「袁紹様、どうかどうかご再考ください!今、無理して曹操軍を攻めるべきではありません。今はじっと耐え、国力を増すとき、このよう…」
「ええい、うるさい! 黙れ! わしが一度決めたことだ。文句を言うな!」
「しかし袁紹様、何卒何卒…」
「しつこい!衛兵、こいつを牢にぶち込め!」
「はっ!」
「袁紹様、どうかどうか…」
「また、この夢か」
そう頭をかき、目を覚ました男の名前は田中 豊。
自分の名前と似ている田豊という三國志に出てくる袁紹配下の武将を知り、三國志に興味を持った変わった経歴の持ち主である。
田豊
字を元皓 冀州鉅鹿群の人とも勃海群の人とも言われる。
若いときから優秀で漢の役人であったが、宦官の横暴ぶりに愛想を尽かし帰郷する。この時に韓馥に仕えたが、その正直さに韓馥に疎んじられており、袁紹が韓馥から冀州を奪った際に袁紹に仕える。袁紹に仕えた後に対公孫瓉などで大きく貢献する。曹操戦では袁紹に長期戦を主張し懸命に止めたが、袁紹の怒りを買い投獄されてまう。
この戦いでは、田豊が忠告したとおり、袁紹は大敗した。このことを馬鹿にされることを恐れた袁紹は田豊を殺害してしまう。
「最近はこの夢ばかり見るが何なんだ?おそらく田豊の投獄される瞬間なんだろうが……」
不思議に思いながらも田中はいつも通り出勤の準備を始める。
彼は防衛省の情報本部に勤めている。情報本部とは防衛に関する情報を集め、分析する機関である。
「さてと、行きま…」
そう田中が言いかけたときのことだった
部屋の中が妙に肌寒くなり、青白く光り始めたのだ。
「何だ、こいつぁ!」
本能がやばいと訴え逃げようとした瞬間、田中の意識は暗転した。
そして、光が収まったとき何事もなかったかのように部屋は元に戻っていた、部屋の主が消えたことを除いて。
「う~ん」
うめき声を上げながら、田中は起き上がった。すると目の前には大きな町が飛び込んできた。
しかし、その町は田中のよく知る日本の町並みとは似ても似つかぬ形をしていた。
なぜなら、その町には城壁がついていたからだ。まるで古代中国の映画にでも登場してきそうな城壁で門の近くには明らかに兵士と思わしき、人が立っている。
「おかしいな。俺は今まで自分の部屋にいたはずだ。なのに、なぜこんな場所に…」
すると、城門の兵がにわかに慌て始めた。
何があるのだろうと思って田中が注目すると、門が開かれ、中から多くの兵士が出てきた。田中は防衛省に勤めていたこともあり、動きだけでだいたい兵士と一般人の見分けはつくようになっていた。
その時、田中はあることに気がつき驚愕した。その兵士達は明らかに現代の者と違う格好をした兵士達だったからだ。その格好は明らかに三国志に登場してくるような鎧や服装であった。
そして、彼らの最後尾に守られるようにして出た来たのは、金髪縦ロールの少女であった。
唖然としてみていると、軍団は迷うことなく田中の方に向かってくる。
やばい
そう思って逃げようとした田中だが、その軍勢には馬もいて逃げるのは不可能であった。
諦めて、その場でとどまっていると、その軍勢の先鋒の兵士にこう聞かれた。
「あなたが、田中 豊様でいらっしゃいますか?」
「え、あ、はい」
その言葉だけやっとの思いで返すとその兵士はすぐに金髪少女のところに行き、一言二言告げた。
しばらくすると、その兵士がやってきた。
「袁太守様が田中様をお呼びになっております」
「え、袁太守ですか?」
そう聞き返すと、兵士は一瞬むっとした顔になったがすぐに戻り、言った。
「袁太守様です。様をつけ忘れるのは無礼に当たりますから、袁太守様の前ではやらないようにしてくださいね」
「あ、これは失礼しました」
田中は、頭の上にハテナをいくつも作りつつ、案内されるまま兵士について行った。
金髪少女(袁紹?)の前につくと彼女は開口一番にこう言った。
「我が名は袁本初と申します。宜しくお願いいたしますわ!お~ほっほっほっほ!」
やべぇ奴だ、こいつ。
それが田中の袁紹に対する第一印象であった。
時は後漢末期、朝廷の権力が弱まりつつある中、後に袁紹の田豊 沮授らと共に称えられる軍師 田中 豊はこうして袁紹と初対面するのであった。
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