「どうだ、連休を利用して皆で温泉に行かないか?」
「またお前か、池」
池がまたしてもチケットのようなものを持ってこちらにやってきた。後ろにはお馴染み彼女である平井さんもいる。彼は今や平井さんと付き合ってはいるが彼女が出来たことでなにか余裕が出来たのか回りにも気が利ける男になっていた。今回原作で吉田さんと付き合おうとしたような下心は無さそうだ。
「なになに、どうしたの?」
案の定、緒方がこの話しに食い付いてくる。そして彼女の参加はもう決定したも同然。彼女も参加すれば……
「へぇ楽しそう。私もいくいく。あっ、吉田さんもどう?」
「……えっ、はい。良ければ」
「決まりね。あっ、佐藤たちも行くよね?」
「ああ?」
「んっ?」
流れるように吉田さんの参加が決まり、次に佐藤と田中が気だるそうにこちらの方に向く。これはやっぱり乗り気ではないか。
そう思ったが田中が今までとは違う反応を見せる。
「面白そうだな。佐藤、行ってみようぜ」
「なっ、どうした。田中?」
「ほら、マージョリーさんも誘ってよ」
「……」
この後も田中の説得は続き佐藤は折れた。そしてこの集まりに 気付いたキアラたちもやってくる。
「なになにどうしたの?」
「なんの集まり?」
「あっ、よく来たわね二人共。実は……」
緒方がやってきたキアラやシャナに説明する。
二人は話しを聞くと笑顔を浮かべた。
「とても面白そうですね」
「ふーん、温泉ね」
こうして二人の参加も決まり、俺は前で一人で弁当を食べている近衛さんを見る。俺はそんな彼女に声をかけることにした。
「そうだ、近衛さんも良ければ来ないか?」
「……いいんですか?」
「もちろんよ。近衛さんも一緒に行きましょう」
「ありがとうございます……」
「さしずめ、歓迎会といったところか」
キアラやシャナも体験したこのないであろう温泉旅行にわくわくしている様子。まぁ、ここ最近は戦い続きだったし調度良い気分転換になるだろう。
こうして連休を利用した温泉旅行兼近衛さんの歓迎会が決まった瞬間であった。
「温泉旅行でありますか?」
「ええ、皆さんで行くことになったんです」
「ヴィルヘルミナも一緒に行かない?」
「いえ、私はここの調査と防衛に集中しようかと」
『油断大敵』
「なるほど。んじゃ、頼む」
「その言い方……むかつくのであります」
この後、母さんにも温泉に行くことをお話し、数日後に電車で箱根に向かうことになった。
「うーん、良い空気だな」
「そうですね」
さて、今回の参加メンバーは俺、キアラ、シャナ、池、平井さん、緒方、佐藤、田中、近衛さんといった感じだ。
マージョリーはというと乗り気ではなかったようでこちらには来なかった。それ故に佐藤と田中のテンションは低い。まぁ、それでも約束だからとしっかり参加した二人には精神面での成長を感じる。
「景色がいいところね」
「空気も綺麗だ」
池かっぷるもご満悦のようだ。
俺たちはバスから降りるとまず眺めのいい山が目に入った。さらに季節が秋で木々は紅葉し景色をより良いものとさせている。
まず俺たちはそんな景色を見ながら目的である宿へ向かった。今回の旅行は宿の人と池が知り合いということもあり保護者なしで行えた。しっかりと皆で挨拶をする。
「男子部屋はあっちね」
「それじゃあ、三十分後に」
「おう」
俺たち男性陣は女性陣と別れ自分たちの部屋に向かう。部屋に入るとそこはいかにも和風という感じの部屋だった。決してボロいという訳ではない。そういった風の部屋なのだ。
「いい部屋だな」
「悪くない」
俺たちはそれぞれ荷物の整理を始めて、次に浴衣に着替える。着替え終わると一足先に着替えと終わり窓の外を見ている佐藤が目に入った。
「なんだ。そんなにマージョリーに会いたいのか?」
「ばか、そんなんじゃねぇよ。これからどうなってくのかと思ってな」
「まぁ、また奴らは来るだろうな」
「まったく、お前が元凶だろ」
「まぁな」
順当に行けば紅世の王であるフィレスが学園祭の時にくるんだよ、とはいえないし。しかし時が過ぎるのは早いもんだ。憑依してからひたすら戦いや特訓の連続だったからか時が過ぎるのが早く感じる。
『もうすぐ彼女と会えるんだね!』
俺の中でヨハンが嬉しそうな声をあげる。
分かってると思うが余計なことをするなよ
『もちろんさ』
念のため釘をさしておく。
……しかし心配だ。
『しっかり俺も見ておこう』
『まったく、君も心外だなぁ』
アルビオンもこういってることだし俺は気にしないことにした。
「お前はずっと戦っていくつもりか、連中がくる限り?」
「戦うだろうな。ただ……」
「ただ?」
「永遠に戦い続けるということはないだろうな」
「あっ、それは……」
「おう、佐藤。ここにいたか」
ここで田中がやってきて話は中断される。
佐藤は田中と共にそのまま部屋を出ていった。視線はこちらを向いていたが。
『良かったのか?』
別に嘘は言ってないしな。必要になったとき従わせればいいさ。
『そうか……』
アルビオンはそれ以来今日この話題を出すことはなかった。
「温泉良かったですね。それより」
「悠二……」
「悪かったって。つうか痛ぇ」
『自業自得だな』
『なにも言えん』
アラストール、アルビオンが思わず呟く。まぁ実際その通りなんだが。
佐藤との話のあと時間が経って皆で外の温泉に向かった。しかし俺は早く温泉から離脱し、こっそりと女風呂を覗こうと独自ルートを見つけ出して向かった。だが温泉の近くにキアラ、シャナが仕掛けていた自在法があり見事に俺に直撃して吹き飛ばされた。
しかし、尻が見れると思ったのだが……
ここで関係はないんだがこの体に憑依してから尻派になってきてる気がする……気のせいか。それは坂井悠二が尻派だったのか。まぁ恋人がシャナだったしありえない話しではないか。
それとも……
『尻、好き……尻龍皇。あばばば……』
……まずい!アルビオンが平行世界の電波を感じとりおかしくなってしまった!
この後、正気に戻ったアルビオンだったが例の単語は忘れていた。……うん、このまま思い出させない方がいいな。俺はこの話題は封印することに決めた。
……直ぐに破れそうだが。
この後、旅館に帰った俺たちは夕食、談笑などして楽しい時間を過ごした。池の一発ギャグは寒かったが。まぁ、なにより近衛さんが楽しんでいたので今回の旅行は成功でいいだろう。団結も深まっただろうしな。
そして皆は寝静まった頃、時は深夜を迎えた。