ロキ・ファミリアに入ってダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:戦犯

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こんな亀更新な作品ですがいつの間にかUAも16000を突破し、お気に入りは250超えと、ありがたい限りでございます。
評価してくださった四名の方にもお礼を言わせていただきます。

読み手の時にはわからなかったのですがいざ書いてみると読者の言葉はすごく励みになります。

長々と書くのもどうかと思うので、ここら辺で失礼します。では、どうぞ



感想、評価などお待ちしております。


想いの先

「【ホーリー】」

 

そう唱えた瞬間、体の内から力が溢れる。見れば、それに伴って身体の周りに白い光が渦巻いていた。確かめるかのように少し腕を振ってみれば、その動きの後に残像のように光が追いかけてくる。

 

(これが、僕の魔法・・・)

 

念願の魔法を初めて使ったのにも関わらずベルの心はどこか落ち着いていた。

使ったのはいいもののどうしようかと思い振り返ると、そこには難しい顔をしながらダンジョンの奥の方を見ているアイズがいた。

その視線をたどってみるとそこにいたのはゴブリンやコボルトが入り混じった二十匹程度の群れだった。ベルのようにダンジョンに入って数時間の新人にとって絶望的な数字と言えるだろう。

そう思ったのか愛剣を引き抜きながらアイズが口を開く。

 

「・・・少し多かったかも。私が倒してくるね」

 

そんなアイズにただ一言「大丈夫です」と告げ、ナイフを引き抜いて走り出す。見えない力に後押しされ、凄まじい速度で群れの中へ突っ込み次々と敵を切り捨てる。

剣技などはなく、ただがむしゃらに見えたものを切るだけ。それでもほんの数秒で敵を全滅させたベルは魔法を解き、 ナイフを腰へとしまう。今までなら考えられない動きを軽々とこなした自分の身体に困惑していると後ろから声をかけられる。

 

「・・・すごいね。私の魔法よりも強力だよ」

 

「あ、ありがとうございます!えへへ・・・ひっ!?」

 

褒められたことにベルが頬を緩めていると顔のすぐ横をアイズの剣が通り過ぎる。放たれたその強烈な突きは仕留め損ねたのか残っていた最後の一匹の息の根を止めることとなった。

 

「す、すいません・・・ありがとうございます!」

 

「ダンジョンでは何が起こるかわからない、絶対に油断したらダメだよ」

 

今、アイズが助けてくれなければ命を落とすまでとは行かずとも確実に大きなダメージを喰らっていただろう事に気づいたのかベルは自身の中に生まれていた僅かな慢心を諌める。

 

「でも・・・ベルの強さならもう少し下の階層に行っても大丈夫そうだね、降りてみようか」

 

「・・・!お願いします!」

 

そうして二人は次の階層へ降りるために足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

そしてしばらく時間がたち、二人が今いるのは七階層。

五階層からモンスターの湧く速度が早くなり、ウォーシャドウ、キラーアントなどの厄介なモンスターが出現するようになった。しかし特に苦戦することもなく、アイズからの助言はあったがそれ以外は基本的にベル一人の力で進んできた2人だったが、七階層の最奥である八階層へと続く階段の前へ来たところでふとアイズが足を止める。

 

「ここから先はこれまでよりも強いモンスターが出てくるから、気をつけてね」

 

「確か・・・ゴブリンやコボルトが強くなるんでしたっけ?」

 

リヴェリアとの一対一のダンジョン講座のお陰で十七階層までは地形、出てくるモンスター、抜け道などを完璧とは言わないまでも覚えさせられたベルはそうアイズに訊ねると、少し驚いたような顔で

 

「どうして知ってるの?」

 

と聞いてくる。

それに対してリヴェリアに教えてもらったという事を話すとアイズは慈しむように無言でベルの頭を撫でるのだった。

 

そして八階層に足を踏み入れ、今までのモンスターと同じ姿でも強さが違う、という事態に分かっていても困惑したのか前後左右、時には上下からも襲い来るモンスターに対し、だんだんベルの対処が間に合わなくなってくる。しかしそこはすかさずアイズがフォローに入り、多少のダメージは受けつつも順調に迫り来るモンスター達を倒していったのであった。

そんな八階層の中盤に差し掛かったあたりでアイズがふと口を開く。

 

「そうだ、明日から二日間少し用事があるから一緒に来れないの。ごめんね・・・」

 

「そんな!謝らないでください!」

 

本当に申し訳なさそうに頭を下げるアイズにギョッとして顔を上げさせる。

その後聞いた話によると、もうすぐ十七階層のフロアボス、ゴライアスのインターヴァルの時期らしく、何人かの団員が討伐に派遣されたということらしかった。

二日間というのは泊まりがけで行うのではなく、【ゴブニュ・ファミリア】に武器の調整に行くのだそうだ。

そんな話を聞いてベルが思ったのは

 

(良かった・・・恋人とかじゃなかったんだ・・・。そういえばアイズさん、恋人いるのかな?・・・帰ったら神様に聞いてみよう)

 

・・・本人が目の前にいるのにも関わらず、他人に聞くというヘタレ発想を頭の中で展開しているベルだったが、そんな事を知るよしもなくアイズは話を続ける。

 

「ベルの実力ならある程度はソロでも大丈夫だと思うから・・・私からロキにそう言っておくね。じゃあ、そろそろ帰ろっか」

 

そうして、ベルの記念すべきダンジョンへの初挑戦は八階層という、アイズがいたとはいえ異例の到達度で終わりを迎えるのだった。

 

 

 

「神様!戻りました!」

 

「おーお帰り!どうやった?」

 

ギルドへの報告を済ませ黄昏の館に帰ってきた二人はひとまずロキの所へと足を運んだ。相変わらず酒瓶は転がっているものの綺麗にされた部屋に足を踏み入れるとロキにそう聞かれる。

 

「アイズさんがいてくれたお陰で順調にいきました!」

 

「そうかそうか!ありがとうなーアイズたん」

 

「・・・いえ」

 

「そういや、今日はいくらくらい稼げたんや?」

 

ベルの横に並ぶように立っているアイズの肩がビクッと跳ね上がった気がした。

 

「・・・?何をですか?」

 

「何って、お金以外ないやろ。魔石換金してきたやろ?」

 

「魔石・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・アイズたん?」

 

「・・・ごめん、忘れてた。これ、換金してきたやつ・・・」

 

冒険者はどうやって生計を立てているのか。それは主にモンスターの核とも言える魔石を回収してそれをギルドで換金する、というものだ。他にもギルドのクエストや、ドロップアイテムを売るといった方法もあるのだが魔石を回収した方が効率はいいと言えるだろう。だがしかし、ベルの魔法に圧倒されていたせいもあってか、アイズがそのことを伝えるのを忘れてしまったのである。

しかし、長い冒険者生活の賜物とも言えるのか、目に入った魔石はしっかりとアイズが回収しており、魔石を喰らうことで変異を起こし周りよりも強くなる個体、強化種が生まれるという危険はなくなっていた。

 

「25000ヴァリス・・・!?これ、僕がもらって良いんですか?」

 

「自分で稼いだお金やねんから自分がもらっとき!まあ・・・明日からはちゃんと自分で回収してくるんやで?」

 

「はい!わかりました!」

 

その後、他愛のない会話をしていたのだが、ベルがすっとロキへ近づきアイズに聞こえないくらいの声量で話しかける。

 

「・・・あの、神様。少し聞きたいことがあるんですけど」

 

「ん?どうしてん?」

 

「その・・・アイズさんって・・・こ、恋人とかっていたりするんですか?」

 

そう聞いた瞬間、ロキの目がキランと光ったように見えたのはベルの勘違いではないだろう。

 

「ほう・・・なんでそんなこと聞くんや?」

 

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらベルへ詰め寄っていくロキに対して顔を真っ赤にしながらも

 

「え、えっと・・・気になるから、です」

 

今ベルを見れば誰がどう見てもアイズに恋心を抱いているのは丸わかりなのだが頑なに明言をさけるベルを面白いなあと思いつつも事実を告げる。

 

「アイズたんはな・・・強くなることにしか興味ないみたいなんや」

 

「え・・・?」

 

それは、ロキにもどうにもできなかった問題であった。

 

「ベルが入って来てからは笑ったりすることも増えたみたいやけど、ちょっと前までは放っといたら一週間ダンジョンに潜りっぱなしの時とかもあったんやで?」

 

ロキの言う通り、これまでアイズはすべてを投げ捨てて強さを追い求めてきた 。無感情とも取れるほどの執念。いくら【ファミリア】のメンバーが止めようとも無茶し、時には大怪我をして帰ってくることもあった。

その姿勢はさながら『鬼』

彼女の二つ名である【剣姫】

そんな美しい名を誰かがこう呼んだ。

 

【剣鬼】 アイズ・ヴァレンシュタイン、と

 

それがどうだろうか、ベル・クラネルという少年が入ってきた途端に以前は見せなかった笑みも時たまにではあるが浮かべるようになりダンジョンに行くことよりもベルの面倒を優先したりと、ロキを含め、リヴェリアなどを大いに驚かせたのだった。

 

「まあ、今はアイズたんに恋人作る気なんてないんかもしれへんけど・・・」

 

だからこそロキは、自分の子供たちのためにこう言うのだった。

 

「ベルが強くなったら、振り向いてくれるかもしれへんで?」

 

ボフンッ、とっベルの顔がさらに真っ赤になる。やっと気づかれていることに気づいたのか顔をうつむかせたまま「はい・・・」とつぶやいていた。すると

 

「・・・何の話をしてるの?」

 

と、本人が登場したことにより純粋なベルは耐えられなくなったのか口をぱくぱくと開閉した後に

 

「ぼ、僕!疲れたのでお先に失礼しますー!」

 

と言って部屋から飛び出してしまうのだった。

アイズと違ってなんでそんな行動をとったのかがわかるロキはお腹を抱えて大爆笑していた。

 

「・・・ベル、どうしたの?」

 

「さあな?ほんで、アイズたんから見てベルはどうやった?」

 

「ベルは・・・強かったよ、ウォーシャドウとかも普通に倒せてたから」

 

「ウォーシャドウ?どこまで潜ったんや?」

 

五階層以降からしか出てこないそのモンスターの名前を聞いた途端にロキは真面目な表情になってアイズを問い詰める。

 

「八階層」

 

「はぁ・・・アイズたん?ベルの面倒見てくれてんのは嬉しいねんけど始めのうちからあんま楽させたらあかん。それはベルのためにもならんで?」

 

新人のうちから上位冒険者を頼りすぎていると自分が育たなくなる。どんな世界でもそれは定理だ。自分で動かずに甘い蜜を吸っているだけではいざ自分が、となった時に対処できない。特に、冒険者業は一つの失敗がそのまま死に直結する。故に、初めから手を借りて自分の適性を超えた所で無茶をしていてはいけない。

 

(まあ確かにベルの【ステイタス】なら行けんこともないやろうけど・・・。それでも冒険者になって二日目や、立ち回りとかも分かってないやろ)

 

そんなことを踏まえてのロキの言葉だったのだが、アイズは首を横にフルフルと振ると、

 

「私が倒したのは三匹だけ、あとは全部ベルが倒した」

 

「・・・マジで?」

 

「マジです」

 

信じられないような内容だが、下界の子の嘘がわかる神であるが故にその言葉が本当であるとわかってしまう。それに、とアイズは続ける

 

「ベルの魔法、私の【エアリアル】よりも強力だと思う」

 

一階層で見せたベルの魔法について見たことをそのまま話す。見とれていた、その綺麗な光に。初めてダンジョンに潜ったばかりの少年が二十匹もいた群れを一瞬で屠ったその圧倒的な力を。あの少年を追っていれば、いつか自分の望む力が見れるのではないか。そんな気がアイズはしていた。

その話を聴いたロキはひどく驚いたような顔をしていたがすぐに悪い顔になったかと思うと

 

「これは見せてもらわなあかんなあ・・・むふふ・・・」

 

そんなロキを見たアイズは失敗したことに気付き、

 

(ごめんね、ベル・・・)

 

と、心の中で謝るのだった。




少し文字数が少なめなのはこの先の展開、1度切った方がすっきりするのではと思ったゆえです。
だんだん自分の書きたいベル君に近づいていくようですごく楽しいです。

では、そう遠くないうちに再び読んでいただけることを願います。
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