……そしてここ最近、六章を真面目にするかギャグに落とすか地味に迷ってます。また後日改めてアンケートするかもしれませんけど。
「それでは会議を開始する。諸君、席についてくれ」
エジソンの号令を元に用意された椅子に腰かける皆。数が大変なことになっているがそこは気にしない。机の広さも十分余りがあったので、何とか皆入ることはできている。
「まずはこの地図を見て欲しい。見ての通り、ケルト達の領土は北米大陸の東側全土だ。故に彼らはそれぞれ南側と北側の二ルートから攻めてくるだろう。先程聞いた仁慈君の考え、そしてこのアメリカ西部合衆国の状況を踏まえると戦力は十分に足りていると言えるだろう。此処に集ったのは合計十五人ものサーヴァント達だ。私たちが問題視していた質量の問題……いわゆるサーヴァントの数は十分補充できている」
『今までのデータを見る限り、ケルト側にある程度領土を占領されたら実際の歴史との差異が大きくなって特異点の定礎復元は不可能になる。まるで戦略シミュレーションゲームだ。けど、エジソン氏の言う通り安心はできないけれど、大丈夫だとは思う』
机の上からホログラムだろうか、このアメリカの地図が現れ、そして丁寧にケルトとアメリカ西部合衆国で色分けされていた。これを見る限り確かに東と西で綺麗に分かれている。ここまで前線を持たせたのはかなりすごい。実際にサーヴァント連中と戦ってみてわかったけれど、奴ら相手には前線を維持することも苦行であったと容易に想像ができる。
「問題は敵の本拠地、そしてこの元凶だ。彼らは聖杯を持ち、話ではシャドウサーヴァントという英霊のなりそこないや、ワイバーンなどの強力な敵を無限に生み出せる。かといって聖杯の持ち主を叩こうとすれば……」
「ああ。文字通りの狂犬に咽元を喰われることになるだろうな」
エジソンの言葉を師匠が継いで答えた。
そう、現状兵力であれば五分にまで持ち込めているとは思う。こちらのサーヴァントは増え、向こうのサーヴァントは少なくとも三騎脱落している。また新たに呼び出していることも考えられるが、シャドウサーヴァントを利用していることから、現在は出すことができない、あるいは出す必要がないと思っているということだろう。何時天秤が傾くかはわからないが、ちょっとやそっとでは押し切られない。
問題は無限に生産できるという点であり、尚且つその工場の役割を果たしている者を暗殺できないことだ。聖杯の持ち主は、向こう側に居る兄貴にべったりで離れようとしないらしい。師匠すらも引かせたスーパー兄貴を相手にしながら聖杯の所有者を叩くなどはほぼ無理だ。
「いや、そうでもないぞ」
俺の考えを見抜いたのか師匠が言う。本当だろうか。確かにこの人の言うことはなんだかんだ言って正しい。けれどもそれ相応の代償が伴うんだよね。
「おそらくだがな。この場に居る仁慈とマシュそしてセタンタ。こやつらであれば、アレに対抗できるだろう」
師匠の言葉にみんなが驚く。特に、ラーマの反応なんかは一番大きかった。当然だろう。この場で師匠を除けば彼だけが真のスーパー兄貴の実力を知っているのだから。身を以て知っているからこそというやつだ。
「待ってくれ。いや、そこの光の御子は理解できる。何せ自分自身だ、やりようならいくらでもあるだろう。しかし……」
「お主の言いたいことも理解できる。だが、これは確かである。なんせ、今のあ奴は王で化け物だからな。まっとうな連中には滅法弱い」
「………まさか、」
「そうだ。……仁慈も、あれを使うことを許す」
兄貴は師匠の言いたいことに気づいたようだが、ぶっちゃけ俺には何が何だかわからない。そしてさらにあれを使ってもいいと言われても、あれが何なのかもわからない。あれ……師匠から使用が制限されているもの……制限されているもの……あっ。
「……あー。わかりました」
それで勝てるというのであれば、当然断る理由なんてない。目的が遂行できるならそれでいい。
「うむ」
「……よくわからないが……。君たちに任せていいのかね?」
「俺みたいなやつがマスターなわけないんでしょ?……マシュも兄貴も居るし、何とでもなるでしょう」
「フッ……よろしい!!ならば任せるとしよう」
とりあえず一番重要なところは決まっただろうか。後は戦力のバランスを考えて北と南に分けるだけである。
「と、言うかこのまま仁慈に決めてもらえばいいんじゃない?アンタ、一応これまで色々な困難乗り越えてきたんでしょ?」
「………む?そうなのか、いや……何か心当たりがある気もするが……うむ!とりあえずエリザベートの言うことである!信用しよう」
それは丸投げっていうんじゃないんですかね。しかも、俺は指揮するというか、脳筋戦法でサーヴァントと一緒に特攻するくらいしかしてないんだけど。
「エリエリにしてはいいこと言うわね!」
「エリエリって何よ!それアタシのこと!?」
おィ、それでいいのか。
ふと周りを見回してみれば、全員がそれでいいんじゃないかと言わんばかりの表情である。中にはきっと頭のおかしい策でこの状況を乗り切ってくれるだろうと呟いている奴すらいる。
「……後からこいつとは嫌だとか言う文句は聞かないからな……あと、エジソンちょっと話が」
――――――――――――
夜。何となく夜空を見たくなり、当てられた部屋から静かに出ていく。フフフ……気配遮断が得意な俺にとって、この程度などお手の物よ……。
今にして思えば、こうして改めて全権を委ねられたことってないんじゃないだろうか。なんだかんだ言ってその場のノリで何とかしてきたし、何とかなって来た。それで十分だった。
それを考えると今回から偉く難易度上がった気がする。インドとかケルトとかその他の有名な方々とか、バーゲンセールに安売りされているかのようにポンポン出しやがって。第五の特異点でこれとか残り二つがとんでもなく不安になる。
「さて、どうしようか。とりあえずロビンとエリザベートとネロは一緒にするとして―――」
と、いつの間にか考えていることが口に出ていたらしく、丁度通り過ぎた扉からナイチンゲールが飛び出して来た。一番やばいのに見つかったんじゃないだろうか。彼女であれば睡眠は重要ですとか言いながらベッドに引っ張られていく姿しか想像できない。
「い、今から寝ようと――――」
「あの会議の後です。今すぐ寝なさい……なんて言いません。もしかして、散歩ですか?」
「―――まあ、気分転換で」
「おや、貴方でも気分転換をするのですね」
「俺のことを何だと……」
「貴方がいつも私に言っていることですよ」
鋭い……。思いっきりバレていたらしい。曰く、病人の精神状態を含めて把握できるものこそ真の看護師だという。すごすぎる。
ナイチンゲールの言葉に感心しながら、砦において壁の上から迎撃する部分であろう場所で夜空を見上げる。そこには現代では見られない、満点の星空が広がっていた。この時代ではまだ見れたようである。それとも場所が違うからであろうか。
「……エジソンの病は癒えました。恐らく、彼の身体に歴代大統領の妄執とも呼べるものが蔓延っていたからでしょう。経過を見ていくことになりますが、心配はないと思います。残る病は二つです」
「二つ?」
「ええ。一つはこの世界を死に至らしめんと蔓延っている
「そういえばそんなことを言ってましたね」
そもそもナイチンゲールと行動を共にした切欠は、この世界に蔓延る病ことケルトを何とかするということ、そして何より俺が彼女曰く病人であるということが始まりだった。
しかし、具体的にどこが病気だかは聞いてなかったな。
「そういえば、どの辺が病気?」
「良い質問ですね。病気は自覚するところから始まります。……貴方は、
「?」
彼女の言ったことに俺は首を傾げる。割り切りがよすぎると言われても、そのくらい誰でもあるものではないのだろうか。
「いえ。貴方のは度を越しています。……通常、サーヴァントと正面切って戦えと言われた場合にはもっと動揺します。今回のことについてもそうです。貴方はこの世界……そして全人類の存亡をかけた選択を何でもないように決定するのですから」
それは唯の考えなしと言われているような気もするんだけど。いや、確かにそこまで難しいことを考えて行動しているわけではないけれども。
「いえ。どんな考えなしでも頭の片隅に浮かぶでしょう。人は、自分で責任を負うとなればそのことを考えられずにはいられません。……確かに貴方は迷いもするでしょう。戸惑いもするでしょう、時には躊躇うこともあるかもしれません。……けれど、それも一瞬、すぐに割り切ることができる。割り切った後はもう戸惑いも躊躇いもしません。……事が事なだけにこれは不自然です。そう、
「…………」
そんなことを言われても困る。自分のことなど割と自分自身程把握できていないものだ。俺もその例に漏れることはない。自分の状態でわからないことなんて腐るほどある。しかし、それは
「……………そろそろ身体が冷える頃です。戻った方がいいのでは?」
「そうする。お休みナイチンゲール」
気分転換になったかどうか微妙ではあるが、外の空気を吸ったことだろうか頭だけは冴えている。寝る前にパパッと考えようか。
「自覚症状なし、ですか……。私ではおそらく時間が足りないでしょう。はぁ……なんとも心苦しいのですが、他の方に託すしかなさそうですね」
――――――――――
「はーい、チーム分けを発表します」
「ここは小学校かね……」
ここで俺はチーム分けを発表した。簡単に言ってしまえば、カルデア組(師匠&エミヤ以外)+ラーマとシータ、ナイチンゲールそしてカルナが南側。それ以外が北側である。
ここで疑問が爆発した。ですよね。普通に考えて結構偏った編成していると俺だって自覚しているもの。
「どうしてこんな編成なのだ?」
「北側に偏っているのはぶっちゃけ、勘なんだけど……持久戦をしてもらうという意味でも多くしてる。南側の俺達はそのまま本拠地に突っ切るからかなり派手に暴れるし、それができる戦力は確保できているしね」
面子を見てみればそれがわかるだろう。カルナにラーマ、そして兄貴にナイチンゲールである。戦力で言えば俺たちの中でもトップクラスだ。一応師匠は向こうに分けてあることにも理由がある。それは先程の勘に由来しているのだ。なんというのだろうか。何かしらのやばい保険をかけているような気がしてならないんだよなぁ。
「こっちも任せた手前、文句は言わないわ。貴方の勘なら当たりそうで怖いし、精々私なりにやるわよ。キャスターだけどね」
「ブラヴァツキーの言う通りだ。北側の方は任せてもらっていい。なあに、これだけの戦力が整っているんだ。無様な姿はさらさないとも。それと、君たちが率いることになる機械化歩兵だが……お望み通りの機能を付けておいたぞ」
「ありがとう」
エジソンの言葉を受けて俺は自分たちが率いることになる機械化歩兵を見やる。確かにこちらのスピードについてこれそうなブースターもついているし、何よりあれができるようになっている。これであれば何とかなるだろう。
……さて、これだけ派手に動くんだ。向こうも打って出てくるであろう。其れならそれでいい。引きこもられるよりも戦場に出て来てくれた方がこちらとしては好都合だ。
「そうだ仁慈君。勝つにせよ負けるにせよ、私たちはここでお別れだろう。……何度も言うが迷惑をかけた、そしてありがとう。君の発想は面白いものばかりだった。いい刺激になったよ。余裕があれば私のことを呼んでくれ」
「こっちこそ色々無茶言って悪かったね」
エジソンと言葉を交わしていると、他のサーヴァント達も色々と話をしてくれた。ロビンからは縁と運があればという簡単なものを、エリザベートとネロからはコラボライブを聞いてくれという誘いを、ジェロニモから力みすぎるなというアドバイスを、ビリーからは任せといてくれという頼もしい言葉を貰った。エレナは笑顔で私を呼びなさいと言われた。ハイ、ガンバリマス。
「それじゃ行きますか。ラーマ、指揮をお願い」
「生前は猿しか率いたことはないのだが……」
「そっちの方が難易度高いでしょ」
「――――では、皆の衆!」
俺の言葉を受けてやる気を出してくれたラーマが声を張り上げる。その迫力は一気に周囲を巻き込んだ。
「己の国を己の手で取り戻す時が来た!余が、そなたたちの道標となろう!他のことを考えずとも好い、……ただ、己のすべてを!全身全霊を賭け、戦え!!」
カリスマ持ちは流石というべきか、機械化歩兵であるにも関わらずどこかやる気を出しているようにも見えた。
そうして盛り上がっている時、カルナが俺の横までやって来て小さく耳に囁きかけた。曰く、この戦いで自分を先行させてほしいとのこと。こちらとしては力の温存をしておきたいし願ったりかなったりなのだが、どうしたというのだろうか。
「オレの方も確証はないのだが……オレが抑えなければならない相手が居る、恐らくだがな」
「……カルナで抑えられるくらい?」
「心配するな。負けるにしても時間稼ぎくらいはできる」
行く前から不安になることを言わないでほしいのだが、向こうも勘だというし先に勘を持ち出した俺に文句を言う権利はない。
そうして、俺達は大量の袋とチーズを持った機械化歩兵たちを率いて東へと進行した。
プロトセイバーとか予想外すぎワロタ。
まあ、プロトは知らないので引かないですけどね。