袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

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第五八話 地道な情報収集

 田豊や沮授は戦が終わり次第、寝返った人間の処遇を決めていた。

 寝返った人間はまだ開拓されていない土地で農民をやるか兵士になるかを選ばせ、国力の増強に努めた。また、寝返らずに無抵抗で捕虜となった人間にはしばらくの間兵士の監視の下で治水工事などの工事関連の危険な仕事を行わせることにして、自由はないものの生きていく上では困らない程度の処遇を与えた。

 しかし、村などでの略奪などに参加した者は理由のいかんに問わず、見せしめとして首を切り領内を犯す者には厳罰が下るという見せしめにした。

 

「それにしてもこれほどの暴動が起きると言うことは何かしら裏で糸を引いた者がおりますね」

 

 田豊は手元の書簡を見ながら、沮授に言った。

 彼女が見ている書簡は捕虜になった人間を取り調べた際に書き取った文章である。

 

「ここにも今回の暴動における上層部が誰かしらと会っていたという情報がありますからね」

 

「それならば既に特定は済んでおりますよ~」

 

 沮授はさも当然と言わんばかりに言った。

 

「何ですと! では、誰なのです?」

 

「曹操、そしてその背後にいる袁術ですよ」

 

「やはりですか……」

 

「またそれを我が軍内部で手引きしたのが韓馥と思われております」

 

「おっと、元我が主がそんなことを……」

 

「敵の陣の跡からそれらを示す多くの書簡が発見されました~。馬鹿ですね、敵も~」

 

 いくら慌てていたとはいえ、そういった機密書類を隠しておかなかったことに嘲笑する。

 

「それは余りにも無防備すぎます。これは何者かによる策略なのでは?」

 

「そうも考えましたが、その可能性は低いでしょう~。まず、真っ先に疑われている曹操や袁術は無いでしょう。何せ策略の意味が無い。そして北の劉鄢、これは否定は出来ませんが天子に基本的に従順であり~、我々の側にいる天子にたてつくような真似はしないでしょうし~、賊を使うような邪道な手は使わないでしょう~。公孫瓉はすること自体が不可能。他の諸侯は距離や資金、利点などの問題から行う可能性は低い~。以上のことから計略とは判定できないでしょうね~」

 

 沮授は理路整然と述べた。

 

「そうですか……」

 

 田豊は頷くが心中納得が出来ずにいた。

 

(本当に計略では無いのだろうか……。余りに雑すぎるような気がするが)

 

 

 

 

「全く、なんで私の立場とあなたの立場が逆転しているの……」

 

 半分ほど呆れかえりながら、賈詡は田中に言った。現在、賈詡が田中の立場に格上げされ、逆に田中が賈詡の地位に格下げをされたのだ。

 

「まあ、あの場では仕方が無いでしょう。かなり大きな被害を出した以上、信賞必罰が必須な軍である以上は誰かを罰しなければならない。しかし、あの状況ではまだ罰するのであれば、一番はその場に出ていた軍師である公台殿を罰する必要があった。だが、彼女は貴重な人材でそう簡単に降格させ、別の諸侯に執られるわけにはいかない。彼女を罰しないのであれば、誰を罰するのが適任か。大きな組織を保つことに長けておられる我が主はそう判断していったのでしょう」

 

 田中は苦笑しながら言った。

 袁紹はあの降格人事の発表の後、こっそりと田中を尋ねそう詫びを入れにきたのだ。

 

「終わってしまったことですし、別にどうでも良いけどね。所で今回起きた賊の蜂起は袁術陣営による計略だという噂があるようで。しかもその手先として動いていたのが韓馥だとか」

 

「確かにそれらの類の書簡は山ほど見つかっておりますが、証拠が無いのですよ」

 

「どういう意味?」

 

「その書簡が本当に彼らが袁術派と連絡を取り合っていた証拠だと断定は出来ません。まず韓馥の話ではありますがずっと間諜の見張りを付けてはおりますが、特にそういった報告は受けてはおりませぬ。さらに言えば各地に潜ませている間諜からもめぼしい報告は上がってきてはいない。と言うことは奴等が仕組んだ可能性とは言い切れません」

 

「では、誰が仕組んだというの?」

 

「今、それを探らせております。沮南皮太守からは気にせずとも良いとは言われてはいるのですが、こうしたことを放っておくと後々に響きますから」

 

「確かにね。でもこれを仕組んだとすればかなり頭の切れる奴よ。策はあるの?」

 

「もちろんですとも。私の本領を発揮する機が到来したというものです」

 

 田中はにやりと口元に不敵な笑みを浮かべ言った。

 

「ただ、この調査は大変時間と手間が掛かるので、賈文和殿にも協力して頂きます」

 

「え、何をするつもり?」

 

 賈詡の脳裏に浮かんでいるのは当然ながら何人かに計略を張って情報を吐かせたり、奪ったりする方法だ。

 

 しかし、田中がいた部署は人権問題や憲法の問題でやれることにかなりの制限がある情報収集の場だ。賈詡の考えるような決して手荒なまねはしない。

 

「もう少しで分かりますよ」

 

 田中はそう言って別の書簡に目を通し始めた。

 賈詡は何となく田中の雰囲気から悪寒を感じ始めていた。

 

 

 数日後、賈詡は田中が準備が出来たというので外の演習場に来ていた。

 そもそも情報を集めるはずなのに野外演習場に来ること自体が妙だ。そんな疑問を吹き飛ばす光景がそこには広がっていた。

 

 演習場のあちこちに様々な剣や防具と言ったものが並んでいる。

 そして真ん中には一つの防具と剣が並んでおり、その周囲には田中以外にも武具や防具の職人から果ては鉄専門に取り扱うの職人や商人までが集められていた。

 その中心で田中は言った。

 

「この防具や武具と同じ材質、同じ工法で作られたと考えられる物をこの中から探し当ててください。極力正確にお願いします!」

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