自分から話の流れを乱しておきながら、話の到着地点を見つけることができなかったんです。
今回は無理矢理ひねり出した&久しぶりなので人物の性格などがおかしいかもしれませんがご容赦ください。
あと………タマモの水着がドストライク過ぎてやばいわ。
「バーサーク・セイバー、ランサー、アサシン、ファヴニールまでもやられましたか……。まさかここまで追いつめられるなんて」
私と相対している黒いジャンヌ・ダルク……省略して黒ジャンヌは今まで常に浮かべていた憎々しげな顔をさらに歪めてそう吐き捨てた。その行動、その発言に私はどうしても違和感を感じてしまう。
いくら考えても、何度自分を見つめなおしてもあのような感情が私の中にあったとは思えなかったのだ。あれが元々同じ自分だったとは全く考えられない。
「………これ以上の抵抗は無駄だと思いますが?」
「ハッ、何を言ってるの?この私がこのくらいであきらめるはずがないでしょ?それくらいわかるでしょう。残りカスとは言え、貴女は私なのだから」
「………そのことなんですがね。貴女、本当に私なのですか?」
自分の中にあった疑問を当の本人に尋ねてみる。
「ここにきてそれを言う神経だけは認めてあげるわ。反吐が出そうですがね。まぁ、潔癖症な哀れな聖女様にはふさわしい言動だけれど」
「では一つ質問します。貴女は神からの啓示を受ける前、どこで何をしていたのですか?」
「随分と苦しい言い分ね聖女様。そんなの決まっているでしょう?………えっと」
最初は威勢よくこちらに噛みついていた黒ジャンヌも記憶を探っているうちに何度か首を傾げていた。そして、どうして思い出せないのかと焦りのようなものが表情から出てきていた。
……やっぱり思い出せませんか。
「…………まさか」
黒ジャンヌは心当たりがあるのか、自分たちが陣取っていたオルレアンの中心部をチラリと睨みつけた。
その後、すぐにこちらに視線をずらし竜を一体呼び出して、それに跨ぎオルレアンの方に飛び出そうとした。
「逃がしません!」
「焦らなくても後で相手してあげますよ。そもそも、一人の女の子を寄って集って倒そうなんて体裁が悪いでしょう?」
意味不明な言葉を残して逃げようとした黒ジャンヌ。しかし、そこで黒ジャンヌの逃亡を拒む人物が居た。
この状況の中で容赦なく敵を叩き潰す精神を持った、人間らしい人間の最後のマスター。
「まぁ、もう少しゆっくりしていけ」
樫原仁慈。
人間にしてマスターと言う存在にも関わらず、もうサーヴァントでいいんじゃないかなと言いたくなってしまうような戦闘力を誇る常識の範囲外にいる人。
彼は相変わらず全く気配を悟らせないというサーヴァントでも再現が難しい技術を用いて黒ジャンヌの乗っているワイバーンに近づいた。その後、言葉を放ちながら流れるように丸太よりも太いワイバーンの首を斬り落とし、黒ジャンヌを地面に叩き伏せた。
地面に落とされた黒ジャンヌは唐突なことながらもしっかりと受け身を取り、跳躍して一気に距離を取った。
「サーヴァントよりも早く行動を起こすマスターとかちゃんちゃらおかしいわね。本当にどうなっているのかしら」
「ケルト式ブートキャンプの成果、とだけ言っておく。詳しいことはうちの兄貴に聞くと良い」
「お断りだわ。自分から行ったとはいえ、何度もやりたいようなものじゃねーし、そもそも思い出したくもない」
「………何だろう。後々盛大にとばっちりを喰らう未来が見えた。兄貴と一緒に」
言っているうちに、今までそれぞれ戦っていた皆が黒ジャンヌを取り囲むように集まって来た。
「この絵面、完全に貴方が悪役に見えると思うのだけれど?」
「特異点がなくなったらこれらは全部なかったことになるらしい。つまりはそういうことだ」
「その言い分はどうかと思うわ」
――――――――激しく同意します。
今までとはうって変わって、これまでの彼女の行動を無視してでも味方になりたいくらいには思いっきり同意した。心の中で。
―――――――――――――――
ふざけたようなやり取りではあったものの、彼らは誰一人として黒ジャンヌから目線をそらすことはなかった。彼女が一歩でも動けば即座に捕らえ、場合によっては殺すこともできる態勢をキープしている。それでもなお黒ジャンヌに止めをさしに行かないかと言えば、彼らは聖杯の回収をも目的としているからである。聖杯の在り処が分からないうちに彼女を倒してしまうと回収が面倒、もしくは別の誰かに渡ってしまう万が一の可能性を考えているからである。
黒ジャンヌもそれが分かっているからこそ、むやみに動いたりはせず唯々自分の味方であるジル・ド・レェを待っているのだ。普段は彼のことをうっとおしがっている彼女ではあるが、彼が自分のピンチに現れないことはないと確信している。だからこそ、この硬直状態でなるべく時間を稼ぎたいと黒ジャンヌは考えているのだが……
「やっぱり聖杯とか関係なく止めさしに行こうか。よくよく考えたら、何とかできるのであればすでにやっているだろうし」
ここで仁慈の呟きが戦況を大きく変えることとなる。今の今まで聖杯を警戒してきた彼だったが、黒ジャンヌが動きを見せない事から既に手はないと踏んだらしく、サーヴァントたちに止めをさせるように魔力を流し込んでいた。
黒ジャンヌはこのままではまずいと考え、一か八かこの数のサーヴァントたちの魔力タンクとなっている信じられない存在の仁慈を殺そうと一歩踏み出そうとした。だが、結局彼女が踏み出すことはなかった。何故なら、それよりも先に仁慈に襲い掛かった人物が存在したからである。
その人物とは――――――――――
「貴様らぁぁああああ!!我等が竜の魔女たるジャンヌに何をしているかぁぁぁああああ!!??」
カエルのようなぎょろ目をぎょろぎょろと突撃をかまそうとしてくるジル・ド・レェだった。
彼は自分がキャスターのクラスで呼ばれる要因でもありある意味元凶と言い換えてもいいかもしれない
子どもが見れば大号泣不可避なこの光景を受けても仁慈はびくりともしなかった。むしろ、表情を一切変えることなくパチンと右手で指を鳴らした。
すると、それに反応したジークとXがジルの乗るワイバーンを滅多切りにして機動力を奪い、クー・フーリンが仁慈から渡された槍を巧みに操り、マシュが構える盾に磔にした。これを外側から見ていたほかのサーヴァントたちはそろって震えあがったという。清姫だけは仁慈の方だけを見て別の意味で震えあがっていたが。
「ちょっとジル!?いくら何でも早すぎない!?こういうのはもっとこう……か、かっこよく助けてくれるもんじゃないの!?」
「おぉぉおおお……申し訳ございませんジャンヌ。ジルは、ここまでの……よう、です………ガク」
「ちょっと!まだ一撃ももらってないでしょうが!」
初めからあったかどうかわからないシリアスな雰囲気は霧散して、彼らの繰り広げる漫才についつい仁慈たちも警戒を緩めてしまう。というか、既に仁慈のやる気は底辺に落ちてしまっていた。
この二人のやり取りを見て、少しでも真面目に戦おうとしたのが馬鹿だったとでも言わんばかりの雰囲気である。今まで戦ってきたサーヴァントたちが報われないと仁慈は静かに合掌した。
そして本気で馬鹿らしくなった仁慈は空間からダ・ヴィンチが改造を施した槍を取り出すとやる気のない声でこう言った。
「もう面倒くさくなったから二人纏めてここで倒しちゃおうか。聖杯は、障害が消えた後ゆっくり探せばいいしー。というわけで、全員宝具の開帳をかいちょー。これが最後だろうし……諸君、派手にいこう」
『MATTE!!』
やる気のない声と表情のまま指をパチンと鳴らした仁慈は黒ジャンヌとジル・ド・レェを囲っているサーヴァントたちに宝具の開帳を命じる。
それぞれのサーヴァントが自分の魔力を練り込み、自身の象徴とも歴史とも言える宝具を発動しようとした時、殲滅対象となった二人は仁慈に待ったをかけた。
「こんな最後でいいわけ!?これでも私たちラスボスよ!?それがこんな出落ち染みた退場していいと思ってるの!?」
「その通り!我々にも戦う理由があるのですよ!?それを話も聞かないうちから殺すなどと……恥を知れ!」
「おい、鏡見ろよ」
黒コンビ(特にジル)の方を見ながら仁慈は言葉短く返す。今の今まで誰の話を聞くことなくいくつもの町や人を殺しておきながらよくそんなセリフが言えたと仁慈は思った。彼も彼で人的被害はともかく建物の破壊率は彼らとそう大差ないのだが、そこにツッコミを入れる者は幸いなことにいなかった。
「じゃあ、四十秒間
腕を組み、静かにそう告げる。その様はまさに勇者の前でふんぞり返る魔王そのもの。完全に立場が逆転していた。
しかしそんなことを気にしている暇わないと言わんばかりにジルと黒ジャンヌは立ち上がり自分の持っている得物を構え、仁慈に突撃した。四十秒待つという彼の言葉を信じ、その前に倒してしまおうという算段だった。
―――――――――――――――――だが
「やれ」
先ほどよりも短く簡潔な言葉。
それだけでマシュとジャンヌが仁慈の前に現れ、疑似宝具を展開され黒ジャンヌとジルを囲っていたサーヴァントたちの宝具が炸裂した。
――――――――――――――――――
「ぐっ………どう、して……?」
数多の宝具が飽和状態になった円の中心部。そこにぎりぎり形を保っている黒ジャンヌが仁慈に問いかける。ちなみに、ジルは既に霊核を破壊されて現界を保つことができずに消えていた。そのような普通なら消滅するような攻撃を叩き込んだ仁慈はなんでもないという風に軽く口を開いた。
「俺は構えるまで待つ、と言ったんであって四十秒間待つとは言っていないんだが……」
「詐欺だわ………覚えて、おきなさい。今度会う時は、様々な……サーヴァント(イケメン)を連れて……復讐しに、現れてやるわ………」
それだけ言い残し、彼女はスゥと消えていく。そして今まで黒ジャンヌが居た場所には冬木で回収したものと同じ聖杯が宙に浮いていた。仁慈はそれを手に取り、異次元鞄の中に放り投げる。
『聖杯の回収を確認!それと同時に人理の修正が始まった。これから転移が始まるぞ!』
ロマニの声に反応するかのように、このオルレアンであったサーヴァントたちの身体を金色の光が包み込んでいく。彼らの中核を担っていた聖杯が消えたことで、彼らの現界も難しくなったんだろう。
それぞれ己の役目を終えたことを悟った彼らは今回行動を共にしたマスター(仮)の仁慈に別れの言葉を継げた。
「………今回はそこまで出番がありませんでしたが、次はもっと活躍して見せますよ」
「……俺も、彼が居れば誰でも狩れると思う。だから気が向いたら呼んでほしい。ただ………セイバーピックアップ中に出てしまったら本当にすまない」
一番初めに消えたのはゲオルギウスとジークフリートの竜殺しコンビだった。彼らは仁慈の前まで行くと握手をしたのち、それぞれそのようなことを言いながら消えていった。そんな彼らを仁慈は微妙な顔をしながら見送る。
次に彼らの前に来たのはマリーとアマデウスだった。
「本当に色々とありがとうマスター。唯、あの方法はどうかと思うわよ?」
「マリア。確かに君ならそう言うだろうと思ったけどね、僕はいいと思うよ。君は本当に面白い。何かの縁で召喚されたときは、君を題材に曲を作ってみたいものだね」
「もうまたそんなこと言って………。けれど、本当に感謝しているわマスター。おかげでアマデウスのピアノも聴けたもの」
「………確かにそうだね。仁慈君、先程の言葉を訂正しよう。是非、僕らのことを呼んでくれよ。マリアと一緒に僕の演奏を聴かせてあげるからね」
最後は二人ともいい笑顔で消えていった。この時、仁慈は彼ら二人をカルデアに向かい入れることを決意したという。
凸凹フランスコンビの次は妄想系ドラゴンガールである二人だった。
「まぁ、中々悪くない采配……というか、私でも若干引くくらいえぐい采配だったわね。とてもよかったわ。だからそのお礼に召喚された暁にはサーヴァント界のトップアイドル、このエリザベート・バートリーがカルデアというところで、貴方の為だけに特別コンサートを開催してア・ゲ・ル♪」
「結構です」
「あぁ……あぁ。ここでお別れですが、悲しまないでください
「いや、
どちらもノータイムで切り返す。だが、妄想系ドラゴンガールの二人は聞く耳を持たず、むしろ仁慈の言葉を自分に都合のいいように捻じ曲げそのまま消えていった。先程とはうって変わり、この二人だけは絶対に召喚しないと誓うのだった。
最後に残ったのは、オルレアンであったサーヴァントの中でも一番長い時間をともに過ごしたジャンヌである。彼女は何処か浮かない表情で仁慈に近づいてきた。理由は単純である。あの黒ジャンヌとジルにした仕打ちが彼女にとっては納得いかないものだったのだ。
「………すみません。喜ぶべきことなのに、素直に喜べない自分が居ます」
「あー……あれは、アンタの性質を考えると仕方ないことだな」
ジャンヌの言葉を肯定するクー・フーリン。
マシュも心の中で彼に同意する。しかし、Xだけは未だ黒ジャンヌ(アルトリア顔)を倒したことで悦に浸っているので特に何も言うことはなかった。
そんなXのことは放っておいて、仁慈はジャンヌの言葉を正面から受け止めた。彼だって状況がもう少しよければマシな手段を取ったのだが、ケルトインストールの影響と、自分たちの置かれている状態からどうあがいても卑劣に見える手段も交えていかなければならないと考えている。そのため、正面から言葉を受けて止めるだけになってしまっているのだ。
ジャンヌもそのことが分かっているのか、息を一つはいて、笑顔を作り出した。
「けれど、あなた方がフランスを救ってくれたことは事実。……ありがとうございます。私たちの故郷を護ってくれて」
それだけ言ってジャンヌも消える。それと同時に仁慈たちもカルデアへレイシフトしていくのだった。
第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン 人理復元………?
ちなみに今回分かれたサーヴァントはカルデアに来た場合、一週間で仁慈に慣れ、二週間で染まり切る模様。
流石、キチガイ量産機である。