「曹操が挙兵した理由は?」
だいたい見当は付くが、部下に聞いてみた。
今、田中は情報関係の部署の最高責任者を任されており、部下を持てるようになっていた。
その最初の仕事が曹操に関する情報についてであった。
「はっ!報告によると洛陽にて暴政を振るう逆賊董卓の首を打つためだそうです」
この話は三国志でも出てくる。
董卓は洛陽に入る前は一将軍でしかなかった。性格は部下思いで決して暴虐無人な人間ではなかった様だ。軍人としての能力も優秀で、戦上手でかつ本人の武もかなりあったらしい。
その後、数々の功績を立てていく中で、名は通るようになっていたが、政治とはほとんど関係のない生活をしていた。
しかし、漢の都 洛陽において何進や袁紹が宦官を一掃しようとする計画が持ち上がるようになり、董卓の人生は一変する。
この時、この計画に反対していたのが何太后に圧力を掛ける必要があった。そのために洛陽に呼ばれたのが董卓である。
この計画により、何進が暗殺されたことにより袁紹達は宦官の大粛清を行った。この混乱に乗じて洛陽から少帝と陳留王が誘拐される事件が起きる。
董卓はすぐさま軍勢を率いて、この二人を保護する事に成功。
その後、死んだ何進らの軍勢を吸収することで力を増していき、次第に政治の実権を握るようになっていった。
そして、暴政を振るうようになったというのが史実の流れである。
この世界においても歴史はほぼ、変わらなかった。
「では、洛陽の様子はどうなのだ?」
「はい。出入りしている行商人の話では、洛陽は人っ子一人見かけないほど荒れているようです。あちこちで悲鳴が上がり、朝目覚めると誰かしらの首が城門にさらされていたりと酷い有様のようで」
「それは、確認したのか?」
田中が質問すると副官は不思議そうな顔をしながら答えた。
「いえ。調べる必要はあるのですか?」
その言葉に田中は耳を疑った。
情報というのは、ある人を介して聞くとその人の価値観が入り込んだり、場合によっては嘘の情報を流されてる場合すらある。
それ故、おいそれと全ての情報を真実だと飲み込む事は禁じ手である。
歴史上でも嘘の情報に騙されて、軍が敗走した例は数多ある。
「調べなくてはならないに決まっているであろう!もし、それが嘘の情報であったらどうするのだ!常に情報はそれが真実かどうかをよく考え、場合によっては確かめる必要がある。今すぐ調べてこい!」
そう言って、副官に指示を出した。
(あまりにも情報に対しての認識が甘すぎる。これでは、いずれ曹操などが力をつけてきたときに対抗できない)
このままでは、いけない。
そう危機感を抱いた田中は、解決策を考えていた。
(情報に関してならば、田豊や沮授のように優秀な参謀が出てくれば良いが、そのような優秀な人物が出てくることはそうそうない。専門学校を作り、人材を育てるのも手の一つだが、教師に誰を当てるんだ)
悩んでいても仕方がないので、袁紹に相談を持ちかけることにした。
袁紹は執務中であったが、田中が来たことを知るとすぐに出迎えてくれた。
「どうなされたんです?」
「はい。実は……」
田中は事の成り行きを袁紹に話した。
「そうですか。それは危険な状態ですね。すぐに対策を考えねば」
袁紹はそう言い、近くの世話役の人間を呼んだ。
「子遠、元図、公則をお呼びになって」
子遠は許攸、元図は逢紀、公則は郭図の事である。
「かしこまりました!」
田中は袁紹の指示を聞きながら、改めて袁紹がどれほど、この問題に危機感を抱いているかを実感した。
今呼んだ誰もが、この時期の袁紹の文官を代表する優秀な人間であった。
しばらくすると、数人の足音が聞こえ、やがて部屋の前で止まった。
「許子遠、逢元図、郭公則が参上いたしました」
「入りなさい」
部屋に入ってい来たのは面識のある2人と見知らぬ一人の少女であった。
その少女は深い緑色の髪で赤色の目をした静かそうな少女であった。
「公則は田中とは初めてでしたよね?」
袁紹がその少女に問うとその少女は静かにうなずいた。
「田中、彼女は名を郭図、字を公則と言いますわ。普段滅多にしゃべらない子だけれども根は優しい子ですのよ。宜しくしてあげてくださいな」
そう言って、彼女を紹介した。
郭図は黙って頭を下げた。
郭図
豫州潁川郡出身で荀諶や辛評と共に仕えた。
袁紹が冀州を取るときにも大きな活躍をして功績を挙げている。
官渡の戦いにおいて審配と共に短期決戦を主張し、袁紹はそれを支持する。そして、監軍(袁紹軍総司令官の地位に当たる)の沮授に対して権力が大きすぎるとして沮授、淳于瓊、郭図に権力を分散させた。
その後、官渡の戦いに敗北した袁紹は、病没。
跡継ぎの問題になった際には長男の袁譚を推した。跡継ぎ争いが加速していく中で袁譚と共に曹操に一時降伏をして同盟を結んだ。しかし、曹操が袁尚と争っている間に力を盛り返した袁譚を曹操は盟約違反として再び争いになる。この時に敗北をして205年、袁譚と共に殺された。
官渡の戦いにおいて悪行がかなり評判を悪くしている人物である。
しかし、袁紹が冀州を手に入れる上で重要な役を担うなどその能力の高さは折り紙付きだ。
「それで、今回皆さんを呼んだのは情報を扱う人間の能力を上げたいのだけれどもどうすれば良いと思うかを聞きたいのですわ。忌憚なく仰ってください」
そう言って、3人を見た。
歴史に名を残した逸材達はどのような策を出すのであろうか。
田中は目の前で出るであろう3人の策を黙って待った。
今回と次回の話でおそらく、反董卓連合の話へと入っていけると思います。
袁紹が活躍を始めるまでもう間もなくです!
皆さん大変長らくお待たせしました!