俺は御崎市に着くと、先生と別れてとある二人組を探していた。そして暫く歩くと目的の人物たちを見つける。二人の顔つきからもう調査は終えたのだろうか?
俺はサーレとキアラに話し掛ける。
「おう、悠二。来たか」
「はい。やっぱりなにかあったんですか?」
「軽く調査してみたが……ヤバイな。街中にいるほとんどのトーチに自在式が組み込まれている。見たところ、まだ途中のようだったが」
「速く対処する必要があります」
彼らは既に町の様子は確認済みなようだ。彼らの言う通り、この町にはトーチたち自在式が組み込まれており、それが発動するとトーチたちは徒の存在の力となり、高純度の存在の力に変換できるというものだ。それがまだ完成してないのなら、好都合。
俺は存在の力や自在式なんて理解不能だったので、今まで接触を断ってきたが今回は違う。
「もうこの町にいる王の正体も大体掴めたしな」
サーレがこの言葉を告げた瞬間、世界が止まった。
封絶が張られた瞬間、俺たちの元に複数のカードが襲った。そして俺たちは反射的に周囲に散らばり、元いた場所から離れることでその攻撃を避ける。
「随分なご歓迎で」
「鬼功の繰り手に極光の射手、それにミステスが一人。ミステス以外の君達二人の噂は聞いているよ。君達のような大物がこの町に何の用かな?」
現れたのは白いスーツを纏った男性。その手には女の子の人形が抱き抱えられている。奴は紅世の王であり、その手腕で数々のフレイムヘイズを葬ってきた。その名は……
「″狩人″フリアグネ……」
「なに、ちょっとした縁でな。というかフレイムヘイズが悪さをしている徒を狩るだけでは不足かい?」
「いや、十分だね」
そして、そのフリアグネの言葉が戦闘の合図となった。フリアグネはまた複数のカードをこちらに放つ。あのトランプは只のカードではなく、一枚一枚に存在の力が組み込まれているレギュラー・シャープというれっきとした宝具だ。フリアグネはこのようにこれ以外にも複数の宝具を使って戦闘をしてくる。原作から見る限り、近接型ではなかったが。
するとサーレが近付いて来て、小声で俺とキアラに話し掛けてきた。
「悠二。確か、ドューグはキアラと協力して倒したって言ってたな?」
「ああ」
「今回俺はトーチに仕掛けられた自在式の解除に徹したい。理由は分かるか?」
「やけになった時の暴走ですか?」
「そうだ。それに俺だったら一気に複数のトーチから自在式を解除出来るからな。だから、俺がその作業を終えるまで任せられるか?」
「了解」
「任せてください」
俺とキアラの返事を聞くとサーレは笑顔でこの場を去って行った。そして、フリアグネは彼を追おうとするが、キアラの光の矢がそれを阻止する。そして俺も……。
「禁手〈バランスブレイク〉」
《 Vanishing Dragon Balance Breaker!!》
俺が宣言すると、背中にある白龍皇の翼から機械音が鳴って白い鎧に包まれた。
「ここから先は行かせないぞ!」
「くっ!」
フリアグネの焦った声が聞こえる。奴は何体か燐子をサーレの方に送っていたが、あの数ではサーレを止めることはできないだろう。
こうして、俺たちとフリアグネの戦闘が本格的に始まった。
「そら!」
戦闘が始まるとフリアグネはさっきと同じようにレギュラー・シャープをこちらに放ってくる。しかし、俺はそれを右腕で払いながらフリアグネに接近して行った。
そして、ここは駅の屋内で場所も狭いし、なにより人も多い。今のところそこまで被害はないが、このまま戦闘が激しくなれば少しの犠牲はやむ終えないだろう。俺はその犠牲を少なくするべく、奴を外の人気のない路地裏に誘導しながら戦闘を行う。これは戦闘前にキアラに伝えてある。フリアグネもなるべく自在式の解除をしに行ったサーレが気になるということもあって素直に誘導されてくれた。
「こっちだ!」
「……厄介な光だね」
フリアグネは俺の拳を避けながらそう呟いた。
今の俺たちの戦い方は俺が接近して殴り、隙が出来ればキアラが光の矢を放つという戦い方だ。フリアグネもアズュールという炎避けの指輪を持っているが、キアラの矢は光なので意味をなさない。
「やはり、レギュラー・シャープでは通せないか。しかし、その鎧は宝具ではないね。それとは違う宝具も大変珍しいもの持っていると見える」
……さすがは宝具マニア。この鎧が宝具ではないこと、さらに零時迷子の存在にも気づくか。そして、ちらっとキアラの方を向くがどうやら聞こえてないようだった。
……良かった。
「だからどうした?」
「なに、少し気になっただけさ」
フリアグネはそう言うと、レギュラー・シャープしまう。そして、新たに宝具を取り出した。
「じゃあ、これはどうかな?」
フリアグネの周囲から今度は複数の光の玉が出現する。しかも、これは……
「燐子か!」
俺はそれに触れつつ、弾く。キアラは光の矢でそれぞれを射ぬいていった。そして俺が触れたことにより、燐子の存在の力が半減され、小さくなる。
「!?」
フリアグネは驚くが直ぐにその口元はにやけていた。そして俺は思い出す……奴の厄介な宝具の一つを。俺はすぐさまそこから離脱しようとするが遅い。既に奴の手には既にベルが握られていた。
奴は冷静にベルを鳴らす。 ベルを鳴らした瞬間、多くの燐子は爆発して俺を襲った。
「さて、厄介なミステスも倒した……なに?」
『Divide、Divide、Divide……』
爆発したところから俺は自身の神器の効果音と共に姿を現した。
「なんだと……」
「驚いている余裕があるのか?」
「しまった!」
フリアグネの足下にキアラが放った光の矢が襲ってくる。奴は体勢をずらすことでそれを避けた。しかし……
「しっかりと、触れたぞ」
「なっ!」
俺はその瞬間を利用し、フリアグネの後ろに移動して奴の肩に触れた。だが、奴は直ぐに俺に向かって燐子を飛ばしてきたので、一度後ろに下がる。
そして俺がフリアグネに触れたことにより、奴を対象にする存在の力の半減が始まる。
『Divide、Divide、Divide』
まずは、手始めに三回の半減。これと同時に俺の力も膨れ上がる。
フリアグネは自身の力の変化に戸惑っているようだ。
「何をした……?」
「別に」
俺はフリアグネに一言告げると、いっきに加速して接近する。そのまま、腹を殴った。
「がっ!」
俺がこのままフリアグネに連打しようとすると、彼が持っていた人形が俺に向かって炎弾をぶつけてくる。俺は仕方なく、その場から下がった。
『大丈夫ですか』
「ありがとう。マリアンヌ」
フリアグネは飛び出した人形を再び抱き抱え、人形の頭を撫でる。
『Divide』
「くっ」
しかし、まだ俺の半減は続いている。そしてフリアグネはどこからか一丁の拳銃を構えた。
あれはやばい!
あの拳銃はトリガーハッピーという宝具だ。あの攻撃を受けると、フレイムヘイズの契約者内でのその器に収まる程度に存在を休眠させている王の眠りを強制的に破る能力を持つ。これを使えば都喰らいの計画に支障をきたす可能性もあるのに……ダメ出しでも使ってきたか。
俺はキアラに撃たれないように、彼女を守るように壁になろうとするが間に合わない。
フリアグネが引き金を引こうとする。しかし、銃弾が放たれることはなかった。
「危なかったな」
「サーレ!」
「サーレさん!」
サーレの操る糸がトリガーハッピーを見事に持ち上げて、銃弾が放たれることはなかった。フリアグネはさっき以上に冷静さを失う。
俺はさらにフリアグネに接近して、奴の肩をもぎ取った。
「がぁ……」
フリアグネは言葉にならないほどの悲鳴を上げる。さらに、後ろの方でキアラがドューグの時と同じように光を溜めているのに気づくと、俺はその場から離れた。
キアラの神器であるゾリャーからさっき以上の光の矢が放たれると、マリアンヌとフリアグネを貫く。
「マリアンヌ……」
フリアグネは最後に一言呟くと、原作よりも速くこの世から討滅された。