この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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最近創作意欲が落ちてきてしまってな……(唐突な言い訳)


モンスタ〇ハンター(前編)

 

 

 

 

 

「ふぅー……何とか逃げ切れたようだね」

 

「そうだな。後方に敵影は見えない。完全に撒いたとみていいだろう」

 

 今日までで一番有名な海賊である黒髭と一戦かました後、先を見たドレイクは逃走を図り、どこかの島にたどり着いていた。さっきぶっ殺したエイリーク血斧王の地図は既に使い物にならない領域に来ていた。つまり、ここからは地図なしの航海になるのだ。別に、行き当たりばったりなのは今までと変わらないので特に気にしてはいないけれども。

 

「ドレイク船長。どうしてあの場面で逃走を?サーヴァント……大砲でも倒せない超人は一人倒しましたし、戦力的には圧倒的に有利だったはずですが……」

 

「確かに、アンタたちはアタシの予想を簡単に飛び越していくくらいは強かった。けどね、あんたらが強くても、何よりその足場が弱かったんだよ」

 

 そう。ドレイクが気にしていたのは自分の船である黄金の鹿号。ドレイクの所持している聖杯のおかげで、この船は通常ではありえない耐久力を誇っているが、それでも黒髭の船には傷をつけることはできず反撃を受けるだけだった。

 たまたま、大きな損傷はなかったのだが、あのまま続けていれば確実に沈んでいたと彼女は今までの経験から断言できたのである。

 

『おそらく、あの船自体が黒髭の宝具なんだろうね。真名はアン女王の復讐(クイーン・アンズ・リベンジ)で間違いないだろう。生前、黒髭ことエドワード・ティーチが旗艦として使っていたと言われている船だよ』

 

 ロマンからの補足情報があの船こそ、黒髭の宝具なのだという確信を持たせてくれた。確かにサーヴァントたちは一騎当千の強者ばかりだ。それは英霊という存在になっている時点で普通にわかる部分である。だが、決して無敵ではない。生前の逸話には勝てないし油断もする、俺のような人間に敗れ去る時だってある。であれば、あそこで深追いせずに敵に損害だけを与えて逃げたことは決して間違いなどではないだろう。

 それに、いくつか考えたいこともある。あの黒髭とは別の意味で軽い男……槍を持った緑の人物がどうにも気にかかるのだ。黒髭もそうだけどああいうタイプが一番の切れ者で一番厄介な連中だと相場が決まってる。警戒しておくことに越したことはない。

 

「とりあえず島に着いたことですし、その辺の木を切って補強でもしますか?私、改造は得意ですよ?」

 

 ビームを飛ばすだけでなく、聖剣をライトセイバーよろしく青色発光させることができるという確実に湖の精霊涙目な機能を搭載することができる彼女なら船の改造も可能だろう。唯、黄金の鹿号が宇宙戦艦的な何かにならないとも限らないけれども。

 

「なら、頼もうか。このまま逃げるっていうのは性に合わない。というか、BBAとか言ったあの髭は絶対ぶっ飛ばすと決めたからね。そこの帽子が言う通り、補強工事と行こうかねえ」

 

「それなら先に森に居る魔物を片付けた方がいいんじゃないの?ほら、あれ」

 

 エウリュアレが指を向ける方向には確かに魔物と呼ぶにふさわしい生物が居た。しかし、こういった生物が居る島なら、思ったよりも役に立つ補強素材があるかもしれない。そんな期待と共に、吼えながら襲い来る魔物を全力で蹴散らした。

 

 

―――――――――――――

 

 

「と、言うわけで私はここでもしもの時のために残っている」

 

「わかりました。では、よろしくお願いしますエミヤ師匠」

 

 自分のことを師匠と言って、分かりにくいものの慕ってくれているマスター兼弟子である仁慈を見送ったのちにエミヤは船の近くから海へとその視線を向けた。エミヤの戦闘スタイルはもっぱら、干将・莫耶による白兵戦だがこれでもクラスはアーチャーだ。例え、立ち絵で持っている弓を使用することがなくてもアーチャーなのだ。遠くのものを見るなど造作もないことなのだ、アーチャーだから!

 

「赤い服の旦那」

 

「どうかしたのか?」

 

 周囲の警戒に当たっていたため、ドレイクの部下から話を振られたものの口だけで返答に留める。

 雑談にうつつを抜かして敵の接近を気づくことが出来ませんでしたなんて事態はお笑いごとにすらならないからだ。そのことをドレイクの部下もわかっているのだろう。エミヤが自分の方を向かなくても話の続きを紡いだ。

 

「何か俺に……いや、俺たちにできることはないんでしょうか」

 

 その言葉は無力な自分たちに対する蔑みと悔しさを含んだ言葉だった。彼らはドレイクの下で海賊をやっている者である。ほとんどは彼女に惹かれ、こうしてついて来ているのだ。

 今までは、彼女の役に立てた。だが、今回はこれまでとは状況が違い過ぎる。相手は常識外の存在である英霊。神秘を秘めた攻撃以外は効かず、その攻撃は自分たちにとって致命的だ。普通の人間である彼らにとってはどうしようもできない存在。それをなまじ理解できてしまうからさらに苛立ちが募る。自分たちが敬愛するドレイクの力に成れていないと。

 

 その悔しさや蔑みはかつてエミヤ自身が経験したものと酷似していた。彼だって聖杯戦争を行った時、自分が召喚したセイバーことアルトリアが傷ついていくのを黙ってみていることしかできなかったのだから。

 自分が我慢できずに、突っ込んだ時には大体、事態は悪化した。それが理解できて余計悔しかった。

 ドレイクの部下たちはかつて自分が経験したものを現在進行形で経験しているのだろう。だからこそ、彼は自身が学んだことを教えることにしたのだ。

 

「そうだな……。君たちの気持ちは理解できる。私もかつてはそうだった。遠くで見ていることしかできず、自分が介入すればむしろ状況は悪化した。……何もできないのかと、自分に失望すら覚えたよ。だが………私は勘違いをしていた」

 

「勘違い……ですか?」

 

「そうだ。介入の仕方が悪かったのだ。自分の力量をわきまえず、考えなしでことに当たったからこそ、無様な結果を引き寄せた。しかし、自分にできること、できないことを認識するだけでそれは大きく変化する」

 

「………」

 

「英霊の攻撃が飛び交う中、ほぼ無傷の状態で逃げ切った手腕は称賛されるべきものである。そして、あのドレイクのことをこの場で誰よりも理解できるのは他ならない君たちだ。そんな君たちであれば、何をすればいいのか、どうすれば役立てるのかわかるのではないかね?」

 

「…………」

 

 エミヤの言葉に黙り込むドレイクの部下。そう、人間誰しも自分の領域を越えたことを成すことはできない。むしろ、それでいいのだ。破綻しているにも関わらず、なまじできてしまったが故に生んだ後悔も彼は知っているのだから。

 

「君たちの本業は海賊で合って戦士や兵隊ではなかろう?………何、無責任なことだと自覚はしているが、恐らくは大丈夫だろう。オレにもできたんだ、アンタたちにだってできるさ」

 

「………へへっ、そうか。そうだよな!俺たちは海賊、最後に財宝を手に入れればいいのさ」

 

 元気を取り戻したドレイクの部下を一瞬だけ視界に収めると再びエミヤは海の警戒に当たった。その隣では先程の部下が双眼鏡を手に同じく警戒に当たってたという。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

「そういえばさ、ロマン。黒髭の宝具があの船だろうことはわかったけどさ。ドレイクの黄金の鹿号も聖杯の影響をうけているんだっけ?」

 

『え?あ、うん。確かにそうだけど……僕、そのこと言ってないよね?』

 

「いや、感じ取れた」

 

『これだからキチガイは……』

 

 酷い偏見を見た。

 

『ゴホン……。さて、話を戻すよ。確かにドレイク船長の船、黄金の鹿号には聖杯のブーストがかかっている。そのおかげでそこまであの黒髭の船との差はないはずなんだけど』

 

「あいつらを撒けたことから、船の性能にはそこまで差はないと思うよ。唯、あの装甲の硬さがねぇ……」

 

「ちっ。史上最強に気持ちの悪いフナムシの分際で随分と厄介じゃないの。できるだけ迅速に記憶を消し去りたいわ」

 

「……や、ろうか?」

 

「えっ?アステリオス、できるの?」

 

「つよい、しょう、げき。あてれば、いい」

 

「思っていた以上に原始的でした!」

 

「と、言うかアステリオスの腕で殴られたらエウリュアレの頭が吹っ飛んじまうよ」

 

『ちくしょう……すぐに話が脱線してしまう……』

 

 やばい。ここ最近ロマンが悲しみを背負いすぎている。このままでは本当に伝承者への階段を上ってしまうことになりかねない。俺はすぐさま手を叩いて全員の注意をこちらに向ける。そして、ロマンにパスをした。

 

『君たちが話を脱線させて、楽しく話している間にさっきのログを見ていたんだけどね。君たちが本格的に戦闘してからすぐに、黒髭の船から感じられる魔力が下がったことが分かったんだ。ちょうどその時、何かしなかった?』

 

 どこか棘のある言葉と共にそんな質問を飛ばしてくるロマン。そこでみんなが一斉に残っている記憶を引っ張り出す。すると、ハッと気が付いたのかマシュがこう言った。

 

「ちょうどその時間は先輩がエイリーク血斧王を瞬殺してました」

 

『……………あー!そういうことか!』

 

 マシュの証言から答えを導き出したらしいロマンはしばらくの間考えを纏めてから俺たちに改めて説明しだす。

 

『仁慈君、よく聞いてくれ。やっぱり黒髭の宝具はあの船「アン女王の復讐号」だろう。そしてその宝具の効果は「部下が強ければ強いほど」船の強さが上がるのかもしれない』

 

 なるほど。そう考えると、色々とつじつまが合う。

 あそこまでのサーヴァントを乗せているからあの船はあんなに頑丈だった。英霊の数で強さが変わるからこそエウリュアレを求めた。本人の趣味もあるだろうけど。

 

「だからエウリュアレさんを必要としているのですね。己の宝具を強くするために」

 

『ついでに聖杯のことも狙ってたしね。実力行使はもはやお約束だろうから力をつけておいても損はない』

 

「海賊らしくどちらも貰っていくって寸法かい」

 

 ……とりあえず、黒髭の宝具「アン女王の復讐号」のことについてはこれで考えよう。どちらにせよ自分たちの船を補強するのは決定事項だ。上のことは適当に覚えておけばいいだろう。隙があったら敵を倒す。なかったら作って倒す、だ。

 

「今の話を聞いて余計、捕まりたくなくなったわ」

 

「ん。だい、じょうぶ。えうりゅあれ、は、まもる」

 

「……あら、言うじゃない。駄妹よりも大きい図体の癖に」

 

「なんですかその罵倒は……」

 

「照れ隠しってやつだよマシュ。いやー見せつけてくれるねー。熱くてかなわないよ!」

 

「ふぁ!?」

 

 いじられて顔を真っ赤にするエウリュアレ、首を傾げるアステリオス、苦しい罵倒を追及してしまうマシュ、それら全体を見渡してにやにやと笑うドレイク、そしてそれらを外から見る俺とX。さっきまでサーヴァント同士の切った張ったをやっていたとは思えないだろうな。

 

『みんなで楽しそうにしているところ悪いんだけど敵だよー。ワイバーンが出たよー』

 

「ドクターのやる気が一気に急降下しました……」

 

「ハブられるっていうのは想像以上にきついもんだから仕方ない」

 

「肉ですかそうですか。オルレアン以来ですね。……フッ、この私にライダーの分際で襲い掛かろうなんて笑止千万。一匹残らず食材に変えてみせましょう!」

 

 言うが早いか、先程まで談笑していた組を置いてけぼりにして襲い来るワイバーンに突撃していくX。彼女の言う通り、オルレアンで肉のためにワイバーンを何匹も狩り倒した彼女に戦いを挑むのは愚策である。何故なら、彼女は最小限の労力で倒すためにひたすらワイバーンの生態というか、行動パターンを把握しているからである。もはや疑似的なドラゴンスレイヤーと化していると言ってもいいくらいだ。

 

 突撃に対して首を刈り、噛みつこうとした相手には開いた口からさっくりと真っ二つに裂いていく。尻尾で攻撃するものには部位破壊と言いつつちょん切って、最終的に飛べないように翼すら切り落とされる始末である。これはひどい。その後もXは手慣れた手つきでワイバーンたちに処理を施していった。

 

「ふぅ。六体ですか。微妙ですね」

 

「魚の解体は見たことあるけど、ドラゴンの解体は初めて見るさね」

 

「逆に見たことある方が驚きよ」

 

 ドレイクやエウリュアレが解体されたワイバーンを見ている中、マシュだけはワイバーンの死体を見ながら何やら考えているようだった。

 

「どうかした?」

 

「いや、何かぼんやりと思いついた気が………」

 

「ワイバーンを見て?」

 

「はい」

 

「鱗でも切って防具でも作る?」

 

 気分はモンスターでハンターな感じ。竜の鱗とかまさにそんな感じがする。あれって必要な時に限って鱗とかでないんだよね。

 

「それです!」

 

「ん?」

 

「ドレイク船長の船をワイバーンの鱗で加工するんですよ」

 

「おっ?これでアタシの船を補強するのかい?」

 

「いいと思うわよ?竜種の鱗は鎧に加工すれば鋼よりも頑丈よ。一応、加工には強い力が必要になるけれど……あなた、いける?」

 

「う」

 

 なんかリアルにモンハンのようになってきたな。

 専門の鍛冶を行う人物も、エミヤ師匠の残っている船の方にいるらしく、後で合流してから補強を行うらしい。今はアステリオスが簡単な加工をしているところである。しかし、Xが解体した分では足りなかったらしい。

 マシュが、ダ・ヴィンチちゃんに聞いた限りだと後三十頭は必要だという。

 

「それくらいなら、巣を見つければ何とかなりそうですね。先輩」

 

「これもうモンハンじゃないかな……」

 

「船の名前、黄金の竜号に変えた方がいいのかね………」

 

 問題はそこかよ。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 仁慈たちが、竜の巣を探しに森へと入った時、同じく森には別のサーヴァントが存在していた。

 一人は、全身真っ白の美しい女性。もう一人(?)はミニサイズの熊のぬいぐるみ的なものである。

 その二人のうちの一人である女性は近くにあった草と、その辺で取った肉に適当極まる調理を施し、箱にフュージョンという最終工程を行ってから人形の前に出していた。

 

「はい、だーりん!私の愛の籠ったお弁当!」

 

「待って。工程の一から十までお弁当じゃないから。肉は焼いただけだし、それ以外はその辺の雑草を適当に詰め込んだだけじゃん」

 

「えー?そんなことないよぉー。きっとおいしいよ」

 

「お前のその自信はあの作業工程のどこから出てきてるの?マジで」

 

「もう、ダーリンは贅沢なんだから……。あら?」

 

 楽しそう……うん、楽しそうな会話をしている二人だったが、唐突にその会話が途切れる。そして、二人そろって丁度仁慈たちが入ってきた方向に視線を向けた。

 

「なんか来たな。サーヴァントっぽい何かが三つ。サーヴァントが二つ、人間の反応が一つか」

 

「敵かな?味方かな?」

 

「別に可愛ければ俺はどっちでも――――」

 

 クマのぬいぐるみがそういうと、女性が目にも留まらない速さでクマのぬいぐるみを捕まえ近くにあった木の幹でこすり始める。普通ならぬいぐるみに乱暴をする危ない女性で済んだ(?)のであるが、このくまのぬいぐるみは喋るのだ。つまり、叫び声を上げるのである。

 

「イタタタ!!??というか熱い!さっきのは謝るから無力な私を木の幹にこすりつけないでくださいお願いします」

 

 ぬいぐるみの必死の懇願に女性は木の幹からぬいぐるみを回収してその腕に抱いた。

 

「でも、丁度良かったかも。そろそろ退屈してきたしー」

 

「そうだな。敵でも味方でも、とりあえず情報が欲しいよな。何で召喚されたのかも不明のままだし」

 

「なら、待ち伏せだね!」

 

「なんでちょっと楽しそうなの?お願いだから、話を聞く前に攻撃とかいうのはやめてね?」

 

 

 そう、会話をしながら、彼らは仁慈たちが来るまで暇をつぶすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




GE仁慈「素材の剥ぎ取りと聞いて!(ガタッ)」
FGO仁慈「お前じゃねえ。座ってろ」

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