主人公だけど出番はまださき。……え?   作:灰恵

1 / 7
原作前・灼眼のシャナ編
日常


 

 

――― 無限(むげん)の時が鼓動(こどう)()め、人は音もなく炎上(えんじょう)する

(だれ)一人(ひとり)気づくものも()く、世界ははずれ、紅世(ぐぜ)の炎に(つつ)まれる……

 

 

 

 

高町(たかまち)家の朝は早い。日が昇る前に起床しランニングをして、道場で朝の稽古を始める。遅れて起きだした妹にご飯だよって呼ばれるまで続けられるのだ。

 

「うん。だいぶ、上達してきたわね」

「ほんと!? 母さん!」

「でも、まだ俺には勝てまい」

「恭ちゃんに敵う人っているのかな? もちろん、士郎(お義父)さんや母さん以外に」

「あら、私だって時々ひやっとするときあるわよ?」

「そうなの!?」

「年のせいかしらねぇ。恭也(きょうや)美由希(みゆき)も成長期だもの」

神速(しんそく)を使えばなんとか」

「コラッ、まだ体が出来上がってないんだから、そんなホイホイ使うものじゃないわよ」

 

恭也はしゅんと肩をしぼめた。

 

「はい」

 

むしろ、その年で習得してるなんてね。奥義じゃなかったのかしら?と首をかしげてしまいそうだ。それだけ二人の能力値は高いのだ。

 

 

パタパタと足音が外から聞こえる。

カラっと戸が開き、なのはが顔を出す。

 

美沙斗(みさと)さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、ごはんだよ」

「はーい」

「では、今日の朝稽古(けいこ)はここまで」

「「ありがとうございました」」

 

 

 

 

 

「相変わらず、いい匂いね」

「ありがとう。美沙斗さん」

「これを運べばいいの?」

「ええ、お願い」

 

手を洗い、キッチンに来た美沙斗はダイニングに並べられたお皿をテーブルに並ばせる。

 

「いつも、ごめんなさいね。私がもう少し料理がうまかったら・・・」

「あら、誰でも得て不得手はあるわよ」

 

謝る美沙斗に桃子(ももこ)は気にしていなかった。

 

「でも、美由希まで下手だと血のせいなのかしらって思っちゃうのよねぇ」

 

「母さん、ひどい!!」

 

ちょうどシャワーから戻ってきたところで、それが聞こえ、美由希はショックを受けた。

 

「ほら、美由希。リボンが曲がってるわ」

「あ、ありがとう」

「美沙斗は妙なところで不器用だからなぁ」

 

士郎(しろう)はしみじみと昔を振り返った。

美沙斗は口を尖らせた。

 

「……兄さんは何しても、器用にこなすものね」

「いや、俺にだって苦手なものだってあるぞ?」

「へぇ、何かしら? 記憶をたどっても、不器用な兄さんって見たことないんだけど」

「ほら、剣術とか」

「……それと、これとは話が違うと思うわ」

 

剣術と言われ、死んだ夫の顔が脳裏をかすめた。ライバルのように、時には兄弟のように過ごした日々。誰も覚えていない夫を、私だけおぼろげに覚えていられるのは彼ら(、、)のおかげだろう。

 

 

「なのは、ちゃんとお弁当持った?」

「持ったよ」

「いってらっしゃい」

「いってきまーす」

「美由希、帰りにスーパーに寄って買い物お願いね」

「はーい。行ってきまーす」

 

美沙斗はなのはと一緒にバス停まで送り、美由希と恭也は自転車で高校へ。桃子と士郎は家事をした後、店に行く。高町家の日常だ。

 

 

 

美沙斗となのははバスが来るまで雑談をしていた。

 

 

「いってらっしゃい、なのは」

「いってきます。美沙斗さん!」

 

 

なのははバスに乗り込むと、アリサとすずかはバスの最後尾に隣同士に座っていた。

 

「おはよう、なのは」

「おはよう、なのはちゃん」

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

アリサは席を少しずらし、二人の間を開けた。

なのははそこに座るとバスの中から窓に向けて手を振る。外で見送る美沙斗に気づき二人も手を振った。

ウザいほど絡んでくる男子生徒がいる学校に着くまで、気の休まる時間に三人は雑談を始めた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。