社会人つらい……。
上海会戦
場所は上海。
そこでは傀輪会が独断で集めた東アジアのフレイムヘイズたちを集めて仮装舞踏会との戦い、かの現代の大戦の前哨戦が行われていた。
「くそう、なんで。相手は一人なんだぞ」
「黙りなさい。まだやれる!」
「……」
フレイムヘイズたちは思わず後退り、苦しい表情を浮かべていた。
さらにこの戦場の戦況は誰がみても明らかだった。
さらにこちらのフレイムヘイズは三十人以上。対してこちらに近づいてくるのはたった一人。そう、たった一人にフレイムヘイズたちは押されているのだ。
「おぉ────!!!」
「安らかに眠るといい」
決心の覚悟で向かってくるフレイムヘイズたちを黒い斬撃が飲み込んでいった。
「……」
俺は無言で先へと進んでいく。
道にはあらゆる武器が突きさっており、無数の死体が転がっていた。
そんな中、隣にいる男が俺に話し掛けてきた。
「どうやら、本命は上のようだ……。さらに人間の気配も感じる」
「やっとか」
俺は階段を見つけ上に登っていく。
この階の上は屋上。そこにはとてつもない存在の力が溢れていた。
「分かっているが、無茶だと思ったら出ざるをえない。その体は今となっては貴様だけのものではないのだから」
「……分かってるよ。シュドナイ」
俺は血に濡れたブルートザオガーを持ち、血を払う。
敗北などありえぬ、余は創造神なのだから
背中の黒い翼が漆黒の輝きを放つ。
俺は屋上に入るために衝撃波で扉を吹き飛ばした。
「っ!?」
「ほう、まだ始末してなかったか」
屋上に入った瞬間、俺が見たのは老人の首に剣をかける女性の姿だった。
瞬時に状況を把握した俺は自在法を展開して彼女の動きを封じ、鎖を出して老人に巻き付けこちらに引き寄せる。
「この男は情報にあった大老の一人か」
「シュドナイ……」
俺が声を出した瞬間、神速といえるスピードで先ほどの女性の刀が俺の首をとらえる。
しかし、グランマティカが展開されてその刀が俺の首をとばすことはできなかった。
「この存在の力……おぬし、まさか」
「久しいな。余もお主のことを覚えているぞ」
『境界の狭間から舞い戻ってくるとはのぉ』
「しかし、おぬしも一緒か。蚩尤」
「ふん、久しぶりにその名を聞いたな」
シュドナイは槍を老人に向けたまま笑って答えた。
両者、体制を立て直して距離をおく。
『二対一はきついのぅ』
「せめて、一人は道連れじゃ」
女性は紅梅の色の霧へと姿を変え、高速で彼女の持つ神器の太刀である『昆吾』が突っ込んでくる。
それはまさに歴戦を乗り越えてきた古きフレイムヘイズの一撃。
さすが剣花の薙ぎ手の称号を持つ帝鴻のフレイムヘイズ。
……しかし、俺は見えていた。
「安心しろ……」
『Create!!』
俺の背中の翼は黒く輝き、機械音がこの広い場所に響き渡る。
その瞬間、俺の背後に二本の双剣が現れ、金属音が鳴り響く。
「がっ」
「相手は余だけだからな」
「祭礼の蛇……」
彼女、虞軒の苦しい呟きが聞こえる。
双剣は彼女の背中に刺さっていた。
同時にこの剣の正体にも気付いたようだ。
「まさか、宝具。いやこれは……」
彼女は血を吐きながら俺を睨みつける。
俺はそんな顔を見ながらシュドナイに指示を出した。
「シュドナイ」
「ふっ」
シュドナイは自在法を展開して次元の裂け目を出す。
さらに掴んでいた老人をそこへ投げ入れた。
彼女は思わず人質であった愛しき男の名を叫ぶ。
「項辛っ!!」
俺は手元にブルートザオガーを出して構える。
「貴様っ!!」
「あやつを助けたければ余を降すことだな」
虞軒は高速に俺の前にフェイントを織り混ぜてこちらに接近してくる。
そして俺の剣と彼女の刀がぶつかり合った。
どちらも神速。その衝撃は周囲のビルを吹き飛ばす。
剣戟は続き、両者拮抗する。
どちらの攻撃もかすれば重傷になると分かる剣戟。
しかし……
「貴様の剣技……もう慣れた」
「くっ」
俺の剣が彼女に当たり始め、傷を増やす。
そして均衡は崩れた。
ついに彼女の体勢を俺の剣がずらす。
「まだじゃ!」
「ほう」
彼女の刀が素早く下から迫る。
俺が剣を振り抜くタイミングを狙った、そんな一撃。彼女は血だらけになりながらもこの気を狙ってたようだ。
「よい、一撃だ!」
「なぜ……」
彼女の力なき言葉がこの場に響く。
その言葉にはもう闘志はなかった。
「そうでなくては。さすがは歴戦のフレイムヘイズ!!」
「分かっておったか……」
彼女の刀は俺のグランマティカに阻まれる。
俺の周囲に死角はなかった。
「さて……」
「殺せ」
「あいつのことはいいのか?」
「……なんのつもりだ」
彼女は俺を睨み付ける。
しかし、反抗する力はなくそれ以外の行動は取れないようだ。
ここで死んでもらっては困る。
彼女にはやってもらはなくてはならないことがあるからだ。それは徒には頼めない。
「なに、契約をしようじゃないか」
彼女は頷くことしかできない。
なぜなら彼女は彼を愛しくそして大事に思っているのだから。
こうして俺たち仮装舞踏会は上海会戦を制して傀輪会を潰す。
そして計画を進めていった。
「外界宿の傀輪会を潰したことで、軒並み勢力は落ちていったな」
「……」
「浮かない顔だな」
「まだ大戦は始まったばかり。ここからが本番よ」
「ふん、そうだな」
シュドナイは俺に話しかけると、
静かに部屋から出ていった。恐らくヘカテーに会いにいったのだろう。
俺は窓を眺めていると騒がしい大声が耳にはいる。
どうやらどこぞの発明家さんがきたようだ。
「これはこれは盟主殿ぉー」
「……順調か。ダンタリオン」
「もちろんですとも。大戦の件から例の門まで開発は進んでおります」
「ほう」
「かの屍拾いも手を加えてましたのでそろそろかと」
「さすが、教授〜」
「なら、余も動くとしよう」
俺は騒いでるダンタリオンを置いて下に向かう。
出口の近くでは壁を背に立つ徒を見つける。
「なんだ、出迎えてくれるのか。サブラク」
「……どこにいくか。気になっただけだ」
「なに、忘れ物をとりに」
そこは始まりの場所。
俺の意識がこの世界のミステスである坂井悠二に宿った場所。
フレイムヘイズたちと無数の敵を葬った場所。
なにより……
「行ってくる。御崎市へ」
そこは仲間たちと過ごした場所。
しかしもうそこには仲間はいない。そこにいるのは俺の前に立ちはだかる敵のみ。
俺は黒い翼を羽ばたかせ、地上へと向かった。
悠二強くし過ぎた、しかし反省はしてない。
能力解説は後日。