袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

52 / 93
 沮授の昇格の件に関して、違和感を感じるとのご意見頂きましたので、若干の変更を行いました。


第五一話 噂

 実はこの人事異動には大きな理由があった。

 先日、沮授が袁紹を復帰させたのは既に書いたとおりである。実はその後、沮授は更なる仕事をこなしたのだ。

 それは新たな人材として陳宮を配下に入れたことであった。

 

 彼女は元々は地方で役人をやっていたが、董卓の台頭や十常侍などの権力争いに巻き込まれ、降格。その後、反董卓連合による洛陽への攻撃や皇帝の逃避行などの政治的な混乱により職を解かれ、地方を放浪していたのだ。

 その時に声を掛けたのが沮授であった。

 ちょうど、食べ物を買う金にも困っていたくらいであった。その話を聞いた袁紹は面会の前に金を渡し、陳宮に好きなだけ食べ物を食べさせてやれと沮授に命令をしていたのだ。

 この話を聞いた陳宮は感激し、袁紹に仕えると決めたのである。

 これには続きがあり、この話を聞いた袁紹配下の文官は有能な各地に眠っていた智者達を次から次へと紹介。袁紹陣営の人材不足は急速な解決に向け動き出したのだ。

 

 

 これらの動きのきっかけとなった沮授は一気に昇格。その能力を遺憾なく発揮すべく南皮の町の太守に任命されたのだ。

 しかし、沮授一人では仕事の量が多すぎるため、その補佐として田豊が付くことになった。

 

 このことにより即席で太守の任をこなしていた賈詡を李儒は役目を解かれ、本来の業務へ戻る予定であったが、その能力を認めた逢紀が賈詡を田中の元へ配置することを願い出た。

 これは降格に近い処分であり、本来であればあり得ない話である。しかし、賈詡は仕事の連続で休暇を願い出ようと考えており、比較的自由度の効くこの仕事をむしろ歓迎した。しかし世間体を気にした逢紀は降格ではないことを知らしめるため、賃金のつり上げと新たな地位への向上を決定し、一連の騒動は一段落が付いた。

 

 

 

 

「先日、劉備の所へ忍び込んでいた間者からの報告です」

 

 賈詡がいくつかの書簡を持ってきた。

 

「ありがとう」

 

 そう言って田中はその書簡を読み出したが、読むにつれて皺が寄っていく。

 

「何かありました?」

 

「これを見てくれ」

 

 そう言って田中が見せたのは劉備が統治する東郡で広まっている噂についてであった。

 

「天の……御使い?」

 

「ああ。何でも向こうの方ではかなり広まっているらしい。洛陽にほど近い東郡でこのような噂が広まるとは漢の皇室を何だと思っている」

 

 まったくと言いながら、田中は怒ったふりをする。

 というのも内心ではここから先、衰退していく漢王朝の存在を知っているだけにこう言った噂が出てくるのもやむを得ないかと半分思っているからだ。

 しかし、それを外に出すことは許されない。いくら弱まったとは言えど、漢王朝の力は未だに根強く残っている上、今主の袁紹は漢王朝を庇護している立場。そのような人物の配下が王室をないがしろにするようなことを言えば、大変なことになる事を田中は重々承知していたからだ。

 

「そうですね。まあ、噂は噂ですから」

 

「特にそういった人物の確認も出来ていないようですから、現状としては静観で良いだろう。もし万が一にもそういった人物の報告があればすぐ私に伝えてくれ」

 

「御意」

 

「天の御使いね……」

 

 田中はどこか心に引っかかるように気がしてならなかった。

 

 

 

 

「ところで、宮廷の方の資金はめどが付いたのかね?」

 

 田中は不意に気になって、賈詡に尋ねる。

 宮廷の資金というのは漢王室の宮廷の建設費だ。彼の元いた宮殿である洛陽宮は今はもう袁術の占領下にあり、戻るのは難しい。そのため、この鄴の地に新たな宮殿を建設する計画が持ち上がっているのだ。

 

「どうにか王室の予算と袁刺史の予算で組もうとしているのですが、やはり洛陽宮には及ばないですね」

 

「まあ、あれには無理だろう。洛陽宮は皇室が代々築いてきた予算を注ぎ込んでいる。それこそ一代でどうにかなるものではない」

 

「ええ」

 

 そう言いながらも仕事を続けていく。

 彼らがやっているのは間者の訓練の内容に関してだ。許攸が詳細を送ってきており、彼女は色々な訓練を考え出しては提案を行ってきており、そのどれもがかなり役に立つものである。

 

「子遠は流石だな。彼女は優秀だ」

 

 田中は許攸のことをそう評価しながら訓練内容を見ていく。

 

「それにしても各地の諸侯が一気に行動を起こしている。仲違いを上手くさせながら力を分散させていかないと危険だな。我々の周囲は余り心配は無いが、袁術の辺りが危険だ。袁刺史様の親族だけあり、財力、人材、領地どれをとっても見劣りはしない。恐らく袁刺史様と対決を将来起こすことになる勢力は袁術だ」

 

 田中は漢全土の地図を見ながら言う。

 その地図には各諸侯の統治場所などが書かれており、各地の情勢などの細かい情報が載っている。

 

「恐らく奴はこの周囲に包囲網を作ろうとするはず。作るとなれば、曹操、公孫瓉を利用する可能性が高いと思うがどうかね?」

 

 田中は賈詡に聞いた。

 

「いえ、公孫瓉は利用できないでしょう。奴はああ見えて一度負けた相手に再度反撃を行おうとするほどしぶとい人間ではありません。さらに言えば、現状で奴が我が軍に反撃するのは厳しいです。このことから利用すると考えられるのは黒山賊、劉伯安殿辺りです。黒山賊に関しては仲が悪いのは言うまでもありません。劉伯安、劉虞殿の事ですが、彼は基本的に朝廷に従順で真っ直ぐな人物です。その性格を利用される可能性が大いにあり得ます。油断は危険です」

 

「分かった。私の方から上の方に掛け合い、二人の所へ間諜を潜ませるよう進言しておこう」

 

 田中はすぐに逢紀の所へ向かい、相談。許可が出たため、人員が揃い次第、間諜を送ることに決めた。




 噂の彼の登場シーンは少ないと思いますので、ご了承ください。
 今のところの予定はですが……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。