「どうかな?」
「……どう?」
「ああ、似合ってると思うぜ」
俺の目の前にはキアラとシャナの姿があった。
二人はいつもの格好とは違い浴衣を着ている。
シャナは紫色の浴衣でピンク色のあじさいの模様、キアラは黒でひまわりの模様の浴衣を着ていた。どうやらこないだは二人で浴衣を買いに行っていたようだ。
俺は私服にしようと思ったのだが、母さんに押しきられて俺も浴衣を着ている。
あれから二日後、俺とキアラとシャナは地元のお祭りに来ていた。カムシンが行う儀式には準備のため、明日行うことになっている。さらにこの日は原作通りにことが進めばあのマッドサイエンティストがやってくる。
……気は抜けないな。
「池さんたちとの待ち合わせは?」
「ああ、確かこの先の広場で集合的なことになってる」
「相変わらず、いい加減ね」
「行けば分かるだろ」
俺たちはとりあえず池たちが待つ広場に向けて歩きだした。
すると、シャナがカムシンについて話し出す。
「儀式は明日なのよね」
「そうだな。ただ歪みを正すだけだから、別に問題はないだろ」
『まさかこのような町で儀装の借り手と出会うとはな』
『懐かしいよね』
「まぁ、今は祭だな。小遣いも貰ったし、盛大に楽しむとしよう」
俺は目的地である広場に向かいながらも、屋台へ特効する。二人も俺に続いた。
「おい、シャナ。こんなときまでメロンパンかよ」
「なっ、文句でもあるの?」
「せっかくなんだから、他のものを食えよ。あのリンゴアメとか」
「むぅ」
「美味しいと思うぞ」
「……なら、食べてみようかな」
シャナはメロンパンを食べ終えると、俺の言葉を聞いてリンゴアメの屋台に向けて走りだす。
……元気なやつだな。
「じゃあ俺は焼きそば食べよ」
「あっ、私も焼きそば食べたいです」
「キアラはまだ人形焼き食べてるじゃん」
「まだ片手が空いてます!」
キアラは片手に人形焼きの袋を持ちながらこちらに詰め寄ってくる。
……うっ、近い。
「ほら!」
「ああ、ありがとな」
俺は照れているところを隠すため、平静を装う。
『青いな……』
おい、アルビオン。おじさん臭いぞ。
俺は心の中でアルビオンに突っみを入れると、
キアラから貰った人形焼きを食べながら先に進む。すると、見覚えの顔触れが見えてきた。
俺は元気よく声を掛ける。
「おー、待たせたな 」
「待たせたな、じゃないぞ。集合時間より5分早く待つのが礼儀というもんだろうが」
「すまんすまん」
俺は池にペコペコ頭を下げると、この場にいる人物を確認する。池、それに池と手を繋いでいる平井さん。相変わらず、ラブラブだねぇ。そして吉田さん。それにさっきまで緒方もいたそうなんだが、佐藤たちの姿を一瞬見たとかで、彼らを探しに行ったとか。
あいつらはマージョリーと行動してるのだろう。
「とりあえず、一通り回るか」
「ああ。ていうかお前はもう堪能してるな」
「そうか?」
俺は先程に俊足で買った焼きそばを食べながら答える。誰がどう見ても順応していた。
……それより。
俺は池の耳元まで近づくと小さな声で話す。
「平井さんと回ってこい」
「いや、でも……」
「いいからいいから行けって」
カップルでお祭り回らないとどうかしてるぜ。
池は暫く平井さんを見て悩んだ様子を見せると静かに頷いた。
「分かったよ……」
「楽しめよ~」
俺はふとキアラの方を見る。すると、彼女も察したのか俺の方を見て頷いてくる。後、ここにはいない緒方さんも分かってくれるだろう。ちなみに吉田さんはなにやら俺と会ってからずっと下を向いていて、シャナはリンゴアメを夢中で舐めている。二人もこちらを見て頷く。
……よし。
「悪いな」
「ありがとうございます」
「すまないと思ってるなら今度なんか奢れよ」
「考えとく」
そして俺たちは池と平井さんが二人で歩いていくのを見送る。
「さて、俺たちはどうする?」
「緒方さんたちを探しながらまた一から回りましょうか」
「そうだな」
「私はまたりんごアメが食べたいわ」
「途中にあるだろ」
今度俺たちは池たちとは逆方向に歩き出した。
「吉田さんも浴衣似合ってるね。バッチグーだぜ」
「そっ、そうかな」
吉田さんは俺の言葉を聞くと下に俯く。
んっ、なにかまずいかったか?
いやーしかし、俺としたことが吉田さんの浴衣に対する反応に遅れるなんて反省だな。
『相棒は相変わらずだな』
隣を見るとキアラが何故か溜め息を吐いている。
何故だ……。
「悠二」
「んっ?」
シャナが俺に手を差し出してくる。
嫌な予感が……。
「その手は一体……?」
「悠二、お金」
「もう、ないのか……。使いすぎだ!!」
どんだけ食べたんだよ。ほんとに。
俺はシャナの食欲に驚きながらも前を見る。すると、少し離れたところに佐藤、田中、緒方、そしてマージョリーの姿があった。
なにか、修羅場めいたものを感じる。
「なんか、あそこに行きたくないんだけど」
「なにをいってるんですか。行きますよ」
キアラは無理やりを俺の手を引っ張り、修羅場に向かっていった。
俺の足取りは重い。
「はいはい……くるか」
俺はキアラに返事すると同時に小さく呟く。
世界は止まり、突如展開する大規模な自在式、そしてとある徒の気配が近づいてくる。
物語は動き出した。