「やっぱりだ。」
茶髪にチャラチャラした服装の彼が似つかわしくない廃墟の中で呟いた。
「一体…二体はどこに消えたんだ?」
彼は踵を返した。
「ま、とりあえずおっちゃんの所に戻るか。」
『希望の指輪と紅の奏で』
「着いた…。」
赤毛の娘…紅城トワはある店の前にいた。
ノーブル学園からこの店まで来るのにバスに揺られて三時間。
途中、乗り換えに手間取ったがなんとか来れた。
この面影堂に。
「ゴクッ…!」
決意は出来ていたが、いざ来ると彼の事を聞けるかどうかが不安だった。
ガチャ…。
意を決して扉を開くと、アンティークの雰囲気を漂わせた内装が出迎えた。
「ん?
いらっしゃい。」
店主の部屋から男が出てきた。
「珍しいねぇ、子供が来店するなんて。
あぁ、座って座って。」
店主…輪島はトワを座らせると笑顔で尋ねる。
「今日は、何で来たのかな?」
「それは…ある男の人を調べてるんです。」
「ほぉ…。」
「指輪…をしているんですけど。」
輪島は思い当たるのか頬が緩む。
「それは…。」
ガチャ…。
ドアが開くと青年が入ってきた。
「おかえり晴人。」
「ただいまおっちゃん…って、その子は?」
青年…操真晴人はトワを見る。
「あぁ、何でも指輪をしている男を探しているらしいぞ。」
晴人は右手の赤い指輪を見せる。
「それって、俺の事?」
「いえ…。」
トワは首を振る。
「もっとお年を召した方で、指輪の色は橙色でしたわ。」
「それって…!」
輪島と晴人は目を合わせる。
「なぁ、その男は何か言ってたか?」
晴人が険しい表情をしながら問う。
「たしか…、ある人の名前を呟いていました。
名前は、そう…
コヨミ…と。」
二人の顔が凍りつく。
やがて、晴人が呟いた。
「笛木…。」
白い異形の怪人はある場所を目指していた。
「チカラ…カンジル…魔力…コヨミ…。」
怪人は歩き続けた。
「笛木奏、娘の為に大勢を犠牲にした男だ。」
ソファで神妙な面持ちで話し出す晴人。
「そして、多くの怪人を産み出した。
自身も異形に変えて…。
ところで…。」
晴人は続ける。
「何で笛木と出会ったの?」
暖人はソファに座り、トワに向かいあう。
「笛木…ですか。」
トワは反芻するように呟く。
「私の通っているノーブル学園で倒れていたのを助けたんです。
でも、彼は記憶がなくって…。
彼、近くの町に行ったときにここの写真を見て行かなきゃって言ってたんです。」
暖人は黙って神妙に話を聞いていたが、次の一言で表情が一層険しくなる。
「それに彼、怪物になったんです。」
「怪物…それは笛木が作った人造ファントムだ。
…まさか、トワちゃんが倒したのか?」
「…はい。
実は私、プリキュアなんです。」
「プリキュア…、それは一体?」
その所で、ドアから赤い鳥…レッドガルーダがやってきた。
「見つかったのか?」
その言葉にレッドガルーダは頷く。
「トワちゃんは来るかい?」
「え?」
トワが首を傾げる。
「ワイズマンの…いや、笛木の所に。」
バイクを走らせ向かう場所は、以前コヨミと戦った広場だった。
そこには、白い怪人…ワイズマンが悶えながら暴れていた。
「チカラ…!
ヨコセ…!」
怪人は二人に気付く。
「お断りだね。」
晴人は腰に指輪をかざす。
『ドライバーオン!
シャバドゥビタッチヘーンシーン!
シャバドゥビタッチヘーンシーン!
シャバドゥビタッチヘーンシーン!
シャバドゥビタッチヘーンシーン!』
「変身。」
彼がベルトに赤い宝石の指輪をかざすと魔方陣が現れ、彼を包み込む。
『フレイム!
ヒー!ヒー!ヒー!ヒー!ヒー!』
「わ、わたしも!」
トワがプリンセスパフュームを取り出す。
「プリキュア!」
トワの服がドレスに変わる。
「それがプリキュアか。」
「あなたは?」
彼は指輪を見せながら名乗る。
「指輪の魔法使いさ…。
さて、あいつも待っちゃくれないな。」
二人は怪人に向き直る。
ワイズマンは石をまき、怪人を産み出していた。
それを眼前に捕らえる二人。
「さぁ、ショータイムだ!」
「お覚悟、決めなさい!」
「グルアァア!」
二人の息の合った華麗な動きで敵を蹴り倒す。
「次はこいつだ。」
『ウォーター!
スイー…スイー…スイースイースイー…!』
指輪の色が青に変わる。
『リキッド!
プリーズ!』
彼の身体が液状になり、スカーレットを中心に敵を囲む。
彼女の舞台が出来上がった。
ウィザードが液状化を止めた時には中にいた敵は消えていた。
しかし、まだ数は多い。
「お次はこれだ。」
『ハリケーン!
フゥッフゥッフゥッフゥッ…!』
今度は緑に変わる。
『コネクト!
プリーズ!』
ウィザードは魔方陣からウィザーソードガンを二本取り出す。
『コピー!
プリーズ!』
ウィザーソードガンを更に二本コピーする。
「はいこれ。」
「私に?」
手渡す彼がこう言った。
「派手にやっちゃおう。」
彼女は二本を手に取り、いつの間にか囲んでいた怪人達に対して二人は背中合わせになる。
怪人が剣の範囲に入れば斬り、蹴り、受け流す。
『キャモナスラッシュ!
シェイクハーンド!
キャモナスラッシュ!
シェイクハーンド!
スラッシュストライク!
フゥッ!フゥッ!フゥッ!』
二人の両剣が緑に輝く。
「ハアッ!」
エネルギーが巨大な刃に変わり怪人を斬り伏せる。
ワイズマンが何かを感じたのか去ろうとする。
その際に怪人達を壁にする様に生み出す。
「待て!」
『ランド!
ドッ・ドッドッ・ドッドッドン!
ドッ・ドッドッドン!』
彼の姿が黄色に変わる。
『ドリル!
プリーズ!』
「捕まって!」
スカーレットがウィザードの問いに応じると彼に捕まり、彼の身体が高速スピンし、生み出された怪人達を貫き、一直線にワイズマンに迫る。
怪人がこちらを見る。
「魔力…!
コヨミィィイイ!」
腕で彼らを捕らえ、脚で蹴り飛ばす。
「グハッ…!」
「きゃっ!」
なおも暴れる怪人。
「もう…もうコヨミは居ないんだ!
笛木…!」
晴人が叫ぶ。
「ワタシハ…マダ…イル…!」
「そうか…。」
ウィザードが再び赤い姿に変わる。
「じゃあ、ここで止める!」
ワイズマンへと駆け寄り、いつのまにか持っていたウィザーソードガンで斬り伏せるが、弾き飛ばされる。
「グッ…!」
彼の意識が少しとんだ。
『そ…ま…る…!
そう…はる…!
操真晴人!』
彼は真っ暗な闇の中にいた。
そして、目の前のドラゴンが彼を目覚めさせた。
「…なんだ?」
「面白い事になってるな…。」
「なんだよ、笑いに来たのか?」
冗談混じりに言う。
「いや、あのファントムの事じゃあない。
あの小娘、プリキュアというのは素晴らしく魔力を多く持っている。
もしも、あの魔力を空間として維持できたら…。」
「…アンダーワールドと同じになるのか…!?
でも、何でお前がそんなことを。」
ドラゴンがニヤリと笑う。
「お前が殺されると、面白いものが見れなくなるからな…。」
飛ばされるウィザード。
しかし、間一髪の所でスカーレットが受け止める。
「…ありがとう。
助かった。」
スカーレットがウィザードを見る。
「あなた一人で戦っているわけではありませんわ。
その事をお忘れなきように。」
「…だな。
んじゃ、コンビネーションといきますか!」
ウィザードはスカーレットに耳打ちに、彼女はニコリと笑みを浮かべる。
「スカーレットヴァイオリン!」
『コピー!
プリーズ!』
ウィザードが二人に。
「もういっちょ!」
『コピー!
プリーズ!』
更に二人増える。
「おまけだ!」
『コピープリーズ!』
計八人になる。
『チョーイイネ!
キックストライク!
サイコー!』
八人が一斉にキックを放つ。
「グウゥ…!」
白い怪人が怯んだ所でスカーレットがヴァイオリンを弾く。
「モードエレガント!
ヒバナ!」
「俺も!」
『ドラゴライズ!
プリーズ!』
ウィザードの隣に魔方陣が出現し、そこからドラゴンが飛び出してくる。
「グルルァァァ…!」
「魔法っていうのは何でもアリなんですわね。」
スカーレットが少し呟く。
「行くよ、トワちゃん!」
「はい!」
スカーレットはヴァイオリンを奏で、ウィザードはドラゴンと共に上空へと舞う。
「羽ばたけ、炎の翼!
プリキュア!
フェニックス・ブレイズ!」
『チョーイイネ!
キックストライク!
サイコー!』
ドラゴンが変形し、ウィザードの足に。
更に、スカーレットの放った不死鳥が重なる。
「ハアアアァァァアアア!」
ワイズマンは手から紫色の光線を放つ。
「グッ…!
グアアアァァァアアア!」
ワイズマンの体をウィザードは貫いた。
「ふぃ~。」
消え行くドラゴンを傍目にトワイライトはウィザードに駆け寄ってくる。
「やりましたね!」
「あぁ…っ!」
しかし、安堵したのも束の間、ボロボロのワイズマンが何処かへと駆け出す。
「チカラァァァアアア!」
「おい!
待て!」
ウィザードは直ぐにベルトに指輪をかざす。
『コネクト!
プリーズ!』
現れた魔方陣からバイクを取り出す。
「乗って!」
「はい!」
ヘルメットを受け取ったスカーレットがバイクに乗り、ワイズマンの行方に向かう。
その先に待つものとは。