この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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フランスの今

「ぐはっ………!なんて強さだ……!あいつら人間じゃねえ……特にあの白い服のやつ」

 

「うぐっ、もはや化け物だ……!あの特に白い服のやつ……ッ!」

 

「後ろに目でもついてんのか!?あの特に白い服のやつ………!!」

 

「もうだめだぁ……おしまいだぁ……。勝てるわけがない、相手は伝説の超常識外人(スーパーキチガイ)なんだぁ……特にあの白い服のy「もういいわ」……」

 

 フランスの斥候部隊白い服のやつ(俺)のこと押しすぎィ!この中で一番身体能力が低いのは俺のはずなのに、一番俺が恐れられているとかどういうことなの……。

 

「別にそこまで不思議なことじゃないぜ?」

 

「ええ、そうですよ。私たちは基本的に敵を死すべししているので、今回のように普通の人間を死なないように戦うことはなれていないんです。それに私の聖剣、両方とも刃ですし。峰打とかできませんし?」

 

「私の場合は自分の身体能力を制御しきれていませんから」

 

 程よく加減ができる……というか、一番本気に近い俺が一番強く感じられたとでもいうべきなのだろうかね。いや、流石にそれはどうだろう。微妙に納得できないんだけど……。まぁ、いいか。今は置いておくとしよう。それよりも、せっかく話すことができる状態で地面に沈めたわけだし、この時代のことや現在の状況等色々聞き出してみようじゃありませんか。

 

「おい、待て。何でそんな笑顔で近づいてくるんだ……?なんだその笑顔は、超怖いんだけど!?まて、やめろ……!俺の、俺たちの……俺たちのそばに、近寄るなァァァァアアアアアアアア!!」

 

 いったいどうしてそこまでおびえているんですかねぇ……。俺たちは平和的にOHANASHIしたいだけなのに(ゲス顔)

 まぁ、何はともあれ尋問開始だな。久しぶりにお兄さん頑張っちゃうぞーと心の中で考えつつ、ボス状態のフランス斥候部隊に向かっていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「今の時代、どこもかしこもこんな感じの状況だな……もぐもぐ。戦争の休止中だっていうのにここまで俺たちが衰弱しているのはこういうことがあったからだな………んぐっ、おかわり」

 

『あっ、俺たちもお願いしまーす!』

 

「マスター、私にも後3倍ほどください」

 

「自重ってもんを知らんのかお前は」

 

 露骨に食い気キャラをアピールしてきやがって……!お前セイバースレイヤーというサツバツとした生き物じゃないのかよ。

 

――――――馬鹿弟子よ、理解したか?これが、騎士王を食わせていくということだ――――――

 

 おっと、変な電波を英霊の座あたりから受信してしまった。と言うか師匠、それは別の主人公のセリフだと思います。

さて、現在俺たちがなにをしているのかと言われれば、フランス斥候部隊から情報を聞き出す尋問の真っ最中である。やることは簡単、腹が減ってクタクタであろう彼らの前で飯を食うだけである。こちらにはXという名の最強腹ペコモンスターが存在しており、料理を美味そうに食べてくれるため彼らが堕ちるのは時間の問題だった。そうして、現地で取れた材料を使って彼らの胃袋をつかみ、情報を引き出すことに成功したのである。俺たちも朝ご飯はまだだったし、ちょうどよかったぜ。

 

 それはともかく、フランス斥候部隊たる彼らの話を聞けば結構とんでもないことになっているということがわかった。なんでも、数日前に処刑されたジャンヌ・ダルクが魔女として復活を果たし、数多の竜を従えてフランスの町や人を焼き払っているらしい。百年戦争の休戦もジャンヌ・ダルクには関係がなくフランスはどんどん追い込まれているとのこと。

 

「この時代、フランスに竜なんていないよな。当然のことながら」

 

「居たら大惨事ですよフランス」

 

 

ですよねー。

本当にそんなのが存在していたらフランスはどうやって現代まで残ったのかという話になるし。なにはともあれ、その魔女になり復活したと言われるジャンヌ・ダルクがこの特異点を作り出した元凶と現段階では仮定しよう。そうなると、十中八九向こうに聖杯が渡っていることとなる。これは面倒だぞ。

 

「確かに厄介だ。冬木の時みたいにサーヴァント擬きを大量に生産されたら目も当てらんねえ。強い奴と戦えるのはいいが、堕ちた英霊なんて戦っていてもなんも面白くないからな」

 

 クー・フーリンらしい言葉だな。しかし、今回は状況が違う。冬木にあった泥なんておそらく存在しないだろう。カルデアに帰ったときにそこら辺のことを調べてみたのだが、あれはいつぞやにアインツベルン家が呼んだアンリ・マユという英霊の所為でああなったらしいし。つまり、ここに在る聖杯は純粋な願望機である可能性が高い。出てくるのはシャドウサーヴァントではなく純粋な英霊の可能性もある。というか、竜を伴ってくる時点でほぼ確定だと俺は思うんだ。

 はぁ、今から気が重くなってきたわ。そんなんで、頭を抱えていると俺が作ったご飯をぺろりと平らげたフランス斥候部隊のうちの一人が俺に話しかけていた。

 

「旅(?)のお方。もしよければ俺たちの本拠地に来てくれないか?そこに残っている仲間にもあなたの料理を食べさせてあげたいんだ。それに、そこにいる奴は実際に聖女様が復活したときに現地に居たらしいから」

 

「別にいいですよ」

 

 情報は多ければ多いほどいいから。多すぎて困るという場面は中々ない。唯、この人たちのことがちょっとだけ心配になった。知らないし服装からしてとんでもなく怪しい俺たちのことを本拠地に送るとか正気かよ。これが嘘の可能性もあるけれど、表情から考えるにそれは低いだろう。

 そう結論をつけた俺は自分のサーヴァントたる兄貴とX、マシュに視線で同意を求める。同意ももらえたところで俺たちカルデアチーム(仮)は彼らにてこてこついていくこととなった。野を越え、山を越え、襲い来る骸骨で築き上げた屍の山を越え彼らの言う本拠地へとやって来た。一見すると砦の様なものであるが、ところどころ壁が破壊されていて若干廃墟とも見えなくもない。

 そこを本拠地とする兵隊もぼろぼろで生気を感じられない。だいぶ参っているみたいだな。

先程と同じようにフランス斥候部隊の兵士たちを飯で釣りつつ、情報を引き出そうとする。しかし、そうなる前に上空から聞いたことのない咆哮が響き渡った。それを聞きつけたフランス斥候部隊は全員が怯えた表情を浮かべつつ、戦闘態勢をとった。

 

「ぜ、全員戦闘態勢を取れ!奴らが……ドラゴンが来るぞ!」

 

 隊長と思わしき男の言葉とともに上空から姿を見せたのはワイバーンという種類に分類されるドラゴンであった。その体は緑色をしており、どこか某狩りゲームのワールドツアーを行うドラゴンの、奥さんのようにも見える。サマーソルトなんて撃ってこないだろな。

 

 そんな感想を抱きつつも、上空から襲い来るワイバーンの様子を観察する。数は二桁、少なくとも20はいるだろう。 この状況において20っていうのはなかなかに辛いものがあるなぁ。情報を引き出すためにフランス斥候部隊も守らないといけないし。それにこれが敵によって生み出されたということを忘れてはいけない。死んだら自爆するとか、視覚を共有しているなどというステキギミックがつまっている可能性もゼロではないのだから。

「ランサー、アサシン!2人してなるべく多くのワイバーンを相手にしてくれ!マシュはフランス斥候部隊の前で撃ち漏らしの足止め!俺は遊撃に回る!」

 

「おう、任せな!」

「先輩の期待に応えてみせます!」

「ふっ、いいでしょう。最良にして最強のセイバーたる私が……最強の!セイバーたる!私がッ!その命令、完遂してみせます。……ところで、あのワイバーン。倒したら丸焼きにして食べませんか?」

 

とても頼もしい返事(一部を除く)を受け取り、俺たちは一斉に動き出す。と言うか、セイバー強調しすぎだろ。そんなにアサシンと呼んだことが不満か。

クー・フーリンたる兄貴は、その俊敏さと、宝具を以ってして一度の槍投げで三体の心臓を穿つ。普段はアレなXも、星が精錬した勝利の聖剣をブンブン振り回しつつ上空から襲い来るワイバーンを卸していく。しかし、彼らでも流石に二十体のワイバーンはきついのか、数体彼らの横を素通りしてくる。だがその討ち漏らしもマシュが必死に盾を構えてフランスの斥候部隊にワイバーンが行かないように防いでいた。もちろん俺だって黙って見ているわけではない。兄貴監修のもと、持っている武器のすべてにルーンを刻んだ弓と矢を使ってワイバーンの鱗……は硬すぎるので目や口の中といった比較的柔らかいところに撃ち込み効果的かつ地味な嫌がらせを行う。

 

 けれども、ワイバーンは腐っても最強種であるドラゴンの一種である。弓を構えている俺が邪魔に思ったのか、マシュのことを一端置いておき、三匹のワイバーンが俺のもとへと襲い掛かって来た。位置的有利を利用した強襲に危機感を覚えた俺は弓を消して槍を取り出す。

 そして、逆にこっちから強襲を仕掛けた。槍を持って地面を踏み込み、襲い来るワイバーンの顎をぎりぎりでステップを利用して回避すると脳髄にルーン強化を施した槍を突き刺す。脳髄をぶちまけながら地面に落ちるワイバーンに見向きもせずに第二陣として向かってくるワイバーンの相手をする。

 

「ガァッァアアアア!!」

 

「――――っ!?マジか!?」

 

 一匹目の調子で二匹目も倒してやろうかと思ったが、背後から三体目が既に攻撃を構えていた。まさかの挟み撃ちである。考えたなコンチクショウ。兄貴とXは目の前のワイバーンに気を取られてこちらには気づいていない。マシュは確実に間に合わない。

 一か八か、自分の身体能力を魔術とルーンで底上げしてか槍を棒高跳びのようにして上空へ跳び上がろうと考える。うまくいけばひとまとまりになったところを攻撃できるかもしれないし。

 

 覚悟を決めて槍を地面に突き刺そうとしたその時――――

 

「GUAAAAAAAAA!!??」

 

 背後からワイバーンの悲鳴のようなものが耳に響き渡る。それを聞いた瞬間振り上げていた槍を地面ではなく目の前まで迫っていたワイバーンに突き刺した。自分の安全を確認したのちに背後を振り返ってみると、そこにはXと同じような美しい金髪を後ろで一本の三つ編みにした女性が一人立っていた。手に持っている旗にはワイバーンの血が地味に付着していた。まさか、あの旗でワイバーンを殴殺したのだろうか。

 倒した方法に戦慄していると、俺を助けてくれた彼女はこちらをゆっくりと振り返り、戦闘態勢を取ったまんま震えているフランス斥候部隊の人たちに向かって語り掛けた。

 

「みなさん。水を被って下さい。少しだけですが、あの竜からの炎を防ぐことができます。それに……フランスの方ではない人たちが一生懸命に戦っているのです……我々フランスの民が立ち上がり、戦わずして誰が戦うというのでしょうか!」

 

 鈴の音のような声から紡がれるのはフランス斥候部隊の兵隊たちを振るい立たせる言葉。その言葉はまるで自分たちよりも上位の存在から語り掛けてくれているような錯覚を覚える。

 

「さぁ、立ち上がるのです!我々には神のご加護があるのですから!」

 

『う、うぉぉおおおおおおお!!』

 

 振るい立たされた兵士たちはこぞって水を被り、残りのワイバーンたちに突撃をかましていく。そのため、マシュと俺は斥候部隊に張り付きつつワイバーンたちを狩り始めた。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 ワイバーンとの戦いは既に残り数体だったためにすぐさま決着がついた。これで大団円になるかと思いきや、先ほどまで戦っていたフランスの斥候部隊が俺を助けてくれた金髪の女性をジャンヌ・ダルクと言って逃げて行ってしまった。一方、その件の女性の方は少しだけ悲しそうな表情を浮かべたものの、すぐさま引っ込めて毅然とした表情で俺たちに向き直った。

 ………向こうもこちらと話をする気があるらしいので、こちらから話しかける。

 

「色々と話を聞かせてもらっても大丈夫ですかね?」

 

「えぇ、もちろんです。しかしここで話すのは何なので、少し場所を移動させましょう」

 

 ジャンヌ・ダルクと呼ばれた彼女の言葉にうなずくと、ワイバーンの死体に近づいて星が精錬せし勝利の剣を使って肉を切り離しているXに対して呼びかける。ここから移動しますよー。……ワイバーンの肉はもう鞄に詰め込んだからはよ来い。

 

「丸焼きですよ!?それもただの丸焼きではありません。漫画の如き肉を所望します!漫画肉ですよ、漫画に……く……」

 

 テンションアゲアゲで漫画肉を要求しながらこちらに来るXだったが、俺たちの方向を振り向いた瞬間、その顔を下に向けてしまった。違和感を覚えた俺は彼女に再び声をかけてみるも、反応はなかった。俺に対する反応はなかったが、彼女はひとりでに顔を上げて目をカッと見開くと、虚空から冬木の黒騎士王が使っていた黒い聖剣を召喚し、もともと持っていた聖剣とともに構えた。そしてその直後、二振りの聖剣から魔力を放出し、ジェット機の如き轟音と速度をまき散らしながらこちらに突撃をかましてきた。なんで!?

 

「新たなるセイバー(顔)死すべし!!」

 

 どう考えてもセイバーじゃないですけど!?先ほどの戦いを見ていなかったから仕方ないと思うけど、この人攻撃手段は旗でついたり振るったりするんだぜ!?強いて言えばランサーっぽいけど……。もしかして、自分に似た顔にも反応するのかあのジャージ王!

 

 内心ツッコミを入れつつも、ジャンヌ・ダルクの前に立つ。その後、ジェット機のごとくこちらに向かってくるXを視界に収める。一応令呪も使うことができるが、これは本当に最終手段と言ってもいい。このような場面で使いたくはなかった。仕方がないので、こちらに向かってくるXの突進を闘牛士のごとくひらりと回転をしながら回避する。その後、回転を利用した回し蹴りをXの首筋に叩き込んだ。

 

「ワイバーンの丸焼きを作ってやるからさっさと帰ってこい!」

 

 手加減?そんなものはない。生物学上女性だとしても、今彼女は英霊であるし、アーサー王だ。俺の攻撃を喰らっただけで死にはしないのだ。多分。

 バキィ!という人体から決してなってはいけない音を立てつつXの体は地面に沈んだ。マシュと兄貴はドン引きである。仕方ないね。これが一番手取り早いから。

 

 自分で蹴り飛ばして地面に沈めたXを介抱するというマッチポンプと言われても文句は言えないレベルのものなのだが、残念ながら優先順位が違う。

 俺たちはXが目を覚ますまでにジャンヌ・ダルクとこの時代のことに対する情報と俺たちがここに来た目的などを話した。

 

 


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