ブラック企業社員がアイドルになりました 作:kuzunoha
結論だけ、述べます。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。
私は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した私は失敗した失敗──
今は、西暦201X年の、3月某日です。
時刻は午前10時を迎えていました。
早春のうららかな陽気の中、児童公園のベンチで一人
コメットを解散させたくないという一心から『トキ(北斗の拳)と同じ程度の能力』を全力開放して大暴走した結果、確かに解散を阻止することは出来ました。
但しそれは白報堂の専務さんのお力によるものであり、私の努力とは関係が無かったのです。
そしてふと冷静になって振りかえると、私の立ち位置はとんでもないものになっていました。
人類を超越した北斗神拳の使い手であり、最も有名なRTA走者。関東一円を支配する暴走族の元締めをしつつ、闇ストリートファイトの女帝として君臨する現役JCアイドル。
そして国からは最重要危険人物としてブラックリスト登録済み。
あ~もうめちゃくちゃですよ……。
やはりルート選択を誤っていました。コメットの皆や今西部長、ついでに犬神P(プロデューサー)と連携して解散阻止に当たるべきだったのです。
孤独な勇者を気取っていた只の大馬鹿野郎でした。たった一人でラスボスを倒せるのはドラクエ1までだというのにね。
アスカちゃん、ほたるちゃん、乃々ちゃんを傷つけまいとして取った行動が逆に彼女達を傷つけることになってしまいました。本当にお
優しい子達なので暖かく迎え入れてくれましたが、もう一生頭が上がらないです。
「こんにちは!」
ひとしきり落ち込んでいると、公園内で遊んでいた女児から話し掛けられました。
パーカー姿で野球帽とサングラスを装着してるのでアイドルとは気付かれていないはずですが、何用でしょうか。
「はい、こんにちは……」
丁寧に返しました。目がくりっとした可愛い子です。美幼女は
「おねぇちゃんは、どうしてひるまからこんなところにいるの?」
「ばわ!!」
鋭利な言葉のナイフで私の心をブッ貫いてきました。可愛い顔をしてエグいことをしてきます。慈悲は無いのですか。
「学校から来なくていいって、言われちゃったからだよ……」
「どうしてこなくていいっていわれちゃったの?」
幼女がナイフをグリグリ押し込み致命的な致命傷を与えてきます。もうやめて下さい、私のライフはゼロどころかとっくにマイナスです。
「思い込みで大暴走したの。お嬢ちゃんも若いからって、後先考えず行動しちゃだめだよ」
大暴走の悪影響は風評被害に留まりません。
一応仮面を被ってウイッグを装着していたのですけど、『あんな動きが出来るのはお前しかいないだろ!』ということで参戦容疑を掛けられました。
状況証拠だけなのでシラを切り通しましたが、深夜
こんなJCアイドルは中々いないでしょう。いてたまりますか。
でもそのまま春休み突入で級友と顔を合わせずに済んでよかったです。学校に関しては対策を取りましたから問題はないですけどね。
当然家族にも酷く怒られましたが、出席停止については殆ど言及されませんでした。
家族や周囲を頼らず一人で突っ走ったことや、自分を大切にせず無理を重ねたことに関して非常に厳しく説教されたのです。
全面的にあちらが正しいので
「ふ~ん。そうなんだ、たいへんだね!」
「ちょっと真希! こっち来なさい!」
「あっ! おねえちゃん、ばいば~い~!」
必死な形相のお母さんに抱えられながら、幼女が手を振りました。
この格好はどう見ても不審者スタイルなので仕方ありません。
無気力状態なので家で寝ているのが一番楽ですが、誰もいないと何だか寂しいんですよね。平日ですから両親は七星医院で仕事をしていますし、朱莉は学校です。アイドルになるまでこんな気持ちになることは無かったんですが、なぜでしょうか。
ここにいると通報されそうなので、重い体を引きずりながら路上に移動しタクシーで346プロダクションに向かいました。
コメットのプロジェクトルームに設置されたソファーに横になり、ぐで~っとします。
今までの努力が無駄であったことを突きつけられたショックで、『お仕事モード』のブレーカーがオフに切り替わりました。そして代わりにあの裏モードのスイッチが入ってしまったのです。
そのモード名は『ニート・
NT-Dはお仕事を頑張りすぎて完全に燃え尽きた時にのみ発動するモードで、前世では一度だけなったことがありました。
普段もニートっぽくなることはあるのですが、このモードに入ってしまうと24時間常時ニート状態になってしまうのです。前回は貯金が消えて食料がなくなるまで解除されませんでした。
燃え尽き症候群超全開フルスロットルエクストリームバーサスマキシブースト改二といった感じです。何もやる気がおきません。生きる意味を失う。
「朱鷺さん、いますか? って、ちょっと、何してるんですか!」
「……おはようごぜーます」
ほたるちゃんが入室されたので、何とか返事をしました。
「早く服を着てください!」
何か凄く焦っています。ああ、私が下着姿だからですか。ちょっと厚着で暑かったので上下共に服を脱いでおり、ブラにパンイチの状態でソファーに横になっています。
エアコンのリモコンを捜すのが面倒だったのでこうなりました。
「別に気にしませんよ」
見られようが見られまいがどうでもいいです。まぁ、見たくない人が大多数でしょうけど。
「私が気にしますから!」
珍しく大声です。ほたるちゃんの頼みであれば仕方ありません、着るとしますか。
はああ~。息をするのも面倒で嫌です。チョコ蒸しパンになりたい。
服を着ている間に乃々ちゃんもやってきました。私を見てびっくりしていたのでちょっと面白かったですね。アスカちゃんは個別のお仕事があるので今日はこの三人でした。
暴走したりニート状態になったり、皆には迷惑を掛けてしまって非常に申し訳ないです。
本当なら死んでお詫びしたいですが、『自分の命を粗末にすること』は皆から禁じられてしまいました。なので、生涯を掛けてこの罪を償っていくつもりです。ゲームとは違い、人生は大失敗しても続いてしまいますから。
二人に介護されながらティータイムを楽しんでいると、ノックの後で犬神Pが部屋に入ってきました。
「皆、ちょっといいかな」
「はい、なんでしょうか?」
ほたるちゃんが笑顔で答えます。犬畜生にそんな丁寧に接さなくてもいいんですが、本当に律儀な子ですよ。
「今日、シンデレラプロジェクトの内定者が施設見学に来ているんだ。その子達を紹介したいから、30階のプロジェクトルームまで来てもらいたいんだけど」
「は、はい、わかりました」と乃々ちゃんが緊張した様子で返事をします。
「めんどくさい……」
空気を読まずにそんな言葉を呟きました。エレベーターがあるとはいえ、地下1階から30階まで上がるなんてめんどくさすぎて死にます。スペランカー先生並みに即死します。
「い、いや、この間今西部長も仰ってたじゃないか。コメットのミッションの中には、シンデレラプロジェクトのサポートも入っているんだ。だから、メンバーとは顔合わせしておかないと」
ああ、そういえばそんなことを言っていたような気がしますね。
元々コメットはシンデレラプロジェクトの先行試験として企画されたプロジェクトです。その目的はシンデレラプロジェクトに先駆けて色々な仕事を行い、その結果をフィードバックさせるというものでした。
そしてもう一つ大事なお仕事があったのです。それがシンデレラプロジェクトのサポートです。
一足先にデビューした先輩として、後輩にあたるシンデレラプロジェクトのメンバーの相談にのってあげるなど、主に精神面でバックアップをして欲しいとの要望でした。これがコメット存続の条件でもあります。
私達もまだ未熟ではありますが、後輩の皆さんのお役に立てるのならやぶさかではありません。
でも歩くのはダルいです。ああ、良いことを思いつきました。
「わかりましたよ。じゃあ、おぶって下さい」
「は?」
犬神Pが困惑します。
「歩くのが超絶面倒なんです。だから、おんぶして連れて行って欲しいです」
これなら歩かなくていいから楽ちんちんです。
「……頭、大丈夫か?」
「断ったら『四つん
「わかった、任せてくれ!」
快く引き受けてもらいました。流石我らのPです。
この新秘孔は何か犬っぽくない彼の為に発見したオーダーメイドなんですが、今はダルいので別の機会に使いましょう。
そして犬神Pの背に体を預けます。おお、おんぶされるなんて子供の頃以来なので新鮮ですよ。
そのまま30階に向かいますが、犬神Pの耳がちょっと赤くなっています。面白いので不必要な程ベッタリとくっつきました。
「ちょっ……。ア、アレがあたってるんだけど……」
「あててるんですよ。何意識してるんですか、このエロスめ」
彼にしか聞こえない音量でそっと
「ぐぅ……!」
明らかに動揺しています。ククク……元男として気持ちは分かりますが、これくらいのハニートラップで心が乱れるなんてアイドルのPとしてはまだまだですねぇ。彼の心の師匠である武内Pなら、きっと紳士的に対応しますよ。
「どうかしましたか?」
「な、何でもないよ、何でも!」
「そうです。何もありませんよ。ねぇ?」
「こいつ……!」
シンデレラプロジェクトのプロジェクトルームに着くまで、ワンちゃんと楽しく散歩します。
エレベーターで30階まで来ました。
『Cindellera Project Room』という表示に従って進んでいくと部屋の前に着きましたので、犬神Pの背から降ります。3回ノックをした後、ドアを開けて部屋に入りました。
「うわっ」
恐らく10人中9人がその筋の人だと思うでしょう。『龍が如く』に出てきても全く違和感がありません。むしろ世界観的にそちらの方が合っているような気さえします。
「おはようございます! 武内先輩!」
「はい、おはようございます。犬神くん」
犬神Pと目の前の男性が挨拶を交わしました。
この方こそ会社の希望の星であるシンデレラプロジェクトのPであり、犬神Pの憧れの存在でもある武内Pです。
「すいません。驚かせてしまいましたか」
「い、いいえ。目の前にいらっしゃったものですから、つい」
ほとんど変わることのない無表情のまま、貫禄すら感じさせるような重低音ボイスで謝罪頂きました。丁寧な言葉遣いと
でもこのギャップにキュンと来る女子は多そうです。私も前世の記憶がなければ
有能で将来の幹部候補筆頭と噂される程ですからね。ウチのPとトレードして欲しいです。
「わざわざ申し訳ありません。本来ならば我々の方が
「いいえ、気にしないで下さい。コメットはシンデレラプロジェクトのサポート役でもありますから、これくらい当然です!」
あらあら、随分調子のいいことを言ってくれますねぇ。これは後で教育やろなあ。
「内定者は何名来ているんですか?」
「本日は三名です。他の方は転居等の手続きの途中ですので、また改めて紹介をさせて頂きます」
「わかりました。では双方自己紹介ということで」
シンデレラプロジェクトの正規メンバーに選ばれるくらいですから、皆さん才能豊かな美少女ばかりなのでしょう。NT-Dであっても、どんなメンバーかは気になりました。
「どうぞ、こちらへ」
武内Pに案内されるまま部屋の奥へ進みました。こちらのプロジェクトルームは何か凄いです。
室内のデザインはセンスがありますし、何より眺めが良いです。あの地下室とは比較になりません。あそこは油断すると直ぐにクモの巣が張りますし。
別の部屋に移動する案もあったのですが、今となっては愛着があるので止めておきました。移動したところで、何かのトラブルでまたあそこに叩き落されそうな気がしますから。
奥に進むと、二人の美少女が緊張した面持ちで立っていました。
あれっ? 確か三名いると言ってたはずですが、私の聞き間違いでしょうか。
「緒方さん、三村さん。こちらがシンデレラプロジェクトに先立ってデビューしたコメットの皆さんです。あいにく二宮さんは不在ですが、そちらは改めてご紹介する機会を設けますので、簡単に自己紹介をお願いします」
武内Pに促されて、美少女のうち比較的細い方が自己紹介を始めました。
「緒方、
何だか乃々ちゃんの最初の自己紹介を思い出させるような挨拶でした。小動物系でおどおどしています。見た目幼い感じなので年下でしょうか。
「こちらこそ、よろしくお願いします。緒方さんは16歳なので、皆からしたらお姉さんだね。趣味は四葉のクローバー集めだそうだ」
見かねた犬神Pがフォローしました。16歳でありながら、天使のような可憐さを持ち合わせているとは驚きです。
「クローバーなら、私も好きですよ」
「えっ、そうなんですか?」
話を広げると少し表情が柔らかくなりました。やはりメンバーに選ばれるだけあり、笑顔がとても素敵です。
「生でもまあまあいけますし、辛し和えや胡麻和え、油炒めにすると結構美味しいですから」
「えっ。た、食べるん、ですか……?」
「食料がない時限定ですけどね。それが何か?」
「い、いえ。何でも、ありません……」
緒方さんの表情が一気に曇りました。心の距離が急速に広がったような気がします。
初対面からバッドコミュニケーションとは、先が思いやられます。
何だか気まずい雰囲気になったので、比較的ふくよかな方の紹介に移りました。
「
もちもちしたプロポーションをお持ちの美少女で、ついつい触ってみたい衝動に駆られます。
もし346プロダクションのアイドル達で野球チームを結成することになったら、4番でキャッチャーをお願いしたいです。深い意味はありませんよ。
「三村さんはお菓子作りが趣味なんだよね?」
「はい! 作るのも食べるのも両方大好きです!!」
ああ、道理で。魅力的なプロポーションの
「七星さんもお菓子作りが趣味だから、仲良くできるんじゃないかな」
「そうなんですか? じゃあ今度一緒にお菓子作り、しましょうね!」
「はい。三村さんの作ったお菓子を食べてみたいです」
NT-Dの今となっては、お菓子作りなんて面倒なことは死んでもやりたくありません。食べ専に転向しましょう。
お二人の紹介の後は私達の自己紹介です。
ほたるちゃんと乃々ちゃんの挨拶はコメット発足当初と比べると随分しっかりしていました。二人の成長を目の当たりにして、お姉ちゃん(自称)としては感慨深いものがあります。
そして最後は私の番です。
「七星朱鷺です。よろしくお願いしま~す……」
棒読みでぼそっと
「テレビで見た印象と、だいぶ、違います」
「う、うん。バラエティ番組で暴れ回ってたから、もっとパワフルで
黒歴史が胸に深く突き刺さります。もうゴールしてもいいですかね。
「あ、うん。これには事情があって……」
犬神Pがこれまでの経緯をかいつまんで説明しました。
コメットの解散危機やそれを防ぐための私の大暴走、そして無力を悟ったことによるNT-Dの発動についてです。
「その件については、本当に申し訳ありません。シンデレラプロジェクトの為に大変な負担をお掛けしてしまいました」
「その……すいません」
「ごめんなさい、私達のせいで」
申し訳なさそうな表情の武内Pや緒方さん達から謝罪頂きましたが、彼らに非はありません。全て統括重役が悪いんです。早く
いや、更迭されたらされたで更に厄介な方が来そうなので、このままでいいです。
「先ほど内定者は三名とのお話でしたが、残りの一人はどちらに?」
犬神Pが武内Pに問いかけます。確かに私も気になっていました。
「双葉さんは、あちらに」
武内Pが表情を変えず呟き、ソファーの方に視線を移します。しかし誰の姿もありません。
皆でそちらに近づくと、うさぎのぬいぐるみを手にした超小柄な少女がソファーの死角で仰向けに寝ていました。
着ている白いシャツには、『働いたら負け』というニート界の偉人のセリフが刻まれています。
「体調が、悪いんですか?」
乃々ちゃんが心配そうな顔で
「違うよ」
美少女がゆっくり寝返りをうちこちらを向きました。そして私達の方を見て呟きます。
「
目と目が合う瞬間気付きました。
まさか! 『
そのままよろよろと杏さんの側に近づくと、二人で固い握手を交わしました。
彼女もどうやら察したようです。
「ん~? 朱鷺もこっち座りなよ~。ほらほら~」
「……では、失礼します」と言ってソファーに座りました。
「何か大変だったらしいじゃん。大丈夫? 無理しないで休もうよ」
「そうですね。危うくネロやパトラッシュと一緒に連れて行かれるところでした」
心が清い彼らと違って、連れて行かれる先はあの地獄でしょうけど。
杏さんがうんうんと頷きました。
「わかるわかる。日本人って働き過ぎだと思わない?」
「そう思いますよ。会社が働かせ過ぎなので、もっと休みを増やすべきです。週休7日を強く希望します」
「なら杏は週休8日を希望しまーす」
ああ、いいですね、それ。
「あはははは……」
二人で一緒に笑います。一瞬で意気投合しました。ズッ友ならぬニー友が出来て良かったです。
「駄目だこいつら……。早くなんとかしないと……」
犬神Pが深刻な表情で独り言を呟きました。武内Pは終始真顔で無言です。
ポーカーフェイスで何を考えているのかわかりませんが、あの小物のように簡単にうろたえないところは流石です。
結局その日は二人でぐで~っとして終わりました。
杏さん達は翌日も挨拶回りで346プロダクションに来ていましたので、時間を見計らってシンデレラプロジェクトのルームに伺います。今日のタクシー役は拓海さんにお願いしました。
あの三人がいらっしゃったので、私と杏さんは二人してソファーに横になり全力でだらけます。もう我々はソウルメイトです。
「夢の不労所得ぅ~」
「不労所得といえば地代。青山に土地があれば……」
そんなうわ言を呟きます。とても世間様にはお見せできない
「えっと、どうしよう。かな子ちゃん」
「う、うん。智絵里ちゃん。どうしたらいいのかな?」
二人が困惑していると犬神Pがやってきました。
「何のご用ですか」
私の目の前に来たのでやむなく話しかけます。
「や、やあ。七星さんの休養明けの初仕事なんだけど、とある番組からオファーが来ているんだ。それに出てみないかと思ってね」
「やです」
即答してプイッと横を向きました。
「いやいや、せめて内容だけでも聞こうよ」
わざわざ私を指名するくらいですから体力系のバラエティ番組に違いありません。
コメット存続が決まった今となっては出演する必要がありませんし、これ以上世紀末系アイドルのイメージを世間様に与えたくないのです。
それに今はお仕事モードがオフでNT-Dが発動中ですから気力が涌きません。こんな状態では満足なパフォーマンスはできないと判断しました。
嘘です。本当はただ働きたくないだけです。
「七星さんは『日本温泉紀行』って番組は知っているかな? 二人の出演者が日本各地の風景や郷土料理、そして温泉を楽しむ旅番組で、結構人気が高いんだ。
俺も君にはリフレッシュしてもらいたいから、温泉なんていいかなと思ってね。それにもう一人の出演者は癒し系の高垣楓さんだから、きっとリラックスできるんじゃないかなぁ」
へぇ。温泉ですか。温泉ねぇ。
ん? 温泉!? あの楓さんと!?
「やります! やらせて下さい!」
NT-Dの解除と同時にお仕事モードのスイッチがオンになりました。
オジサンは温泉と美女には目がないのです。
「少しでもやる気になってくれてほっとしたよ……。コメット四人揃っての仕事もいくつか交渉中なんだ。とりあえず4月上旬に中規模のライブハウスで臨時ライブをすることに決まったからね。急だけどコメットのリスタートとして良い機会だから、また皆で一緒に頑張ろう!」
おお、切望していたグループの仕事も準備しているのですか! しかも待望のライブですよ! 彼も知らず知らずのうちに成長しているようで喜ばしいです。
「そちらもお願いしますね!」
元気良く返事をしました。いやぁ、こんなさわやかな気分は久しぶりです。
「裏切り者ぉ~」
背後から恨めしい声が聞こえてきますが気にしません。この
私は
まずは温泉ロケですか。今から楽しみです!