世界を越えたい   作:厨二王子

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フィレス襲来

 時は過ぎ清秀祭が始まった。

 ヴェルヘルミナの話しは原作通りフィレスがもしかしたら零時迷子を求めてこちらに来るかもしれないというものだった。俺たちの方針はヴェルヘルミナが知ってる身ということもありまずは話し合いに持ち込むことになった。

 

 そして現在、俺は清秀祭のパレードで町を回っている。ロミオ役ということで目立つ立ち位置にいる。隣にはジュリエット役の近衛さんが歩いている。

 意外にこういうことは真面目に取り掛かりそうにない佐藤と田中も真面目に取り組んでいた。

 シャナとキアラ、吉田さんが時折こちらをチラ見してくる気がする。吉田さんはともかくキアラとシャナは恐らくセレスがいつ来るか分からないので過剰に警戒してると思われる。

 

「想像してたより、人が多いな。バテそうだよ」

 

「多くの方が来ているのですね」

 

「緊張してる?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうか」

 

 周りからは相変わらず塩対応だと思う者もいるだろうが旅行での一件で彼女との距離は近くなったと自負している。旅行では小さくだが俺たちに向けて笑ったりしていた。この旅行は彼女や俺たちにもとても楽しい思い出となった。

 

 だが現実は……物語はしっかりと進み続ける。

 

「これは!!」

 

「来るのであります」

 

 学校に戻りパレードが終盤に差し掛かったその瞬間、一瞬で封絶が世界を包み込む。さらに遠くから気配が急速にこちらに近付く。

 

「悠二の近くに……っ!!」

 

 シャナたちが俺に近付く前にいくつもの竜巻が

 俺の周囲に出現する。

 そして一人目の来客が俺の目の前に現れた。

 

「ついに来たか。初めまして」

 

「やっと会える。ヨーハン」

 

「これは話し通じないやつだな」

 

 原作では彼女の自在法であり風の天輪を使い調査し安全を確保して転移してくるという手筈たったが今回は少し俺がしこんだ。

 彼女は俺の話を聞くことなく俺の中にいるヨーハンに向い声を掛け続ける。そして俺に手を触れた。

 

「えっ……」

 

「彼の意思は伝わったはず。ここは引いてもらうよ。もう次の来客は来てるしね」

 

 俺がその言葉を告げると周囲の風は勢いよく消え次に黒いキューブが俺とフィレスを分断した。同時に御崎市に四ヶ所に徒の気配が出現する。その内の二つは目の前に現れる。

 

「やぁ、近衛さん、それにヘカテー」

 

「……」

 

「……」

 

 目の前に瓜二つの少女が二人現れる。近衛さんとヘカテーだ。

 目の前に現れたヘカテーは俺をにらみつけるが

 直ぐに偽りの器である近衛さんを回収する。

 まったく一緒に旅行にも行ったというのにひどいもんだ。

 彼女は無言で俺の腹に杖をつく。すると青い光が俺を包んだ。無事に刻印は刻まれたようだ。

 

「……本来であれば入れ物であるあなたを分解する手筈でしたが」

 

「シュドナイは仕事をしたようだな」

 

「約束は守ると?」

 

「無論。お前たちも深手を追いたくないだろう。焦る必要もないだろうし俺が約束を守らなかったら動けばいいさ」

 

「今すぐは無理なのですか?」

 

「準備の時間がほしいんだ。すまんな」

 

「……分かりました。ここは引きます」

 

 彼女は役目を終えたとばかりにこの場から姿

 を消す。同時に他の徒の気配も消えた。さらにフィレスの姿もない。

 

「やれやれ、これはひどいな」

 

 俺は封絶内とはいえひどい状態になっている校舎を見てつぶやく。原作ではフィレスとの戦いのときに緒方さんがひどいことになったがどうだろうか。

 俺はシャナたちと合流するべく動きだした。

 

 

 

 

 

「よかった。悠二」

 

「どこも異常はないですか」

 

「……ああ、問題ない。ただあいつら直ぐに消えていったな」

 

 一瞬の出来事であり、フィレスの竜巻やフェコルーのマグネシアで視界や行動が封じられていたので何が起こったかは分からなかったようだ。

 

「皆、無事だったか」

 

「まさかフィレスと同時に攻めてくるなんて思いもしなかったわ」

 

「彼女は……行ってしまいましたか」

 

 残りの三人とも合流。軽く情報交換した後、校舎を修復して佐藤の家に集合ということになった。そしてその後、佐藤と田中とも合流したのだが二人の様子がおかしかった。特に田中の様子が。これは緒方さんに何かあったかな。

 俺はそんなことを思いながら校舎の修復の手伝いを始めた。

 

 

 

 

 

 校舎の修復が終わった後、俺たちは佐藤の家にやって来ていた。

 とりあえず皆に伝える内容としてはフィレスに関してと近衛さんがヘカテーの自在法かなにかで作られたものだということを伝えた。

 

「近衛さんが……」

 

「あのような形でこちらに介入できるなんて……これからも注意が必要ですね」

 

「……」

 

 それぞれ反応はあらかた一緒だったがやはりヴェルヘルミナだけは思い詰めた顔をしていた。

 恐らくしっかりと話したかった思いがあるのだろう。

 次にあの襲撃時マージョリー、ヴェルヘルミナ、サーレの方には二人の徒が足止めにやってきたそうだ。幹部ではなかったが手強く仕留めることは出来なかったらしい。

 そして話し合いはわりと時間も遅いということもあり直ぐに終わった。ヴェルヘルミナとシャナ、キアラは家に向かい、マージョリーは佐藤と田中は奥の部屋に向かっていった。

 

「悠二」

 

「師匠。その荷物は……」

 

 サーレは先程は見えなかったキャリーケースを引きづりながら声を掛けてくる。ということはもう行ってしまうようだ。

 

「ここから離れるのか?」

 

「すまないな。本当は暫くここに残りたいが改めてフィレスや仮想舞踏会の情報を集めなきゃと思ったんだ。とりあえず東京支部に向かおうと思ってる」

 

「そうか……」

 

「なに、また会えるさ。それまで無事にいろよ」

 

「ああ……また」

 

 サーレはその後直ぐに町を離れていった。

 

 でもきっと再会の時、俺は……。

 

 俺は思わず出そうになった言葉を引っ込めて静かに佐藤の家を出て行った。

 

 

 

 

 

 俺は一人で帰りの道を歩いていく。そして旅行先のシュドナイとの取引を思いだした。

 あのヘカテーの反応から仮想舞踏会内では話は広がっているだろう。

 彼に頼んだことは三つ。

 

 一つは刻印の打ち込み以降の計画の凍結

 二つはフィレスに対して俺が一部の結界を緩めた情報を流して同時に御崎市に侵入してもらうこと

 

 一つ目はヘカテーで確認済み。

 二つ目は無事に成功

 

 そして最後の頼みは指定した時間に俺を迎えに来ること。

 

 日付けは12月25日の深夜2時

 

 あと、もうすぐ……刻々と時は進んでいく。

 

 ……絶対にやり遂げるんだ。

 

 それが俺という坂井悠二の、いや■■■■■の願いだから。

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