この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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これから第六特異点の始まりです。


第六特異点 混乱極大円卓キャメロット
第六特異点 プロローグ


 

 

 

 

 

 

――――――夢を見た。

 

 

 それはかつて私が視た記憶。先輩の体験してきた出来事。けれど、これは違う気がする。何故ならこの記憶には私やカルデアに呼ばれたサーヴァント達が映っているのだから。これが先輩の過去ということは考えられない。そして過去ではないと判断できる要因がもう一つある。先輩は今まで以上に高い戦闘能力を持っていたのです。

 

 敵はぼやけててよく見えないけれど、その戦いは壮大なものでした。今までともに特異点で戦ったサーヴァント達が一堂に会していて、見たことのないサーヴァントとも戦っていました。その中でも先輩は他の皆さんと比較しても劣らないほどの強さを誇っていました。

 

 けれど、それは同時に先輩がどこか遠い存在になってしまっているような気もして酷く不安になりました。

 盾である私よりも前に出て、見たことのない武器を振るうその姿はまるで正義の味方のようで、自分を蔑ろにしているようで――――夢とわかっていても、先輩のことを止められずにはいられませんでした……。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

『第六特異点、レイシフトできるってよ』

 

 という連絡を朝から貰ったので、身支度を整えていつも通りに管制室に向かう。当然の如く我が部屋にて俺の寝顔を眺めていた清姫は軽く流すことにした。……あれはきっといつの間にか俺の部屋に置かれていた等身大の置物なんだよきっと。ほら、ロマンなら持ってそうだし、等身大美少女人形。多分製作はダ・ヴィンチちゃん。

 ……意外と本当に作ってそうだ。俺の勝手な妄想なのに若干二人の好感度が下がってしまった。許せ。

 

 なんだかんだ言って簡単に半年を通り越し、一年に届こうかという時間利用している湾曲した廊下を歩いて管制室の中に入っていく。そこにはいつも通り、休まず働いている職員たちとロマニ、カルデア一の天才にして変態ダ・ヴィンチちゃんがいた。マシュの姿がまだ見えていないのは意外だったが、恐らく病み上がりということもあり少しずらして知らせる気でいるのだろう。

 

「おはよー」

「おはよう、よく眠れたかい?仁慈君」

「体調管理も含めて修練を行った俺に隙はなかった……。そういうロマンも、いつもより顔色がいいね。久しぶりに寝れた?」

 

 さらりと宣言した言葉にロマンが胸を押さえる。どうやらばれていないと思っていたらしい。

 

「……ばれてた?」

「うん」

「あはは……隠し事もできないとか我等がマスターは本当に万能だなぁ……」

「万能?」

「あ、ダ・ヴィンチちゃんは呼んでないです」

 

 反応早いな。

 まあ、雑談はここまでにして本題を聴こうか。なんにせよ、マシュが来るまで特異点の話はしないだろう。彼女を今更メンバーから外すというわけにはいかない。いかにその身体に限界が差し迫っていようともそのようなことを彼女自身が望んでいないと思っているためである。

 で、あれば俺が先に呼ばれたのは別の用事があると見てほぼ間違いない。

 

「というわけで、改めてなんか用?」

「ん、あぁ……もう少し待ってくれ。多分もう来ると思う――――ほら、来た」

 

 ウィンと管制室の扉が開く。

 職員たちは全員がその機械と睨めっこしているし、サーヴァント達も既にこの管制室で思い思いの待機をしている。であれば入ってくるのはマシュと所長だけだ。しかし、先程の予想からマシュの可能性を排除すると、今扉の近くに居る人物は自ずと一人だけとなる。

 

「所長、おはようございまーす」

「呑気ね」

「で、本題は?」

「早い……。ふぅ……貴方抑止力から強大なバックアップを貰ってるでしょ?」

 

 そう問いかけられた。

 ………何やら確信を持って俺にそう問いかけているようだが、生憎とこっちは何のことかさっぱりわかってない。抑止力?何それ、課金を止まらせる働きを持つ機関のことかな?……いや真面目に考えてないと言われればそうなんだけれど、本当に心当たりがない。もしかしたらナイチンゲールが言っていた病に関係あるのかもしれないけれども自覚がない。

 

 俺の反応が著しくないのを感じ取ったのか所長が焦ったように「あれ、違った?」と言っていた。どっからどう見てもパニック状態である。ちなみに抑止力云々言った時にエミヤ師匠がガタッ!と言った感じで立ち上がった。貴方じゃありません座っててください。

 

「だから言ったじゃないか……。仁慈君に自覚はないんだって……」

「ま、大体そういうもんだからねえ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんとロマンはこの結果が分かっていたらしい。ならなぜ止めてやらなかったのか。今も目が泳ぎまくっている所長はとりあえず置いておくとして、何やらわかってます的な雰囲気を醸し出している二人を問い詰める。

 

「こうなることが分かっていたなら何で止めなかったのさ」

「この私に隠し事なんて……!って感じでこっちの言うこときくような感じじゃなかったし……」

「どうせなら、うまくいけばいいかなーという感じで送り出したわけさ」

「要するに捨て石にしたってことでしょ」

 

 これは酷い。

 カルデアの責任者、所長という役職は一体何だったのか考えさせられるな。それぞれの部門責任者にいいように利用される施設内最高役職……組織として致命的なのではなかろうか。

 

「ま、とりあえず俺にその抑止力ってやつに対して心当たりはないね」

「だろうね。悪かったね、こんなくだらないことで早くに呼び出して」

「くだっ……!?」

 

 さりげなく言葉の槍が所長の胸を抉る。やめたげてよぉ。彼女のメンタルが弱いのはロマンも知ってたじゃないか……。

 そのようなことを言っていると再び扉が開いて、マシュがフォウをその肩に乗せて走ってこちらに向かって来ていた。その様子にロマンがとんでもなく動揺している。所長も動揺している。ダ・ヴィンチちゃんだけそんな二人を見て呆れた顔をしていた。色眼鏡で見ない、平常を装うとは一体何だったのか……。

 

「すみません。マシュ・キリエライト到着しました。……何やら皆さん既に集まっていらっしゃったので少し急いできたのですが……もしかして遅れちゃいました?あと、ドクターと所長の慌て具合は一体……」

「いーや、時間通りだよ。これからブリーフィングを始めるところさ。それとそこの二人はほっといていいよ。君が倒れたってことで動揺しまくってるだけだから」

 

 遠慮のない言い様ではあるが事実なので、二人はひとまず放っておくことにして俺もマシュに調子はどうかと聞いてみる。すると体調は完全に回復したとのことだった。大変結構。

 

「ま、まあそれじゃあみんな揃ったところだし、第六の特異点の話をしよう。――――事態は十三世紀。場所は聖地と知られるエルサレムだ―――」

 

 なんでもこの場所、特異点として選ばれるということが素直に頷くことができるほど人類史にとって重要なものであるらしい。俺としては歴史にそこまで詳しくないので深くは理解できなかったが……それでも後からマシュに知識を補完してもらいつつ頑張っていこうと思う。

 話は更に進み、ここは今までの特異点とは違い、放置して置いたらその時点で人類史に大ダメージを与える特異点と化しているらしい。つまり、たとえソロモンを倒したとしてもここが残っているとそれはそれでアウトということだという。それ故に難易度は過去最高というか規格外のEXと来ている。

 ……さぁ、今からいい予感が全くしないぞぉ。これは過去最高に面倒なにおいがする。

 

「じゃあ早速、レイシフト―――する前に、メンバーの選出をしてね」

「はいよー……」

 

 ロマンから言われて俺は待機している人たちを見る。

 といっても今回既に連れていく英霊たちは決まっている。……正直その判断基準はいつもの如く勘だけど。前もって出てくる敵の情報とか知れたら便利なんだけどさ。そんなわけにはいかないからなぁ。

 

「とりあえず、今回連れて行くのはXとサンタオルタね」

「正気ですかマスター!?」

「……おい、トナカイ。私をこの色物と一緒に連れていくなんて正気か?」

「誰が色物ですかミニスカサンタ。狙いすぎですよ。相性的にも私に勝てる要因ゼロのくせして生意気な」

「フン。色物以外でどう表現しろと?聞けばお前、トナカイに行く先行く先で苦労を強いているらしいな。そんなものが文句を言うなど片腹痛い」

「クリスマスに無理矢理マスター拉致ったミニスカに言われる筋合いはないんですー!というか、私の特異点参加率は断トツトップ!脅威の四回ですよ?新人の貴方にどうこう言われる筋合いとかないですしおすし!」

 

 喧嘩するなよ……。

 他の人たちの視線が痛い。何でよりにもよってこの二人を組ませたのかという疑問がありありとみることができるのだが、仕方ないじゃない。これの方がいいと囁いているのだから。

 

「じゃ、行くか」

 

『この状況で!?』

 

 大丈夫だって。こっちで何とかするから。

 

「X-、サンタオルター……早くやめないと――――置いてくよ」

『ちっ』

 

 渋々という感じで一応争いをやめてくれる二人。これはお詫び不可避ですね……。無茶だと分かっていてもナイチンゲールの時のようなこともある。仲間の仲が悪いことはあまりいいということではないのだが、彼女の時のようにそういったことがいい結果を招くことにもなるかもしれないしね。

 

「じゃあ、改めて行くよー」

『はーい』

 

 帰ってくる返事が一つ多かった気がする。

 とりあえずコフィンの中に入り込むメンバーを確認してみる。マシュ&フォウ。割といつもの事なので問題なし。ヒロインX&サンタオルタ。こっちから指名したため問題なし。レオナルド・ダ・ヴィンチ――――おかしい。

 

「ファ!」

「ちょ、ちょ、ちょ……!何やってんのキミィ!?何で余ったコフィン開けているんだい!?」

「何でって……そりゃ、相手は前人未到の人理定礎評価EX。仁慈君には天才の助けが必要さ」

「仁慈君に助けなんているわけないだろ、いい加減にしろ!」

「ちょっと待とうか」

「ハッハッハ、いや別にエルサレムの造形が気になるなーなんて思ってないよ?」

「それは認められないぞ!?一度レイシフトしたら人理定礎を修復するまで帰ってくることはできない!」

「……今のカルデアに必要なのは人間(キミ)だよ、ロマニ。私は、唯の気楽なサーヴァントさ。それに私の代わりはエレナ君にもうお願いしてあるんだ」

「よくってよ!」

「―――はぁ……。分かったよ。協力まで依頼されているんじゃあ仕方ない。精々仁慈君に振り回されると良いよ」

「だから……!」

 

 なんで一々俺を引き合いに出すんだ。いい感じの雰囲気を出しやがって……!この裏では俺の犠牲(名誉)があるんだということを忘れるなよ……。

 

 

 

 

 

 

 


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