仮面の騎士と笑顔と希望の少女たち   作:烏賊の毒

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第二章 紅城トワの場合
希望を欲した魔法使い 1/4


浜辺で青年と男が倒れていた。

 

その近くには、一人の少女。

 

片方の倒れていた男が、傷ついているのかゆっくりと少女に歩み寄る。

 

しかし、突如として現れた緑色の怪人によって切りつけられる。

 

そのまま、男が巻いていたベルトを貫く。

 

男はよろめき倒れながらも少女に手を伸ばすが、その手は、少女には届かずに紫色の塵となって消え去ってしまった。

 

それがこの男の末路だった。

 

『希望を欲した魔法使い』

 

ノーブル学園の夏休みもあと少しで終わろうとしていた日だった。

 

赤毛の少女 紅城トワは一人で庭園を歩いていた。

 

夏休み中は、春野はるか 海藤みなみの二人の他にノーブル学園の生徒はほぼすべて家に帰ってしまっている。

 

天ノ川きららは撮影の為にいないのだが。

 

つまり、今学園にいるのは紅城トワだけという事だ。

 

その手には、ヴァイオリンが握られていた。

 

すると、庭園の奥の方の茂みからガサガサと音がする。

 

白金さんかと思い、茂みを覗くと、そこには季節外れの茶色いコートを羽織り、手形の指輪と橙色の指輪をした中年の男が寝そべっていた。

 

否、倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぅ、ここは…?」

 

男はベッドの上で目を覚ました。

 

「まぁ、目が覚めましたのね。」

 

ベッドの隣の椅子には赤毛の娘が座っていた。

 

その後ろには白髪の婦人も一緒に。

 

「庭で倒れていたんですのよ。」

 

赤毛の娘 紅城トワが言う。

 

「一体、私は…。

 ぅう…!」

 

頭を押さえる男。

 

「大丈夫ですの?」

 

「あ、あぁ。」

 

「一体、何があったのですか?」

 

赤毛の娘は男に問う。

 

「私は…私は何をしていた…?

 私は…

 

 

 誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「記憶喪失ですね。」

 

一旦、保健室からでた婦人 白金が同じく保健室からでた紅城トワに言う。

 

「記憶…喪失。」

 

「はい、一時的に記憶が無くなってしまう事です。

 時間が経てば思い出すやもしれませんが…。」

 

紅城トワはガクリと肩を落とす。

 

「私にはどうしようもないのですのね。」

 

その呟きに白金が首を横に振る。

 

「いえ、何かをする事で記憶を取り戻す可能性があります。

 例えば、お食事をしたり、お出かけをしてみたり…。」

 

そこでハッとした紅城トワ。

 

「ちょ、ちょっと待っていて下さい!」

 

そう言って、駆け出した先には紅城トワと天ノ川きららの部屋。

 

「これですの…!」

 

その手には、束になったチケットがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、天ノ川きららは仕事でとある街に行かねばならなかった。

 

「ごめんねトワっち。

 学園に一人にしちゃって。」

 

「いえ、頑張って来てください。」

 

天ノ川きららが束になったチケットを紅城トワに渡す。

 

「はい、これ。

 仕事でマーブルドーナツの無料券貰ったんだけど、使う暇無くって。

 もしよかったら使って。」

 

「まぁ、ありがとうございます。」

 

「んじゃ、行ってきま~す。」

 

「行ってらっしゃいですの~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの!」

 

保健室の扉をドスンッ!と開くと、その音にびっくりした男に向かって開口一番に言う。

 

「ドーナツ食べに行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーナツ屋に着き、二人ともシンプルなプレーンドーナツを食べる。

 

「美味しいですの~。」

 

ほっぺに手を押さえながら舌鼓を打ちながら、悶絶している紅城トワを見ながらドーナツを食べる。

 

(味が…しない…。)

 

そう思いながら、ドーナツを食べる男。

 

その目には、彼女の食べる姿。

 

懐かしい感じがした。

 

「名前は…?」

 

男が紅城トワに聴く。

 

「君の…名前は?」

 

「まぁ、まだおっしゃっていませんでした。

 私の名前は、紅城トワです。」

 

「紅城…トワ。」

 

なぜか、彼女に誰かもわからね少女の影が重なる。

 

「ドーナツは、嫌いですの?」

 

どうやらしかめっ面をしていたらしい。

 

その問いに対し男は微笑みながら答える。

 

「美味しいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内心、父親が出来たみたいで嬉しかった。

 

幼い頃に、ディスピアに誘拐されて以来会っていない父親。

 

それを彼に重ねているのかもしれない。

 

「まぁ…。」

 

色々な店が一同に集まって企画側が行っている代理店のショーウィンドウ越しにある骨董品の中に一際輝く指輪を見る。

 

その横にはチラシが。

 

「面影…堂?」

 

彼女が見たチラシには様々な店の名前が載っていたが、骨董品屋の主人であろう中年男性が写っていた。

 

その写真を横目で見た男は何か感じる。

 

行かなければと。

 

その直後であった。

 

浜辺で爆発音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い二つの角がついた黒いフードを被った青年 ロックは今日も今日とて絶望を集めていた。

 

浜辺で見つけたのは少年。

 

『魔法使いになりたい!』

 

「その夢、絶望の檻に閉ざすんだね。

 ロック・ヨア・ドリーム!」

 

そこには、黒いローブに木の杖、トンガリハットを着飾ったゼツボーグがいた。

 

「ゼツボーグ!」

 

ゼツボーグは、火の球を作り出し、浜辺に射つ。

 

たちまち大きな爆発音が鳴り響き、辺りは騒然となる。

 

そのゼツボーグが、どこからか飛んできた蹴りによって、倒される。

 

「ロック!」

 

それは、既に変身を終えた紅城トワ キュアスカーレットだった。

 

その後ろからは、男がついてくる。

 

「紅城トワ。

 その姿は一体?」

 

「いいから、あなたは逃げてください。」

 

今までに見たことの無い眼差しに男は逃げる体勢に入る。

 

心では。

 

体は、なぜか右手にはめていた手形の指輪を腰にかざしていた。

 

『ドライバーオン』

 

そんな電子音と共に男の腰にベルトが浮かび上がる。

 

そのベルトの両端にあるレバーをスライドし、今度は左手の方の指輪の金具を下ろす。

 

「変身。」

 

男の口は、無意識にそう言い、左手の指輪をベルトにかざす。

 

『チェンジ ナウ』

 

オレンジ色の魔方陣が現れ、みるみるうちに男の姿を変えていく。

 

そこには、白いローブを被った魔法使いが立っていた。

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