世界を越えたい   作:厨二王子

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禁手

「姿が変わったな」

 

「ここからが本番だぜ」

 

「面白い!」

 

 俺は禁手に至ったことで背中の翼から余分な力を出せるようになった。しかし、禁手になったばかりなのと、白龍皇の光翼が存在の力にまだ適用していない影響で俺は後五回しかシュドナイの力を半減できない。さらに十秒の制限は禁手になったことで本来は外れるのだが、まだ至ったばかりでシュドナイの多くの力を処理しきれない。なので十秒という枷をつける。

 まずは一回。

 

『Divide』

 

「くっ!」

 

 シュドナイは苦しい声を上げるも、俺は奴の後ろにまわる。奴の反応は遅い。しかし、これは俺も少し速くなったが、奴が大きく遅くなったのだ。

 俺はさっきのお返しとばかりに、シュドナイの腹を殴る。

 

「そら!」

 

「ぐっ!」

 

 シュドナイは今の攻撃が効いたのか、俺から一旦距離を取る。そうすれば半減もこれ以上起こらないとでも思ったのか。しかし、俺が一度奴に触れた以上、半減は止まらない。

 そしてまた十秒経過したので、二回目の半減。

 

『Divide』

 

「なるほどな……」

 

 俺の二回目の半減をくらうと、シュドナイはなにか分かったように呟いた。

 

 えっ、なにか分かっちゃったの!?

 

 正直このオッサン、ロリコン疑惑掛かってるけどホントに糞強いんだよねぇ。あの槍を持ってないのでこれなんだから、持っていたらどうなるんだろうか……考えたくもない。

 

 俺が思考してる間にも、シュドナイは話し始めた。

 

「距離を離してもダメか……。しかし、からくりは見えた。その翼の能力は俺のなんらかの力を十秒ごとに減らしていく……いや、この異常な量からいって半減していくってところか?」

 

「……」

 

「どうやら、図星のようだな」

 

 なっ、何なんだコイツ。この短い戦闘の中で俺の能力を分析しやがった。……化け物や。

 

『本当に恐ろしいな。これはなるべく多く半減させて長期戦に持ち込むしかないだろう』

 

 それはそうなんだが……。

 

「おっと、お喋りが過ぎたようだ。また半減されてしまう」

 

 シュドナイは俺に一言告げると、真ん前に接近してくる。俺の能力がばれてしまった以上時間を与えてはくれないだろう。

 

 ……ですよね。

 

 そしてここからは俺とシュドナイのインファイトになった。実際、原作で素手でやり合っているところは少なかったし、槍もないからいけるかななんてほんの少しだけ思ってしまったが、そんなことを思ってしまった自分を殴ってやりたいくらいだ。

 俺とシュドナイの殴り合いは続く。もちろん殴られてるだけではない。拳を防いだり、たまに蹴りも混ぜたりする。しかし、なかなか当たらない。

 そして、殴り合っている内にまた十秒が経過した。

 

『Divide』

 

 シュドナイの拳のスピードが下がる。これまでもはや攻撃が全然当たってなかった俺だが、これを期に攻撃が当り始める。

 シュドナイは存在の力なのかそれを周囲に放ち、強引に引き離した。すると、彼は大きな声で笑い始めた。

 

「はっはっは。まさか少し様子見で来ただけだったが、こんな戦いをすることになるとは予感もしてなかったぞ」

 

「まだ、笑う余裕があるのかよ」

 

「そうでもない。お前に力を半減させられまくったせいで、変身も出来ない状態だ」

 

 どうやら、変身は出来ないらしい。……やったね!

 

「だが……」

 

 ……なっ!?

 

 シュドナイは突然俺の前から姿を消すと、俺の後ろに現れた。ばかな、こんなに力を半減させてここまでのスピードを出せる訳がない。しかし、俺はある可能性に行き着いた。

 

 自在法か!

 

「まだ、自在法を使えるくらいの存在の力はあったわけか」

 

「悪く思うなよ」

 

「ちくしょう!」

 

 俺は思わず舌打ちをしたい気分になるがそれどころではない。シュドナイの蹴りが見事に命中し、上空に蹴りあげられた。

 俺は白龍皇の光翼を使い、空中で立て直す。

 

「ほう、やはり空を飛ぶことが出来たか」

 

 空中戦には馴れてないんだよ。糞が!

 

 そもそも人間は飛べない生き物である。さらに前世を含め、空中で何かするなんてことはあるはずがない。この世界に来てからは精神世界で空中戦のトレーニングをしたりもするが、それでもまだ馴れてはいないのだ。それに対して向こうは空中戦のエキスパートだ。差は歴然である。

 俺は心の中で文句を言うが、シュドナイの反撃が止まることはない。奴は再び俺に向かって接近してきた。

 

「ちっ、最悪は覇龍を使うしか……」

 

『相棒、それは最終手段だ』

 

「分かってる」

 

 俺はアルビオンの忠告を聞きいて頷く。

 昨日の夜、俺はある可能性に至った。それは覇龍のことである。覇龍を使えば魔力を枯渇するまで使用する。しかし、俺は魔力を持っていない。そんな時代わりに使われるのが寿命だ。

 ならもし、魔力の代わりに存在の力が使えるとしたら。そして、俺には零時迷子がある。ここから導かれる答えは……。

 しかし、これはあくまでも可能性である。しかも、これを安全に実行するには、夜中の零時少し前に覇龍を発動させなくてはならない。まぁ、 その時間でなくても、変わるのは復活するのが速いか、遅いかだけだが……。

 とにかく、不確定な力には頼れない。俺は覇龍は使わない方向で戦闘をする。

 そして、シュドナイとの距離は徐々に近くなっていく。俺はこのタイミングで今使えるようになった大技を発動させた。

 

 ……ここだ!

 

『Half Dimension』

 

 一気に俺とシュドナイとの距離が縮まる。シュドナイもさすがに驚いたのか、奴の動きが一瞬止まった。

 俺がこの瞬間を見逃すはずもなく、奴の顔面を思いっきり殴り、地面に叩きつけた。地面にはクレーターも出来ている。さすがに致命傷を与えられただろう。

 Half Dimension、これは禁手になって使えるようになった能力だ。今の俺では一回の戦闘で一回しか使うことが出来ない。その能力は周囲の物を全て半分にする力。使ったタイミングもここしかないくらいドンピシャだった。しかし、シュドナイは俺の思いをことごとく裏切っていく。奴は右腕を抑えながら立ち上がってきた。さらに、アルビオンから悲報が俺に告げられる。

 

『不味いぞ、相棒。鎧の制限時間が五分をきった』

 

 マジか……。

 

 俺は口を開けっ放しにしたくなってしまう衝動を必死に抑える。

 ということは五分以内にコイツを仕留めなくてはならない。

 

 ……いけるか?

 

 シュドナイはゆっくりと此方に向かってくる。しかし、何故か途中で動きを停止した。そして奴はなにか気にくわない表情をすると、舌打ちして滲み出ていたオーラをしまった。

 

「実に気にくわないがここで潮時のようだ」

 

 あの様子を見るに依頼人の兄妹からでも連絡が来たんだろう。どうやら、助かったようだ。

 

「お前の様子を見るに、その鎧を維持するのに制限時間でもあるのだろう。それも、かなりギリギリだったと見える」

 

 ええその通りです、はい。

 

「しかし、こんな暑い戦いをしたのはいつ以来か。暇潰しにしては楽しめたぞ、少年。名前を聞いてやろう」

 

「白龍皇……坂井悠二だ」

 

「白龍皇……その鎧から来てるのか。まぁいい、その名前しかと覚えたぞ。俺の名はシュドナイ。次会う時はあの槍を持ってやり合いたいなものだ」

 

 シュドナイは最後にそのような言葉を残すと、突然目の前から姿が消える。

 そして、俺は危険が去ったことから、力が抜けて地面に腰を着けるのであった。

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