この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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エクステラ買いました(唐突)
しかし、まだ開けていません。これを書き終えたらやります(フラグ)


お巡りさん、こいつです

 

 

 

 ひたすら皮肉と俺に対する罵倒を繰り返すとんでもなく面倒くさい性質を持ったぱっと見少年に見えるサーヴァント――――あとで教えてもらったのだが、真名はアンデルセンと言うらしい――――である彼と、元人を襲う本にして今現在は俺のサーヴァントとなっている仮称ナーサリー・ライム(アンデルセン命名)を新しく仲間に引き入れた俺たちは再びジキルの家へと向かっていた。ジキルがこの時代の人間で、外へと出れないからと言っても、なんというかこの移動で無駄に体力を削られて言っている気がしないでもない。

 

「どうしたのよ子犬。どこか元気ないじゃない。……私が元気づけてあげましょうか?主に歌で」

「やめて。後、そこまで心配することはないから大丈夫。……移動ばっかりで精神的に来

ているだけだから」

 

「そこまで言う!?」

「うん」

 

「しかも即答!」

 

 当たり前じゃないか。ここでハロエリの聴覚テロを受けたら確実に戦闘不能コース一直線だわ。

 いくら今までとは違い、ロンドンという街の中という限られた場所の中での活動だとしても、霧の所為で普段よりも更に神経を使って歩くことになるし、同じような場所を何度も往復させられるしで精神的な負担がかなりかかってきているのだ。単調な作業程退屈で疲れるものはないということである。

 

「なんだ、このくらいでもうへばっているのか?情けない奴だな」

 

「そんなこと言うくらいなら、お前はどうなんだよ?」

 

「馬鹿め。俺は作家だぞ?肉体労働なんて専門外だ。恐らく、正面からそいつと戦ったら一分で負けるぞ」

 

「………無駄に自信満々なのね……?なぜそこまで誇って言えるのかしら?不思議だわ」

 

 自信満々に言い切るアンデルセンに、心底理解できないと首を傾げるナーサリー・ライム。どちらも子供の姿ということもあり微笑ましい光景に見えなくもない。蓋を開けてみれば皮肉しか言わないし、目に見えない地雷がそこら辺に埋まっている危険物件という有様ではあるのだが。

 

『――――――和やかな雰囲気のところ済まないね。ここで重要な情報を追加させてほしい』

 

 二人の外見子どもコンビを眺めてくだらない思考をしていると、アンデルセンと合流する前に聞えたジキルの声がまたもやカルデアの通信機器を通じて俺の耳に届いてきた。

 あ、これは再びミッションというか頼みごとの流れですね。分かります。もうやめて。流石に無休憩でエンドレス活動ができるほどに人間をやめているわけではないんです。

 

『うん。仁慈君の言いたいことはわかるんだ。これもカルデアが相手の映像まで送り届けてくれるから、察せられるんだけど……けど、これは今までで一番優先順位が高いと言ってもいい。……君たちがアンデルセンと合流している当たりの時間かな?その時にスコットランドヤードの通信を傍受したんだけど………ついに、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)が現れたらしい』

 

「ついに来たかあの野郎!」

 

 ジキルの出した名前に一目散に反応したのはモードレッド。鋭い犬歯を見せて獰猛な笑みを浮かべつつもその瞳は全く笑っていなかった。

 それにしても、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)か……。確か、今俺たちが居る十九世紀のロンドンに現れた連続殺人鬼。その正体は一世紀経った現在でもはっきりとしたことが分かっていない。殺した人の正確な数は不明なものの、少なくとも五人の女性は殺したと推測されている……こんなところか。切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)に関しては現代でも割と有名なためある程度の知識は持っている。だからと言って、何らかの対策ができるわけではないけれど。真名はおろか、正体すら判明していない人物だ。正体不明という点でアサシンかなという予想くらいしか現段階では立てられない。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)。実際に居たとされる殺人鬼ですね。警察に直接犯行予告などを送り付けたこともあり、劇場型犯罪を最初に行った人物とも言われています。そして、その正体は今現在でも議論されている最中ですね。最も有力な説は、医者であるということでしょうか」

 

『………これほど、技術が進んだ君たちの時代でも正体がわからないのか……。なら、もしかしたらそれが彼の宝具かもしくはスキルにまで昇華されている可能性があるね』

 

「どういうこと?」

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)は自身の情報を曖昧にする能力のようなものを持っているということさ』

 

 疑問に答えたジキルだったが、それでも今一容量をえないというか理解できないために首を傾げる。よく見ると隣でナーサリー・ライムとハロエリも同じようなことをしていた。

 すると、ここでモードレッドが分かりやすく説明してくれた。

 

「オレも何度か戦ったことがあんだよ。アイツとな。けど、あいつがどんな顔をしてて、どんな得物を使っているのか、男なのか女なのか、それすらも思い出せねえんだ。なんか記憶に靄というか霧がかかった感じになってな」

 

『僕はこれこそが宝具、もしくはスキルになっていると考えている』

 

『そうだね。切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の存在、逸話からその可能性は限りなく高いと言ってもいいね。断定はできないけど、クラスはアサシンってところかな』

 

 まぁ、今日までに伝わっている情報から言ってそれが一番濃厚だろう。それだったら、不意打ち対策としていつもより何割増しかで周囲に気を配らなくちゃいけなくなるけれども。

 

「こうしちゃあいられねえ、さっさと行くぞ!」

 

 散々苦汁をなめさせられてきたんだろう。モードレッドは反論の隙すらも許さない勢いで何故かてこでも動かないぞとでも言わんばかりのオーラを放っていたアンデルセンを引きずりながらスコットランドヤードの方へと行ってしまった。引きずられている時にアンデルセンが、色々言っていたような気もするがモードレッドは耳に届いていないのか爆走を続けていた。

 

 ……実は彼女バーサーカーだったりするんじゃないのだろうか。俺という人間がいるにもかかわらず普通の速度では決して出せないスピードで駆け抜けていくモードレッドを見つつ、改めてジキルの苦労を思って溜息を吐く。その後、流石にはぐれるわけにはいかないので、皆で追いかけることにした。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 と、こんな感じでやって来たスコットランドヤード。外見的には変化がないのだが、それは本当に外見的なところだけだ。匂いは数多の血がその辺にこべりついているのではないかというくらい濃く、むせ返りそうだった。

 匂いの感じから言ってその場にいた人間は既に皆殺しされている可能性があるな。

 

 

 血の匂いで一層警戒心を強めた俺は、ないよりはましだと自身の目にも強化を施す。すると、血の匂いと死の気配が充満しているこのスコットランドヤードで立って居る人物を二人ほど見つけた。

 

 一人は顔に傷を負っている銀髪の女の子。その外見は小さく、十代前半に見える。恰好もかなり過激なもので特に下半身の防御については紙レベルだった。そして、そのすぐ近くには薄い笑みを浮かべて佇む高身長で白衣にも思える服を着こんでいる男性が居た。これは事案か?警察を呼びたいところだが、このロンドンの警察はもう既に全滅しているとみていいためにそれは無理だと頭の中で決着をつけた。……流石に思考がふざけすぎた。現実逃避はやめてさっさと状況把握に努めるとしよう。

 

「……あれ?そっちから来てくれたんだ。ふふ、良かった。こっちから行く手間が省けて。もうお腹もぺこぺこだし、お巡りさんだけじゃお腹いっぱいにならないところだったんだ。だから……わたしたちは貴方たち、とくにそこの白いお兄さんを食べてお腹いっぱいにする」

 

「間に合わなかったか………」

 

『残念ながら。ここには君たちの反応のほかには、その女の子ともう一人、彼女の隣に立っている男性だけだ』

 

「不明のサーヴァントと認識します。そこの男性、貴方は何者ですか?」

 

「……えぇ、まぁ、そちらも理解しているとは思いますけれども。……私はキャスターのサーヴァント。貴方たちの知る『計画』の主導者……その一人です。こちらの事情故に真名を明かすことはできませんが、『P』とでもお呼びください」

 

 雰囲気的には、メフィストフェレスとは似ても似つかぬ物言いだが、それでも全滅した状態のスコットランドヤードに居る奴だ。まともな神経をしているとは思えない。なにされてもいいように、前と同じく戦いの準備をしつつ、相手の話を聞くことにする。あ、間違えて弓出しちゃった。

 

「残念ながら、貴方たちは遅かった。スコットランドヤードは既に全滅しています。……すべてが惨たらしい死にざまでした。あの子には慈悲の心が備わっていないのです。しかし、必要な犠牲だった………。そう、表現することがせめてもの手向けです。人は慈しまれるべきです。愛も想いも、どちらも尊く眩い物には違いない。ですが―――――哀しいかな。時に大義名分はそれすらも上回ってしまう」

 

 何やら勝手なことをべらべらと宣っているが、キャスターというクラスは敵の目の前で演説をかますのが好きな連中が成るクラスという規定でもあるのだろうか。何かしたらの対抗策を用意しているのだろうが、それにしても隙だらけが過ぎるというものだ。

 

 ―――――――――やることはメフィストの時と大して変わらない。考えれば考えるほど出典が不明な四次元鞄から、お節介というレベルをはるかに超越したレベルである数多の武器を象ったグリードの身体を取り出し、戦いの場を整える。幸い、Pの在り方に疑問を持ってくれたマシュが彼との問答を繰り返しているために、気づいてはいない。銀髪の女の子の方はモードレッドが噛みついているのでこちらも問題はなかった。

 

「――――――矛盾を感じます。貴方の語る想いと、やっている行動が一致していません。現に、あの女の子を使ってこのようなことをしている貴方にこそ慈悲の心が備わっていないのではないですか?」

 

「(そうかしら?私はそう思わないんだけれど……ここでそれを口にすると怒られそうだからやめておきましょう。私、空気を読めるアイドルだもの。天然を気取って場を乱すだけの女になんかにはならないわ)」

 

「(あの子も、同じなのね。きっと。いえ、もっとひどいかもしれないわ。でも、ごめんなさい。私では貴方たちを満たすことはできないの)」

 

「(いい加減、俺を開放してくれないものか………たっく、激情型の人間はこれだから面倒くさい。よくわからんところで導火線に火が付き、勝手に爆発する。するなら俺のいないところでやってほしいもんだ)」

 

 それぞれの思惑が、一瞬だけ垣間見えた気がした。

 特にアンデルセンなんかはそれを全面的に表情へと出しているのだが、モードレッドはそもそも後ろを振り返ったりはしないので全く効果がなかった。

 

「ええ、そうかもしれませんね。今の私こそ、悪逆非道の魔術師に他ならないでしょう。だからこそ、今もこうして言うのです」

 

 全体を把握している身としては、マシュとPのシリアスがシュールな光景に思えてくるから不思議である。

 鞄に入っている武器をある程度引き出し終えたあたりで、Pは唐突に言葉を切った。そしてそのままモードレッドの殺気にさらされている銀髪の女の子に向かってある言葉を口にした。

 

「ここは任せましたよ。ジャック。好きにしなさい。彼女たちは貴方たちの母親かもしれませんよ」

 

「え……?本当……?ふうん、そうなんだ。なら、おかあさんたちみたいにするね?帰らせてね。わたしたちを、貴方の……おかあさんの中へ」

 

 Pの言葉に一気に戦闘態勢へと移行したジャック・ザ・リッパー。Pもキャスターというクラス上、残しておくと確実に面倒くさい連中の類たのだろうが、それ以上に向こうのジャック・ザ・リッパーの方がこちらとしては厄介な問題だった。

 

 彼女は事実として数多の女性を解剖してきたサーヴァント。その逸話故に何かしら、女性に対しての特攻を持っていたとしても不思議なことではない。なので、彼女には男性を当てが居たのではあるが………今この場に居るのは俺とやる気ゼロのアンデルセンしかいないという絶望的な状況。これは泣きそうですわ。

 

「ダメだ。テメエは座に直行だ。ここで殺す」

 

「先輩。彼女……アサシンはここで止めるべきだと思います」

 

 しかも、お二人ともやる気満々のご様子。今さら戦わないでと言ったらなんて言われるか分かったもんではなかった(特にモードレッド)ために泣く泣く戦うことを決意する。

 

「一応、向こうはジャック・ザ・リッパーだ。女性特攻等のスキルを持っていても不思議じゃないから、注意してよ。マシュ」

 

「はい!」

 

「アタシは!?」

 

「頑張れ」

「雑っ!」

「愛だよ愛」

 

 好きな子はいじめたくなるんですよーっと。

 

 流石にここにいる全員(ショタロリ以外)は戦闘に慣れているのでふざけたやり取りを行いつついつでも攻撃を仕掛けることができる状態に移行する。

 

 

「ちょっと待て。もしかして、俺も戦力に数えられているのか?だとすると、貴様らの頭にはきっとマッシュポテトでも詰まっているんだろうな!俺は作家だぞ?肉体労働なんぞもってのほかだ」

 

「大丈夫だ。元々お前に戦いなんて期待してない。いざという時の盾にするだけだ。オレが覚えていないだけで、特攻なんてものも持っているかもしれないからな」

 

「ガッテム」

 

 ………モードレッドも容赦ないなぁ。それで、罵詈雑言をやめないアンデルセンも対外だけれども。

 

 ここで俺は漫才じみたやり取りを行う二人から目をそらして、つい先程仲間にしたばかりのナーサリー・ライムに視線を向ける。

 

「ナーサリーはどうする?」

 

「尋ねる必要はないわ。マスター。私が望むことは、貴方がたとえ、外見だけでもありす()のことを覚えてくれればいいの。それ以外に、望むものはないわ」

 

「なら、少しだけ働いてもらうよ」

 

「えぇ、いいわよ。さぁ、楽しい楽しいお茶会を始めましょう」

 

 

 

 

 

 




そういえば、クリスマスのロリジャンヌが来ますね。これは全力でやらねば(使命感)

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