ブラック企業社員がアイドルになりました   作:kuzunoha

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第3章 シンデレラプロジェクト&学園編
第26話 炎の転校生


「みんなー! 私達の名を言ってみて!!」

「コメットォォォォォォォォォォ!」

 ライブハウスがファンの声援で埋め尽くされます。ですがまだ足りません!

「ん? 聞こえないよ~! もう一度だけチャンスをあげる! 私達の名を言ってみて!!」

「コメットオオオオォォォォォォォォォォ!」

「もう一度!」

「コオオォォォォメットオオオオォォォォォォォォ!」

 辺りが揺れ傾くような地響きが立ちました。盛り上がりは最高潮です!

「みんなー! ありがと-! じゃあ、新曲いくよ~! 『RE:ST@RT』!」

「オオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ!」

 

 

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 楽屋に戻り一息つきます。

 会場の熱気に当てられて少し汗ばんだので、備品の扇風機を『強』にして回しました。皆の綺麗な髪が風になびきます。

「お、お疲れ様です。1日で二ステージは、結構(こた)えますね……。最後は足がもつれそうでした」

「ハァ、ハァ……。ボクらは、振り子さ……。音楽の都合で、左右に揺れ動く……。だけど聴衆が満足してくれるなら、ボクはそれで構わない……」

 

 1日二回のライブは初めてなので、ダンス慣れしているほたるちゃんとアスカちゃんでも辛そうでした。

 アイドルのライブなんて頭空っぽでチャラチャラ歌っているだけと思われがちですが、ガテン系も真っ青な体力仕事なんですよ。しかも常に笑顔をキープしなければいけないから大変です。

 私には『トキ(北斗の拳)と同じ程度の能力』がありますからいいですけど、彼女達はそうはいきません。

 

 今後本格的にライブをするとこういうことも良くあるので、今回の臨時ライブのような中規模な舞台であえて体力的な辛さを体験させようという犬神P(プロデューサー)のはからいでした。

 確かに今のうちに経験しておいて良かったです。犬の肉球の上で踊らされているようでちょっとムカつきますけど。

 最近の犬神Pは私達の意見を良く聞いて色々と配慮しており、以前とは見違えるようです。彼も解散騒動を機に大きく成長しているのでしょう。その点については素直に評価します。

 

「はい、どうぞ」

 冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトルを取り出して皆に配りました。

「ありがとうございます……」

「ああ、礼を言うよ……」

「これも貴重な経験です。やはり基礎体力は重要ですから、トレーナー姉妹さんに体力作りのトレーニングメニューを相談してみましょう。あれ、乃々ちゃん? 乃々ちゃーん!?」

「…………」

 

 へんじがない、ただのしかばねのようだ。

 確認すると一応呼吸はしていたので、椅子からゆっくり持ち上げてソファーに寝かしつけます。

 極度に疲労しているだけで熱中症ではなさそうですが、念のため衣装を緩めて扇風機の風を集中的に当てておきました。いざとなったら疲労回復の秘孔を突きましょう。

 

 暫し休憩すると、三人とも元気が戻ってきました。

「フフッ。数瞬前のトキの幻想は筆舌に尽くし難かったな。この地が裂けるかのようだったよ」

「本当に、そうですね。あんなパフォーマンス、どうやって考えたんですか?」

「あはは……。まぁ、乙女には色々とあるんです」

 

 ライブ中の掛け声について研究した結果、ジャギの名セリフ『俺の名を言ってみろ』のアレンジに行き着いたのですが、あそこまで大ウケするとは思いませんでした。よし、今度からライブの定番パフォーマンスにしましょう。

 ファンの皆様に喜んで頂くことが何よりも大切です。安くないチケット代を払って頂いている以上、お金をドブに捨てたと思われないように全力を発揮しなければいけません。

 全てはファンの為です。ファンがいなければアイドルは存在できないのですから。

 

 

 

 興奮さめやらないまま四人で和気藹々(わきあいあい)とお喋りをしていると、ノックの音が聞こえました。

 ライブハウスのスタッフさんでしょうか。まだ使用時間は残っているはずですけど。

「どうぞ、開いていますよ」とほたるちゃんが声を掛けます。

 するとドアが開くと同時に、二つの小さな影が飛び込んできました。

 

「わぁーっ! コメットのお姉ちゃん達だー! すごーい! かっこいい!」

「やっほー☆ コメットのみんなー! 初めましてだね☆」

 とてもテンションが高い女の子達でした。ファンの子が紛れ込んでしまったのでしょうか。

「ちょっと、みりあちゃん、莉嘉ちゃん! いきなり入ったら失礼だって!」

 ワンテンポ遅れて別の少女が入ってきます。前の二人よりは年上な感じで、耳にかけたヘッドホンが特徴的な美少女でした。

 

「あの、どちら様でしょうか?」

「ええと、私達、シンデレラプロジェクトのメンバーです。ほら、346プロダクションの……」

 ああ、確か最近所属した子逹が挨拶がてら見学に来ると、先日武内Pが(おっしゃ)っていましたっけ。ライブに集中するあまり忘れていました。

「いらっしゃることは事前に伺っていますよ。どうぞ中に入って下さい。そうだ、せっかくですからお互いに自己紹介をしませんか?」

「はーい!」

 黒髪の女の子が笑顔で手を挙げます。

 

 パイプ椅子を引っ張り出し、四対三でお互いに向かい合って座りました。まずはシンデレラプロジェクトの子達からです。

「じゃあ、改めて自己紹介します。私は多田李衣菜(ただりいな)。えっと、17歳で、ロックなアイドル目指してます!  よろしく!」

 ヘッドホンを着けたショートカットの女の子が慣れない感じでお辞儀をしました。流石シンデレラプロジェクトです。本格的なアーティスト系のアイドルまで網羅しているのですか。

 

「よろしくお願いします。実は私も趣味でギターをやっているんですよ。多田さんはどんな種類のロックが好きなんですか? 私はハードロックやオルタナティブが好きなのでよく弾いてるんですけど」

「へ? わ、私もそんな感じ、かな?」

「……そうですか。今度ゆっくり音楽についてお話しましょうね」

「う、うん……」

 なぜ自分の好きなジャンルが疑問形なのでしょうか。何となく違和感を覚えましたが、他の方の自己紹介もあるので流しました。

 

 次は先程手を挙げてくれたツーサイドアップの美少女です。

赤城(あかぎ)みりあだよ! アイドルってカワイイ服着られて、カワイイ歌とかダンス、やらせてもらえるんだよね? わーいっ! 早くデビューして、楽しいこと見つけたいな!」

 子供らしく元気で快活な子です。闇属性の私とは真逆ですね。あまりの差にちょっと落ち込んでしまいました。

 

「あっ、朱鷺ちゃんだよね! この間の『逃亡中なう』見たよ! とってもかっこよかった!」

「ありがとうございます。でも引きませんでしたか? あんな無茶苦茶な動きで……」

「何で? だってずっと座ってお茶飲んでただけなのに、ハンターさんのタッチを全てかわしてたんだよ! 最後は全員疲れて倒れちゃったし! あんなこと誰にもできないもん、凄いよ!」

「そ、そう?」

「うん! 朱鷺ちゃんはとってもかわいいし、かっこいいから大好き!」

 こんなことを家族以外から言われたのは、生まれて初めてでした……。

 

「ほたるちゃん、この子凄く良い子ですよ! ウチに持って帰りましょう!」

 立ち上がってみりあちゃんを捕獲しようとします。

「ちょっと、落ち着いて下さい、朱鷺さん!」

「誘拐はハンザイだから、だーめぇー……」

「はっ! 私は今何を……」

 一瞬我を忘れましたが、二人の説得で正気に戻りました。みりあちゃんは事態が良く分かっていないようで首を(かし)げます。

 難攻不落のこの私を一瞬で落とすとは……。将来が末恐ろしいです。

 

 自己紹介の最後は金髪のコギャル(死語)でした。この子だけ、どこかで見たことがあるんですけどねぇ。

「みんな、やっほー☆ 伝説のカリスマJCギャル……になる予定の城ヶ崎莉嘉(じょうがさきりか)だよ! お姉ちゃんがアイドルやってて、憧れてるんだよねー! 絶対にちょー人気のアイドルになるから、よろしくねっ☆」

 ん? 苗字が城ヶ崎で、お姉さんがアイドル……。あっ思い出した!

 

「もしかして、そのお姉さんって城ヶ崎美嘉さんですか?」

「あったりー☆ みんな、お姉ちゃんのこと知ってるの?」

「ああ。美嘉さんには前々からお世話になっているからね。でもその妹までアイドルとは、流石のボクも驚いたよ」

「へへーん! でもシンデレラプロジェクトのメンバーになったのはアタシの実力だからね☆ まだお姉ちゃんほどカッコカワイくはないかもしれないけど、いつか追いついてみせるんだっ!」

 雰囲気は違いますが、快活な感じは姉妹共通ですね。耳がお姉さんに似ています。

 

 

 

 その後、コメットの方も自己紹介をしました。

 ライブハウスの使用時間が過ぎようとしていたので、撤収作業後に外へ出ます。そして近くにあったバトルロイヤルホストに入りました。

 お茶をしながら皆で賑やかに雑談をします。話題はやはり先ほどのライブについてでした。

 

「アイドルのライブってはじめてだけど、なんかすごいね! こう、どかーんって感じ!」

 みりあちゃんが両手を広げて衝撃を表現します。

「今回は最大容量が六百人の中規模なライブハウスですけど、美嘉さんが出るような大型のライブ会場だともっと凄いですよ」

「いーなー、お姉ちゃんだけ。でも、アタシも早くライブやりたーい! それで早くトップアイドルになるんだ☆」

 莉嘉ちゃんはとても可愛いですから、きっと直ぐに人気アイドルになるでしょう。

 

「ちょっと、質問いい?」

「なんですか? 多田さん」

「年上だけど同じアイドル同士だから下の名前でいいよ。でさ、今日のライブだけど、全席立ち見だったよね」

「はい、それが何か?」

「いや、左側の前列にさ、モヒカンでマッチョな超怖い男の人達が集まってたじゃん。あれって何なのかなって思って」

「妖精さんです」

 迷うことなく断言しました。

 

「いやいや、明らかに人だったよ! 皆目が血走ってたし、朱鷺ちゃんが歌ってる時に謎のコールしてたし」

「ですからライブ会場の妖精さんなんです。現実世界には存在しません。そうに決まっています」

「……うん、わかった」

「ライブ会場って妖精さんが出るんだー! すごーい!」

 

 李衣菜さんが素直に引いてくれたので良かったです。空気が読める子は好きですよ。

 あれだけモヒカンはNGだと言ったのに、なぜ一部の鎖斬黒朱(サザンクロス)メンバーはモヒカンにしているのでしょうか。私は芸人ではありませんからフリじゃないって何度も何度も繰り返したのに!

 ああ、嫌がらせですね、わかります。

 

 鎖斬黒朱は用済みなので解散したいんですが、規模が大きすぎて出来なくなっていました。

 NT-D(ニート状態)以降は運営を虎ちゃんに一任していましたが、元『拳火上等(けんかじょうとう)』の方々と意気投合して全盛期の勢いを取り戻し、私の知らない間に全国制覇に乗り出していやがったのです。

 仕事と上手く両立させているところがちょっと腹立ちます。これが流行のワークライフバランスと言うやつですか。小癪な小僧ですこと。

 

 私が気付いた時には、既に東北と近畿地方を制圧済みでした。当然その地域の暴走族も吸収しており、全員コメットのファンクラブ会員になっています。

 規模的には既に暴走族からマフィアのファミリーレベルにランクアップしていました。

 侵攻を止めるよう命令したので現在は落ち着いていますが、裏でコソコソ動いているので残りの地域も時間の問題でしょう。私の為だと思っているから余計タチが悪いです。

 

 今は私という絶対的な支配者と、新選組並みの厳しい戒律によってきっちり制御できています。それを急に解散させてしまうと、ラオウが失踪した時の拳王軍のようにメンバーが暴徒と化して世間様にご迷惑をお掛けしてしまいますから、彼らが全員更生するまでは見守らねばなりません。

 それに最近では、彼らが更生した姿を見るのが楽しみになってしまいました。

 

「そ、そういえば、シンデレラプロジェクトはいつから始動するんですか?」

 ほたるちゃんは妖精さんの正体を知っているので、気を使って話題を変えてくれました。その優しさが五臓六腑(ごぞうろっぷ)に染み渡ります。私は本当に良い仲間を持ちました。

「アタシ達もわかんないよ~。Pくんに訊いても『検討中です』としか言ってくれないし~!」

「何でも欠員が三名出たから、その補充をしているんだって。補欠の子と追加オーディションに受かった子で二名は決まったみたいだけど、最後の子はまだみたい」

「みりあも、早く今日みたいにライブやりたいな~!」

 

 ただ待たされるのも結構辛いものがありますが、流石に私達ではサポートできない領域です。

「大丈夫ですよ。あの優秀な武内Pですから、凄い逸材を見つけ出してくるに違いありません」

「まぁ、考えても仕方ないね。とりあえず今はレッスンをして、実力をつけるしかないかな。明日から頑張ろう。みりあちゃん、莉嘉ちゃん!」

「は~い!」

「レッスン、お仕事、なんでもこーい! 怖いものナシだぞー!」

 シンデレラプロジェクトの子達も仲がよさそうで良かったです。 莉嘉ちゃんとみりあちゃんの門限時間の近くまで、皆でお喋りを楽しみました。

 

 

 

 次の日の朝はとても良い目覚めでした。今日は新年度の初登校日です。

 私ももう中三ですから、時が経つのは早いものです。このまま二十歳まですっ飛ばして貰えるとお酒が飲めるから嬉しいんですけど。

「テーレッテー♪」

 鼻歌交じりで制服に袖を通しました。いつも通りですが、何だか新鮮な感じです。

 

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい。気をつけてね~」

「おお、頑張ってな!」

 家族に見送られ家を出ます。以前よりも1時間早い登校なので、ちょっと違和感がありますね。

 最寄り駅で電車に乗り学校に向かいました。満員電車のラッシュも随分久しぶりな気がします。

 駅から降りて、最寄の学校──『私立美城学園(みしろがくえん)』の正門前に立ちました。

 今日からここが、私の母校です。

 

 出席停止処分を喰らった日の夜、今後について色々と考えました。

 ただでさえアイドルということで周囲から浮いていましたが、世紀末系アイドル路線によって学校内に私の居場所はありませんでした。いじめこそないものの、完全に腫れ物を触るような感じだったのです。

 そして更に出席停止が加わりました。流石の私でもこの状況では学校に行こうという気力が涌きません。

 

 じゃあ転校すりゃいいじゃん。

 

 それが私の出した結論です。転職は慣れっこですから、学校を変えることにも全く抵抗はありませんでした。そして転校先として目を付けたのが、346プロダクションの資本が入ったこの美城学園の中等部です。

 本校は中高エスカレーター式の女子校で、高校受験の必要がないのです。そしてここには、学生でありながらスポーツ選手、アイドル、歌手、役者、学者等、突出した才能を持ち活躍している子の為の特殊なコース──『タレンテッドコース』が存在していました。

 

 タレンテッドコースでは、課外活動で出席日数が減った時に土日や夏休みを利用して補習を行い、学業と仕事の両立を可能にしています。

 アイドル活動をしている私に最も適した学校だと言えるでしょう。

 

 何より! ここにはコメットの皆を初めとして、346プロダクションの学生アイドルが多く在籍しているのです! もちろん他の学校に通っている子もいますけど、その割合は他校に比べて格段に高いです。

 前々から羨ましく思っていましたが、せっかくの機会なので新年度を機に移籍することにしました。

 アスカちゃんは今年度から高校生なので残念ながら高等部へ移りましたが、校舎自体は繋がっていますからいつでも会いに行くことができます。

 皆と過ごせる時間が増えると思うと、ワックワクのドッキドキですね!

 

 今西部長のコネを使って学園側の承諾は取り付けましたが、転校するにあたっては当然親の許可が必要になります。

「私、クラスで浮いてて……。最近学校に行くのがとっても辛いの……。皆が通っている学校に転校出来ればいいんだけど、ダメ?」と涙目でお父さんにお願いしたら、「よし、俺に任せろ!」と3秒で承諾して貰えました。

 学費や寄付金等もポンと出してくれましたよ。男親って娘には本当に甘いですねぇ。あははは。

 

 思い出し笑いをしていると不審者に間違われそうなので、そそくさと校舎に入りました。

 まずは職員室に向かいます。ドアを開けると担任の先生がいましたので近づきました。

「おはようございます、七星朱鷺です。本日からよろしくお願いします」

「おはよう。こちらこそよろしく、七星さん! 分からないことがあったら何でも訊いてね!」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ始業式の前にみんなに紹介するから、着いてきて」

 人当たりが良さそうな若い女教師で安心しました。美人で胸部のお山が大きいのもポイントが高いです。とりあえずは優等生キャラで様子見しましょう。

 

 先生に連れられて校舎の三階に向かいました。キョロキョロして周囲を見ましたが、以前の公立中と比べ内装や設備のグレードが段違いです。配布された学習用のタブレット端末だって一流メーカーの最新モデルですし。

 タレンテッドコースは学校をアピールする客寄せパンダ的な面があるので学費はとても安いですが、普通コースだと年間百万円を軽く超えるそうです。更に寄付金等を含めると考えるのも恐ろしいですね。

 その分ブランド力が凄いので、入試の倍率は国内トップクラスらしいです。見かける子が軒並みハイソなのはこの為でしょう。

 特待生枠で入学してしまって、なんだか申し訳ないような気がしてきました。

 

「さあ、ここよ。皆に紹介するから、合図したら入ってきて」

「はい!」

 教室の外で聞き耳を立てました。

「皆、おはよう~! 新年度だけど、タレンテッドコースはクラス替えが無いからそんな感じしないわね。でも、今日はちょっとしたサプライズがあるの。何と転校生よ!」

 教室内がざわつきます。もう少しさらっと紹介してもらえると嬉しいんですけど。

 

「じゃあ、自己紹介お願いするわね」

 合図に合わせて教室内に入り、黒板に名前を書きます。

 事前に丸暗記しておいた平凡な自己紹介を始めようとしましたが、意味無いなと思いました。

 

 だって、生徒席に座っている子、全員アイドルの友達ですもん。

 

 タレンテッドコースの中でも346プロダクション所属のアイドルは人数が多いので、一つのクラスに隔離されていました。当然、私が入るのもそのクラスです。

 

「転校生っていっても、朱鷺さんじゃあ新鮮味がありませんねぇ」

「ちょっと幸子ちゃん! そんなこといったら可哀そうだろ!」

「光さんだって似たようなことを言ってたじゃないですか」

「うっ。そ、それはそうだけど……」

「ふっふっふ。朱鷺がこちらの学校に来たのなら、データ計測や実験がやりやすくなるな」

「先生、またお山が育ってるよ! 後で計らせて! この手で!」

「ビームちゃーん! 後で対戦ゲームやろう!」

「いやぁ、こげん日が来ると信じとったばい」

「学校だからツメや眼帯はないけど、ウチはウチだからなっ! 他の子と間違えるなよっ!」

「朱鷺ちゃんが来てくれて、七海嬉しいれす~♪ 記念におさかなパーティーしましょ~」

「ブラジルにもオイシイお魚いっぱいいるヨ♪ 全部スシにして食べたいナ♪」

 

 収拾がつかない事態になってしまいました。

 急に転校したら騒ぎになりそうなので皆には事前に連絡していたんですけど、あまり意味はなかったようです。

「皆静かに! 七星さんの自己紹介がまだなのよ!」

 先生がビシッと締めましたが、これやる必要あるんですかね?

 

「ええと、七星朱鷺です。既にご存知だと思いますので、引き続きよろしくお願いしま~す」

 何だかグダグダな自己紹介でした。新鮮味が無くてシナシナです。

 

「ありがとう。七星さんの席だけど、森久保さんの隣よ」

「はい」

 自席に歩いていきます。今回も窓側最奥のラノベ主人公席でした。

「おはよう、ございます」

「おはようございます、乃々ちゃん。学校でもよろしくお願いしますね」

「……うん」

 照れくさそうな顔で頷いてくれました。

 かわいい。ただひたすらにかわいい。

 

 それにしても、もの凄く個性の強い級友達です。でも皆、私を一人の友達として対等に見てくれていました。こんなに嬉しいことはありません。

 しかも一つ下の学年にはほたるちゃんや麗奈ちゃん、巴さん等もいますから、とても賑やかな学園生活になりそうな予感がしますね。

 

 こんなに学校が楽しみなのは、生まれて初めてです!

 

 

 

 

 

 







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