袁紹軍は勃海の窮地を知り、汜水関を撤退し一路勃海を目指す。
しかし、そこには強大な敵が待ち受けるのであった。
「偵察部隊より報告!前方にいくつもの旗が見えるとのことです!」
「何!」
袁紹は一瞬、その旗が公孫瓉隊のものではないかと緊張を高めた。もしそうであればかなり危険な状態だ。
彼女の兵力は少ないとはいえど、兵は精兵揃いだ。一瞬で撃破されてしまうであろう。
「旗の文字と敵の数は?」
「曹の文字です!敵の数はおよそ1万!」
「華琳さんですね……。ここまで来てあのちんちくりんは私の邪魔をするのですわね!」
憤慨しながら、袁紹は怒鳴った。
史実においても袁紹ち曹操は旧知の仲であり、若い頃は二人で洛陽を遊び回ったらしい。その後、二入はライバルとなり官渡の戦いへと繋がっていくのだ。
まさしくこれからの戦いはライバルとの初戦と言うことになるであろう。
「袁太守様、どうなさいますか?」
逢紀が聞いた。言外に早く攻撃を命じてくれと言いたげに言葉には力がこもっている。
「どうするもこうするもないでしょう!あのちんちくりんを華麗に撃破して見せなさい!」
「御意!」
逢紀はすぐに配下の武将に指示を出し始めた。
「高将軍、あなたは盾隊2000を率いて、すぐに本隊の前面に出て敵の攻撃を防ぎなさい!」
「御意」
「淳于将軍は鉄騎1000を率いて敵の後方に回り、合図が有り次第、突撃せよ。この道を左に進んでいくとなだらかな丘がある。こちらから見る分にはそれほど大きな丘ではないが、反対側に行けばかなりの高低差があり馬と人の背丈ぐらいであれば十分隠せる。道沿いにずっと続いているからこれに隠れつつ敵の後方に行きなさい」
「了解」
「荀将軍は槍隊4000を率いて高将軍の部隊の護衛と補佐を」
「はい、は~い」
「田中殿と袁太守様はここで待機し、敵の一撃目を防いだ瞬間に突撃し、敵本隊を撃滅なさってください。私は弩弓隊を率いて敵の牽制に努めます!」
袁紹軍は急速に攻撃準備を整えていった。
「竜刃、敵の陣形どう思う?」
曹操が隣の女性に尋ねる。
「前に盾隊が横陣で並び、後方の本隊が魚鱗の陣を敷いています。これは我が軍の初撃を食い止めて一気に攻撃に移るつもりでしょう」
「なるほど。ならば、敵に食い止められなければ良いのね。春蘭!」
「ここに!」
「鉄騎1000を率いて袁紹の盾隊を突破しなさい」
「御意!」
「秋蘭」
「ここに」
「弩弓隊、500を率いて敵の盾隊を怯ませて春蘭の突破を援護せよ」
「御意」
「竜刃、あなたは私と一緒に敵が怯んだ瞬間に敵を叩きのめすわよ」
「「「御意!」」」
曹操は袁紹軍を静かににらみつけ、攻撃の時を待った。
「曹操軍、突撃してきます!」
物見の兵士より急報が入る。
「盾隊、構え!」
「槍隊は止められた敵を一人づつ確実に倒していってね~」
二人の将軍から指示がでる。
「本隊は直ちに槍隊の後方に移動して、攻撃の時を待て!」
逢起が指示を出す。
「うおおおおおおおお!」
大きな叫び声が聞こえる。田中はその戦場の空気に飲み込まれそうになりながらも必至に指示を出す。
「我が隊は袁紹様をお守りする!方円の陣を敷け!」
そう言って陣を固める。
ある一定の所まで近づいた瞬間に逢紀が指示を出す。
「弩弓隊、放て!」
その瞬間、一斉に矢が曹操軍めがけて放たれる。
「ぎゃあああああ!」
数十人の曹操兵が矢を浴びて地面に転がる。
しかし、大半の兵士は恐れることなく、突撃を続ける。
逆に曹操軍も指示を出したのであろう。
曹操軍側からも矢が大量に飛んでくる。
盾隊がある程度防ぐも運悪く矢に当たった兵士が地面をのたうち回る。正しく戦場の惨劇が今目の前で起こっていた。
「怯むな!敵の攻撃は弱小だ!矢を放ち続けよ!」
逢紀が兵士に向かって叫んだ。
そして、ついに前線が激突した。
「槍隊、槍を突き出せ!」
荀諶が大声を出す。
「うおおおおお!」
そして、突撃してきた敵の四肢や馬に風穴をうがつ。
それでも敵は突撃を行い、盾隊と衝突が起きる。激しい衝突音が聞こえ、双方が倒れ込む。そのできた穴を袁紹軍は必至で塞いでいく。
どうにか少し行き足を止められた瞬間、逢起が全軍に命じた。
「突撃!」
その瞬間、銅鑼が鳴り後方に待機させていた淳于瓊軍が曹操軍の背後を急襲。一気に大混乱へ陥らせた。
「狙うは曹操の首だ!突撃!」
淳于瓊が将兵に叫んだ。
「華琳様、このままですと……」
予想外の敵の奮闘に総崩れになりつつある曹操軍を見て、竜刃が残念そうに曹操に言った。暗に最早撤退すべきだと告げている。
「分かったわ。春蘭と秋蘭の部隊に伝えて、撤退せよとね」
近くの旗を持つ将兵に命じて、撤退の指示を出させる。
しかし、撤退を許す逢起ではない。
そこに追い打ちを掛け、曹操軍の兵士を一気に倒していく。何せ曹操軍は義勇兵。それに対して袁紹軍は正規軍。この状況ではあまりにも曹操軍に不利であった。
「まずい!このままでは全滅します!」
竜刃は焦りの色が隠せないでいる。何せ、将兵が急激に減っていくのだ。予想外の損害に冷静ではいられなかった。
「華琳様、お逃げください!私が殿を勤めます!」
「しかし、竜刃、それは……」
「春蘭、秋蘭!華琳様を頼むわよ!」
「「御意!」」
「待ちなさい、竜刃!そんな勝手は私が許さないわよ!」
「華琳様、またお会いしましょう!しからば、御免!」
そう言って竜刃は手勢を率いて、袁紹軍と対峙した。
「我が名は戯志才!死にたい奴から掛かってきなさい!」
曹操を守るべく戯志才の決死の戦いが始まろうとしていた。
間もなくテスト期間に入るので不定期投稿になります。
すいません。