この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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すみません。もしかしたら、この話は前・中・後になるかもしれません。

後、超高難度イベントのヘラクレスマジヘラクレス(白目)


現代の神話(前編)

 

 

 

 

 

「はっ、あっはっは!!突撃とは、馬鹿にふさわしい手段じゃないか!―――――よし、見つけたぞ。それじゃあヘラクレス。挨拶代わりにあそこの有象無象のガラクタ共に挨拶をしてあげようじゃないか」

 

 黄金の鹿号とぶつかり、ヘクトールが合流した船に乗っていた金髪の男がそう言いながら隣に居た巨人と見間違うような巨躯を持った巌のような黒い男が岩を黄金の鹿号に投げつける。

 その岩は真っ直ぐに仁慈たちを襲うのだが、彼らの側にはアステリオスが居る。彼は仁慈達の前に出ると、敵の男と同じ巨躯を最大限に生かした力で岩を受け止めて、海へと進路をそらした。

 

「あっはっは!ギリギリで受け止めたか!あそこに居る野蛮人は……なんだアレ獣人か?」

 

「あれはおそらくアステリオスさまですわ。神牛と人の間に生まれた悲劇の子です」

 

「なんだ!人間のなりそこないか!俺達英雄に倒されることを運命づけられた、滑稽な生物。向こうも人材不足のようだな!あっはっはっはっは!………ところでヘクトール。その様は何だ?女神は……まぁ、おびき寄せたからいいとするが、その成りは?」

 

「すみませんね。奴さん思ったよりやりますわ」

 

「………チッ、使えないやつめ。まぁ、聖杯を取ってきて女神をおびき寄せてきたこともあるし、今回だけは寛大な心で許してやるよ。ヘクトール」

 

 ヘクトールから聖杯を奪い取った金髪の男はそれをヘクトールの身体へと傾ける。その直後、ヘクトールの追っていた傷はきれいさっぱりなくなっていた。宝具で傷ついた身体も、仁慈が引きちぎった左腕までもが戻っていた。

 その力に満足するように頷いた金髪の男性は、精悍な顔立ちを醜く歪めて嗤いながら仁慈たちに向かって宣言した。

 

「さて、せっかくだ!ここで一切合切決着をつけようじゃないか!君たち世界を修正しようとする邪悪な集団と我々世界を正しくあろうとさせる英雄たち。――――――――――聖杯戦争に相応しい幕引きだ!」

 

 

 金髪の男の言葉を聞いていたオリオンとアルテミスは一瞬だけ相手の船を見渡してやがて確信を持ったように口を開いた。

 

「あれ、もしかしてアルゴー号?」

 

「多分正解だぞコンチクショウ。あれは正真正銘のアルゴノーツだ。金羊の毛皮を探して旅立った冒険者たちの船。世界最古の海賊船と言っても過言じゃねえ。まぁ、こっちの船長であるドレイクに比べて、向こうのトップはまだケジラミの方がマシってくらいの人格を持っているがな」

 

「アルゴノーツのリーダー……つまり、イアソン」

 

 マシュはリーダーのことを知っているようだった。その言葉が聞こえたのか金髪の男―――イアソンが答えた。

 

「私の名前を知っているのか。やはり、偉大な人物って言うのは時代を越えても語り継がれていくもんだな!さぁ、かかってきなさい!こちらは君たちみたいなガラクタが使うような卑劣なことはしない。真正面から押しつぶしてやろう!全く以って気分がいいな!正義というのは!」

 

 イアソンの言葉に、二つの矢が走る。

 それは目にも留まらない速さでイアソンの両目に吸い込まれていき、あわや目玉事その脳みそを貫かんとした瞬間、近くに居たヘクトールが間に割って入り、卓越した槍さばきでそれらを弾き落とす。

 ヘクトールの視線の先には、全く同じ体勢、つまり矢を放った後の体勢で静止していた仁慈とエミヤの姿があった。

 

「いや、済まない。あまりにも隙だらけなもので、ついつい射ってしまったようだ」

 

「全くですね。てっきり死にたいのかと思って反射的に矢が飛んで行ってしまいましたよエミヤ師匠」

 

 謝る気ゼロである。むしろ思いっきり煽りに来ていた。

 精悍な顔立ちのイアソンが先程の顔面崩壊が可愛く見えるほど鋭く二人を睨みつけていた。 

 だが、そんなイアソンの表情と殺気にも二人は全く反応することはない。むしろ、鼻で笑って出直せと口パクで伝えるレベルである。

 そんな二人に対してロマニが慌てたように通信を入れた。

 

『ちょ、ちょっと!何挑発しているのさ!あれが数多の英霊たちを乗せたアルゴノーツだとしたら、その中で破格の存在が居るんだ!』

 

「―――ギリシャ神話最大の英雄。ヘラクレスだろう?問題はない。既に交戦経験がある。なに、そう簡単に負けはしないさ」

 

 焦りに焦るロマニの言葉に気負うこともなく返すエミヤ。だが、イアソンはそんなエミヤの言葉を大きな声で嗤い上げた。

 

「はははは!!無駄だ、無駄無駄!勝てるものか!時間稼ぎすらできるものか!数多の怪物たちと、戦い、一つでも困難な試練を十二個も乗り越えた英雄達(俺達)ですら憧れた最強の英雄だ!君たちのような二流三流とはわけが違う。無造作に引き千切られるが、雑魚敵の運命だ!」

 

 イアソンはここで一度言葉を切ると、仁慈の方に視線を向けて言い放つ。

 

「そこで一つ提案だ。そこのマスターらしき者よ。先程私にした不敬な攻撃を泣いて謝り、そこに居るエウリュアレをこちらに渡せば、ヘラクレスをけしかけることだけはやめてやってもいいぞ?」

 

「少しは自分の力で交渉に挑んだらどうです?さっきから聞いていれば、ヘラクレスにおんぶにだっこ……生きてて恥ずかしくないんですか?」

 

「――――――――」

 

『――――――――』

 

 空気が凍った。というか死んだ。その場に居る者(マシュとXは除く)たちは全員が固まった表情で仁慈に視線を向けていた。

 だがしかし、当の本人はそれに気づいていないかのように話を続ける。

 

「ほらほら、少しは自分にあるもので何か言ってみてくださいよ?待っててあげますから。ほら!ハリーハリー!!」

 

「………」

 

「…………なんも言わないのか。はぁー………ちっ、虎の威を借る狐かよ。つまらないうえにくだらなさすぎる……もう英雄名乗るのやめたら?」

 

 見せつけるように溜息を吐き、首を振ってやれやれと言う仁慈。もはや何様だと言ってやりたいくらいのふてぶてしい態度だが、こう見えてもこの仁慈。人間の癖に数多のサーヴァントとの戦いを最前線で生き抜いてきた実績を持つのだ。同じリーダーでもイアソンとは文字通り次元が違った。

 

「―――――――――ゴミ屑風情がッ!言ってくれるじゃないか!サーヴァント諸共消え失せろ!……メディア!私の愛しいメディア!」

 

「はい、お呼びでしょうかマスター?」

 

「私の願いはわかるよね?アイツらを、特にあの人間を粉微塵にして殺してほしんだ!君が自分の弟をバラバラにして殺した時みたいにね!あぁ、安心して。私はもう反省したから。二度と君を裏切らないとも!」

 

「また、頼ってるし……本気で何もできないのかアレ」

 

 メディアと呼ばれた薄い青髪をポニーテールにしている少女を呼びつけて仁慈たちを殺すように指示を出すイアソンに呆れた声を上げる仁慈。同じようなポジションに収まっているものとして憤りを感じているのかもしれない。

 

「元船長とは別のベクトルで屑だね、アン」

 

「元船長とためを張るレベルでゴミ屑ですわねメアリー」

 

「私知ってるよ。あれ、DVっていうんだよね!」

 

「そんなもんじゃねえぞ!あいつらどちらもお互いのことを見てねえ!」

 

「……神々と同じレベルには質悪いわね。……アステリオス。貴方は将来あんなゴミにも劣るような男になってしまってはダメよ?」

 

「ん。わかっ、た。えうりゅあれが、そういう、なら、そうする」

 

「あれが世界最古の海賊船の船長かい。………がっかりだねぇ。まだ黒髭の方がましだよ」

 

「さりげなくdisられる黒髭ェ……」

 

「ミスターレッド。言ってはなりません。彼の扱いは自業自得なのです」

 

「というか、先輩。妻を最前線に出して自分は高みの見物って……もしかしてイアソンは……まごうことなき人間の屑なのでは?」

 

「今までの会話からそんな感じはしたよね。マシュにまで言われるとか相当だな。アレ」

 

 散々に言われるイアソン。

 既にキレていた堪忍袋は爆発してしまい、イアソンは吼えるようにヘラクレスの名前を叫んで仁慈たちにけしかけた。それに加えて聖杯で完全復活を遂げたヘクトールも加わり、本格的な全面戦争が勃発した。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

「仁慈!ヘラクレスの相手を少しだけしてくれないか?」

 

「了解。マシュ!」

 

「―――――!」

 

 仁慈の声だけで、マシュは反応し彼の傍へとやってくる。エミヤは少しだけ距離を取りながら、小さく、しかし確かにその言霊を紡いでいく。

 

「―――――――――I am the bone of my sword. 」

 

 それは、エミヤという英霊が歩んできた生涯を示す言葉。

 

「―――――――――Steel is my body, and fire is my blood. 」

 

 彼の本質を引きだし、自分の力を最大限に使うための言霊。

 

「――――――――I have created over a thousand blades. 」

 

 エミヤの身体から感じる違和感にヘラクレスも気づいたのか、もしくは過去の記憶がエミヤと同じで残っているのか、仁慈とマシュを無視してエミヤへと攻撃を仕掛けようとした。

 だが、仁慈がそれを許すはずもない。

 

「行かせるか!」

 

 一瞬のうちに魔力強化と魔力放出を使ってヘラクレスの前に瞬間移動よろしく現れるとそのまま、全力全壊、魔力放出の勢いも利用した回し蹴りを見舞う。しかし、それは鎧のようなヘラクレスの身体には通らない。実際に傷一つ攻撃を受けたところには傷がなかった。

 が、衝撃だけは殺しきれなかったのか、わずかに後ろに下がる。そのことで仁慈を脅威と捉えたヘラクレスは仁慈にターゲットを変更し、斧剣を振り下ろす。

 神速と言っても過言ではない速度と、鋭さに仁慈はすぐさま突き崩す神葬の槍を取り出して応戦する。

 

「■■■■■―――――――――!」

 

「うぐっ……な、め、るなぁぁぁあああ!!」

 

 大きな傷を負ってこそないが、徐々に仁慈の薄皮が切り裂かれていった。いくら仁慈が最新最狂のキチガイでも、生きてきた年月が、積み重ねてきた経験の濃さが、彼の前に壁として立ちはだかっていた。

 

「はぁぁあああああ!!」

 

 一人であれば、確実に持たなかっただろう場面でも仁慈には頼りになる後輩が居るのである。

 仁慈がこのままではまずいと言うことをわかっていたのだろう。マシュが彼らの間に入るようにしてヘラクレスの斧剣を受け止める。それだけで立っている船の甲板がわずかに軋んだ。マシュの身体も今まで受けたことのない衝撃に節々が悲鳴を上げていた。仁慈は、マシュが作ってくれた隙を利用して彼女に強化魔術を付与。身体能力の底上げを図ると、すぐさま、自らの宝具の真名を開放した。

 

「―――――突き崩す、神葬の槍!」

 

 マシュが攻撃を受けている間にヘラクレスの視覚へと入り込んだ仁慈、自らの宝具を解放しそれをヘラクレスの首筋に突き立てた。彼の槍は人外に対して多大な効果を発生する。

 ヘラクレスとはその偉業を達成したのちに神の末席に収まった英雄である。もちろん、神とて人外の存在。仁慈の槍は十分な効果を持っている。

 

 彼の槍がその首筋に突き立てられるかどうかという、その時――――

 

 

「あっ、ぐぅううう!?」

 

 マシュが吹き飛ばされ、ヘラクレスが仁慈の方に体を回転させた。

 

「ちっ!」

 

 横薙ぎに振るわれる斧剣をとっさに槍をぶつけて防ぐことに成功する仁慈だったが、ヘラクレスの攻撃はそれですまなかった。素早く斧剣を構えると第二陣を仁慈に向かって振るう。

 一方仁慈も魔力放出を利用した反動で空中を移動してその第二陣を回避した。このままではまずいと仁慈はすぐに甲板に戻るが、そこでは既にヘラクレスが待ち構えており斧剣が振りかぶられていた。

 ギリギリで、槍を盾にしたもののヘラクレスの攻撃をそんなもので防げるわけもなく、左の肩から右の脇腹までバッサリと斬りつけられながら仁慈は後方に吹き飛んだ。

 

「ぐっ!先輩!」

 

「―――――――――ッ!recover()!」

 

 有り余る魔力を回復魔術へと流し込み、緊急治療を完了した仁慈は自分が持っている突き崩す神葬の槍をヘラクレスに向かって投擲する。

 不安定な態勢で投擲されつつも、かなりの速度を誇ったその槍は真っ直ぐにヘラクレスに向かっていくが、あっけなく斧剣で弾かれてしまう。

 

「ヘラクレス強すぎィ……!」

 

 弾き飛ばされた神葬の槍をルーンを利用して自身の手の中に再召喚をして構える。ヘラクレスにぶっ飛ばされたマシュも、軋む身体を無視して仁慈の隣に立った。彼女の状況を見て仁慈はすぐさま回復魔術をかけた。

 

「ありがとうございます」

 

「どういたしまして。……というか、ヘラクレス超強い。なんか、久しぶりに命の危機を感じてるわ」

 

「久しぶりって……」

 

「某、ケルト師匠が時々振ってくる無茶振り試練がね。生存本能全開でいかないとマジで死ぬから」

 

 なんて軽口をたたいているが、ぶっちゃけそうでもしていないとすぐに余裕を失ってしまうからこそのものであった。

 

 ヘラクレスは未だに無傷、それに対して仁慈たちは傷こそ治ったものの疲労を感じている。他のサーヴァントは全快したヘクトールとメディアの相手にてこずっていて増援を期待することはできなかった。

 

「■■■■■―――――――――!!!」

 

 ヘラクレスの咆哮が響き渡る。

 ―――――そして、それと同時に仁慈とマシュの前にエミヤが立った。

 

 彼は振り返ることなく、仁慈たちに対して言葉を紡ぐ。

 

「仁慈、マシュ。君たちは、ヘクトールの方に行ってくれ。そして、ヘクトールを倒した後、私たち全員でヘラクレスに挑む。それが、一番勝算のある方法だ」

 

「エミヤ先輩……」

 

「…………行けるんですか?エミヤ師匠」

 

 仁慈の静かな問いかけにエミヤは簡潔に答えた。

 

「無論だ。私はお前の師だぞ?弟子にいい恰好ばかりされてしまうと、私の面目が丸潰れだ。あぁ、でも、君がそうしたいのであればほかの手を考えるが?」

 

「これだけ思わせぶりなことしておいてそれはないでしょう……じゃあ、頼んでいいんですね。時間稼ぎ」

 

「もちろんだ。だが、仁慈。時間を稼ぐのはいいが―――――――――――――別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 エミヤの言った途端その表情を思いっきり引きつらせる仁慈。

 そんな彼に気づかず、エミヤは己の切り札を、彼に唯一許された魔術、その極致を発動した――――!

 

 

 

「――――So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.」

 

 

 

 エミヤを中心として別の世界がこの世界を侵食していく、そんな中、仁慈が早口でマシュに告げた。

 

 

「マシュ!ヘクトールの方に行っといて!俺はエミヤ師匠の方に行くから!」

 

「どうしてですか!?」

 

「――――――ちょっと、フラグを折りにね!」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 広がるは、無限の荒野。

 周りを見れども果ては見えず、唯々、数多の剣が墓標のように突き刺さるのみ。

 空は厚い雲が覆いつくしており、他にも巨大な歯車が音を立てながらくるくると回っていた。

 そんな中に、赤い聖骸布を着込んだ褐色白髪の男と、巌のような男が向かい合ってたっている。

 

「ここにこうして招待するのは二回目だったな。ヘラクレス」

 

「―――――――――」

 

「本来なら、ここは一対一でリベンジを果たすようなところなんだろうが、」

 

 エミヤはここで言葉を区切る。すると、そのタイミングでエミヤの隣に一人の少年が立っていた。

 白い制服を着こみ、その髪型は何処かエミヤの親代わりであり、彼に願い(呪い)を埋め込んだ人物によく似ている少年が。

 

「―――――どうやら、幸運値が低い私でもマスター運だけはどこぞの猛犬とは違っていいようでね。二人で挑ませてもらうぞ。こちらにも負けられない理由がある。………行けるな?マスター?」

 

「違和感がすごいですけど、今回だけはそれで我慢します」

 

 エミヤにマスターと呼ばれ体をよじりながらも彼に身体能力強化の魔術を施す。そして、お互いがお互いの得物を持って目の前の高い壁、ヘラクレスへと同時に宣言した。

 

「往くぞ、大英雄ヘラクレス。命の貯蔵は十分か?」

 

「今回、こちらの勝利は揺るがない。――――その命、全て貰っていくぞ!」

 

「■■■■■■■■■■――――!!!■■■■■■■■■■―――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 広がるは、無限の荒野。

 周りを見れども果ては見えず、唯々、数多の剣が墓標のように突き刺さるのみ。

 空は厚い雲が覆いつくしており、他にも巨大な歯車が音を立てながらくるくると回っている。

 そんな中、赤い聖骸布を着込んだ褐色白髪の男と巌のような男、そして、白い服を着込んだ少年が居た。

 

 

 彼らは、誰も見て居いないこの世界において、合図もなく同時に激突するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誰もが一度は考えたヘラクレスとエミヤの再戦。
それ故に、私にかかる負担は尋常じゃない……!感想と評価が怖すぎる……ッ!

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