「入るぜ」
扉が開いて、彼女が気だるそうに入ってきた。ええ。待ってたわ、天龍さん。
風雲ちゃん達は今、演習を終えて入渠中。天龍さんに頼みたい事は勿論、その風雲ちゃんについて。
沖立です。
私と神通さんの見立てはやっぱり間違ってなかった。風雲ちゃん、確かに運動自体は得意ではないし海上での動きもまだまだ。けれど、彼女には唯一にして最大の武器があった。そう、『目』。風雲ちゃん、ほぼ間違い無く目がとんでもなく良い。普通なら見えない筈の遠距離の影、ほんの些細な海面の揺らぎ、それに多分飛んでくる砲弾もハッキリと見えている筈。恐らく、全盛期のハイになった状態の私よりもより広範囲が見えている。うん、多分その視界だけなら私よりも遥かに上だと思う。
多分だけど、風雲ちゃんの目は一般人だった時から元々良かったんだとは思う。それが艦娘として覚醒した時に更に強化されたんでしょうね。
風雲ちゃんの存在は今後、必ず艦隊の強力な武器になるわ。だから、彼女は今のうちに伸ばせるだけ伸ばしてあげたい。成る程、川内さんと山本中将が風雲ちゃんを呉に寄越した理由が分かった。風雲ちゃんが目指すべき姿は、誰よりも広い視野でいち早く戦局を見極めて、冷静な判断で僚艦を導く‥‥‥暁ちゃんでありヌイヌイちゃんのポジションだもの。
今の風雲ちゃんに足りないものは自信と、一歩踏み出す為のほんの僅かな勇気。勿論基礎から鍛えなきゃいけない所も多いけど、先ずはそれを身に付けてもらわないとね。そう、『駆逐艦風雲』として嘗てのミッドウェーの轍を踏まないように。
「それで?オレに何の用だよ?」
面倒そうに、なげやり気味に聞いてきた天龍さん。本当は呼ばれた理由は分かってるんでしょ?ホント、天龍さんは難儀な性格っぽいわね。
「貴女に風雲ちゃんの教導を頼みたいの」
「面倒くせぇ。何でオレなんだよ?暁とか不知火辺りに頼めよ。喜んでやってくれるだろ」
その二人の名前を出した、って事はある程度は理解してるっぽいわね。それなら話が早いわ。どのみち二人にも手伝ってもらう予定だしね。
「天龍さんのやり方で構わないから。お願いできる?風雲ちゃんに教えて欲しい事は」
「‥‥‥分かってるよ。仕方無ぇ。引き受けてやる」
受けてくれると思ってたわ。態度は兎も角、天龍さんは根は好い人だものね。「話はそれだけだな?んじゃ、失礼するぜ」って背を向けて右手をヒラヒラと振りながら退室していく天龍さん。
それから入渠を終えた風雲ちゃんが来て、前回の通りの話をして。
え?あのリボン?えっと、あれは電探なんかじゃなくて只のリボン。強いて言うなら、私が中学生になった時にお母さんに買って貰った思い出の品‥‥‥かな。ほら、私がただ『風雲ちゃんなら出来る』って言った所で嫌味に聞こえるだけで風雲ちゃんは信じないでしょうから。嘘も方便、って所かな。
さてと。それじゃ私も動こうかな。先ずは風雲ちゃんの部屋替え。暁ちゃんと同室になってもらおうかな。学べる事も沢山あるだろうからね。暁ちゃんも、隠れた努力の積み重ねであそこまで登ってきた艦娘だから。
あ、でもその前にこの申請書類の山に目を通しておかないとね。西日本の艦娘達の申請はできるだけ通してあげたいし。
‥‥‥あれ?これ、ショートランド泊地からの嘆願書?兵力、武器弾薬類の要請?キリバス攻略隊‥‥‥?
私は、ショートランド泊地へと通信を繋いだ。出たのは、現在提督代行をしている衣笠さん。
「‥‥‥沖立です。嘆願書についてもう少し詳しく話を聞かせてもらえませんか?」
『やっと要望聞いてもらえるのね!お願い、あんまり時間かけてられないのよ』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おや?此処は‥‥‥ベッドの上、ですか。そういえば不知火は何をしていたのでしたかね。確か‥‥‥‥‥‥あっ‥‥‥‥‥‥。
そうでした。風雲がポイポイのリボンをしていて、急に視界が真っ黒になって。何とだらしない事か。まさか気を失ってしまうとは。完全に落ち度ですね。
それにしても風雲がポイポイのリボンを‥‥‥羨ま‥‥‥いえ、羨ましくなどありません。仮にも不知火は栄えある陽炎型二番艦です。プレゼント一つに一喜一憂などする筈は‥‥‥。
「羨ましい‥‥‥」
上半身だけベッドから起こして。消え入るような声でしたが、ついついポツリ、と本音が洩れてしまいました。部屋に不知火だけならばそれでも良かった。けれど、生憎この鎮守府の艦娘は病人を放置などしないのです。不知火一生の不覚‥‥‥クッ。
「風雲さんのリボンの事ですか?」
どうせ熊野さんは不知火の気持ちを知っているのですし、否定しても意味はありません。ここは小さくコクリ、と頷きました。
「嫉妬ですね‥‥‥フフッ。良いではありませんか。不知火さんも人の子、という事ですわ」
笑い事ではありません!どれだけ不知火がショックを受けたと思っているのですか!もしもポイポイが風雲の事を‥‥‥と考えると両手が震えて‥‥‥。
そんな不知火を見かねたのでしょうね。熊野さんは淹れたての紅茶をくれました。
「ダージリンのセカンドフラッシュですわ。リラックス効果がありましてよ?」
言われるままに紅茶を一口。成る程、確かに少し落ち着いた気がします。少しばかりホッとした表情を見せたからでしょうか。熊野さんが笑みを見せました。
「戸惑えば戸惑うほど、それは愛しているという事。いい事ですわ」
ですが‥‥‥不知火達は艦娘です。確かにケッコンカッコカリ等というシステムはあるにしても、現状では恋愛に現を抜かしているような余裕など無い筈です。そうです、ケッコンカッコカリ等というシステムがいけないのです。そんな物があるから不知火は‥‥‥。
「不知火さん、こんな言葉をご存知ですか?『人が恋をし始めた時は、生き始めたばかりのときである』。艦娘と言えども人間です。夕星さんと出会って、不知火さんはずっと人間らしくなりましたわ。例え軍属であっても、わたくしはそれが悪い事とは思いませんわ」
‥‥‥戦闘において、極力雑念は捨てるべきだと思っています。そのせいで冷静な判断が出来なくなったり、見える筈のものが見えなくなったり。ですが、ポイポイの存在は既に不知火にとってなくてはならないモノになってしまった。
熊野さんは耳年増の癖に大人なのですね。やれやれ、気持ちも少し落ち着いてきました。そうですね、自身の気持ちとは、もう少しゆっくり向き合ってみる事にしましょうか。
まあそれはそれとしてなのですが‥‥‥なんなのですか、この異常な下腹部の痛みと重みは。例えるなら、お腹の中に砲弾でも埋まっているかのような。
クッ、これだから二日目は‥‥‥。
短め回となりました。作者の艦隊を初期から支える重巡ガッサ初出演。
駆逐艦風雲について補足:ミッドウェー島攻略が始まる数時間前、南雲機動部隊の前衛を務める風雲の吉田艦長はこう思ったと言う。
「作戦は大失敗だな」
前日の時点で日本の輸送船団は敵の索敵機に発見され空襲を受けており、ミッドウェー基地への奇襲の機会は失われたと悟っていた。しかし南雲機動部隊司令部は当初の攻撃計画を変更せず。ミッドウェー攻撃隊と索敵機を翌日朝、同時に出撃させると信号を送ってきた。
「敵を完全に舐めている。敵に発見され、いつ味方部隊が攻撃されるかわからないのに、太陽が上る頃に基地を攻撃するなど敵を甘く見過ぎ。せめて索敵機は夜明け前に出撃させるべき」
一介の駆逐艦長でしかなかった彼の意見など司令部に聞く者など当然おらず。結果‥‥‥ミッドウェー海戦は周知の通り。
関係の無い話ですが、海上自衛隊のホームページ上、『佐世保基地最強カレー決定戦2017GC1グランプリ』の告知で『護衛艦しまかぜ』が参戦決定、とありました。
その『護衛艦しまかぜ』の『しまかぜキャラクター』と紹介されてる子が何処かで見たキャラクター(勿論艦これの島風)ですね。海自はいつもノリノリですねぇ。‥‥‥『艦これ』は『海自(自衛官)公認』って事ですね分かります。
※※以下ネタです※※
◆◆神風さんの受難◆◆
神風 トントントントン
神風 コトコトコト
吹雪「あっ、神風さん。何してるんですか?」
神風「最近司令官が疲れてるみたいだから栄養のあるものを食べて貰おうと思ってね。ちょっと料理をしてた所」
吹雪「今日は神風さんが秘書艦ですもんね」
神風「ええ。ついでに暖かい飲み物も持っていこうかな、って」
吹雪「‥‥‥‥‥‥神風さん!相談があるんですけど、聞いてください!」
神風「え?いいけど‥‥‥(あ‥‥‥何となく分かったかも)」
吹雪「私‥‥‥どうしたら司令官に使ってもらえるんでしょうか!」
神風(やっぱり)
吹雪「私(レベリングしてもらえれば)改二になれるのに!(改二になれば)高射装置だって持ってくるのに!どうして司令官は使ってくれないんでしょうか!」←現在レベル3
神風「えっと‥‥‥」
吹雪「私の改二性能が平均的過ぎるからですか!?性能が高いとは言えないマックスちゃんは改二にしてもらって贔屓されてるのに!」
神風(然り気無くまっくすさんを馬鹿にしてる‥‥‥それに吹雪は対空値はかなり高いと思うけど。私の方が『すぺっく』は低いんだけどな)
吹雪「‥‥‥ハッ!?やっぱり顔ですか!?私の事は好みじゃないから!?芋顔じゃ駄目って事ですか!」
神風「初期艦に漣を選んだくらいだし顔(絵師)は関係無いと思うけど‥‥‥単純に好みとかじゃないかしら?」
吹雪「そうですよね。改なら兎も角、ノーマルの漣ちゃんはアレですし。私と同じような顔(メタい)でも蒼龍さんは重宝されてるし‥‥‥うーん」
神風(さっきから吹雪が毒舌‥‥‥不満が溜まってるのかな?)
―――――
漣「ぶぇーっくしょん‥‥‥さては誰か漣の噂して‥‥‥ゴホッゴホッ」
潮「大丈夫?」
曙「何が噂よ?アンタただの風邪でしょうが。天気予報で土砂降りって言ってたのに傘忘れるアンタが悪いのよ」
漣「ウグッ‥‥‥何も言えねぇ」
朧「まあまあ。でも良い機会だから漣もゆっくり休みなよ」
―――――
吹雪「‥‥‥ですから、後から来たのに何故か司令官に重宝されてる神風さんに秘訣を教えて貰おうと思って!」
神風(あれっ?私にも悪意が向いてるような?)
神風「‥‥‥えっと、戦力アップはすぐには無理だし、姿だって変えられないし‥‥‥うーん」
吹雪「ですよね‥‥‥はぁ‥‥‥」
神風「そっ、そんな落ち込まないで!吹雪は他の鎮守府では主力だったりするし、何よりアニメでは主人公だったし!」
吹雪「それですよ!(アニメでは)私主人公なのに!どうして司令官は使ってくれないんでしょうか!」
神風「あー‥‥‥えっと」
吹雪「私も特殊能力欲しい!大発動挺乗せられるとか、甲標的射てるとか!運が高いとか!固有対空カットインとか!如月ちゃんと睦月ちゃんは改二になって活躍(大発動挺持って遠征)してるのに!」
神風(困ったなぁ。どうしよう)
吹雪「‥‥‥ハッ!?そうか、如月ちゃんみたいに司令官に迫れば或いは‥‥‥!」
神風「えぇ‥‥‥(困惑)」
吹雪「ありがとうございました!道が見えた気がします!」
神風(吹雪はパンチラキャラだっていうのは言わない方が良いのかな?)
吹雪「それでは失礼します!」
神風「えっ?あ、うん。頑張ってね。じゃあ私はこの料理と飲み物を司令官に渡してくるから」
吹雪「あっそうだ、神風さん」
神風「ん?何かしら?」
吹雪「御ケッコンおめでとうございます!」
神風「‥‥‥ありがとう」ニコッ ←レベル100
秋イベント前に神風とケッコンカッコカリしてきました。後は山雲と朝雲のレベリングが間に合うかどうか(オイ)。
七隻編成での出撃や単艦退避など新システム満載(?)となる2017秋イベントはさてさてどうなりますか。お願いだから夜戦連戦はヤメテ‥‥‥。
※※参考:如月セリフ、公式より一部抜粋※※
『もぅー、司令官も好きなんだから……』
『あぁ、艤装や服とか脱いで?……ね?……如月の水着、どう?』
『司令官には、どんな秋かしら。 食欲の秋? それとも……うふふふっ』
『みてみて~、この輝く肌。あはっ、もっと近くで見てよ』
『少し疲れ気味かしら、ちょっとベッドに入ってくるわね。一緒に来る?』
『んもぅー、ギリギリまで一緒にいたいのに。あなたも、一緒にお休みする?』
『は~い♥うふふふふふ♪』
『見惚れていたら、ヤッちゃうわよ?』
『魚雷って太いわよねぇ♥さあ、イクわよっ♪』
『如月も一緒にイカせて。ねっ?』
『私を……どうする気?!』
『ふわぁぁぁぁ!ソコはぁ~』
『あぁ~ん♥如月が一番なの?』
『司令官ったら・・・ありがとう、好きよ』
‥‥‥これ全部公式なんだぜ‥‥‥(アカン)