袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

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第三四話 洛陽からの急報

 田中が南皮の町に来てから、毎日のように気にしている情報がある。

 それは汜水関における戦いの趨勢であった。

 袁紹が曹操や公孫瓉らを撃破した後、反董卓連合には大きな波紋が広がっている。そこで田中は反董卓連合に間者を使って揺さぶり掛けているが、反董卓連合の中には孫策軍にいる周瑜のような知恵者がいるためになかなか、上手くいかなかった。

 

「どうやるべきか?」

 

 悩んでいると不意に田豊が顔をのぞき込んでくる。

 

「どうされました?」

 

「汜水関周辺にいる反董卓連合の諸侯をどうにかして瓦解させたいのだけれども、どうすれば良いと思う?」

 

 既に袁紹が董卓に付いた理由とその状況に関しては伝えてある。それ故、田豊や沮授の誤解は解けていた。

 

「う~ん、あそこには反董卓連合の諸侯が数多く集まっており、周瑜のような知恵者もいますからね……。それ相応の知恵者を送り込んで、瓦解をさせる方法もありますがかなり危険ですしね。補給線戦への圧迫は上手くいっていないのですか?」

 

「それが補給隊の護衛に劉備とか言う連中を当てたらしくて、その連中がめっぽう強く攻撃が上手くいかないらしいんだ」

 

 田中はそう言いながら、その劉備達による被害が書かれた書簡を見せた。

 

 そこには2千の兵力で攻撃を行った部隊がたった千ほどの兵に散々に返り討ちにされたとの情報が書かれている。

 その原因は劉備軍の将軍が異常なほど強いとの情報であった。

 

(やはり、関羽と張飛がいるか)

 

 その将軍の正体を田中は知っている。それは三国志演義の中で数々の偉業を為り遂げる豪傑達の名である。劉備と言えば出てくるのはこの二人である。

 

「これは酷い……」

 

 あまりの被害の大きさに言葉を失う、田豊。

 

「これだけの被害が出たと言うことは今後、敵の補給線に攻撃を仕掛けるのはあまり得策ではない。元皓、どうする?」

 

「となれば、更に大きな揺さぶりを掛けることが良いかと」

 

「具体的には?」

 

「大きな功績を挙げた朝廷の人間に反董卓連合の非難をさせるのはいかがでしょう?そのような人物が言えば、民は反董卓連合に非難の目を向けることになりましょう。さすれば、流石の諸侯も兵を退かざるを得ないかと」

 

「しかし、誰にお願いをする?並みの人物では世に出回る董相国の噂を消しきれんぞ」

 

「皇甫義真殿が適任かと」

 

「成る程」

 

 皇甫義真とは皇甫嵩のことだ。この人物は黄巾の乱において数多くの功績を挙げ、朝廷内でも一目置かれた人物である。

 この人物が味方すれば、流石の反董卓連合も瓦解するであろうと田豊は考えたのだ。

 

「ふむ。確かにそれならば、名将皇甫義真殿も味方になる事だし一石二鳥だな」

 

 田中は同意の意思を示す。しかし、彼の仕事はあくまでも情報を扱うことで人材を雇うことではない。この件に関しては袁紹に話を通してから他の人物に動いてもらう必要がある。

 

「では、元皓共に来てくれ」

 

「御意」

 

「しばし、お待ちを~」

 

 田豊と田中が話していると沮授がどこからともなく現れ、二人を制止する。

 

「何、文句ある?」

 

 田豊が少し目をつり上げながら、聞く。どうもこの二人はあまり馬が合わないらしい。

 

「文句ではないのですが、その案では成功は厳しいかと~……」

 

「何故だ?」

 

「はい。現在、董仲潁殿の噂は天下にとどろき渡っており、これを覆すことはかなり難しい物と思われます~。むしろ、このまま静観することが上策と考えます。敵は長期の遠征であるために兵は疲れ切っております~。さらに敵の兵力は強大であるためにそれを維持する負担もかなり大きいものとなっているはず~。このままでは敵は自壊するでしょう~」

 

「それは私も考えた。しかし、それは董仲潁殿の軍も同じ。敵が万が一総攻撃を仕掛けてきたらどうするのです?」

 

「董仲潁殿の軍は疲れてはいるといっても、すぐに洛陽に下がり休息を取ることは可能ですので、それほど疲労はひどくはないと思われます。万が一にも汜水関が落ちても後方には虎牢関があります。それほど心配されることはありますまい」

 

 田豊と沮授のやりとりを聞いていて、田中はふと気になったことを口にした。

 

「汜水関と虎牢関を通らずに洛陽へ抜ける道というものはないのか?」

 

「「それは……」」

 

 二人して口をつぐんだ瞬間の出来事であった。

 

 田中の執務室を勢いよく叩く音が聞こえる。

 部屋の戸を開けるとそこには許攸が肩で息をしながら立っていた。相当急いでいたのであろう、着物は乱れている。

 

「どうしました?」

 

「大変です! 田中殿、すぐに袁刺史殿の部屋に来てください!」

 

 その尋常ならざる雰囲気に田中は急いで、着物を整え田豊と沮授に付いてくるように言った。

 

「では行きましょう」

 

 田中はすぐに許攸と袁紹の元へと向かった。

 

「何故、その二人を連れてくるのですか?」

 

 許攸は田豊達を見て、怪訝な顔をして言う。

 

「副官として彼女たちを登用してみましたが。彼女たちはかなりの知恵者です。必ず役に立つはずです」

 

 許攸は少し怪訝な顔をしたが、何も言わず田中と共に袁紹の元へ急いだ。

 

 

 

 

「お待ちください!」

 

 袁紹の部屋の前まで来ると衛兵が田中達を止めた。

 

「田中殿と許攸殿は分かりますが、後方の二名は何者ですか? 見知らぬ顔ですが……」

 

「私の副官だ。優秀であるために意見を求めたいと連れてきた」

 

「しばしお待ちを」

 

 そう言って衛兵が中に入り、すぐに出てきた。

 

「どうぞ」

 

 衛兵が開けた戸を通り袁紹の部屋へと入るとそこには袁紹陣営の幕僚が揃っていた。

 

「どうなされました?」

 

「洛陽に放っていた間者より早馬です」

 

 そう言って逢紀が手に持っていた書簡を田中に渡す。

 

「これは……」

 

 そこには洛陽が急襲され、董卓軍が敗走したと言う旨が書かれていた。

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