「そこをどきなさい!」
「計画の邪魔になるのは困るからねぇ。ここで眠ってて貰うよ」
「くっ、回りのロボットも邪魔ですね……」
上空に浮く星黎殿の一室。そこにはキアラと私がベルペオルに対して接戦を繰り広げていた。
別行動であるマージョリーとヴィルヘルミナはこことは別の道で悠二の部屋に向かっており、ここにはいない。
戦力では私たちの方が上だが向こうはダンダリオンが開発したロボットが大量に足止めとしている。さらに……
「こいつら衝撃を吸収してるの?」
『軽い一発では壊しきれんぞ!』
「ならば押しきる!!」
私は炎を噴出して加速し、ベルペオルの方向に突っ込む。対してベルペオルも何も行動しないということはない。彼女は鎖を四方八方から私に向けて放たれる。
しかし、それは一閃の光に阻まれた。
「大丈夫、シャナ!?」
「ありがとう。助かったわ」
私はキアラに礼をいうと、炎の出力を上げて贄殿遮那を振るいロボットたちを消していく。一定の出力の攻撃ならば大丈夫なようだ。
「悠二がこの上にいるのは間違いない!」
「私が上に穴を開けます!」
「そうは……なっ!」
キアラが真上に光を向けた瞬間、そこからとてつもなく大きな力が溢れ出してくる。これは悠二の……。
「城が……」
「一旦、外に!」
私とキアラは直ぐに外へ向かう。ベルペオルは舌打ちをして姿を消した。
外に出て私たちが目にしたのは天まで昇る白い
大きな光の柱。
「無事でありますか?」
「まったく、一体何だってのよ」
『突然、崩れだすとは驚いたぜ!』
『このとてつもなく大きな力。坂井悠二のものか……』
外に出ると近くにはヴィルヘルミナとマージョーリーが思ったよりも近くに待機していて、速く合流することが出来た。
二人は特に怪我をしている様子もないようだ。
「上で巨大な二つの力がぶつかり合っているようです」
「これはシュドナイと悠二ね……」
「星黎殿の崩壊が収まりしだい、加勢に向かいましょう」
「それにしても……」
先程から気付いていたが、あれほど御崎市に溢れるほどあった存在の力が徐々にすごいスピードでなくなってきている。これもあの悠二の力によるものなのだろうか。
「気持ちは分かりますが、でも今は」
「分かってるわ」
悠二のやつ……後で絶対に問いただしてやるんだから。
私たちはキアラたちに続き、結界の強化から動き出した。
時を少し戻り、星黎殿の一室。そこで俺は静かに覇へ至るための呪文を綴っていく。
呪文を綴り始めると同時に、負の感情が溢れ出していくのを感じたが、俺たちはそれを収えながら綴っていく。
『我、目覚めるは』
〈バカな〉〈これは……〉
貴様らは不要だ。俺が求めるのは力。ただその一つのみ。
『覇の理に全てを奪われし二天龍なり』
俺の姿は人の形から徐々に変わっていく。より凶悪に憎悪のオーラが溢れ出し、神器の翼や体は大きくよりドラゴンに近くなりそれは止まることはない。
『無限を妬み、夢幻を想う』
これは……とても悲しい力だね。
ヨーハンの静かな声が俺の中から聞こえてくる。
『我、白き龍の覇道を極め』
さぁ行くぞ、相棒!!
ああ、行こう!!
俺は相棒の声に答えた。
『汝を無垢の極限へと誘おう』
今ここ異世界に白き覇龍を解き放つ。
「『Juggernaut Drive!!!!!!!!』」
部屋はヘカテーを飲み込み、白い極光に包まれた。
起動と制御もうまくいっているな。
『問題はここからだぞ、相棒』
『僕も仕事があるんだよね』
そう、今回は俺、アルビオン、ヨーハンで役割分担をして覇龍を制御している。本当はヨーハンに頼りたくはなかったが、今回は失敗すれば御崎市が消し飛ぶので渋々協力して貰っているのだ。俺が頼んだときのあのドヤ顔は今でも忘れられん。
そして、肝心の役割だがヨーハンが負の感情の制御、アルビオンがこの御崎市の存在の半減、そして……俺の戦闘だ。何故、戦闘が必要かそれはここにヘカテーがいる。この説明で十分だろう。
……さて。
「覇龍を発動させて間もなかったとはいえ、あの一瞬で俺の右を切り落とし、ヘカテーを回収するとは。さすがだね、シュドナイ」
「坂井悠二……」
俺は切り落とされた右腕を抑えながらシュドナイを見る。ヘカテーの危険が迫ったことで怒って直ぐに襲ってくるかと思ったが、どうやら冷静なようだ。……いや、あれは怒りを無理やり抑えこんでいる感じか。
シュドナイは抱えていたヘカテーをどこかに自在式で跳ばすと、俺を強く睨んでくる。
「その姿……」
「どうだい、すごいだろ」
さすがのシュドナイもこの力、姿に驚いているようだ。まぁ、禁手の姿を知ってるとはいえこれはあまりにも人からは離れているからな。
驚くのも無理もない。
そして、シュドナイは言葉を続ける。
「貴様、目的はなんだ?」
「目的?」
「惚けるな。これだけの力を持ちながらあの状況を抜け出すのは容易かったはずだ。まさか、ここに来るためか」
「目的ね。嫌でも聞く日が来るよ。いずれ……ね」
「何?」
シュドナイが疑問の声を出すと同時に俺は吸収した存在の力をふるに使い、零時迷子で切り落とした右腕を再生させる。
俺は感触を確かめるように拳を握った。
「まぁ、今俺たちに残されている選択肢は一つしかないと思うけどさ」
「ふん、今回はこの前のようにはいかんぞ。
おぉーーー!!」
シュドナイは神鉄如意を持ちながら、吠える。
すると、その姿は俺と同じく人間の形から離れていく。そして、目の前には大きな翼を生やした虎がそこにいた。
しかし、前のようには……ね。
「それはこちらの台詞だ!」
俺は急速に加速して、シュドナイに突っ込んでいった。
「そらぁ!」
『Divide』
「くっ……」
俺が突っ込むと同時に半減を発動し、殴り守るの攻防が始まった。今回は御崎市の存在の力の半減をアルビオンに任せているので、俺だけでこの男を下さなくてはならない。
この男は本当に強い、間違いなく。この時、俺は自身が自然と笑っていることに気付いた。
まったく、俺もヴァーリと同類だったとは。
それとも戦ってるのがこの男だからだろうか、それとも覇龍を使っているからか。まぁ、理由なんてどうでもいい。俺はただこの男をたおすのみ。
力の大きさは半減してるおかげで互角。しかし、今自身の大きさの関係でブルートザウガーが使えないとはいえ手札は多い。
「突き刺され!」
「はっ!」
俺は銀の炎を鋭くし、大量に展開してシュドナイに四方八方から突き刺そうとする。しかし、奴は腕を大きく振るって弾いて道を作って突っ込んで来た。
まったく、とんでもないやつだよ。
俺は腕をクロスして受け止め、奴の背後に回り、首に鋭い牙で噛みついた。
「がっ!」
俺はさらに地面に向けて蹴り飛ばす。シュドナイはそのまま地面にめり込んだ。
「舐めるなぁーーー!!」
「よく、吠えるな。まったく!」
『Divide、Divide、Divide、Divide、Divide
Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、Divide、
』
俺は今まで以上にシュドナイから存在の力を半半減していく。さすがのシュドナイもこれには効いたのか膝をついた。
「ははは、まだまだ」
『Half Dimension!!』
周囲を半減して、シュドナイまでの距離を縮める。
さあさあ、力の大盤振る舞いだ。
「この程度で俺は止められん」
「あはは、そうでなくちゃ!」
俺は銀の炎でシュドナイの周囲を囲み動きを止め、真上から存在の力を放出する。
今の一撃で仕留めたと思ったが、奴は俺の後ろに移動していた。
まだそれだけの力が……。
「何でかは知らんが冷静さがかけているな」
「ふっ、そうかな!」
「実際に……」
俺はふと自身の肩を見る。そこには神鉄如意が刺さっていた。
……なんだと。
「とらえきれてない」
シュドナイはお返しとばかりに強烈なタックルをぶつけてくる。俺はそのまま後ろのビルにめり込んだ。奴は追撃するべく、俺に接近してくる。
「……ふっ」
「何を……なっ!?」
『Comression Divider!!』
シュドナイは危険を察知し、離れようとするが俺の技の範囲に入って直撃する。
Comression Divider。これはヴァーリ・ルシファーが極覇龍のときに産み出した必殺技で。俺が思うに最強のチート技。能力は物理的に相手を圧縮し続ける技だ。
俺はシュドナイを圧縮し続ける。
だが、この男はここでは終わらない。
「その能力。まさか物質にまで影響を与えるとはな!」
「くそっ、完全に制御出来ていないというのか、それとも……」
この男が化け物なのか。
シュドナイは両足、前の右手をなくしこちらを睨みつけてくる。そして直ぐにそれらは再生した。
本当に恐ろしい男だ。ここで攻撃を止めてはいけない。半減し、吸収した力を胸の玉に集中していく。
「これは本来、白龍皇は使えないんだけどね。吸収した分の力が溢れるほどあるこの状況でこそ使えるのさ。くらえ!」
「ちっ……」
シュドナイはこの一撃が本当にヤバいと判断したのか、奴も大量の存在の力を溜めていく。
「ロンギ……何!?」
俺たちが攻撃を放とうとしたのか瞬間、俺とシュドナイに鎖が巻き付かれる。ちっ、逆理の裁者か。キアラたちが抑えてると思ってたんだが。
「……っ、これはまずいね。一旦、引くよ。将軍」
「何故、邪魔をした。ババア」
「なに、私たちは計算を誤った、出直しさ。それに……」
シュドナイたちの向こうから複数のフレイムヘイズたちの気配を感じる。恐らく、キアラたちだろう。
シュドナイは手元に神鉄如意を戻して舌打ちをする。
「またもこうなってしまうとはな……」
「何度でも来いよ。その度にぶったおしてやる」
「次こそは……!」
シュドナイはその言葉を最後にここからベルペオルと姿を消した。
『こっちも終わったぞ』
町の存在の力の半減を終えたアルビオンが声を掛けてくる。俺は覇龍の姿をとき、そして礼を言う。
ありがとよ、アルビオン。
『僕には?』
こいつもいたんだった……。
誠に遺憾だが、こいつにも礼を言っておく。
ちっ、ありがとよ。
『ふふふ、どういたしまして』
姿は見えないがまたしてもドヤ顔してることだろう……うぜぇ。
俺がムカついていると馴染みのある声が聞こえてくる。
「悠二ーーー!」
「無事ですか?」
シャナを見るとアラストールを顕現させた様子はない。皆も同様だ。
こうして仮装舞踏会との最初の戦いは幕を閉じた。
次回から第二シーズンに突入です。