袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

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許攸の台詞のスペシャリストを通じている方に変更しました。


第十四話 時代の荒波へ

「太守、私が思いますに……」

 

 まず、許攸が話を始める。

 

「やはり、それについて教育できる人間に指導をさせては如何ですかな?」

 

 一番出るであろうと思っていた策が出た。

 これは田中も考えた方法である。

 

「ではその指導する人間はどうなさるのです?」

 

 そう、ここが問題なのだ。

 情報という特殊な部門を扱う人間を育てるには、それについてのエキスパートがいる。

 しかし、果たしてこの後漢の時代にそのような人間がいるかどうかが問題であったのだ。

 

「それはこの前のお話が本当であれば、田中殿がよろしいのではないのですか?」

 

 まるで、田中に挑戦を挑むかのようにとげを持った口調で言い放つ。

 

「それはできませんな」

 

 田中は毅然と答えた。

 

「情報というのは常に私の手元にやってくる物。時によっては一刻を争う事態になる情報も来ます。指導の仕事を持っていては、そのような情報への対処がおくれるだけでなく、常に色々なことを考えながら行動するために仕事の効率の低下を招きます」

 

「むう……」

 

 これを言われては許攸も黙るしかなかった。 

 

「私にその候補がございます」

 

 意外なことに逢起が声を上げた。

 

「誰かしら?」

 

 袁紹が聞くと、逢起はしばらく黙った後。

 

「許子遠殿です」

 

「な、何!」

 

 驚きのあまり声を上げたのは許攸その人であった。

 

「何を仰られる!私は袁太守様を支えなくてはならない立場。とてもそんなことをやっている暇はございません!」

 

「いえ子遠、心配せずとも大丈夫です。今は情報に関する能力の引き上げが急務。あなたはそちらを優先しなさい」

 

「しかし何故、田中殿は仕事を外せなくて私は大丈夫なのですか!」

 

 半ば切れ気味に逢起に食ってかかる許攸。

 それを落ち着いて逢起は言い返した。

 

「彼の代わりになるような情報に通じている方は他にいません。実際、彼は今まで誰も気がつかなかった問題点を就任したその日に発見しています」

 

「……っ!」

 

 きっと田中を一睨みしたあと、許攸は袁紹に臣下の礼を取り言った。

 

「その教務の任、謹んで引き受けます」

 

 そのあと、すぐにきびすを返して部屋を出て行った。

 

「子遠」

 

 部屋を出る前に袁紹が許攸を引き留めた。

 

 許攸が振り返ると袁紹が話し出した。

 

「あなたは降格処分されたと思っているかもしれないですけど、これは降格などではなく昇格ですよ」

 

 許攸は一瞬、怪訝な顔をしたが袁紹は言葉を続けた。

 

「この問題は私にとって死活問題です。つまり、あなたの働き次第で私の未来は決まるのですよ。これはあなたにしか果たせない大任です。情報の大切さがよく分かっているあなたなら分かりますね、情報がどれほど大きい影響を及ぼすのかを」

 

 許攸は、話を聞きながら徐々に嬉しそうに頬を綻ばせた。

 

「御意!」

 

 最後に嬉しそうに大きく返事をして、スキップで出て行った。

 

「本初様、一皮むけましたな」

 

 逢起は感嘆したように言った。

 

 一昔前の袁紹ならば、あのような振る舞いはできなかったであろう。

 

 改めて袁紹の成長を確信した。

 

 最後に一礼して逢起も部屋を出て行った。

 

 

 部屋に残されたのは袁紹と郭図と田中の3人だけになった。

 

「これからは戦乱の世となるでしょう」

 

 袁紹がぽつりと言った。

 

「ええ。そのためにも一刻も早く準備を整えなくてはなりませんな」

 

 田中がそう言うと郭図もしきりに頷いた。

 

 この日の天気は晴れのち曇りであった。

 

 

 事が大きく動き出すのは、それから二週間ほど経った年が明けた正月のある日であった。 

 

 

 

「田中殿、田中殿、大変です!」

 

 副官が大急ぎで田中の執務室に飛び込んできた。

 

「どうした?」

 

 何となく予想は付いているが、何事もないかのように田中は尋ねた。

 

「三公殿下から檄文であります!」

 

「内容は?」

 

「洛陽にて暴政を振るう董卓を打倒せよ、であります!」

 

「分かったすぐに太守様に報告に行く」

 

 そう言って田中は執務室を出た。

 無論、田中はこの檄文が橋瑁が偽装した嘘であることは知っている。

 しかし、これは漢を二つに分ける大戦になるために報告せざるを得ない。

 

 

「そうですか」

 

 田中からの方向を聞いた袁紹は落ち着いて答えた。

 

「すぐに閣僚を集めなさい。今後のことについて話し合います」

 

 近くの兵士に命令して、会議の準備を始めた。

 

 

 

 

 会議は紛糾した。

 田中の証言や様々な情報からこの檄文が三公からの指示というのは嘘であることは分かっていた。

 問題は洛陽がどうなっているかとどちらに付くかであった。

 

 今の権力者たる董卓に付くという者達と時代の趨勢は反董卓連合であるから反董卓連合に加わるべきだという者達の二つに意見が分かれている。

 ただ、洛陽の様子が分からないためにどちらも決定打を決めかねていた。

 

 田中はあらかじめ、こうなることを予測し兼ねてから洛陽の様子を探らせている。

 そこで、会議での発言を許されていた。

 

「私が部下に命じて洛陽の様子を探らせました」

 

 一同からどよめきが起こった。

 

「洛陽は暴政どころか、素晴らしい善政が敷かれており、極めて栄えているそうです、また出入りする商人に問い合わせたところ、暴政になったことは一度もないとのことでした。これは無差別に選んだ商人に聞いているので、かなり信憑性は高い物と思われます」

 

 田中の報告により、董卓に付くという者が優勢となった。

 

 しかし、問題は兵力だ。

 

 董卓の兵力は十万ほど。

 それに対する反董卓連合はおおよそ二十万が予測されている。

 

 どう考えても董卓に勝ち目はない。

 

 最後まで議論をしても決着の付かなかった両者は最終的に袁紹に決断を仰ぐことにした。

 

「最早、議論は尽くしましたが、我々ではこの問題は決めかねます。最後はどうか太守様、ご自身でのご決断を仰ぎたく……」

 

 逢起がそう言って皆が袁紹に注目した。

 

 袁紹は一人一人と目を合わせ、最後に一呼吸入れたあと、大きな声で言った。

 

「私は……」

 

 この日、袁紹の未来を大きく左右する決断がされた。




 ここで、皆様に一つお詫びがございます。
 私は学校の実習の都合上、来週からほぼ一ヶ月間インターネット環境の使えない環境に行くことになります。
 使えるときがあれば、投稿を行いますがかなり厳しい物と予測されます。
 なので、一ヶ月間ほど投稿ができない可能性がありますのでご了承ください。
 誠に申し訳ありません。
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