公孫越隊は突撃を行うのではなく、船の周囲で戦闘を行うことにした。理由は簡単で、敵の方が圧倒的に数が多いのにも関わらず、こちらが突撃を敢行しても何一つ勝率は無いからである。
「盾隊、構え!」
公孫越は敢えて、正攻法で挑むことにした。多勢に無勢であるなら奇襲などの奇策を持ってして戦うことしか勝ち目はない。
しかし、連合軍にはそのようなことを準備する時間も能力もない。それ故、唯一の方法は本隊を守るために正攻法で時間稼ぎを行うという方法しかとることはできなかった。
(こんなことなら、もう少し勉強しとくんだったな……)
今さらながら、公孫越は勉強不足を後悔していた。
しかし、悲観ばかりはしていられない。公孫越にも異民族相手に数々の戦功を打ち立ててきたプライドがある。袁紹軍にそう簡単にやられるような無様な戦いをするつもりはさらさら無かった。
「弩弓隊、構え!」
ギッギッと弩の弦を張る音が聞こえてくる。弩は普通の弩とは違い、弦を強めに張って若干威力を上げているものだ。
「まだ打つな! もう少し引きつけるのだ!」
袁紹軍の騎馬隊があと数歩で、公孫越隊に到達するとなった瞬間に大声で公孫越は叫んだ。
「弩弓隊、放て!」
その瞬間、今まで狙いをつけ十分に引き絞られた弩の弦が矢を放つ。
近距離で放たれた矢は狙った的確に袁紹軍の兵士を打ち抜いていった。
「次、放て!」
後方に待機していた弩弓隊の別の部隊が矢を放つ。
その矢も狂い無く袁紹軍の兵士の四肢に風穴を開ける。
あまりの被害の大きさに廬植は、驚いた。
「騎馬隊は一旦引け!」
騎馬隊に撤退を命じ、後方から来ていた顔良に前線を託す。
「予想以上に敵の抵抗が強い。我々では突破は難しい。後は頼めるか?」
「はい! お任せください!」
そう言って、配下の兵士を率いて騎馬隊の前に出た。
「盾隊、突撃!」
とんでもない指示を笑顔で出した。
「え~~~!」
あまりの意外すぎる命令に敵の公孫越ですら驚愕の声を上げた。
普通に考えて、盾隊は防御用の部隊であり、攻撃用では断じてない。ゆえに機動力を持たせる必要が無いのだ。
しかし、顔良の今の笑顔の一言はその常識を根底から覆す命令であった。
どんっ どんっ どんっ
「「「うおおお!!!」」」
盾隊は目の前に構えるやいなや、太鼓のテンポに合わせて最初はゆっくりと徐々に動きが速くなり、突撃を始める。
これこそが顔良が今まで育て上げてきた歩兵隊の秘技であった。
以前田中から、史実において袁紹が将来的に公孫瓉と戦うことになる事を聞いていた顔良はもしかしたらと考えた。
そこで袁紹に提案してみることにした。
「袁太守様、盾隊に突撃ができるようにしたいのですが……」
「それは素晴らしい案ですわ! ついでに華麗に行軍できるように色々な動きをできるようにしておいてください!」
と鶴の一声で決まり、顔良隊では盾隊の突撃(袁紹を称える踊りもこみ)が行えるような訓練が中心となっていった。
もちろん、通常の盾では重くて突撃などはできないために顔良隊の盾は普通のものよりも小さめの物となっていた。
小さめのものとは言え、体の重要な範囲は守れるようになっており致命傷を負うのは避けられるようになっていた。
「ど、弩弓隊、放て!」
意外すぎる攻撃に動揺しながらも、公孫越は指示を出す。配下の将兵もしっかりと盾の隙間を狙って攻撃を行った。
しかし、それを簡単に許す顔良隊ではない。
空いた隙間には普通のものより堅めの防具に身を固めており、さらに部隊でも特に盾の扱いに慣れている者達が盾で隙間を上手く埋めていた。
それでも、やはり矢は一部を通り抜け、兵士を貫く。
「ぐあっ!」
しかし、それで顔良隊全体から考えれば、被害は小さく突撃を続ける。
「槍隊構え!」
ついに公孫越は弩弓隊はあまり役に立たないと判断。攻撃方法を切り替えた。
すると、顔良も同じ命令を出した。
「槍隊構え!」
今の状況的には兵士数は顔良の方が多く、打ち負けることはないと踏んだ上での指示であった。
しかし、廬植が顔良に叫んだ。
「敵とぶつかる寸前に盾隊に散開を命じてくれ!」
「え、分かりました!」
一瞬、戸惑った顔良であったが、すぐにその意図を理解し了承した。
そして両軍がぶつかる寸前で顔良は叫んだ。
「盾隊、散開!」
次の瞬間、盾隊の兵士が二つに分かれ左右に散る。
すると後ろに待機していた騎馬隊が突撃を開始した。
「絶対に突破されるな!」
ある程度このことを予測していた公孫越は弩弓隊は間に合わないと判断し、盾隊に死守せよと命じた。
「「「うおおお!!!」」」
しかし、その勢いを簡単には止められることはできない。
盾隊の一角が突破され、そこから一気に兵士が流れ込んでいった。
「これまでか……」
蹂躙していく袁紹軍を見て、公孫越は呟く。
「伝令! 連合軍本隊は岸を離れ、撤退に成功しました!」
奇しくも連合軍の本隊は撤退に成功したとの伝令が部隊が壊滅した今到達し、作戦目標は達したことが分かった。
もうこれ以上の抵抗は無駄であるし、できないであろう。
そう悟った時、顔良がこちらに向かってくるのが見えた。
顔良の名は既に公孫瓉領にも轟き始めており、その武勇は公孫越が勝てるものではないことは明白だ。
「さよなら、白蓮姉さん……」
顔良が大槌のような武器を振り上げるのを最後に公孫越は意識を失った。
袁紹軍の勝利が決まった瞬間であった。
毎度、「袁紹を活躍させてみようぜ!」をお読みいただきありがとうございます。
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