃあ次・・・おっ!噂のロキの所の最速記録保持者(レコードホルダー)くんじゃないか!では皆、案を出してくれ!」

 

「じゃあ・・・」

 

そうして次々と発言が飛び交うが、その中にふざけたものは一つもない。

ロキに限らずではあるが、規模の大きい【ファミリア】の眷属に対しては露骨に変な名前をつけるものは少ない。これもまた恒例の光景であった。

もちろん全てに当てはまるわけではないが、ロキの場合はほとんどがまともな二つ名がつけられていた。

そして、ベルの二つ名について議論が始まってから十数分

 

「じゃあ、これで決定でいいな!ロキもこれで問題ないか?」

 

「うむ!皆、うちの子にええのつけてくれてありがとうな!」

 

ここで確認を入れるあたりやはり恐れているのが出ているが、それを責めるものはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

そして神会が行われている時、ベルは前から約束していた【ファミリア】内のLv.2パーティーに混じりダンジョンへと向かっていた。

メンバーはベルを合わせて五人。男性三人に女性一人のメンバーに混じって現在いるのは十二階層。

上層と中層の境目であり、深く、濃い霧が発生していて五メルほど離れるとお互いの姿が認識し辛くなるほどであった。

 

「それにしても、ベルはすごいよな〜!こんな短期間でランクアップなんてよ!」

 

そんな中、まだ視界が安定している場所でそのパーティーは小休憩を取っていた。

それでも見えずらいため、二組に別れて警戒しながら昼食を摂る。

同じ組に分けられた二人と会話を交わしながら食べる食事は、いつも一人で食べている時と比べて楽しいと感じた。

元々、パーティーを組もうと言われたきっかけも豊穣の女主人で食事を摂っていた時にベルの目立つ容姿を覚えていた目の前のテンションの高い男ーー名をノーツと言うーーに声をかけられた事だった。

 

「全くだな。俺らも頑張ってはいたがその頃にはパーティー組んで一桁台の階層でひーひー言っていたぞ」

 

そして渋い声でそう言ったのはノーツの隣にいるレグス。

二人共Lv.2になって二年目のベテランであり、ダンジョン内での豆知識などは聞いていてとても勉強になる。

ノーツはその性格によらず死角からの一撃離脱を主とした戦い方で、レグスは大柄な体と高い耐久を使い敵を引きつけるいわゆる盾職。

もう一人の男が大剣で敵を薙ぎ倒すメインアタッカー、女が魔法での支援回復というバランスの良い構成だった。

 

連携の取れたパーティーに混じって見てみると、仲間の存在は大きいということが良くわかった。間違った道を進もうとすれば注意してくれるし、戦闘中も支援が飛んでくるのはありがたかった。

これはエイナもパーティーを組めというはずだと納得していた。

 

「はは・・・ありがとうございます!でも、ノーツさん達と一緒に潜ってると今まで知らなかったことばっかりで新鮮です!」

 

「まあ、俺らもダンジョンに入り出して長いからなぁー、期待のルーキー様にそう言って頂けるたあ光栄だ!」

 

その後少し会話した後見張りを交代してあとの二人が休憩に入る。

少ないところを選んでいるとはいえ寄ってくるモンスターと戦いながら、再び感心エルしたような視線を一緒の二人は向けてきた。

 

「やはりすごいな。とてもLv.2になりたてとは思えない」

 

その言葉の通り、ベルの動きはそのパーティーの中でも抜きん出ていた。

普通の状態でも相当であるが、魔法を使い光をまとっている時のスピードは彼らの目では追うのはなんとかできても非常に苦労するものだった。

 

今までベルは自分よりも高いLvの人ーーアイズが主であるーーとしか組んだことがないため、同じLv帯の動きを見たことがなかった。

そのため自分の動きがいかに異常かをあまり理解していなかったのだが、普通の人に見られればどう思われるのかというのをレグスは代弁していた。

 

「・・・そんなことないですよ、さっきこけたし」

 

そんな言葉にベルはむくれながらそう言った。

それを見たノーツは思い出すように笑いながらベルを励ましにかかる。

 

「ははは!まだ気にしてんのか?あんなんLv.2になった時の恒例行事みたいなもんだから気にすんなって!」

 

冒険者はLvが上がると身体能力が跳ね上がるのは広く知られている。が、そんな急に身体能力が変化すれば当然思っているように動かないという事がある。

Lv.3以降からはみんな気をつけるようになるのだがそんなことを知る由もない

 

そして違わずその被害に遭ったベル。

元々速い敏捷を生かして戦っているベルは顕著にその影響が現れ、加速した瞬間、自分の動きに頭が対応しきれずにつんのめってこけた。

その勢いのまま壁にぶつかり、いきなり支援担当の女から傷を治す魔法を使ってもらうことになってしまったのだった。

 

しかもそれがノーツとレグス以外の二人とのファーストコンタクトであり、その清々しいまでのこけっぷりに回復されている時も少し笑われていたのが記憶に新しい。

 

「はは、むしろ話しかけやすくなったから助かったよ。期待のルーキーって言うから緊張してたのにいきなりぶっ飛んで・・・くく」

 

「あんまり笑ってあげると可愛そうなのです、ぷぷぷ」

 

「おお、休憩は終わったか?じゃあ十三層に出発するか!」

 

「ディーンさんもサシャさんも笑わないでください!」

 

涙目でそう突っ込むベル。

ディーンの言う通り、はじめはお互いに緊張してろくに話せていなかった二人とベルだったがその出来事をきっかけに軽口を言い合えるような仲にまで発展していた。

 

そんなこともありながら、持ち物の中から火精霊の護符(サラマンダーウール)を取り出し羽織る。

これは、ヘルハウンドと呼ばれる狼型のモンスター対策である。

口から炎を吹き出し、多くの冒険者達を焼き殺してきたそのモンスターに付けられた異名は放火魔(バスカヴィル)

その吐き出される炎に対応出来ない冒険者は多いため、皮肉なことに情報は多く知ることは容易かった。

 

ただ、火精霊の護符は少し高くベルの財布に打撃を与えたのは言うまでもないだろう。

 

そして、十二階層の階段を降りきったところでノーツが周りを警戒しながらも笑顔でベルに向かって振り返る。

 

「さあ、ここから中層だ!今まで以上に気を引き締めていくぞ!」

 

初の中層挑戦であるベルの緊張を解そうとしてくれているのか、軽い口調でそう言った。

無意識に力んでいた身体の力を適度に抜き、それを見て再び笑ったノーツに続くように十三階層への階段を降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

「そういや、Lv.2になったなら二つ名がつくんだろ?もう決まってるのか?」

 

「いえ、今日神様が決めに言ってくれてるらしいです・・・っと!」

 

その後、ベルも予習をしてきていたことやノーツ達の経験のお陰もあり何の問題もなく十五階層へと辿り着いた五人。

 

「はぁっ!」

 

レグスと同じように前へ出てモンスターを切る。

ミノタウロスとの戦いで学んだ天井や壁を使っての三次元機動。

これに関してはまだ魔法を使っていないと出来ないため戦闘中は常に魔法を発動することになる。

 

強化種ミノタウロスの魔石を売却して得たヴァリスで購入した新しい白銀のナイフ。

ミスリルと呼ばれる魔法の精神力の伝導率が高い素材で作られたそれは、付与 魔法と非常に相性が良かった。

前と比べても切れ味が良く、頑丈でそう軽く折れるものではない。

魔法を刀身へと乗せれば剣自体が淡く光を纏うようにもなった。

 

余談にはなるがミノタウロス戦以降、ベルが魔法を使って物質を具現化できたことは無い。

いくらその形を想像してみても手元に集まってくるだけであの時のように剣として使う事は出来ずじまいであった。

 

「ベル、後ろ・・・」

 

その声よりも先に背後から迫ってきていたヘルハウンドに振り返りざま腰を落とした低い一撃。

飛びかかろうと空中にいたヘルハウンドは無防備な腹部を裂かれて魔石を残し、消えていった。

 

パーティーメンバーのカバーにも入る余裕を持ちながらモンスターを倒しているとベルはふと違和感を感じた。

 

(・・・精神力、減ってる?)

 

中層に入る前は魔法は基本的に使っていなかったので分からなかったが、今現在かなりの時間使用していてもなんとなく感じることが出来るようになってきた精神力の減りというものをあまり感じなかったのだ。

 

まるで、使ったそばから回復していくような・・・

 

(・・・【聖癒】か!)

 

少し考えてその結論へとたどり着く。

ミノタウロス以前より変わった点といえばそこしかない。

 

・・・そんなことを考えているベルだが、ロキが同じ系統かと予想していた【精癒】とはそこまで大きな効果を持たない。

戦闘中、精神力が使用したそばから回復していくという効果ではあるがその回復量はわずかで、長時間戦い続けることでその恩恵が出てくるというものであり今のベルのように顕著に実感できるものではない。

この後帰ってロキに報告することになるが、その時に告げられる。

 

【聖癒】は【精癒】の上位互換である、とーーー

 

 

「お疲れ様、みんな」

 

十五階層も中盤に差し掛かった頃、ディーンがそう口を開いた。

 

「確かに疲れたのです。もうそろそろ帰りたいのです」

 

「そうだな、そろそろ皆のポーチもいっぱいではないか?」

 

珍しいことに、ノーツ率いるこのパーティーにはサポーターがいない。

サポーターとは、狩りで得たドロップアイテムや魔石を戦っている冒険者の代わりにが運ぶ役割の者のことだが、冒険者からはあまりいい印象を得られていない。

戦わずに金を得る寄生。

そんな風に思われていることも多い職業である。

 

ではノーツ達もそうなのかとなるが、いうわけではなく、ただ単純に【ロキ・ファミリア】の中にサポーター専門の冒険者が少ないということである。

もちろんいないわけではないが、その者たちは冒険者としても高い能力を持っていて、基本的にもっとLvの高いパーティーと一緒に行動することになる。

そう言った理由で基本的には野良のサポーターを雇うのが下の者の常識となっている。

 

しかし、今回に関してはベルという興味を持たれすぎる存在が加入している。

なんらかの思惑を持って近づかれるのを恐れてロキが注意してほしいとノーツ達に直接言ったため、落ち着くまでは本人達の持てる範囲ということで決定された。

 

「じゃあ、一先ず帰るとするか!帰りも気を緩めるなよ」

 

そうリーダーのノーツが指示し、ここでダンジョン探索を切り上げることになった。

 

「そういえばさっきの戦闘中、どうやって後ろからの攻撃に気づけたの?」

 

注意が無駄に終わったことよりもずっと気になっていたことをディーンはベルに尋ねる。

あの時、ヘルハウンドの姿は確実に見えていなかったはずだが、ベルはしっかりと反応した。

 

「ん〜・・・。足音、と気配ですかね?」

 

「け、気配か・・・すごいね」

 

なんでもないようにそう言ってのけたベルに軽く頬を引き攣らせる。

感心するように見るレグスや呆れているノーツの視線に晒されながらーー本人は気付いていないーー戻ろうと踵を返したところで、重厚な足音が聞こえてきた。

 

「おいおい・・・最後の最後にこいつかよ・・・」

 

「むむ、めんどくさい」

 

眠たそうな声でそう言っているサシャも、目だけは真剣に現れた敵の姿を捉えている。

Lv.2相当のモンスターの中で最強と言われるモンスター。

 

「ヴォォォォォォア!」

 

そう、ミノタウロスが現れたのだった。

元々、ミノタウロスは群れで現れるモンスターである。

その常識に違わず、五匹程の群れで現れたミノタウロスのうちの一匹が開幕から『咆哮(ハウル)』を放ち、ノーツ達の動きが固まる。

 

それを見てニヤリと笑う他のミノタウロス達。

自らよりも脆く、矮小な存在と嘲笑う。

 

ノーツ達も決して弱いわけでも、ミノタウロスに慣れていないわけでもない。

ただ『咆哮』というものはそう簡単に防げるものではないのである。

人間の恐怖心を引き出してくるそれを克服するには相手に恐れない強い精神力が必要なのだ。

 

そんな中、一筋の光が群れの真ん中を通り去った。

続けて一匹の身体が裂かれ、何が起こったかすら分からぬまま黒い粒子となり消えていった。

 

「え・・・今、何が・・・」

 

そう呟いたのは誰だったか。

 

このパーティーの中に、ミノタウロスの『咆哮』にこんなに早く抗えるものはいなかった。

そうなると答えは一つ。

光の先を辿ればそこには今日パーティーに参加したばかりの少年の姿が。

わずかに見える横顔に恐れの色はない。

 

静寂に包まれる中、仲間が殺されたことに苛立ったように残りの四匹がベルに殺到する。

 

「・・・っ!不味い!ベルを助けろ!」

 

一番初めに復帰したノーツがそうパーティー全員に呼びかけたが、振り返った先の光景に圧倒されて足が止まってしまう。

突撃してくるミノタウロス達を正面からいなし、一際大きくナイフが光ったかと思うと再び一匹が身体を粒子に変える。

風を裂くように振るわれる拳をものともせず紙一重の距離で回避を繰り返す。

多対個という不利な状況でありながらも余裕すら見える戦いぶりであった。

 

どんどんと倒れていく仲間を見て焦るミノタウロス。

 

対してそんな隙すらも見逃さずに攻め入るベル。

天井、壁、時には股下をもくぐり抜けて攻め続ける。

これまでの攻略で慣れた身体能力の変化。

圧倒的とも言える速度でミノタウロスに刃を向けてから数分、そこに残ったのはミノタウロスの落とした角と魔石のみであった。

 

「ふぅ・・・。あっ!す、すいません!勝手に行動して!」

 

警戒を終えて振り返ったベルはやってしまったと思った。

ロキにも言われていたのだ、しっかりパーティーとして行動しろと。

今のは完全に一人での行動であったことを理解した上での謝罪だったが、それを受けたノーツ達は違う意味で微妙な顔をしていたのだった。

 

「ミノタウロスをこんなにあっさり・・・ベル、実はLV.3でしたとかじゃないよな?」

 

「ち、違いますよ!」

 

「いや、Lv.3でもなかなか難しいのではないか?うむ、清々しいくらいの規格外さだ」

 

ノーツももちろん本気で言っているわけではない。

 

「ん、なんで『咆哮』効かなかったのです?」

 

そう疑問に思ったサシャに対して推測を口にしたのはディーンだった。

 

「あ、そういえば。ベルのランクアップの時の相手って・・・」

 

「・・・なるほどなのです」

 

そう、ベルが相手にしていたのは()()()のミノタウロス。

確かにミノタウロスの群れ自体も凄まじい脅威であり、並みの冒険者パーティーなら苦戦を強いられ、下手をすれば全滅すら考えられる。

それでも、ベルとしてはあのミノタウロスと比べると・・・となってしまうのである。

 

「朝から思ってたが、さすがだな・・・っと!とりあえず戻るか!助かったぜ、ベル」

 

「俺たちだけだったら厳しい戦いになっていただろうな、前のように」

 

「あの時は災難だったよねぇ、ノーツが一撃もらった時はどうなるかと思ったよ」

 

以前にもミノタウロスと遭遇したことのあるノーツ達の思い出話を聞きながら上へと上がっていく。

初めてのパーティーでの攻略。

学べることも多く、ノーツ達はみんな良い人たちである。

談笑しながらの帰り道。

いつもは率先して話しているノーツが真剣な表情で何かを考えているのに、ベルは気付けないでいたのだった。




タイトル適当か!などの文句は受け付けません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。