仮面の騎士と笑顔と希望の少女たち   作:烏賊の毒

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第五章 春野はるかの場合
なぜ彼はそれを盗んだのか 1/4


その者は、消え去るのを待つのみだった。

 

そう遠くない過去に、彼は過ちを犯した。

 

彼は暴走していた。

 

己の夢が原因で。

 

だが、それを止めてくれたのが、ある男だった。

 

彼は、全力で全身全霊をかけて、私が盗んだものを奪い取った。

 

だからこそ、私の落とし前は自分でつけたい。

 

だから、残すことにした。

 

彼の手には、ひっそりとだが、しっかりとミニカーが握られていた。

 

消え行く彼の顔は、どことなく決意に満ちていた。

 

 

 

 

『なぜ彼はそれを盗んだのか』

 

 

 

 

 

彼女…春野はるかは追われていた。

 

課題に。

 

「うわぁぁぁん!

 終わらないよ~!」

 

わちゃわちゃしながら、彼女は机の上でペンを握る。

 

「あはは…。

 がんばってね。」

 

青髪の少女…七瀬ゆいは、頬を引きづりながらはるかを応援する。

 

彼女が悩んでいたもの…それは、現代文だった。

 

課題の提出日は4日後だが、焦りに焦っていた。

 

この評論文がとにかく難しく、著者…西城究という人を呪いそうになる程であった。

 

「はあぁ…。」

 

はるかは机に突っ伏す。

 

この評論文…『英雄とは』が中々に抽象的なイメージ…例を挙げたもので、怪盗が永遠の命を手に入れたら…と具体的なリアル…警察が結果を出さなければならない理由…を書き交えている。

 

これが彼女を苦しめるのではない。

 

一つ一つの問題が難しく、特に最後の問い…題名にもある通り『英雄とは』という問いに筆が走らない。

 

「はぁ…。

 今日は止~めよ~う。」

 

はるかがペンを置く。

 

「難しいよね、その論評。

 私も丸二日かかっちゃったよ。」

 

「えぇ~!

 ゆいちゃんが!」

 

はるかが大袈裟に驚く。

 

「大袈裟だよ~。

 あっ、もうこんな時間。

 明日日曜日だけど、そろそろ寝ないと明日起きれなくなっちゃうよ。」

 

「はぁ~い。」

 

彼女たちは、寝る支度をして、寝床についた。

 

その様子を見ていた者がいた。

 

「見つけた…。」

 

それは、そう呟き、ゆいの机の上に手紙を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「ない!

 ない!

 なーい!」

 

はるかが朝6時から大声を荒げていた。

 

「ふぁ~。

 どうしたの?」

 

ゆいが眼鏡を掛けながらきく。

 

「プリンセスパフュームが無いの!」

 

「え、え~!」

 

ゆいが驚く。

 

「寝る前に閉めた筈の窓から、吹いた風で目が覚めたときにはもう無くて~!」

 

はるかが一生懸命探しているのを見て、ゆいも探そうとして自分の机を見る。

 

すると、一枚の手紙があるのに気付いた。

 

「これ…。」

 

ゆいがはるかに見せる。

 

「え?」

 

手紙には、『伝説のプリンセスへ』と書かれていた。

 

「まさか…ディスピア…!」

 

はるかが手紙を読むと、ディスピアではなかった。

 

『プリンセスパフュームは頂いた。

 返して貰いたければ、地図にある所へ来い。

 もちろん、他のプリンセスを連れてきては駄目だ。

 アルティメット・ルパンより』

 

「アルティメット…ルパン?

 あの大怪盗?」

 

ゆいが呟く。

 

「ゆいちゃん

 誰か知ってるの?」

 

「うん。

 数十年前に世界を騒がせた大怪盗だけど、もう何十年も前だからおじいちゃんの筈…。」

 

「でも、行くしかないよね!」

 

はるかは微笑む。

 

「私の夢への鍵が盗まれたんだもん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所

 

赤の英雄、銀の鎧武者、黄色の騎士、黄緑の弓取り、紫の龍が地球外生命体の作り出した機械と抗戦中だった。

 

英雄と鎧武者は、地球外生命体を追い、新たに赤・緑・紫の三体の異形の怪人が戦士たちに加勢した。

 

一方、あるタブレット端末は、ほくそ笑んでいた。

 

「機械仕掛けのエイリアンか。

 面白い。」

 

それに気付いたかの様に、二体のエイリアンが迫る。

 

「サイバロイドZZZのデータ確認。

 蛮野天十郎と認識した。」

 

「素晴らしい!

 君達は実によく出来た機械だ。

 だから、ここで一つ提案なんだが。」

 

「話せ。」

 

エイリアンが簡潔に命令する。

 

「君達は地球上の物全てを機械化し、掌握したい。

 私は人類をデータ化し、統制したい。

 目的はほぼ同じ。

 利害は一致しているだろう?」

 

タブレットはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「だから、協力したいんだ。

 君達はロイミュードの素体を使っているから、私が改善してあげよう。

 その為には、君達の端末をいくつか渡してもらいたい。

 いいかな?」

 

その問いに、エイリアンは頷く。

 

「いいだろう。」

 

そして、十数体のエイリアンが浮遊するタブレットの前に並ぶ。

 

「さて…。」

 

タブレットはプラグをエイリアンに差し込み、分子化、吸収する。

 

「…クックック。

 フゥーハッハッハッハッハ!

 待っていろクリム…!

 アーハッハッハッハッハ!」

 

タブレットの笑い声とほぼ同時間、某所では、エイリアンが作り出した大量のコピー体は全て動作を停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある者が、そのコピー体を一体拝借していったのだが。

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