袁紹を活躍させてみようぜ!   作:spring snow

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第七九話 演習の終焉

 賈詡は呂布の軍勢が敵と当った瞬間に敵が退き始めたのを見て、不思議に思った。

 

「敵は優勢のはず。この状況ならいっそ恋達の部隊と他の軍勢をぶつけた方が良いはずなのに……。なぜ?」

 

 出てきた軍勢に張の旗と顔の旗が翻っているのを見て、すぐに狙いに気づく。

 

「敵はおそらく騎兵に長けた将軍をぶつけて恋の突撃をいなすつもりね」

 

 賈詡は不敵な笑みを浮かべた。何せ呂布は天下最強と言っても過言ではないほどの猛将である上、騎兵の扱いは長けている。何せ異民族の侵攻を何度も受けている涼州で鍛え上げられた部隊だ。冀州の兵馬ごときに負けるような柔な鍛え方はしていない。そうとでも言いたげだった。

 しかし、その笑みは呂布が両軍とぶつかった瞬間に消えた。

 あの呂布率いる騎馬隊を正面から受け止めていたのだ。

 

「何!」

 

 それもそのはず。この冀州北岸の幽州は漢を何度も悩ませてきている北方騎馬民族の襲撃を最も受けている場所。その地を治めていた公孫瓉を下した顔良に、その後、公孫瓉の元で騎馬隊の扱いを見て聞いて、実際に訓練してきた張郃が守っているのだ。呂布といえどそう簡単に抜けるような陣ではない。

 

「全軍、前進し、呂将軍の軍勢の手助けをします!」

 

 賈詡は旗色が悪いと判断し、全軍に前進を命じた。

 

 

 

「皆さん! 盾を構えてください!」

 

 顔良は言った。前線で構えていた兵士達が盾を構える。顔良が何かを近くの兵士にささやくと、その兵士は手に持っていた旗をはためかせる。

 すると兵士達は盾を構えた状態で素早く陣形を変化させていく。中央が大きくへこむように下がっていき、逆に右翼と左翼の兵士が大きくせり出していく。

 

「無駄」

 

 呂布は一点をめざし思いっきり突撃を仕掛ける。それに合わせるかのように周囲の董卓軍の兵士も呂布に続いた。しかし、その程度のことで突破を許すような顔良ではない。

 

「槍隊、構え! 弩弓隊は直ちに構えて射撃準備!」

 

 盾を構えた兵士の後ろにいた槍兵達が一斉に槍を突き出した。呂布の周囲の兵士はそれで吹き飛ばされ戦闘不能になるが、呂布は奉天画戟を一閃。なぎ払う。

 

「射撃開始!」

 

 一斉に弩弓兵の矢が董卓軍めがけて飛び出していく。それは正面からだけではなく、四方八方から押し寄せてくる。

 しかし、呂布も決して簡単には倒れない。ついに一角に穴をこじ開けそこから穴を大きくしていく。

 

「撤収!」

 

 顔良は旗色が悪いと感じたのであろう。すぐに兵を引き始めた。それを逃がす呂布ではない。追い打ちのため追撃を仕掛ける。そこに先ほど殲滅されかかっていた張遼軍が混乱を取り戻し、追撃に加わる。

 

「そうはさせないぞ!」

 

 文醜隊が救援のために弩弓隊に矢を撃たせる。しかし、その程度で踏みとどめられるほど追撃の手は甘くない。

 

「ここは儂の出番かの」

 

 張郃の騎馬兵が駆け出し始める。一本槍のように呂布軍に迫る。

 

「あっち行ってて」

 

 呂布は邪魔とでも言いたげに奉天画戟を一薙ぎする。しかし、その一撃を張郃は食い止める。

 

「嬢ちゃん、なかなか良い一撃を出すな」

 

 しかし、力押しすれば確実に負けると判断したのであろう。すぐに呂布への攻撃をやめて周囲の兵士に攻撃を始めた。呂布はそれを食い止めようと追いすがるが、如何せん味方の将兵が多い。その数が仇になって思うように追えない。

 その追撃の手が緩んだ一瞬の隙を突いて、顔良は兵の体勢を立て直し始めた。ここに前線は完全に乱戦の様を呈し始めたのだ。

 

 

 いよいよどちらが勝つのか分からない展開になりつつある。それでも戦場を一望している郭図は不敵な笑みを隠そうとしない。

 

「そろそろですか?」

 

 近くに控えていた田豊は尋ねた。

 

「ええ。合図を出して」

 

「御意」

 

 近くの兵士に大きな旗を振らせた。しかし、乱戦をしている地点で大きな変化はない。

 

「これでどう動くかしら?」

 

 郭図は小さく呟いた。その瞬間、視界の端に小さい騎馬隊が草原を移動中の賈詡本隊に向け突撃を仕掛けていくのが見えた。これこそまさに郭図が狙っていたことであった。

 

 

「軍師殿、大変です! 本陣に敵兵が攻撃を仕掛けてきました!」

 

 その言葉に賈詡は一瞬信じられない気分になった。何せ前線は本陣から遙か遠い場所で行われている。敵の攻撃が届くはずがない。

 

「敵は!」

 

「対象は見慣れぬ槍を携えた女性です! 旗に趙の文字が書かれています!」

 

 賈詡はとっさに信じられない思いで聞いた質問に返ってきた答えは衝撃的なものであった。趙の旗で袁紹軍で有名な人物はあまり聞いたことがない。

 誰かいなかったか。

 記憶の引き出しを探っていると一人心当たりがある人物を思い出した。

 

 趙雲。

 袁紹の命を救ったことで、袁紹のお抱えになった武将。その後、晋陽での戦闘に置いては伏兵を配置し、袁紹軍の勝利の立役者となった武官だ。専ら正面切っての戦闘よりも袁紹軍の手先となって奇襲を仕掛けるのを得意としている将軍だ。噂では袁紹軍の裏の実力者である田中にかなり目をかけられている人物であるとの噂もある。

 

 とにかく決して油断ならない人物だ。

 

「直ちに魚鱗の陣を敷きなさい! 呂将軍に本陣奇襲を食らい危険、至急来援されたしと伝えなさい!」

 

 賈詡は落ち着いて指揮を執る。

 魚鱗の陣であれば騎兵の突撃を防げると判断したのであろう。しかし、如何せん相手が悪かった。

 

「火矢を射かけよ!」

 

 周囲は草原、しかも大軍であるから進撃は遅い。

 この瞬間、賈詡達本隊の運命は決まった。

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