この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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今週から休みも開けるのでまた不安定な更新になってしまうと思いますが、これからもよろしくお願いします。
………4月1日の嘘話?そんなものは上げません。


王は騎士の心がワカラナイ(困惑)

 

 

 

 

 

 

 

 完璧な騎士。そう呼ばれていたのも今は昔の話……。というわけではないが、割と完璧に近い騎士であるガウェインは今、その完璧さなんてかなぐり捨てて硬直をしていた。騎士として……いや、戦士として三流もいいところの行動ではあるが、その混乱を鑑みれば同情の余地があるかもしれない。

 完璧を形にしたような騎士だったガウェイン……それを唯一完璧でなくした存在。彼にとってのある意味でアキレス腱と言ってもいいアーサー王。ガウェインは彼の王を屈辱されると冷静さを欠き、倒されたという逸話が残っている。それは英霊となった彼にとっても致命的と言えるものだった。

 ……まぁ、今回に関してはもはや冷静さ云々の話ではないのだが。彼はもうどうしようもなく理解してしまっているのだ。目の前に居る奇天烈な恰好をしている少女が、己の王であることを。

 

「何をしている、疑似セイバー。さっさと止めを刺せ」

「私でもドン引きする発言ですね……言われなくてもやるつもりですけど」

 

 ただでさえ混乱の渦に身を投じているガウェインに、天はこれでもかといわんばかりに更なる爆弾を叩きつけた。

 アーサー王と思われる……いや、アーサー王であると確信できてしまう人物がもう一人現れたのだ。黒いゴスロリドレスに似た格好をし、黒い聖剣を持っている見どころ満載な恰好をしつつもその手に持っている巨大な白い袋が圧倒的存在感を放っている。そう、彼女はあからさまにサンタクロースなのだ。

 もう頭が割れそうだった。いや、実際に頭を何回も鈍器で殴られているのではないかと彼は思った。己が手を下した円卓の騎士たちの怨念なのかと血迷ったことを一瞬考えもした。……それほどまでに、目の前の光景は信じられないものだった。

 

「なん……です、と……?」

 

 言葉が出なかった。頭がおかしくなって死にそうだった。とりあえず一人でじっくりと考える時間が欲しいとガウェインは切実にそう思っていた。しかし――――今までの行動のツケなのか。彼のことなど知らないものとして事態は進んでいく。

 

「――――じゃあ、このゴリラどうしましょうか?動揺してますし今ならこのまま潰せるんじゃないんですかね。というか、潰していいですよね?マスター」

「潰せるなら。ただし、援軍を呼ばれる可能性もなくはないからあまり時間はないけど」

「りょーかいです。……さぁ、いきますよバスターゴリラ!お前の罪を数えろ!」

 

 まず斬りかかるは最初に不意打ちをかましたヒロインX。頭の整理が全くついていないガウェインに向けて彼が持つ聖剣、転輪する勝利の剣の姉妹剣。約束された勝利の剣である。

 三倍の力を持っている午前のガウェインでも、精神的に万全の状態でなければ卓越した技術は振るうことができない。相手が約束された勝利の剣を武器としてアーサー王そのものと言ってもいい容姿を持った彼女相手では余計に実力を出せないでいた。

 

「お、王よ……」

「おっと、私は最優にして最強クラスのセイバー・アルトリアとは何の関係もありません。唯の通りすがりのセイバーです。…………どちらにせよ、無辜の民を虐殺する騎士なんて私知りませんけどね」

「―――っ……!」

 

 ヒロインXの精神攻撃にガウェインの剣筋が鈍る。その隙を狙って襲い来るのはもう一人のアーサー王。反転化したアルトリア……が、オルタの悪印象を払拭するためにサンタクロースになったという経由で生まれたわけのわからない出典のサンタオルタである。反転化しているが故に一騎打ち等のこだわりはない。どちらかと言えば勝てばよかろうなのだ寄りの思考回路となっており、実に仁慈の好みに合ったサーヴァントである。むしろ、ヒロインXとサンタオルタがそう言った性格だからこそ仁慈に召喚されたと言える。

 

「更に王が……増えた……!」

「どいつもこいつも我が王我が王と崇めるからそう混乱するのだ、太陽の騎士。獅子王を崇めるのであれば、せめてそれを全うしろ。―――それが、円卓の意味をはき違えた貴様にできる唯一の事柄である」

「……ッ!!」

 

 ヒロインXとサンタオルタはガウェインに次々と剣を突き立てる。それはある意味で、セイバーばっかり増やす神の計らいにより実現したコンビネーション。彼女たちは騎士……ではないが戦士である。戦うものである。己の力量を理解しているし自覚もしている。故に彼女たちはまさに隙も無い攻めを行うことができるのだ。例え、それがかつての己と余りにもかけ離れた姿でも……!

 傷をつける……というところまで行かないものの、それでも確実にガウェインを二人は追い詰めていた。ぶっちゃけ、実態を持つ剣よりも彼女たちがその攻撃と同時に放った言葉の刃の方がよっぽどガウェインにダメージを与えていた。もうガウェインの表情にマシュ達を追い詰めていた時の余裕は残っていない。既に彼の表情は何処か親に怒られるのを恐れている子どものようだった。

 

「―――すみません、Xさんサンタオルタさん……私も加えてください……!」

「………いいですよ。断る理由もありません。どうせ、普段から割れている円盤です。今さら四分割されようが別にいいでしょう」

「そうだな。というか、私はもう割り切った。円卓のように」

 

 サンタオルタが何気なく放ったその一言は、ガウェインの相手をしておらず、地味に囲もうと近づいてきていた残りの粛清騎士を逆に粛清()していたダ・ヴィンチと仁慈の表情を引きつらせた。笑えないと。

 

「私は、貴方を敵と見ることができません。――――しかし、それでも私は貴方を、あなた方を止めたいと思います!」

「――――……まさか、貴女は……!?」

「おぉっとそこから先は言っちゃだめですよゴリラ。この話はもうちっとだけ続くんですから」

「その通り。貴様はこのまま、座に還れ」

 

 マシュの加入によりさらにその強固さを増したカルデア陣営。もとより実力などを度外視して円卓特攻を持っているアーサー王とマシュの防御力によりこれ以上ないほどに勢いづく。 

 一方、精神に次々と叩き込まれていく言撃。それが逸話のことも相俟って三倍の性能を生かしきれいないガウェイン。

 このままではたとえ日中であったとしても彼が傷を負い、聖者の数字を発動できなくなるかもしれないと思われた。

 

 が、ここで仁慈が恐れていた事態が発生する。

 彼は相手にしていた粛清騎士の首を捻じ切った後、左手に持っている小太刀を素早く投擲した。通常の人間……普通の人間ではなく半分サーヴァントと言える状態である粛清騎士すらも反応できない速度で投擲された小太刀はガウェインの身体を見事に掠ることすらせずに通過した。

 そこで、戦場に似つかわしくない音が彼らの耳に届いた。得物同士がぶつかり合うことによっては決して聞くことがない、楽器の音。

 

「サー・ガウェイン。一体何を遊んでいるのですか。聖罰が終わったら速やかに聖都に帰還する……それこそが貴方の職務。我らが王より賜りし事柄でしょうに」

 

 出てきたのは赤毛の優男。手には弓と思わしき武器を持ちながらも一度も矢をつがえることはない。常に閉じられている瞳。見えないのかと思えば、その動きは眼が見えているとしか思えない身のこなし。

 そして何より彼らにとってその優男は一度見たことがある人物だ。そう、彼らが介錯したアサシン。それを呼び起こす原因になった無抵抗の一般市民、無辜の民の首を全て刈り取った男。ヒロインXとサンタオルタがトリスタンと言った人物である。

 

「トリスタン……」

「来たな鳥公」

 

 円卓の騎士が一人、トリスタンの登場に誰しもがその方向を向いた。仁慈は周囲の敵をダ・ヴィンチちゃんに任せてマシュ達の場所へと戻ろうとする。

 

「いやちょっと待とう。流石の君でもアレの相手は荷が重すぎると思うんだけど……!?」

「そうだけど。それはマシュ達にも言えることなんだよなぁ……」

 

 マスターが遠くに居れば不測の事態に対応することができない。令呪の切り時、撤退のタイミング……なにより仁慈とてこれまでの特異点探索で培っていた技術と魔術がある。特にエレナが来てからサーヴァントの補助に対する魔術はかなりの成長を見せていた。そのことを知っているダ・ヴィンチも最終的には彼の意見を通す。彼女とて、マスターなしにトリスタンと渡り合うことなどできないと考えていたのである。

 

「この声……まさか、我等が王……!?おぉ……まさか、王が召喚されていたとは……私は悲しい」

「悲しいのはこっちですよ。何が楽しくて無辜の民を虐殺する嘗ての仲間をみなきゃいけないんですか」

「私はかつて、村を見捨てた。それは事実だ。そのことに関して貴殿等に思うことがあったのも又理解している。……だが、それでも自ら民を殺しに往けと、命じた覚えはなかったが……」

「そうでしょう。そうでしょう。嘗ての私ではこの事態に耐えることはできなかったでしょう。自分が起こして来た行動、その残酷さに自決を選んでいたかもしれません。ですが……獅子王の円卓となった私にはそれがありません。……それらは、我等が獅子王の元では何の役にも立たないのですから」

「――――ちっ、この気配……反転か!」

「自身の行いに耐え切れず属性を反転させましたか……。そこまでするならあのバカ息子を見習って反逆の一つでもおっ立ててばよかったものを。というか、反転ってどこまでが反転なんでしょうか?もし反転してこの忠誠心だったら生前の彼は……」

「それ以上いけない」

 

 ヒロインXの呟きに既に彼女たちの近くまで来ていた仁慈が待ったをかける。それ以上言ってしまってはここから先―――主にギャグルートで出て来た時のトリスタンの株が大変なことになってしまう。彼の忠誠心は、反転の性質をもってしても侵すことのできなかった不可侵にて完全なものであると思っておけと彼は言葉にせずとも語っていた。

 

 などと、ふざけ合っていてもこの増援は見逃すことのできない事態だった。ガウェインについては彼のメンタルが弱まっているおかげで何とか優位を保てていたが、実力的にもそして何より精神面でも強大なトリスタンが来たとなれば、今の仁慈達に対抗できる手段はない。マシュの防御もトリスタンの不可視な攻撃に対してどれほど有効なのかわからない。故に仁慈は実は内心結構焦っていた。

 

「―――それに、たとえ我が王とて今はサーヴァント。であれば不遜にも従えているマスターがいるはずです」

 

 見えないはずの視線を仁慈に向けるトリスタン。そして、すぐに彼は持っている武器・妖弦フェイルノートを奏でた。瞬間、仁慈は弾かれるように後ろに下がる。そしてその後、下がった身体―――その上半身を逸らせバック転を行うとそのまま三転。さらに休むことなくその身体を空中へと躍らせる。

 仁慈が通った軌跡に不可視の矢と化した音が次々と殺到した。宙に移動したことを目以外の五感で感じたトリスタンはそちらに向けて狙いを定めると素早くフェイルノートを奏でようとして―――マシュの攻撃を察知して回避行動を行う。

 

「なんと、初見でこれを見破られるとは……大したものですね」

「二回目だから」

「…………」

「後でともに王の裁きを受けるとしましょう。トリスタン」

「私は悲しい……」

 

 ポロロンとフェイルノートを奏でながら悲しみを露にするトリスタン。奏でられた音は当然矢となり仁慈を強襲するが、サンタオルタが射線上に割り込みあらゆるプレゼントをありったけ詰め込むことができる強度を誇る袋で叩き落す。

 多少、気の抜けた雰囲気が流れるがそれでも油断できない状況であることは理解している。

 ……本格的な戦いが始まる前に、一言ヒロインXがガウェインとトリスタンに問いかけた。

 

「最後に一つだけ聞きます。この命令を下しているのは、獅子王ですか?」

「その通りです」

 

 何の躊躇いもなく答えたトリスタンにもはや語るべき言葉はないと片手に聖剣もう片方に堕ちた聖剣を構えた。

 

 

――――その瞬間、今まで周囲の敵を一掃することに尽力し、それが終わったダ・ヴィンチちゃんが叫んだ。

 

「さて、皆!口を開けて目を閉じ、ついでに耳もね!」

 

 唐突に出されたその指示。普段であれば即座に反応することは難しい。けれどもカルデアに関しては別だ。彼らにとって不測の事態、急な指示、全てが日常茶飯事。これくらい即座に対応できて当たり前である。やはりカルデアは地獄だった。

 

 さておき、仁慈達の返答を待つことなくダ・ヴィンチはガウェインとトリスタンの間にある物体を投げ込んだ。それは彼女特性の閃光玉。音、光ともに最高峰のものだ。目は数分間完全に見えなくなり、耳だって三半規管に影響を及ぼすレベルの爆音を搭載している。何故ならあれはハロウィンエリザベートの音波をダ・ヴィンチちゃん式驚異のメカニズムで内包しているので、下手すると三半規管ではなくそれ以上の何かに影響する可能性もある。

 

「これは、目がっ……」

「あ”ア゛ア゛ア゛ア゛!」

 

 この閃光玉に何よりに被害を被ったのはトリスタンである。目を使うことができないために他の五感が鋭くなっている彼にとって耳を攻撃されるということは何より辛いものだったのだ。

 仁慈達は閃光玉の効果が切れた瞬間、すぐさまこの場から撤退をした。今の彼らでは少なくともガウェインを排除することはできない。トリスタンも耳が使えず絶叫しているとは言え、流石に近くまで来たら何かしらの反撃が来るかもしれない。

 まぁ、遠距離の宝具は使うのだが。

 

「サンタオルタ!」

「任せろトナカイ。円卓は円卓でも、椅子の高さが均一でないなら意味ないではないかモルガーン!」

 

 真名開放が適当……どころか開放してすらいないのだが、それでも彼女の黒い聖剣は魔力を溜め込み黒い極光を放つ。そして、目を塞ぎ込んでいるガウェインと耳を塞いで悶えているトリスタンを無慈悲に飲み込んだ。仁慈はそれを見届けたのちにすぐさまこの場から離れる。あれだけ派手な攻撃をぶっ放せば確実に増援が来ると理解しているからである。

 

 こうして、仁慈達は助け出した難民の殿を務めながら聖都から離れていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベディ「……あれ?」

すまんな。既に閃光玉投げる位の隙はこちらの戦力(精神攻撃込み)で十分なんだ……。

後、実は四月馬鹿全開の話は活動報告に上げてます。
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