主人公だけど出番はまださき。……え?   作:灰恵

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封絶

 

 

 

 

ノエルが運転する車に三人は乗り込んだ。途中、高町家にも寄り、小太刀を取りに行く。

 

「――― ということなの」

「なるほど、自動人形か」

「特に、イレインと呼ばれる自動人形は、私よりも高機能を持っているのです」

 

ノエルは運転越しに答えた。

 

「ノエル……」

 

同じ自動人形なのに、片や人間として、片や凍結されていた。

 

「私も、さくらさまや忍お嬢様に拾われなかったら、同じ道をたどっていたでしょう」

「そんなこと!」

「いいえ、お嬢様」

 

忍の否定を、ノエルは否定した。

 

「だからこそ、止めねばなりません」

「刺し違えても……とは考えてないよな?」

 

恭也はバックミラー越しにノエルを見た。

ちらりと、ノエルは恭也と目があった。

 

「やめて! 絶対にダメよ! そんなこと!」

 

否定しないノエルに、忍は怒る。

 

「大丈夫、だから私と恭也がいるんでしょう?」

 

隣に座る忍の肩を美沙斗は抱き寄せた。

忍は見上る。自信に満ちた美沙斗の瞳に安堵(あんど)した。

 

「うん」

 

恭也は肩を下げ、敵わないなと首を振った。

 

「もうすぐ、到着いたします」

「いよいよね」

「ええ」

「ああ」

 

ノエルの声に、三人は気合を入れる。その時だ。

周囲一帯(いったい)の地面から薄白の炎が()き立ち、一挙(いっきょ)頭上(ずじょう)へと通り抜けた。

地面に残されたのは奇怪(きかい)火線(かせん)紋章(もんしょう)、頭上に形成(けいせい)されたのは陽炎(かげろう)のドーム。

世界の流れから内部を切り離し、外部から隠蔽(いんぺい)する、自在法(じざいほう)封絶(ふうぜつ)』だった。

停止した景色、動かない車。

 

「何? ノエル? どうしたの?」

 

運転席のノエルに声をかけても、返事がない。

 

「忍? 恭也?」

 

抱き寄せた忍も、向こう側に座る恭也も。

 

「これは……。 まさか!!」

 

懐のポケットに入れ、いつも持ち歩いている栞が熱い。取り出すと、うっすらと光を放っている。

紅世(ぐぜ)(ともがら)”に存在を喰われた静馬(しずま)のことを忘れないために、風変わりなフレイムヘイズからもらった、自在式が埋め込まれた栞。

それが作用しているということは ―――

 

「封絶!!」

 

美沙斗は戦慄(せんりつ)した。

つまりまた、誰かの存在が消えようとしているのだ。

 

 

 

***

 

 

 

「あ?」

「へぇ?」

 

現れたのは、不破(ふは)美沙斗だった。

 

 

「誰だ?」

「踏み台は知らねぇのか」

「踏み台いうな!」

「不破美沙斗だよ。とらハの美由希の実の母親」

「あ!」

 

踏み台は言われて気付いた。彼は『とらいあんぐるハート』ことは二次小説でしか知っておらず、その中に不破美沙斗が出てくるのは稀だった。

 

「あなた、私のことを知っているのね。それに、そのことまで」

「俺は裏にも精通しててね。それにあんたら、戦闘民族はこっちじゃ、有名なんだよ」

「戦闘民族? そんなんじゃないわよ」

「あんた、ひとり? てっきり高町恭也が来て、俺と戦うのかと思ってたのに」

 

ここに一緒に来ていないのに、恭也も一緒だということをこの男は知っている。

この男は要注意だと頭の片隅に置いておく。しかし、今はそれどころではないと首をふる。

 

「……どこまで知っているのか、知らないけど。 今は危険よ。動けるのなら、運ぶの手伝ってちょうだい」

 

美沙斗はすずかと巻き込まれたのであろう同じ制服を着た少女――アリサ――を両手に抱きかかえる。

彼女たちは目を開いたまま蝋人形のように動かない。

 

「あんた、この状況が何なのか理解してんのか?」

「もちろんよ。これは“封絶(ふうぜつ)”。“紅世(ぐぜ)(ともがら)”が張ったんだわ」

「なん、だって?」

 

男はその言葉に戦慄した。

 

「わたしに奴らを倒せる力はないわ。それよりも、接触する前に逃げないと、存在が()われ、そして……死ぬのよ」

「ば、馬鹿な。……ここは『リリカルなのは』の世界だろう?」

 

なぜ、『灼眼のシャナ』の世界にいるはずの“紅世(ぐぜ)(ともがら)”がこの『リリカルなのは』の世界にいるのか。

 

「なんだよ、ぐぜって。オイ、俺にもわかりやすく説明しろよ!」

 

顔が真っ青な二人の顔を比べ、理解できていない踏み台は声をあげる。

 

 

 

「みぃつけたぁぁ」

 

 

 

第三者の声にぞくりと背中を寒気が駆け抜けた。

 

「くっ!」

 

美沙斗は持っていた二人を床にたたきつけた。

蝋人形が落下したように腕や首、そして胴が割れた(、、、)

 

「おい!」

「ああぁぁ! なにすんだよ!!」

 

二人は美沙斗の不可解な行動に非難した。

ガラガラとコンテナが崩れ落ち、巨大な二頭身の人形が顔を出した。

三人は飛んでよける。

 

「あれれれれぇぇぇぇ? 封絶の中で動いてるぅぅぅ? なぁぁぁんでぇぇぇ?」

 

おじはコンテナの下敷きになった。それを視界の端に捉えた美沙斗は胸をなでおろした。二人は非難したが、美沙斗の対応は正しかった。少なくとも、割れた人間の“存在の力”が喰われることはない。

問題があるとすれば、それは自分たちの方だろう。

 

「くっそ、なんなんだよ、このデカブツは!!」

 

踏み台と男はデバイスを起動した。

某有名な二頭身人形を大きくしたような化け物に男は予測した。

 

「く、こいつ、たぶん“燐子(りんね)”だ!」

「はぁ? りんね? なんだそれ!」

「“紅世(ぐぜ)の王”の下僕だよ! おい! アンタ、フレイムヘイズじゃないのか!」

 

男は理解できていない踏み台にイラつき、美沙斗に荒々しく聞いた。

 

「違うわ! 過去に彼らに助けられただけ!」

「くそ、打つ手なしか」

「へっ。なんだよ弱腰だな。よく見たら弱そうじゃねぇか。こんな奴に怖気づいてどうすんだよ」

 

「ボクがよわいだとぉぉぉぉ」

 

踏み台の言葉に“燐子”は激怒し、腕を振り上げた。

同時に踏み台が攻撃モーションに入ったことに、美沙斗は慌てて止める。

 

「ダメよ!!」

 

踏み台は殴りつぶされる前によけ、腕を切り裂く。

 

「ギャァァァァァ、イタイ、イタイ! ボクのう、ウデガァぁぁぁ」

 

斬られた腕が宙を舞い、“燐子(りんね)”は痛がり暴れる。

 

「へっ、やっぱコイツ弱いぜ」

「何てことしてくれるの!!」

「な、なんだよ。あっちが襲ってくるんなら、倒せばいいだけの話だろ!?」

「マズ、この展開って……」

 

「タベナキャ、死んじゃうぅぅぅ」

 

燐子(りんね)”はパカリと口を大きく開ける。

 

「しまった!!」

 

喰われる!!

 

 

 

 

……――― 美由希

 

 

 

 

 

 

 

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