この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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タイトルに意味は特にありません。
正直、GEみたいに話数だけにしておけばよかったと後悔しています。


ずれてるずれてる

 

 

 

 

 

 

 

 「さて………」

 

 レイシフトを完了させた俺は改めて今回この怪しさ満点のハロウィンパーティーに訪れた人たちを見まわしてみる。まず一人、今回最もこの特異点の参加に意欲的だったマシュ。彼女はレイシフトをした今、周りに広がる光景が珍しいらしくしきりに目を光らせている。可愛い。

 

 次に視線を移すと、俺の後ろでおびえつつ周囲を見回しているオルガマリー所長。森の隙間から見える幽霊っぽいものを見つけるたびに体を震わせて涙目になっている。この調子で大丈夫だろうか。

 

 そして最後の一人は俺の横でニコニコと笑みを浮かべて佇む清姫である。周りに幽霊が居ようとも所長が俺の後ろに隠れて居ようとも、マシュが静かにテンションを上げて居ようともその態勢を崩すことはなかった。

 改めて、今の状況を分析して思うことは……大丈夫なのだろうかこの面子は。とんでもなく不安なんだが。

 

 ちなみに、他のサーヴァントがついてこなかった理由は以下のような感じである。

 

クー・フーリン

「いや、ぶっちゃけハロウィンとかさ。過去の出来事からしていい予感が全くしねえんだよ。だからパス。マスターもわかるだろ?あれの所為だよ」

 

エミヤ

「一応、サーヴァントが全員出払ってしまってはいざという時に困るだろう。それに家事を行える者はとても少ない。わずかな間とは言え、ここを無防備にするのは忍びない。マスターも私の御守が必要というわけでもないだろうし。しっかりと楽しんできたまえ(それに、複数の女性というのはあまりいい予感がしないのでね)」

 

ヒロインX

「勘です。確かに、最初はおいしいごはんやお菓子にありつくことができるでしょう。しかし、私の直感スキルが叫んでいるのです。それ以上にやばいものが後々待っていると。なのでマスター。食べれるお土産を希望します!」

 

ブーディカ

「ほら、お姉さんがマシュの邪魔をするわけにはいかないしさ。皆で楽しんでくると良いよ。あっ、でもあまり遅くならないようにね?」

 

 

 以上である。

 これはひどい。俺のストレスがマッハで過ぎていく気がするが、こう言ったら普段からストレスをかけられている分ですとか言われそうなので言わないけど。

 

「とりあえず、この森に居てもわかるくらい大きなあの城に、名前を言ってはいけない気がする彼女が居ると思うので、あそこを目指そうと思います」

 

「異議はありません。……早くいきましょう?先輩。このちょっと怖いけど、わくわくする感じがとても面白いです……」

 

 めっちゃウズウズしてる。

 抑えきれないくらいに荒ぶっていらっしゃる。ここまでテンションの高いマシュは初めてな気がするのですごく新鮮だ。

 周囲には幽霊っぽい奴らがせわしなく動き、ジャック・オー・ランタン(俺のトラウマ)がゆらゆら飛んでいるけどな。

 

「ち、ちょっと。この森で迷わないように私が手を握っていてあげるわ。さ、さぁ……手を出しなさい」

 

「素直に怖いから手をつないでって言えばいいのに……」

 

「にゃ、にゃにおう!」

 

「所長。キャラ。キャラが崩壊してますよ」

 

 こっちはこっちで抑えきれないくらいに荒ぶっていらっしゃる、主に恐怖で。仕方がないので彼女の手を左手で握ってあげつつ森を進んでいく。

 

「………まぁ、これは見逃してあげますわ。広い器を見せることも正妻としての役目ですもの」

 

「俺は一人もそういう相手は居ないからね?誰とも将来を誓い合ったりしてないから」

 

 そもそも俺は法律的に結婚できる年じゃありません。法律を適用しているところは既にないけれども。清姫も、英霊化しているとはいえ十代前半だし手を出したら速攻でお縄だ。その組織もいま燃え尽きてるけど。

 

『それにしても、予想以上に本格的だったね。これは少々油断していたようだ』

 

「そうですね。なにザベートさんのことですから、もっと適当だと思っていたんですけど……予想以上の雰囲気です!」

 

「さらっと毒吐いたわよこの子。えっ?マシュってこんな子だって?」

 

「大体あの緑帽子と旦那様(ますたぁ)のせいですわ」

 

「おのレフ」

 

 今は亡きレフにすべてをなすりつけつつ、へっぴり腰で中々進まない所長を引っ張りながらどんどん森を進んでいく。というか、所長。少しは自分で歩いてくれませんかね?これもう俺が引きずっているのと大差ない状態なんですけど。

 

「だ、だだだだって!骸骨が!カボチャが!踊っているのよ!?」

 

「貴方もあの骸骨たちの親戚みたいなもんでしょうが」

 

「イヤー!!」

 

『――!?仁慈君!所長で遊んでいる場合じゃないぞ!少々弱いけど、敵性反応を感知した』

 

「えっ、襲ってくるんですか?ハロウィンなのに!?」

 

『お菓子を持っていれば戦闘回避ワンチャンあるよ!』

 

「お菓子持っていないので確定バトルですね」

 

 ロマンの言葉に多少警戒レベルを上げて城を目指す。

 すると、先程まで居た幽霊やジャック・オー・ランタン(俺のトラウマ)とは明らかに違い、敵意を持っている幽霊が俺たちの前に立ちふさがった。

 

『トリック・オア・トリート!お菓子をくれなきゃ、APと石、ついでに金林檎を頂くよ!』

 

『おいてけー、おいてけー……APとか石とか☆5とかおいてけー』

 

『でも、金時はやめてー』

 

「なんか出た……」

 

 やたらと明るい雰囲気の骸骨系幽霊が現れたんですけど。つーか、態々そんなこと言わなくても林檎なんて配られた分使ったわ(実話)

 

「むむっ……!はじめはゴースト系ですか。スタンダードです。王道です。しかし、それもまたよし、です。お化け屋敷は基本中の基本で大事だと書いてありました。――――では、気を取り直して幽霊退治です!」

 

「今日のマシュは一味違うな」

 

 積極的に幽霊系エネミーに突っ込んでいく姿に思わずそう思うしかなかった俺。

 マシュが目の前の敵と交戦すると同時に今まで踊ったり浮かんでいたりするだけだった幽霊やジャック・オー・ランタン(俺のトラウマ)にも変化が訪れる。なんと、こちらに敵意を向けてきたのだ。

 

「ひぃっ!?」

 

「ハッハー。やっぱりハロウィンて殺意高いわ」

 

「私、はろうぃんなるものはわからないんですけれども、旦那様(ますたぁ)の言っていることだけは違うと分かりますわ」

 

 敵意を向けてきてから直に攻撃態勢に移行した幽霊とカボチャは一斉に俺たちに襲い掛かる。

 

「いやぁぁぁぁああ!!」

 

「所長、ちょっとばかり失礼しますよ!」

 

 自分の下に四方八方から骸骨やカボチャが襲い来るという普通に怖い絵面に所長が叫ぶ。俺はそんな彼女をひょいっと抱き上げて抱えると、そのまま魔力強化を行った蹴りで幽霊&カボチャを薙ぎ払う。

 

「お姫様だっことか羨ましい、妬ましい……!」

 

 これを見た清姫は黒すぎるオーラを発する。

 幽霊たちは自分なんかよりも禍々しい気配を発する清姫に恐れをなして逃亡するものもいた。これで女の嫉妬は幽霊をも凌駕するということが証明されたな(現実逃避)

 

 ロマンが弱い敵性反応といっただけあって、絵面的にはえぐかったけど実力はそこまでではなく五分後には大体の殲滅が終わっていた。

 

「はっ!そういえば、お化け屋敷の基本では幽霊に攻撃してはいけないと……!」

 

「それは中に人が入っているからで、中に何も入っていないスカスカな骸骨系幽霊は大丈夫」

 

「終わった?ねぇ、終わったの?」

 

「終わりました。だから早く降りてくれませんか?このヘタレ女」

 

「ヒィ!?」

 

「清姫、正妻の余裕はどうした」

 

旦那様(ますたぁ)には妻が居ないそうなので、別に女の子らしく嫉妬してもいいかな、と思いまして」

 

「しまった。否定ではなく流すべきだったか……」

 

「先輩!出口が見えてきましたよ!」

 

「はいはい。今行くよー」

 

「ぐすっ、ほら、手……つないで?」

 

「では私は腕を頂きます」

 

「…………」

 

 ………なんだこれすっごく疲れる。

 かわるがわる自分の要求を突き付けてくる女性陣。いつもは大天使のマシュもお祭りの空気(?)に当てられて、普通の少女マシュになってしまっているので今回に限り俺に味方は居ない。

 ……ほかにもサーヴァントがカルデアに残るのであれば無理矢理エミヤ師匠を引っ張って来ればよかったかもしれない。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 森を抜けてみれば、そこには見事にハロウィン色に染め上げられた町が広がっていた。そこらかしこにカボチャが飾ってあり、街灯までカボチャのランタンに変えているという徹底っぷり。

 

「すごいです。まさかここまで本格的なものが出てくるなんて。期待以上の仕上がりですよ先輩!」

 

「あのガサツにして粗暴なドラ娘にしては、随分手が込んでいますね」

 

「ね、ねぇ?仁慈。あれ動かない?動かないわよね!?」

 

「いくらなんでもビビりすぎでしょ」

 

「貴方たちにとっては弱小エネミーでも、私にとっては立派な強敵なのよ!」

 

 所長の怒りを受け流しながら清姫の言葉を思い返す。

 確かに、名前を言ってはいけない気がする彼女には悪いが、正直あの子がここまで手の込んだことを一人でできるとは到底思えない。レイシフトをする必要がある場所もこうして手に入れているわけだから、何かしらのきっかけがあるはずだ。

 そう考えると一番考えられるのは聖杯なんだけど………まさか、街一つをハロウィン仕様にするためだけに聖杯を使うなんてことは、ことは……。

 

「………」

 

「先輩?どうしたんですか?」

 

 あれ?普通に有り得そうだぞ。というか、オルレアンで出会ったアサシンな彼女ならともかく、ランサーな彼女の場合は自分にふさわしいステージをという感じの願いを叶える姿しか浮かばない(偏見)

 

旦那様(ますたぁ)。知らなくてもいい割と厄介な出来事に関係する事柄をふとしたきっかけから知ってしまった時のような顔をしてどうしました?」

 

 鋭い……!

 あてずっぽうのようで物凄く具体的な問いかけだ……!正妻を名乗るだけのことはある。

 

「別に何でもない。さて、この街をパパっと見まわしてからあの城に向かおうか」

 

「賛成です!あそこにあるパンプキンパイを食べてみたいです」

 

「あ、私も……」

 

「了解」

 

 まぁ、これはあくまでも予想だし、今は別に黙ってていいだろ。

 ただ聖杯の場合だと、十中八九サーヴァントが出てくることになるんだよな。所長、大丈夫かね。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「どう?招待客はしっかりと来ているかしら?」

 

「ククク、来ているもののあれだけ送っておいて結局来たのはお一人様だけ、つまり今いるのが仮初のご主人のラブレターに応じた最初で最後の一人と言うわけだ。正しく運命だな」

 

「別にラブレターじゃないんだけど……確かにあれは私の本命だけど。っと、それはともかく、盛大に持て成す準備は出来ているのよね!?」

 

「任せろ!料理は出来たワン!七色のスパイスのチキンターキーだ!うまいぞ!」

 

「流石ね。万能メイドの触れ込みで雇ったけど、偽りなしとは恐れ入るわ。あ、でもメインディッシュは私がやるからね。ちゃんと残しておきなさいよ?」

 

「残す……?斬……飯……?修羅肉……森?むぅ、中々難しいこと言うな。このトカゲ」

 

「支離滅裂なあなたに言われたくないんだけど!?というか今トカゲって言った!?言ったわよね!?」

 

「そうカリカリするな仮初のご主人。成長しないぞ色々と」

 

「喧嘩売ってんの!?見せつけるように揺らしてくれちゃって……!そんなに大きいのがいいのかぁ!」

 

「落ち着け仮初のご主人。この城の主ならもっと余裕をもって優雅たるべきだ。野生でも、ボスはちょっとのことではうろたえない」

 

「そ、そうね。そうよね。城の主たる私はこの程度のことでうろたえないわ。……ごほん。話を戻すけど、皆配置についたのよね?」

 

「準備万端、四面楚歌。宴の準備は問題ないワン!これであのちぇんそー背負った鴨葱もさぞ楽しめるだろうさ。だから貴様は城主らしく、ここででーんと待ち構えていろな?」

 

「そのたとえはどうかと思うけど……確かに、あの子たちにはたっぷりと愉しんでもらいましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、やっぱり私も暇だから、会いに行っちゃだめかしら?」

 

「んー?殺すぞ?」

 

「じょ、冗談よ、冗談!ちょっと言ってみただけだってば!(目がマジだわ!)」

 

 

 

 

 

 以上、仁慈が目指している城の主とそのメイドの会話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




タマモキャットが超難しい……。
どうすればいいんですかねぇ……これはスパさん以来の強敵やで。

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