ブラック企業社員がアイドルになりました   作:kuzunoha

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後語③ 北斗の拳 ユリ味

「やあ、みんなおはよう! 今日も一日頑張っていこう!」

「……朝イチでその高いテンションは勘弁して下さい。あまりキャンキャンうるさいと頭部の毛根を死滅させる秘孔を突きますよ」

「す、すまない。他はまだしもその秘孔だけは本当に勘弁してくれ……」

 楽屋でだら~っとしていると犬神P(プロデューサー)が勢いよく入ってきました。何となくイラッとしたので牽制球を投げると急に大人しくなります。

 

「どうしたんだい、トキ? 今日はあまり機嫌が良いように思えないが」

 アスカちゃん達が不思議そうな顔をしました。

「別に機嫌が悪い訳ではありません。ただ企画内容が好みではないのでテンションが下がっているだけです。お仕事ですから手は抜かずしっかりやるつもりですけど」

「企画って今回の催眠術体験のことですよね。そういうのは嫌いなんですか?」

「ほたるちゃん達はどう思うかはわかりませんけど、私は好きではありません。だってあんなの超胡散臭いじゃないですか。科学文明最盛期の現代社会において、催眠術なんていうオカルトは非ィ科学的過ぎてヘソでお茶が沸きますよ!」

「君がそれを言うのか……」

「それを言ったら北斗神拳も十分オカルトなんですけど……」

 ワンちゃんと乃々ちゃんから同時にツッコミが入りましたが華麗にスルーします。私の場合は事情が事情ですから仕方ありません。

 

「それで誰に何の催眠術をかけるんだい? 詳しいことはまだ何も聞かされていないからそろそろ教えてもらえないかな」

「ああ、すまない。急に決まった企画だから昨日の夜まで詳細が固まってなかったんだよ。これから話すのでよく聞いて欲しい」

 犬神Pから本日の流れについての説明がありました。なんでも新進気鋭の人気催眠術師と一緒に催眠術体験をするそうです。その様子を編集して『とときら学園』で放送するとのことでした。

 

「人気催眠術師さんってどんな方なんでしょう?」

「コマンドウルフ猫矢(ねこや)って言う人さ。誰にでも必ず催眠術を掛けられるって触れ込みで、最近mytubeや深夜のバラエティ番組で評判になってるみたいだ」

 ほたるちゃんの質問に犬神Pが答えました。

 名字が猫なのに狼を名乗るのですか。せめてネコ科かイヌ科のどちらかに統一して欲しいです。

「トップバッターは七星さんだ。小さい頃の純真で清純な姿が見たいってファンの要望が多いから、今回は退行催眠で子供の頃に戻ってもらう予定だよ」

「私は現在進行系で純真で清純ですけど」

「ああ、うん……。そうだね……」

 なぜ露骨に目を逸らすのか、コレガワカラナイ。

 

「朱鷺ちゃん、ちょっと……」

 乃々ちゃん達に連れられて楽屋の端に移動します。犬神Pに聞こえないように小声で話を再開しました。

「朱鷺さんの小さい頃って今よりも荒んだ感じなんでしたよね。大丈夫ですか?」

「もし催眠術が本物だったら放送事故です……」

 この間のありさ先生の昔話を聞いて心配になったという訳ですか。自分のことではありますけど確かにあれは酷かった。

「大丈夫ですよ。催眠術なんてどうせインチキに決まっていますって。掛かったフリをして純真で清純な幼児を完璧に演じてみせますから安心して下さい」

「……わかった、そこまで言うのなら信じようじゃないか」

 ホント、皆心配症ですねぇ。催眠術なんてオカルトがこの世にあるわけ無いですって。

 

「君達、大丈夫かい? 確かに催眠術を掛けられるなんて不安だと思う。なので今日は俺も収録に立ち会うから安心してくれ!」

「わーいわーい、ありがとーございまーす。やったー、ちょうこころづよいなー」

「……完全に馬鹿にしてるよね?」

「いえいえ、ぬののふくと同じくらいには頼りにしていますよ」

「俺は防御力4と同価値なのか……」

 うなだれる犬神Pを放置して収録の準備を始めました。

 

 着替えとメイクを終えると指定された小スタジオに向かいます。

「おはようございます」とスタッフさん達に挨拶しながら中に入ると奇妙な格好の若い男性が突っ立っていました。先方も私達に気付いたようでこちらに近づいてきます。

「フゥーハハハハ! 我こそは変幻自在のヒュプノティスト(催眠術師)────コマンドウルフ猫矢なり!」

「えぇ……」

 (くだん)の催眠術師が開口一番に放ったセリフがこれでした。初対面のインパクトとしては中々のものですね。なお私の中ではペテン師というレッテルがベッタリと貼られました。

 シルクハットとタキシードという出で立ちなので催眠術師というよりもマジシャンみたいです。

「346プロダクション、アイドル事業部Pの犬神と申します。本日はよろしくお願いします」

「うむ! 我と共演できることを光栄に思うといい!」

「は、はぁ……」

 この調子で無事収録を乗り切れるのか不安になってきました。

 

 

 

「それでは3・2・1……」

 番組サブD(ディレクター)の合図に合わせて笑顔を作ります。

「みなさ~ん、こんにちは!」

「今回のとときらチャレンジは、コメットの四人で『あること』に挑戦したいと思います!」

「フッ、進歩をもたらすのは飽くなき挑戦さ」

「その挑戦とは……なんと催眠術、です……」

「この永劫回帰のヒュプノティスト────コマンドウルフ猫矢が哀れな子猫達を深淵なるヒュプノシス(催眠)の世界に誘ってやろう! フゥーハハハハハハ!」

 ルックスは中々良いのでテレビ受けしそうですが、何というか顔がうるさいですねこの人。

 

 冒頭の撮影を終えたのでいよいよ催眠体験となりました。ふふふ、掛かったフリをして清純ムーブを繰り出し好感度をアップさせるという完璧なプランを発揮する時です。

「それでは暴虐の凶鳥を可憐な小鳥に変えてやろう。行くぞ、ノスタルジア・ドライブ(退行催眠)ッ!」

「…………?」

 狼猫さんが勢いよく叫ぶと変なポーズで固まりました。するとポケットから何か取り出します。

「あ、あの。それでは催眠術を始めさせて頂きますので、よろしくお願いします……」

「突然のキャラ崩壊っ!?」

 先程までが嘘のような小声です。おどおどとした態度は乃々ちゃんを彷彿とさせました。

 

「すみません、ああいう強烈なキャラを演じていないと恥ずかしくてmytubeやテレビには出られないもので……。流石に催眠術を施している間はキャラが維持できませんからこの辺りはカットでお願いします……」

 両指でテープをカットするジェスチャーをしました。

 なるほど、役になりきることで緊張に耐えるタイプの方だったんですか。役者さんでは稀に見られますが催眠術師にもいるとは思いませんでしたよ。中二病キャラを演じているという点では私と共通しているので親近感を覚えてしまいました。

「私の催眠術ではこのガラス玉を使います。これを見ながらリラックスして質問に答えて下さい」

「はい、わかりました」

 その後は当たり障りのない質問に答えていきます。退屈な内容なのでだんだん眠くなっていきました。収録中に寝る訳にはいかないと思いつつも段々と意識が薄れていきます。

 意識が、闇に、飲まれ……。

 やみ……のま……。 

 

 

 

「……さん。七星さん!」

 こえが、聞こえる。おとなのこえだ。

 お母さんかなとも思ったけどちがう。だって男の人のこえだもん。おうちでねてたのにこういうこえが聞こえるっていうことはアレにまちがいないよ。

 そうおもいながら、『ぼく』はゆっくりと目をあけた。

「ノスタルジア・ドライブは無事成功した! フフフ……今や彼女は齢8歳の小童に過ぎん! さぁ、汚れなき純真な姿を現世に示すがよい!」

 目のまえでしらない男の人がこうふんしてる。やっぱりいつものアレかな。こういうときにやることはひとつだよね。

「ごめんなさい、いまおうちにおかねはないんです。ぼくのことはなぐってもけってもいいので、どうかそれでゆるしてください」

「……え?」

 どげざしてごめんなさいすると男の人がかたまっちゃった。なにかへんなこと言っちゃったのかな。でもいつもどおりだよ。

 

「あ、あの……本当に朱鷺ちゃんなんですか?」

 まき毛のお姉ちゃんがしんぱいそうにぼくをみつめる。ぼくのなまえは土岐創(ときはじめ)だからまちがってないよね。男の子だから『ちゃん』はやめてほしいけど、いいかえすとおこらせちゃうからがまんしよう。ぼくががまんすれば、なんでもうまくまわるんだ。

「うん、ぼくのなまえは土岐(とき)だよ」

「そ、そうか! ほら見ろ、やはり我は失敗などしていなかったのだ!」

 マジシャンみたいなお兄さんがホッとしたみたいだからぼくもうれしくなった。

 でもここはどこなんだろう。おうちでねてたのにしらない人たちでいっぱいだからこわいな。

「よし、それでは昔の彼女を知るためにこれから質問をしていこうではないか。そうだな……まずは手始めに、最近楽しかったことを教えて貰おう!」

「さいきんたのしかった、こと……」

 がっこうでのこと、おうちでのことをいろいろおもいだしてみた。

 

「ないよ、なんにも」

「ない……だと……!?」

「うん。がっこうはみんなから『ビンボーにん』とか『いつもおなじふくできたない』ってバカにされていじめられるから大きらい。おうちはお母さんがぜんぜんかえってこないし、たべるものがなにもないからまいにちつらいだけだよ」

 でんきとガスはなくてもへーきだけど、お水が止まっちゃうとこうえんにくみにいくのがたいへんなんだ。

 

「今の話は明らかにおかしいって。七星さんの家庭環境は本当に理想的なんだから!」

「これ、もしかして全然違う人の記憶を呼び出してませんか……?」

「だが自分のことを朱鷺だと認めている。これはどう説明するんだい?」

 スーツの男の人とお姉ちゃんたちがなにか話してるけど、ぼくにはむずかしくてわかんないや。

「あれ……?」

 なんか頭がいたくなってきた。きもちわるくてたってられない。

「猫矢さん、これは!?」

「う、うろたえるんじゃあないッ! ヒュプノティストはうろたえないッ!! 退行催眠では稀に記憶が混乱することがある。少し休ませればすぐに落ち着くはずだ!」

「みんな、七星さんを横にして休ませるから椅子を並べてくれ!」

 スーツの男の人にかかえられると頭のなかがまっしろになった。

 

「お母さん、ぼくのないしょくのおかねをもってっちゃだめだって……。きゅうしょくをたべたぶんのおかねはちゃんとはらわなきゃ……。パチンコなんておみせがもうかるにきまってるんだからもうやめようよ……」

「え、何このうわ言は……」

「これが事実だとしたら不幸すぎます。朱鷺さんの過去に一体何が……」

 髪のみじかいお姉ちゃんの目がうるんでるけどどこかいたいのかな。はやくなおるといいな。

 

「ふぅ……」

 ちょっとやすんだら頭のいたいのがきえちゃった。なんかものすごくイヤなことがあったきがするけど、まぁいっか。

「あの、この催眠術は恐らく失敗していると思います。だから早く戻してあげて下さい」

「そうだね、これ以上の続行は危ない気がする。猫矢さん、申し訳ありませんが七星さんへの催眠体験は中止でお願いします」

「ま、待て待て待て待て! 我の催眠術は正に完璧! だから100%確実に掛かっているはずなのだ! もう少し質問を続ければきっとその事が分かるはず!」

「で、でも……朱鷺ちゃんに何かあってからでは遅いです」

「記憶の混乱が再び発生したらその時は直ちに中止する! 失敗ゼロの天才催眠術師としてのプライドに賭けて、頼む!」

 

 マジシャンのお兄さんがみんなに頭をさげた。ぼくのせいでこうなっているのかも。そうだったらかわいそうだよね。

「ぼくはだいじょーぶだよ。しつもんしてくれればまたこたえるから」

「……そうか、わかった。七星さんがそう言うのならもう少しだけ続けようか」

 ななほしさんがだれかはわかんないけど、ぼくがぎせいになることでみんながしあわせになれるのならうれしい。

 

「では質問を続けよう。君の今の夢は何か教えてくれたまえ!」

「ゆめ?」

「ああ、そうだ。アイドルでもケーキ屋さんでも何でも構わん! 大統領になってもいい!」

「じゃあ、おうちに『さつじんきさん』がきてほしいな」

「……何故に?」

「お母さんはぼくの顔をみるたびに『お前さえいなければ私は自由になれるのに』っていうんだ。だからじぶんでなんかいもチャレンジしたんだけど、いつもあとちょっとでしっぱいしちゃって。さつじんきさんがきてくれれば……」

「よぉーーーーしっ! それでは次の質問に行ってみよーーう!」

 まだおはなししてたのにあわててつぎにいっちゃった。またへんなこと言っちゃったのかな。

「愛ゆえに人は苦しみ、悲しまねばならないのか……」

 へんな髪のお姉ちゃんがみんなにかくれてほっぺたをぬぐってるけど、だいじょーぶかなぁ。

 

「最近良かったことはないか! どんな些細なことでもいいぞ! だが暗い話はNGだ!」

 よかったこと、よかったこと……。

「うん、あるよ!」

「おおっ、いいぞ! 我に教えてくれ!」

「きのうね、がっこうからかえるとちゅうでおサイフをひろったんだ。なかをみたら十まんえんもはいってたから、これでおこめがなんキロかえるんだろう。すごいな~っておもって」

「それでネコババしてしまったという訳だな。貧困とは言え犯罪に手を染めるとは悲しいことだ」

「え? もちろん、そのままおまわりさんにとどけたよ!」

「でも七星さんの得になってないじゃないか。それのどこが『良かったこと』なんだい?」

「だっておとした人はこまるでしょ? おとした人のところにちゃんとおサイフがもどって、ほんとうによかったっておもったんだ!」

「すまない。少し泣く」

 へやの中にいる人たちがみんなないてるけど、なんでだろう?

 

 

 

「……さん。朱鷺さん!」

「う~ん。後10分だけ」

「起きて下さい。収録が終わりましたよ!」

「ファッ!?」

 収録という言葉に反応して飛び起きました。周囲を見回すと確かに撤収準備に入っています。

「催眠体験中に熟睡してしまったという訳ですか。私としたことが本当に申し訳ありません。でもまだお昼前なのになぜ撤収が始まっているんでしょう?」

「う、うん。色々あって七星さんに催眠術が上手くかからなくてさ。猫矢さんが完全に自信を喪失してしまったから収録の続行が不可能になったんだ。暫く活動を休んで修業をし直すらしい」

「ふふん、私の予想通りインチキ催眠術師だったという訳ですね!」

 やっぱり催眠術なんてオカルトがこの世に存在するはずがありません。

 

「でも企画が中止で大丈夫なんですか? とときら学園に穴が空いてしまいますけど」

「その件については龍田君に相談済みだよ。別の企画を代わりに放送することにしたから大丈夫だって」

「なら良かったです。そうだ、今回の収録テープはどこにあります? アホ面を晒して寝ている姿はあまり人に見られなくないので抹消したいんですけど」

「……ああ、そのテープならさっき龍田君が回収していったよ。貴重な研究資料として有効に活用するそうだ」

「また彼ですか……」

 奴に回収されてしまうと取り返せる可能性はゼロに等しいです。まぁ映っているのは寝ている姿ですし諦めましょう。P兼Dになってから暗躍のレベルが一気に上昇したのでどこかで釘を指しておかないといけません。

 

「ところで……さっきからずっと気になっているんですが」

「な、なんだい?」

「何でみんなして目が赤いんです?」

「そ、そうでしょうか」

「トキの気のせいだよ」

「うぅ……」

 ほたるちゃん達もまるでウサギのようです。

 

「いっただきまーす!」

 楽屋に戻って着替えを終えると少し早い昼食として幕の内弁当が配られました。正直今日は寝ていただけなのでタダ飯は気が引けますが、出されたものは食べ切る主義ですから頂きましょう。

「七星さん、俺の分の焼鮭も食べるかい?」

「ええ、くれるのなら頂きます」

「もりくぼの唐揚げも、どうぞ……」

「私はエビフライをあげますね」

「フッ。ボクからは焼売だよ」

「は、はぁ……」

 特に理由のない優しさが私を包みました。

 

「ところで……。七星さんのご家庭なんだけど、皆さんとても仲がいいよね」

「ええ、それはもう」

「ご両親が育児放棄とか、多額の借金があったりギャンブル依存症だったりなんてことは……」

「いやいやいや。ウチの両親はそういう人間の屑とは対極の存在ですよ!」

 前世では全て的確に当てはまりますけど現世では無縁です。

「そうだよな、変なことを訊いてすまない。それにしても、あの天使のような子がこうなってしまうなんて世の中は本当に残酷だなぁ……」

「やっぱり他の人の記憶が混ざったんじゃないでしょうか」

「しかし名前は一致している。そのことはどうにも腑に落ちないな」

「謎は益々深まるばかりです……」

「……?」

 何だかよくわかりませんが今日は皆が優しくてラッキーな日ということにしておきましょう。

 

 

 

 それから数日後、学校が終わってから私はプロジェクトルームではなく事務所内のカフェに向かいました。先日からお悩み相談室の仕事をぼちぼちやっておりまして、本日もとあるアイドルから相談を受けているのです。

「いらっしゃいませ~☆」

「おはようございます、菜々さん。比奈さんと待ち合わせの予定なんですけど来ていますか?」

「はい、先程いらっしゃいましたよ! それでは一名様ご案内でーす!」

 菜々さんに導かれるまま店の奥へと向かいました。すると比奈さんともう一人知らない方の姿が視界に入ります。一番奥の席で二人して並んで座っていました。

「案内頂きありがとうございました。注文はカフェラテでお願いします」

「承りました。それではごゆっくり~♪」

 注文を済ませてから席に近付きました。

 

「おはようございます、お待たせしてしまい申し訳ありません」

「あ~、おはようっス。全然待ってないんで大丈夫っスよ」

 緑色のジャージに眼鏡姿の女性────荒木比奈(あらきひな)さんがローテンションで返事をしました。パッと見は超地味で、趣味は漫画を書くことという干物チックな彼女ですがれっきとしたアイドルです。ブルーナポレオンという人気ユニットの一角なので世間的な認知度も高いですね。

「デビューして結構経ちますし、そのジャージから卒業してもいいんじゃないですか?」

「いや~、これはこれで変装代わりにもなるんで。おかげで今まで一度も私服で身バレをしたことがないっス」

「あの可愛いアイドルが普段この姿とは誰も想像つかないですから無理ないですよ」

 アイドル姿は本当に綺麗なので、普段着で相殺されてしまって勿体無いです。でもそのギャップが良いと考える人もいるので無理強いするつもりはありません。

 

「それで、こちらの方は?」

 先程から固まっている女の子の方に視線を向けると「ひゃい!?」という素っ頓狂な声を上げました。ボブカットで小柄な可愛らしい方ですが酷く緊張しているようです。

「アタシの同人誌友達の子っス。今日のお悩み相談者はアタシじゃなくてこの子なんスよ」

「ね、猫矢留美香(ねこやるみか)です! よろしくお願いします!」

 なんか最近似たような名前を聞いたことがあるようなないような……。でも思い出せないのできっとどうでもいいことなのでしょう。

「七星朱鷺と申します。ご存知かどうかわかりませんが、比奈さんと同じ346プロダクションでアイドルをしています」

「私、朱鷺さんの大ファンですからよく存じ上げています! どうぞ留美香と呼んで下さい!」

「あら、そうなんですか。それはとても嬉しいです♪」

 現時点では本当のファンか社交辞令かの判別がつかないので当たり障りのない営業スマイルで返事をしました。

 

「それで、留美香さんが私にご相談とのことですがどんなお話なんでしょう?」

「えっと、それは……」

 真っ赤な顔でもじもじしているので話が進みそうにありません。それを見かねて比奈さんが口を開きました。

「さっき話した通り留美香ちゃんはアタシの同人誌友達で美大の一回生なんスけど、漫画の実力がメッチャありまして。各種同人イベントでも壁サー当たり前の超売れっ子なんス」

「それは本当に凄いですね」

 同人誌の頒布数が抜群に多い同人サークルを一般に大手サークルと呼びますが、壁サークルはこれとほぼ同義の言葉です。アマチュア界のトップだと言えるでしょう。

 ハムスターのような可愛らしいイメージと違って中々のやり手なようです。

 

「人気作家になった結果、漫画雑誌に目をかけられて今はメジャー誌でデビューするための準備を始めてるんス」

「順風満帆のエリートコースじゃないですか」

 10代で商業誌デビューとは中々出来ることではありません。きっと才能がある上に努力を重ねているのでしょう。

「だけど同人業界で人気があっても雑誌では新人っスから、当然連載する上でもジャンルの制約が設けられたんスよ。それで指定されたジャンルというのが……」

「アクション漫画、なんです。でも私バトルとかアクションなんて今まで一度も書いたことがなくて……。研究をして一応は形になりそうなんですけど、せっかくアクション漫画を書くのなら大好きな朱鷺さんと北斗神拳をモチーフにしたいんです!」

 私をモチーフ……? え、この子正気?

 

「それで朱鷺ちゃんにモチーフの許可を貰いたいって訳っス。後は出来れば北斗神拳の技と歴史を学んで、それを漫画に活かしたいということなんスよ」

「いや、歴史と言っても……」

 だって原作は漫画やしという言葉が喉から出掛かりました。いかん、危ない危ない危ない。

 個人的には能力のことでこれ以上傷を広げたくないのでやんわりとお断りしたいです。

「ダメ、でしょうか?」

「くっ……!」

 そう上目遣いで懇願しないで下さいって。

「留美香ちゃんは基本的には超いい子っス! 朱鷺ちゃんのことだって本当に慕っているから北斗神拳を貶めることは絶対にしないはずっスよ!」

「……わかりました。情報提供も含めて私の出来る範囲で協力します」

 比奈さんに頭を下げられてしまっては許諾せざるを得ませんでした。まぁ、まさか私がそのまま出てくる訳でもないでしょうから傷は浅くて済むはずです。

 

「ありがとうございます!」

「これで問題の一つが解決したっス!」

 二人が再び頭を下げました。

「問題の一つが解決って、まだ他に問題があるんですか?」

「ええ、まぁ……」

 留美香さんの表情がとたんに暗くなりました。これは結構深刻そうです。

「もしよければ他の問題についても教えて頂けませんか? もしかしたらお力になれるかもしれませんし」

「でも、迷惑じゃ……」

「袖振り合うも多生の縁ですよ。それに私のファンを不幸なまま放置する訳にもいきませんから」

「きゅ、救世主……。七星さんは私にとっての救世主です!」

「そんな大げさなものじゃないですって」

 その後、興奮した留美香さんを落ち着かせてからその問題とやらを伺いました。

 

「担当編集との相性、ですか……」

 シンプルにまとめるとこの一言に集約します。若い男性社員とのことですが、連載用に出したネームをろくに読まないままボツにする、セリフを勝手に変えて読み難くする、思いつきのアイディアを押し付けるなどの傍若無人な振る舞いをしているとの話でした。

 双方の話を聞いていないので判断はできませんが、事実だとしたら中々アレな人ですね。前世に存在していたサンデーという漫画雑誌の某編集者を思い出してしまいました。編集者と同じ名前の美形天才キャラを担当漫画に登場させる厚顔無恥な荒行は常人にできるものではありません。

「打ち合わせの度に病みそうになるので本当に辛いんです……。やっぱり男の人って信用できません。世の中の編集が皆朱鷺さんだったら良いのに!」

 漫画業界を一瞬で崩壊させるようなことはしてはいけない。

 

「それはきっと人それぞれじゃないっスかね。編集さんだって99.9%は真面目に仕事をしていて、作家さんのことを大事にしていると思うっス。男だから駄目ってことはないかと」

「でもやっぱり男の人は苦手です。特にウチの愚兄なんて大学を卒業したのに就職もせず『mytubeで生きていく』なんて言ってる世の中ナメ郎なんですよ! それにこの間なんてナントカ術の修行をしにインドへ行くとか訳のわからないことを言ってましたし! これだから男なんて連中は本当に信用出来ません!」

「そ、そうですね……」

 元男としてはコメントに困ります。でもこれって男の人が苦手というよりも単純にお兄さんが嫌いなだけでは……?

 

「話が脱線しましたけど、その担当編集さんとは今度いつ打ち合わせをするんですか?」

「えっと、この後に予定があります……。ネームの打ち合わせなんですけど、きっとまた読まずにボツにされるに違いありません……」

「なら私と比奈さんも一緒に行きますよ。二人で隠れながら様子を見て、あまりに酷い状況でしたら助けに入りますから安心して下さい」

「乗りかかった船っスからね。アタシ達で協力できることならやるっス!」

「本当ですか! ありがとうございます!」

 思わず席を立って私に抱きついてきました。私のメインファン層は愚連隊やRTA視聴者やキッズばかりなので、こういう純真無垢な女性ファンが増えてくれることを切に願います。

 

 

 

 その後は三人で美城カフェを出て、打ち合わせ場所のファミレスに先回りしました。

 留美香さんには一人で座ってもらい、その後ろの席で私と比奈さんが待機します。待ち合わせの時間から40分経過した所でラフな格好の若い男性が近づいてきました。

「イヤァ~! お待たせお待たせ! 担当の先生との打ち合わせが長引いちゃってさ~」

「いえ、大丈夫です……」

「ま、暇なんだから別にいいよな」

「は、はい……」

 事前連絡も無しで遅刻してその態度ですか。私が上司なら確実に焼き土下座をさせています。

「そんでまた連載用のネーム持ってきたんでしょ、とりま見してよ」

「わかりました」

 私の後方でガサゴソと封筒を開く音が聞こえます。その後、紙をパラパラめくる音がしました。

 

「う~ん。ま、こんなもんかな」

 早っ! 普通に漫画を読むよりも遥かに速いスピードでしたよ!

 先程読ませて頂きましたがネームに見えないほどしっかり書き込まれており、コマ割りや構図も良く練られた素晴らしいものでした。私は漫画については素人ですけど、一話目の起承転結もしっかりしておりこのまま連載しても全く違和感のないアクション漫画だと思います。

 ちゃんと読んだ上でダメ出しをするのは理解出来ますが、この編集者にはネームを読もうという気概を欠片も感じませんでした。

 

「どうでしょう……?」

「それなりによく描けてはいると思うけどさぁ……。やっぱ俺の感性には合わないんだよね~」

 ほほう、よりによって感性と来ましたか。これに文句一つ言わない留美香さんは本当に人間ができています。私だったらついうっかり北斗残悔拳をかましていると思いますよ。

「あの、もっと具体的な不備を指摘して頂けると助かります。私、頑張って直しますから」

「いやいや、子供じゃないんだからまず自分で考えてよ。質問したら全部答えてくれるなんて社会じゃありえないんだし。ああ、学生のキミにはわかんないかぁ~」

 面白い奴だな、気に入った。殺すのは最後にしてやる。

「……ちょっとしばいてもいいっスか、アレ」

「比奈さんが手を汚す必要はないですよ。いざという時は私がやります」

 この短時間で我々のストレスを増大させる才能だけは褒めてあげたいです。中身のない創作論や熱い自分語りを続ける編集者への殺意が毎秒高まっていきました。

 

「ま、強いて問題点を挙げるなら個性が強すぎるかな。キャラも展開も奇抜なものじゃなくて、もっと王道を往く方が読者ウケが良いよね」

「えっ……。でも前回はテンプレなキャラと展開でつまらないから個性を出せって……」

「あの時はあの時、今は今。時代は常に流れているんだよ? わかる?」

「でも、そんな事を言われたらいつまでも連載できません」

「まぁいいじゃん、そんなに焦んなくても。それよりさ~、こないだ超良いダーツバー見つけたんだ! 気分転換がてら一緒に行かね?」

「い、いえ。それはちょっと……」

「何だよノリ悪ィな。担当編集を気遣えねえ性格ブスだから漫画もダメなんだよ!」

「ひっ!?」

 漫画編集者の99.9%は真面目に仕事をしていて作家さんのことを大事にしていると思います。しかし残念ながらこの汚物は残り0.01%に該当していました。

 うん、もうゴール(消毒)してもいいよね。

 

 通話状態のスマホを手に取り席を立ちました。

「あのぉ~、すみませ~ん♪」

「ん、誰キミ?」

「素敵な貴方にお電話が入っていますぅ~♪」

 そう言ってスマホを編集者に手渡します。

「……アンタ誰? 何で俺のこと知ってんの?」

 最初はオラついた感じで話していましたが、とある事実に気づいた瞬間顔面蒼白になりました。そのまま「すみません……すみません!」と平身低頭で謝り続けます。

 5分程経ってから通話が終了しました。

 

「ちょっと用が出来たんで会社に戻るわっ!」

「その前に私のスマホを返して下さい」

「ん? ああ……」

「アタァッ!」

 スマホを回収するタイミングに合わせ、人差し指で頭頂部のある秘孔を突きました。

「……ッ! 何だ今の!?」

「悪い虫がいたので羽根をもいでおきました。それよりお急ぎではないのですか?」

「やべっ!」

 編集者は取るものも取りあえず全力ダッシュで店外に駆け出していきました。その最後の勇姿を満面の笑顔で見送ります。

 

「一体誰と電話していたんスか? 血相変えて出ていきましたけど……」

 一部始終を見ていた比奈さんが不思議そうな顔をします。邪魔者がいなくなったので一つのテーブルに移り事情を話し始めました。

「以前私が料理レシピ本を出したことは知っていますか?」

「ええ。料理本としてはやたらと売れたらしいっスね」

「私は使用する分と保存する分で二冊買いました!」

「ありがとうございます。その際に発行元である美城出版の社長と仲良くなったんですよ。持病の腰痛と切れ痔を治療したのでそれはもう感謝されました。何かあった時には必ず力になると約束してくれたんです」

「相変わらず北斗神拳はチートっスねぇ」

 その分デメリットも多いので一長一短ですが今は置いておきましょう。

 

「そして留美香さんが連載を予定している『週刊少年サーズデイ』も美城出版が発行元になっています」

「あっ……」

 二人が同時に何かを察しました。

「編集者との打ち合わせの途中から、話の内容を全て社長に中継していたんですよ。そうしたら『有望な漫画家の卵にセクハラ&パワハラなんて言語道断だ! この場でクビにしてやる!』って怒っちゃいました。なので直接社長と話をして貰った訳です」

「途中で誰に電話してるのかと思ってたけどそういうことだったんスか」

「通話内容は録音しておきましたので証拠もバッチリです。労基法上クビにするのは難しいですが、何らかの懲戒処分にはなりますので少なくとも編集の仕事は外されるでしょう。代わりにまともな編集者を付けて頂きますから問題解決です」

「ほ、本当ですか……? ありがとうございます、ありがとうございますっ!」

「いえいえ、あまり気にしないで下さい。でも今後ああいう輩がまたやってくるかもしれません。その時はおかしいことはおかしい、嫌なことは嫌だとはっきり言う勇気を身に付けて下さいね」

「はい、朱鷺さんを見習って頑張りますっ!」

 留美香さんは今日一番の笑顔でした。やっぱり私のファンには笑っていて欲しいですから力になれてよかったです。

 

「う~ん……。でも留美香ちゃんにあれだけのことをしておいて、罰が懲戒処分だけってのは納得いかないっス。だって会社を辞めてしまえばペナルティゼロじゃないっスか」

「ふふっ、それなら安心して下さい。とっておきの罰を与えましたから」

 その内容を話すと二人がぎょっとしました。

「うわ、それは……エグいっスよ」

「ちょっと可哀想だと思わなくもありません……」

 まぁ若い男性にはキツい罰ですよねぇ。『1時間後に頭部の毛根を死滅させる秘孔』の刑は。

 最後に殺すと約束したな、あれは嘘だ。悪党(社会的に)死すべし、慈悲はない。

 

 

 

 それから程なくして留美香さんに新しい担当が付きました。彼女の要望通り女性とはいきませんでしたが、生真面目でアドバイスも的確、良い意見は積極的に取り入れてくれると評判は上々です。社長に無理を言って若手のエースを付けて頂いた甲斐がありました。

 私も制作協力として彼女のお家に何度か伺い、北斗神拳について出来る限り詳細を伝えています。歴史について語るのは難しいので、原作の流れやキャラクターに関しては古来からの言い伝えとしてボカしながらお話をしました。そして最終的には私をも凌ぐ北斗の拳マニアとして成長したのです。

 すると連載がすぐに決まりました。「絶対に面白いものにしますから見ていて下さい!」という言葉を信じ発売日を楽しみにしていたのです。

 

 そしていよいよ留美香さんの商業誌デビュー日がやってきました。いえ、今となっては『やってきてしまった』が正しい表現でしょう。

 週刊少年サーズデイを買って自室でじっくり読みました。彼女の新連載ですが個性的な設定、魅力的なキャラクター、先が気になるストーリー展開で、課題のアクションも非常に素晴らしいです。とても新人とは思えない出来ですが、私的には非常に問題のある内容でした。

 読んだ直後に彼女へ電話をかけたのですが全く繋がりません。代わりに比奈さんに電話をかけると間もなく繋がりました。

「は~い、もしもし。荒木です」

「……比奈さん。留美香さんの漫画の件で事情を伺いたいのですが今よろしいですか?」

「ああ、あの子の件。……はい、大丈夫っスよ」

「色々確認したいのですが順を追って訊いていきます。まず一つ目の疑問点────漫画タイトルの『新世紀救世主伝説 北斗の拳』は誰が考えたのか知っていますか?」

「それは留美香ちゃんっスね。色々考えた結果それが一番しっくりきたみたいっス」

 深く考えた結果がごらんの有様だよ!

 

 漫画の内容ですが、核戦争により文明社会が失われ暴力が支配する世界となった新世紀を舞台に、北斗神拳の伝承者・トキが愛と哀しみを背負い救世主として成長していく姿を描くそうです。

 こういうストーリーにしろと指定してはいないんですけど勝手に本家リスペクトになりました。なるほど、これが歴史の修正力というやつなのかも知れません(適当)。

 

 ですが細部は違っています。原作では主人公のケンシロウがヒロインのユリアを敵役のシンに奪われるところからストーリーが始まりますが、本作では主人公がトキで奪われるヒロイン役が妹のアカリに変更されています。ていうか名前がまんまじゃないですか! まずいですよ!

 そして奪われる理由もまた違っていました。原作ではシンがユリアを愛するがあまり強奪してしまったのですが、本作ではシンの愛を拒んだトキを振り向かせるためにその妹を誘拐した設定になっています。

 原作をご存知の方はこの時点で強烈な違和感に襲われるでしょう。ですがそれは序の口です。

 

「では質問の二つ目です。なぜ、主要登場人物が『全員女性』なんでしょうか?」

 メイン級のキャラは有無を言わさず見目麗しい姿になっていました。驚きすぎて目が点とはこのことです。

「あれ、朱鷺ちゃんはあの子の同人ジャンルを知らないんでしたっけ?」

「ええ、漫画・ゲーム・アニメには精通しているつもりですが同人には疎いのです」

百合(ユリ)っスよ。それも結構ガチモノの」

「ファッ!?」

 百合系って、女性同士の恋愛感情や強い親交関係を描くアレですよね!?

 

「本人から聞いてないんスか?」

「いや、そんなこと一言もっ!」

「百合に関する話が絡むと明後日の方向に暴走するんで、それさえなければ超良い子なんスよ」

 主要登場人物が全員女性なことについてこれで合点がいきました。

『担当さんに自分の意見をガンガンぶつけています!』と言っていたので自分の得意分野を推したのだと思います。

 ん? よくよく考えれば、留美香さんの家では一緒にお風呂に入ろうと誘われたり半裸でデッサンさせられたりしましたよね。そう言えば飲みかけのペットボトルがいつの間にか空になっていたこともありました。

 私を見る時に目が血走っているなとは思っていたのですが、もしかして……ガチ勢?

 

「朱鷺ちゃん、聞いてるっスか~?」

「はっ!」

 駄目です駄目です。大切なファンを色眼鏡で見るような真似をしてはいけない。どのような性癖を持っていたとしても私は暖かく受け入れるつもりです。でもそちらの道に進む気はありません。

「で、では最後の質問です。これが最大にして最悪の問題なんですけど……」

 意を決して言葉を続けます。

「……この漫画、『原案:七星朱鷺』になっているんですが、なぜか知ってます?」

「何でも美城出版からウチの常務のところに申請があったみたいっスよ。朱鷺ちゃん原案ってことになれば世間の注目度は段違いっスから」

「美城常務ウウウウウウゥゥゥゥーーーー!!」

 魂の叫びが室内に木霊(こだま)しました。

 

「何で私に知らせない!」

「あのカーニバル(スト&デモ)では朱鷺ちゃんに散々煮え湯を飲まされたっスからね。多分その意趣返しかと。アタシも雑誌が発売されるまで情報を漏らさないよう固く口止めされていたっス」

「あ~もう滅茶苦茶ですよ……。『北斗神拳伝承者・七星朱鷺と新進気鋭の天才作家・猫矢留美香が贈る、愛と怒りと哀しみのバトルアクション! 謎に包まれたあの北斗神拳の真実が、今ここに明かされる!』なんて煽り文まで書かれたら確実に私が百合厨だと思われるじゃないですか!」

「ま、まぁ朱鷺ちゃんは属性てんこ盛りっスから今更一つ二つ増えても……」

「よくな~~~~~~い!!」

 

 これは私だけでなく、日本漫画史に残る偉大な原作に対する冒涜です!

 世界は違いますがこんなことになってしまい原作関係者の皆様にはお詫びしてもし切れません。

 原案で報酬が入るのかはわかりませんが、もし頂けるのならば全額児童養護施設に寄付して少しでも社会貢献をしようと心の中で誓いました。

 出版されてしまった以上、私に出来ることは一刻も早く打ち切られることを祈るだけです。

 だから決して頑張らないでね、留美香さん!

 

 この漫画が超スマッシュヒットし後に世界各国に輸出されることを想像すらしていなかった当時の私は、そんなふうに必死に考えていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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