ブラック企業社員がアイドルになりました   作:kuzunoha

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第2章 アイドル生活&大暴走編
第11話 女子中学生の日常


「桑田君の好意はとても嬉しいですけど……。今の私は仕事が恋人なので、お気持ちにお応えすることは難しいです。本当にごめんなさい」

 純真無垢な乙女の表情でこう言い放ち、とても申し訳なさそうに頭を深く下げました。

 

「……まぁ、しゃーねーよな。確かに今はカレシどころじゃねーか。なんかゴメンな!」

「本当にすいません。ずっと仲のいいお友達でいて頂けると嬉しいです。それとCDを買って頂けるともっと嬉しいです」

「おお、いいぜ。それじゃな!」

 

 桑田君は一度も振り返らずに、放課後の校舎から立ち去りました。男らしく潔い態度には好感が持てます。野球部の主将ですから、私なんかより断然素敵な女性と巡り会えるでしょう。彼の将来に幸あることを祈ります。

 その姿が消えるまで見送った後、体内OSで『清楚モード』を一気に解除します。ちなみに清楚モードは私の理想とする女の子らしい女の子を演じるためのモードです。ただ、いかんせん中身がドブ川なので最長一時間しか持たない欠陥システムです。

 

 全く、死ぬ程面倒くさいです。『アルテリオス』や『じゅうべえくえすと』(どちらも超のつくクソゲーです)のRTA(リアル・タイム・アタック)並みに面倒です。

 デビューミニライブから約1ヵ月で彼を含め七人の男子から告白されました。どいつもこいつもアイドルというだけで目の色を変えるのは本当に止めてほしいです。

 

 アイドル活動について学校には事前に許可を頂いていましたが、級友にバレると色々面倒なのでずっとひた隠しにしていました。

 しかし生徒の中に先日のデビューミニライブを見ていた者がいたようで、ライブの翌日から大変な騒ぎとなってしまいました。

 

「七星さん、アイドルになったってホント!? すごーい!」

「しかも346プロダクションでしょ? あの城ヶ崎美嘉ちゃんとか高垣楓さんがいる凄い事務所だよね。今度サイン貰ってきてよ!」

「ライブやるなら声かけてくれればいいのに。今度いつライブやんの? ウチら絶対行くから!」

「ていうかぁ~、アタシもアイドルになりたいんだけどぉ~」

 

 女子達に尋問を受けましたが、もはや「……はは」という乾いた笑いしか出ませんでしたよ。

 男子もこちらをチラチラ見てくるのは勘弁してほしいです。そっちの趣味はありませんので。

 

 心の師匠(吉良吉影)の目標でもある『激しい喜びはないが、それでいて深い絶望もない、植物の心のような平穏な人生』を目指し、常に三位を維持して目立たないよう頑張ってきたのに台無しです。

 今まではスクールカースト(学校内階級制度)の『中の中』から『中の上』あたりをコウモリのようにフラフラしていましたが、一気に『上の上』まで押し上げられてしまいました。

 

 挙句はこの告白ラッシュです。中学生でもおじいちゃんでも、男には少なからずプライドというものがあるので、それを傷つけないように振るのは中々神経を使います。

 私も元は男性ですから、勇気を振り絞って告白してきた男子を無碍(むげ)にはしたくありません。私はゲイではないのでお付き合いする気は絶無ですが、彼らが心に深い傷を負わないよう、最大限気を使ってあげたいのです。

 それに、雑な振り方をしてアンチやストーカーにでもなられたら厄介ですしね。まぁストーカーでしたら刺される前に返り討ちにしてあげますけど。

 

 また、それ以上に女子との調整が大変でした。油断していると人の男を奪ったとか根も葉もない噂を流されかねません。スクールカースト最上位にいるギャル達のご機嫌を上手く取るのには骨が折れました。自称サバサバな女性ほど粘着質なのはなぜなのでしょうかね。

 ビジネスなら損得で大体解決できるからいいですけど、彼女達は正に感情で動くので非常に予測がし難いのです。とりあえず一番の有力者とは話を付けられたので一安心でした。

 

 アスカちゃん達が通っている私立中学校は346プロダクションと提携しているので、このあたりのサポートは充実しています。ですが私が通っているのは普通の公立中学校なので、自分の身は自分で守らなければいけません。

 

 本日は2月3日です。コメットにとっては非常に大切な日なんです。

 桑田君のおかげで時間を取られましたので少し急がなければなりません。学校を出て346プロダクションに行く前に一旦家に寄りました。

 

 

 

「おねーちゃん、おかえりー」

「ただいま、朱莉」

 家に着くと朱莉が駆け寄ってきました。今日もとても可愛いです。レッサーパンダ並みの愛くるしさです。

「あ、お邪魔しています」

「お邪魔……です」

 ほたるちゃんと乃々ちゃんが既に来ていました。事前にお願いしていたとおり、朱莉が迎えてくれたようですね。流石私の妹、できる女です。姉より優れた妹はここに存在するのです。

「あら、いらっしゃい」と笑顔で返しました。

 

「荷物を冷凍庫と冷蔵庫から出しますので、ちょっと待ってて下さい」

 そう言って事前に準備していたものを手際よく取り出します。結構な量で私一人で持っていくのは難しかったため、二人に協力をお願いしたのです。

「どれを持てばいいでしょう?」

「ほたるちゃんはこちらのビニール袋をお願いします。乃々ちゃんはあの箱を運んで下さい。箱の方は中身が崩れやすいので、衝撃を与えないよう注意して下さいね」

「はい!」

「もりくぼ……、責任重大です……」

 そして重い荷物は私が持ち、電車で346プロダクションに向かいました。

 

 

 

 346プロダクションに着くと、レッスンの前にコメットのプロジェクトルームに向かいます。

 先日のデビューミニライブが成功したことで、コメットの社内待遇はある程度改善しました。

 デビューライブでアンコールをして貰えたグループは346プロダクション内でもあまりいなかったらしく、一定の評価を頂いたのです。まだまだダメプロジェクトの汚名は返上できていませんけれどね。

 そんなこんなで、念願のプロジェクトルームが与えられることになりました。

 

 プロジェクトルームといっても、殆ど使われてない資料室を与えられただけなので大したことはありません。日の光が当たらない地下一階なので、闇属性の私に対する皮肉なのでしょうか。それでも専用の個室があるというのは気分が良いものです。

 埃だらけで掃除が大変でしたが全然苦になりませんでした。コメットと犬神Pの五人で頑張ったので、今ではピカピカです。

 

 流石に家具類や電化製品を買う費用は会社から出してもらえなかったので、犬神Pの冬ボーナスを贅沢に使い、おねだん以上ナトリと新製品が安いカーズデンキで一通り揃えました。

 彼も有意義なお金の使い方ができたためか、感動の余り男泣きをしていましたよ(笑)。

 

 お仕事の方は少しづつですが頂けるようになりました。他のアイドルのバックダンサーやライブのピンチヒッター等の地味目なお仕事が中心ですが、手を抜かずしっかりやっています。

 お仕事においては信用の積み重ねが大事です。小さな仕事を満足にこなせない人に大きな仕事が来る訳はないのですから。

 

 先日はアスカちゃんと一緒に、346プロダクションの提供で放送している『マジックアワー』というラジオ番組に出させて頂きました。マジックミニッツというトークコーナーでアスカちゃんが物の見事に中二病を発症したので、あわや放送事故でしたね。

 黒歴史を持つ(元中二病の)方々には特大ダメージだったようです。ラジオのスタッフの中にも悶え苦しんだ方がいらっしゃいました。

 

 私個人としては、美嘉さんの(すす)めもありオーディション経由でモデルのお仕事をいくつか頂きました。『黙ってさえいれば深窓の令嬢なのにねぇ……』と親しい方からはよく言われますので、コンサバ(お嬢様)系ファッションモデルとして一定の需要があるようです。普段はジャージなんですけど。

 ギャル系ファッションモデルの美嘉さんとは競合しないのが良かったです。もし競合したら私には万に一つの勝ち目もありません。

 

 ファンの方も少しづつですが増えていっているようです。コメットのオフィシャルファンクラブもやっと立ち上がり、第一陣で三百人強の方々にご入会頂きました。

 これから頑張ってどんどん会員を増やしていかなければなりませんので、まずは一万人を目指して行きましょう。

 ただ、私個人のファンにはガラの悪い方が多いような気がするのですが、気のせいでしょうか。

 

 そんなことを考えながらプロジェクトルームに入り、持ってきた荷物を冷蔵庫にしまいました。常温保存で大丈夫なものや余興のための品々はアスカちゃんにばれないよう隠しておきます。

 その後、三人で普段どおりレッスンに向かいました。

 

「やぁ、おはよう」

「おはようございます、アスカちゃん」

「……今日は三人一緒なのかい?」

「はい。偶然そこで会いました」

 アスカちゃんが怪訝(けげん)な顔をしましたが、あえて気にしません。そうしていつもどおりレッスンをこなしました。

 

 

 

サンクチュアリ(聖域)で待機?」

「ええ、後で呼びますので、それまで待っていて下さい」

 今日はレッスン後ティータイムを中止とし、寮部屋で待つようアスカちゃんにお願いしました。

「全く、キミたちは何を企んでいるのかな……?」

「それは後のお楽しみということで」

「まぁ、いいさ」

 おおよその察しはついているでしょうが口には出しませんね。内心ドキドキだと思うと、とても可愛く思えます。

 

 アスカちゃんの待機中、大至急で準備を始めました。

 私は冷蔵庫から荷物を取り出して、電子レンジで暖めたり紙皿に盛り付けたりします。ほたるちゃんと乃々ちゃんはプロジェクトルームの飾り付けを行います。

 数十分後、(ようや)く準備が整いましたので寮部屋までアスカちゃんを迎えにいきました。

 ドアをノックするとアスカちゃんがすぐ出てきます。ちょっと食い気味ではないでしょうか。

「もう、いいのかい?」

「ええ。準備は終わりましたので、一緒に行きましょう」

 

 二人で手を繋いでプロジェクトルームに向かいます。アスカちゃんは気恥ずかしそうでしたが、振り払ったりはしませんでした。そうするうちに、プロジェクトルームの前に到着します。

「さぁ、ドアを開けて下さい」

「……気乗りしないな」と言いながらも、彼女はおそるおそるドアを開けました。

 

 

 

 部屋に入ったとたん、「パァン!」と軽くはじける音がプロジェクトルームに響きました。

「飛鳥さん! お誕生日、おめでとうございます!」

「……た、たんじょうび、おめでとう。……飛鳥ちゃん」

 クラッカーに仕込まれた火薬の匂いが漂います。

 

 部屋には『15歳のお誕生日おめでとう』の横断幕が飾られています。また、カラフルな紙細工により楽しさとおめでたさを小憎らしく演出しています。

 そしてテーブルの上には、私が用意した様々なごちそうが所狭しと並べられていました。中央には乃々ちゃんに運んでもらった特製の特大ホールケーキが鎮座しています。

 材料費は全額犬神Pに出させましたので(ぜい)の限りを尽くしています。キャビアなんて普段食べる機会はないですから丁度良かったですね。これも先行投資と考えれば安いでしょう。人件費を請求しないだけまだ有情です。

 

「お誕生日おめでとうございます。アスカちゃん」

 本日はアスカちゃんの十五回目の誕生日でした。コメットとして当然誕生日会をやろうと思ったのですが、なにぶん相手はこの中二病です。

 素直に誕生日会をやろうとすると拒否される恐れがあるため、サプライズパーティーという形式にしたのです。ただ、その必要はなかったようですね。

 

 アスカちゃんはちょっと固まっていましたが、すぐ正気に戻りました。

「何かな? これは」と言いながら、すまし顔を崩さないように努めています。

「アスカちゃんの誕生日記念のサプライズパーティーです!」

「誕生日……。そうか、ボクのか。ボクは覚えていないんだ。生まれた時のことなんて、覚えているモノじゃない。そんな日を祝うなんて、キミたちは何とも奇特だね」

 中二病的には、誕生日を素直に祝われるのは恥ずかしいようです。

 ですが、アスカちゃんのお部屋にあるカレンダーの2月3日欄に赤マルが付いていること、私はちゃんと知っているんですからね。

 

「まぁまぁ、いいじゃないですか。今日は素直に祝われましょう」

 そう言ってアスカちゃんを席に座らせます。

「気分を害したのなら謝るよ。キミたちに祝って貰えるのはとても嬉しいさ。だけど、過去のないボクが祝われるというのは、皮肉なものだな」

「でしたら、過去ではなくこれからの未来を祝うということで」

「もりくぼには、飛鳥ちゃんの言葉は難しいけど……。喜んでもらえると、嬉しいです……」

 

 ほたるちゃんと乃々ちゃんも中二病の取り扱いにはだいぶ慣れてきたようです。

 アスカちゃんの表情が少し崩れました。嬉しさを隠し切れないようで微笑ましいです。

「そうだね。過去よりもこれからの未来を祝おう。キミたちとボクの未来を」

「はい。アスカちゃんもコメットもまだまだこれからなんですから。今日はお腹一杯食べて、皆で幸せになりましょう」

 そう言いながら紙コップにジュースを注ぎます。

 

「あ、あの、朱鷺さん。ゲストの方は……」

 ほたるちゃんに言われて思い出しました。危うくスルーして乾杯するところでしたよ。

 咳払い一つして切り出します。

「今日はスペシャルゲストをお呼びしています。まぁ誰だかわかってるでしょうけどね。あんまり言うと私達より目立つから嫌なんですけど」と言ってゲストを招き入れました。

 

「ミスター犬神P(プロデューサー)です!」

「ははは……。皆、おはよう」

 犬神Pが苦笑いで入室して来ました。ちゃんと紹介したんですから別に文句はないでしょうに。

 アスカちゃんに近づき、柔和な笑顔を見せながら語りかけます。

「二宮君、誕生日おめでとう。君の担当Pとして本当に嬉しく思うよ、今後ともよろしくな」

「あぁ、ヨロシク。……このセカイも捨てたものじゃない、かもね」

 アスカちゃんは照れくさそうです。彼奴が来たくらいで喜ばなくてもいいと思いますけど。

 

 その後、ジュースが注がれた紙コップをそれぞれ手にします。

「それではアスカちゃんの誕生日を祝して……」

「乾杯!」と全員で言いました。

 

「では、火をつけますね」と言って、ケーキに刺された十五本のローソクにライターで火を灯していきます。乃々ちゃんに部屋の電灯をいくつか消してもらいました。薄暗い空間の中、ローソクの火がゆらゆらと室内を照らします。

「じゃあアスカちゃん。掛け声の後にフーッと吹いて下さい♪」

 満面の笑みで彼女に振りました。マジックミニッツの時の仕返しです。

「……まさかコレを、ボクにやれと?」

「お誕生日会なんですから当たり前でしょう。皆も期待していますし」

 一名を除いてニヤニヤしています。アスカちゃんは明らかに嫌そうな表情をしましたが、あえて無視しました。

 

「Happy birthday to you!」

「Happy birthday to you!」

「Happy birthday, dear アスカちゃん~!」

「Happy birthday to you!」

「フッ。フーッ」

 皆でお誕生日の定番ソングを歌うと、アスカちゃんはローソクの灯りよりも赤い顔をして火を消していきました。ああ、可愛いなぁ。

 

 そして和やかに懇談(こんだん)が始まりました。手料理の方は前日夜から明け方迄かけて仕込みましたが、喜んで食べて貰えているようで何よりです。私には、その笑顔だけでもう十分でした。これ以上はもうわがままになります。

 友情と家族愛は見返りを求めないのです。既にコメットは私の第二の家族だと言えました。

 家族が増えたよ!! やったねときちゃん!  

 あ、一応犬神Pもペット(番犬)枠で入れてあげています。最近は何だか鬼気迫る感じで営業にまい進していて、雰囲気がやや暗いので少しだけ心配です。

 

 

 

 一旦外に出て、お花を摘んでからプロジェクトルームに戻ろうとしたところ、動物っぽいパーカーを着た小さな女の子が物陰から部屋の方をじ~っと見つめていました。

「仁奈ちゃん、おはようございます」

「あ、朱鷺おねーさん。おはようごぜーます!」

 そう言ってぺこりと頭を下げてきました。

 

 自称キグルミアイドルの市原仁奈(いちはらにな)ちゃんは9歳で346プロダクション最年少のアイドルです。ただ、社歴と芸歴は私より長いので小さな先輩さんです。

 彼女を見ていると、前世の幼少期頃の私を見ているような感覚に陥るので不思議なんですよね。

 なぜか放っておけないのです。

 

「どうしましたか?」

「何だかあの部屋から楽しそうな声が聞こえるので、気になったんでごぜーます」

「ああ、今日はアスカちゃんの誕生日なので、誕生日会をやっていたんですよ」

「そうなんですか! それはおめでてーですね。コメットのお姉ちゃん達はとっても仲が良くて、うらやましーですよ」

 

 仁奈ちゃんもアスカちゃんの誕生日を祝ってくれました。ちょっといいことを思いついたので、彼女に問いかけます。

「仁奈ちゃんはこれからご予定はあるんですか?」

「特にないでごぜーます。ママが迎えに来るまでヒマしてるです」

「じゃあ、アスカちゃんの誕生日会に来てもらえませんか?」

 仁奈ちゃんは何だかとてもびっくりした感じでした。

 

「仁奈はコメットじゃないですけど、いいんでごぜーますか?」

「はい! 祝ってくれる人が多ければアスカちゃんも喜ぶでしょうし」

「じゃ、じゃあ、喜んで参加するですよ!」

 可愛い笑顔で承諾してくれました。犬神Pがコメットの他に担当しているアイドルの『依田芳乃(よりたよしの)さん』『村上巴(むらかみともえ)さん』『三好紗南(みよしさな)さん』『池袋晶葉(いけぶくろあきは)さん』『楊菲菲(ヤオ フェイフェイ)さん』『ライラさん』も後でサプライズゲストとして誕生日会に参加頂く予定なので、一人増えても問題ないでしょう。

 

 しかし、あの御犬様はアイドルを見る目だけは本当に確かなんですよね。全員彼がスカウトしたそうですが、いずれもコメットの三人に負けないくらい個性があり魅力的な子達です。私のように個性の薄いアイドルは逆に浮くので困ります。

 犬神Pが年上好きで本当に良かったですよ。もしロリコンで担当アイドルに手を出していたら、去勢も辞さない構えでしたから。

 

 

 

 その後は他のアイドルも合流し寮の門限までドンチャン騒ぎでした。ゲーム(桃鉄とボンバーマン)大会も盛り上がりましたね。ただ、騒がしすぎて途中で千川さんに怒られてしまいました。

 心臓が凍りつくくらい恐ろしかったので、もう二度と彼女を怒らせないようにしましょう。

 

 正直なところ『トキ(北斗の拳)と同じ程度の能力』を持ってしても千川さんに勝てるかどうか怪しいと感じるのです。

 なんかこう、経済的に破滅させられそうな恐怖感が拭えません。とても親切で優しい方なのに、なぜかこの能力が強烈な警告を発しているのです。

 それでも消費者庁なら……、消費者庁ならきっと何とかしてくれる……! ような気がします。

 

 これが私とコメットの日常です。結成から早三ヵ月ですが、結束力は他の追随を許しません。『負ける気せぇへんコメットやし』といった気分です。

 ただ、他の面では課題が山積みです。その中でも一番の課題は知名度でしょう。

 デビューミニライブは成功でしたが、他のアイドル達と比べてメディアへの露出が圧倒的に不足しています。コメットが成功するには、まず世間様に私達のことを知って頂く必要があります。

 

 そうはいっても、短期間で急に知名度を高めることは難しいです。

 裏技を使えば出来なくはないですが、『過程』を飛ばして良い『結果』だけ手に入れようとするのは私の主義には反しますし、たいていロクなことにならないので止めておきます。

 例え歩みは遅くても一歩一歩地道に実績を積み重ねていって、いつの日か人気アイドルグループになりましょう。

 

 

 

 コメットにとっての死兆星(死を告げる星)ともいえる『あのプロジェクト』が水面下で絶賛進行中であることを知らなかった当時の私は、そんなふうにのんきに考えていました。

 

 




歌詞が載っているので心配される方がいるかもしれませんが、「Happy birthday to you」の歌は国内における著作権が切れており、ハーメルン様の禁止事項には該当しないことを確認済です。

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