この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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次からオルレアンだと思います。



サーヴァントとのふれあい

 

 

 

 

 英霊召喚を行ってカルデアに新しい仲間が来てから三日後。ロマンと所長、そして無事に済んだ数少ない研究員たちとともに七つの特異点について調べている中、俺も自分にできることを行っていた。ん?それは何かって?まぁ、簡単に言ってしまえば、修行かな。あと料理作り。

 

 ………聞いてくれよ。実はカルデアで生き残っている人たちは、研究一筋、生粋の科学者ばかりで誰も料理を作ることができないらしい。なので現在カルデアの台所は俺が担っているのだ。食糧のほうは科学と魔術が交差して物語が始まりそうなカルデアの技術で栽培できているのだが、それを加工できる人がいないという悲劇。そんなこと耐えられないと俺が立ち上がった次第である。別に一人というわけではなく、俺の負担を減らしたいということと、料理に興味があるということからマシュも手伝ってくれている。マシュマジ天使(ノルマ達成)

 

 さて、そんなこんなでカルデアの食卓を預かっている身の俺なのだが、一つ言いたいことがある。それは――――

 

「すみません。マスター。お代わりよろしいでしょうか?」

 

「…………お前、それで何杯目だ」

 

「三回目です……(ムグムグ」

 

「一桁少ない」

 

 実は三十回目のお代わりである。

 なにこいつおかしいんじゃないの?一応、カルデアの食糧は元々ここにいる従業員の数に合わせて補充されるようになっている。現在ではその従業員の多くがスリープ状態もしくは死亡しているため、食料にはかなりの余裕はあるが……だからと言って好きなだけ食っていいわけじゃないんですよ?

 

「これで最後にしな。そして、お前はもう少し自重を覚えろ」

 

「もっきゅ……もきゅ……もきゅ……んぐっ。……しかし、マスター。腹が減っては戦ができぬ、と言いますし」

 

「まだ腹ペコと申すか」

 

 どうなってんだこの青ジャージ娘。奴の胃袋はブラックホール級か!?

 戦慄する俺。しかし、彼女は動じることなく、新しくよそったご飯を小さい口の中に放り込んでいった。

 

「罪悪感なし……ッ!?」

 

 この腹ペコ王め。令呪を使ってでも飯食い禁止にしてやろうか!?

 吸引力の変わらないただ一つの胃袋、アルトン的なものでどんどん食べ物を吸引していくXを見て俺はハァとため息を吐くのだった。

 

「―――――♪」

 

 すっごく幸せそうだなコンチクショウ。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 さて、話がずれてしまったがもう一度言おう。俺は今改めて修業的なことをしている。と言っても家の人が持たせてくれたサルでもわかる現代魔術を読み直したり、ランサーことクー・フーリンから教わったルーン魔術を色々と使ってみたりとするだけだ。ルーン魔術は意外と使い勝手が良くて、最近ではよく使っている。特に道具にそのルーンを刻むと効果を付属できるのがいいね。これのおかげで俺は無限にやり投げ大会ができるんだぜ。気分は世紀末オリンピック槍投げ部門優勝者の某聖帝。フハハハハ。

 

 と、こんな感じで修行しているとある日クー・フーリンに誘われたのだ。やらないかと。最初に聞いた時はとっさに自害せよランサーと言いそうになってしまったが、すぐに戦闘ということが分かった。紛らわしいわ。主語が足りんよ主語が。

 

 そんなこんなでやってきたのはカルデアにある無数の施設の一つ。トレーニングルームである。カルデアではマスターを育てて人類の未来を安定させるということを掲げていたため、このような英霊とのコンビネーションを鍛えるトレーニングルームなども備え付けられているのだ。さらに言ってしまえば、他のマスター同士で技術と英霊を競い合う時用にかなり頑丈に作られているため、壊れる心配はほとんどない。

 

 殺風景な空間の中で俺とクー・フーリンは大体五メートルの距離をとって対峙する。

 これから戦いを始める、といったところで槍を軽く振り回して調子を確かめていたクー・フーリンがふと口を開いた。

 

「なぁ、マスター。一つ聞いていいか?」

 

「どうした?」

 

「マスターが持ってる槍の中で一本だけ赤黒いやつがあるだろ?あれ、どこで手に入れた?」

 

 鋭い目つきで俺を射貫きながら彼は言う。その瞳には嘘は言わせないという強い意思が感じられた。別に嘘を吐く理由もないから素直に答えることにする。

 

「もらったんだよ。あれは確か………四年位前かな。家で当時教えてもらっていた槍を振っていたら急に年齢不詳の槍師匠がどこからともなく現れて『お前の槍、私が神代の連中にも通じる神槍にしてやろう』って言われて一週間くらい槍を教えてもらったんだ。で、そのあとあの人は来た時と同じようにフラッと消えたんだけど、餞別だと書かれた手紙とともにおいてあったんだ」

 

「………あの女……やりやがった……」

 

 クー・フーリンはどうやら槍師匠の存在を知っているらしい。というか反応が完全に知り合いの様な反応だった。……まぁ、予想できなかったわけではない。クー・フーリンの宝具ゲイボルグと俺の持っている槍師匠からもらった槍がそっくりだし。

 

「……それを聞くことができればいい。……これからマスターも大変になるだろうけど、頑張りな(ボソッ」

 

「今なんて言った?」

 

 おい、なんて付け足したんだ。

 俺だって一応一週間あの人のもとで槍を振るっていたからどんな事やるのかある程度予想ができるんだけどさ。……その呟き聞いてものすごく不安になったんだが。

 

 

「うっし、気を取り直して……さっさとやろうか」

 

 話がだいぶ脱線してしまっていたが、ここに来たのはそもそも俺とクー・フーリンが一線を交えることだったのだ。

 先ほどまで浮かべていた微妙な表情を完全に引っ込めて、戦闘時に見せる獰猛な笑みを浮かべる。この笑みは基本的に楽しめそうな奴と戦う時といい女を見つけたときに見せるものらしい(自己申告)。

 ということは現在俺は彼を愉しませることができる人間として認識されているわけで……大丈夫だよね?俺死なないよね?そんなことを考えつつも家からもらった鞄(もうこれ四次元ポケットって言ってもいいんじゃないかな)から槍を6本、つまり全部取り出す。

 

「なんだ?6本同時に使うのか?いいねぇ、そういうのは大好きだぜ。………いや、まさかマスター相手にここまで期待を寄せることができるとは、今まで、ほとんどろくなマスターに会ってこなかったが、今回ばかりは当たりかもしれねえな」

 

「喜んでいいのか悪いのか、微妙なところだなぁ」

 

 本来、サーヴァントとマスターは正面切って戦わないはずだ。あの特異点Fから帰って来た時にほかの人たちから教えてもらったから。でも、きっとクー・フーリンみたいな英霊もいるだろうと納得して、取り出した槍のうち普通の槍を2本両手に握る。

 

「…………じゃあ、始めようか」

 

「全力で行くぞ!」

 

 お互いに精神を統一させて、自分の敵たる相手をしっかりと視界に収める。自身の気配が世界と同化していくのを感じつつ、一度体を弛緩させ、リラックスした状態を作り出す。そして、その直後、全身に力を入れて爆発的なエネルギーを生み出す。八極拳の技術を応用した踏み込みから爆発的な加速を生み出しつつ、俺は一瞬にしてクー・フーリンに肉薄して槍を突き立てた―――――。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「いや、無理無理」

 

 当然のごとく、俺は負けた。

 いやほんと調子乗ってすみませんでしたと過去現在未来の英霊たちに謝りたい気持である。元人間だから勝てない道理はない(キリッ)とか身の程知らずにもほどがある。やっぱり俺に才能があるなんて嘘じゃないかな?

 

 冗談です。

 若干調子乗ってましたと反省したけれど、それであきらめるようなことはしません。なんとなくここであきらめたら各方面の師匠たちから折檻喰らいそうだし。

 

 自分の心に何とか折り目を付けて呼吸を整えたのちに立ち上がってみれば、微妙に息を切らしていたクー・フーリンが俺の槍を見ながら死んだ目をしていた。

 

「我がマスターながらなんて戦法を思いついているんだ……6本の槍を操りながら近づいてくるとか、あの女を思い出すんだが……」

 

「あれ、槍師匠もあれできるんですか?」

 

「あの女は戦闘事に対してできないことの方が少ないぞ。ま、そこら辺のことは気にすんな。気にするだけ無駄だ」

 

「そうか」

 

 なら気にしないことにする。

 とにかく、クー・フーリンと直接一戦交えたことで俺に足りないものもよく分かったため、今後はそれを集中的に強化していこうか。

 自分の課題を中心として、あともう少しだけ槍でも振るっていようかと思っていたのだが、いまだ帰っていなかったクー・フーリンが口を開いた。

 

「そういえば、マスター。いいことを教えといてやるよ」

 

「ん?」

 

 いったい何なのだろうか。

 表情で続きの言葉を促すと彼は俺が槍師匠からもらった槍を指さして言った。

 

「この槍は俺の師が持っていたものなんだ。品質は少々劣化しているが、それでもそこらの武器とは格が違う。マスターの腕が上がれば、疑似宝具として活用できるかもしれないぜ?」

 

「マジか」

 

 クー・フーリンから教えられた衝撃の真実。アイルランドの大英雄、クー・フーリンは兄弟子だった。というか、このワードで俺に槍を教えてくれたのが誰だかわかっちゃったじゃないか。……クー・フーリンが師匠と呼ぶ人物はただ一人、影の国の女王にして神を殺しまくって人の道から外れたもの。スカサハ。道理で外見の割には老人の様な態度と言葉遣いだったわけだ。実際はそんなもの目じゃないくらいに年上なんだけど。

 まぁ、それはいいとして。もう一つ、なんと宝具を使えるようになるかもしれないということである。人間でありながら宝具を使えるなんて……胸が熱くなるな。

 

 

「あぁ。こういう場合は技量が一定量に達するか、武器が持ち主を認めるかどうかだ。マスターなら近いうちに達成できるだろうし、頑張ってくれ」

 

 そういって彼はトレーニングルームから退出した。 

 一人残された俺は先ほどのクー・フーリンの言葉を参考にしてひたすら槍をはじめとする武器の修行を行った。

 

 サーヴァントを相手するにはまだ弱いと俺は感じ取れた。だからこそ、次の特異点が現れるまでには、疑似宝具が展開できるようになっていたいなぁ。

 

 

 そんなことを考えた、カルデアの12時過ぎであった。




ここの仁慈が料理できる理由。

GEの方の仁慈は家事……特に料理が苦手なんですが、ここの仁慈はそうではありません。
何故なら、料理を樫原家の中で武術として料理を認めたからである。
そこで料理に対しての修行を行い、様々なものの魂を天界へと運ぶことができるようになったらしい。
彼が料理できるのはその影響。本気を出せば、死にすらしないものの服は脱げる。

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