抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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遭難

 

「う‥‥‥あ‥‥‥」

 

身体中に走る痛みで目を覚ましました。鉛のように重い瞳をゆっくり開いて見ると、眼前に広がっていたのは真っ青‥‥‥とはいかない曇り空。どうやら屋外で眠っていたようです。寝起きだった事もあって自分に起きた事態をすぐには思い出せず、目だけ動かして辺りを見回しました。

 

周りには木々が生えていて、林の中である事が窺えます。寝かされているのは柔らかい芝生の上。ますます混乱しましたが、取りあえず起きてみようと上体を起こそうとすると、同時に身体のあちこちに痛みが走ります。

 

「うっ‥‥‥くっ」

 

着ている制服はボロボロ。身体の特に痛む箇所には、何か‥‥‥恐らく衣類‥‥‥を破って巻いたであろう応急の包帯代わりの朱色の布に血が滲んでいる。それから、何処かで見たような‥‥‥そう、何かの巻物を破った様な‥‥‥あれ?これもしかして龍驤さんの飛行甲板?どうしてこんな物まで包帯代わりに!?

何があったか思い出さなくては。ええと確か‥‥‥。

 

そうよ、確かキリバスからの救援を受けて。ショートランド泊地から出撃して。キリバス侵攻中だった深海棲艦の艦隊と交戦して。キリバスの人達を船で脱出させて、その船を護衛し‥‥‥。

 

「‥‥‥起きたか。あ、喋らんでええ。体力は温存しとかんとな」

 

頭上から聞こえてきたのは、その龍驤さんの声。手に持っているものは恐らく、艤装の破損した一部?

 

「りゅ‥‥‥う‥‥‥じょ‥‥‥」

 

「喋らんでええ、言うたやろ。無理したらアカンで」

 

駄目です、喋るのも辛い。キリバスの人達は無事脱出できたのでしょうか。私達が腑甲斐無いばっかりに。

 

「起きた事はしゃーない。今は己の身体の事だけ考えといたらええ」

 

そう言うと、龍驤さんは艤装の破片に汲んできた水を飲ませてくれました。今まで介抱してくれたのは龍驤さんのようです。上着は包帯代わりにしたせいで着ておらず、艤装も今は持ってはいないようですね。と言っても飛行甲板は私の身体に巻いてあるからですが。

 

「あぁ、ソレな。ウチの服だけじゃ足りひんかったんよ。堪忍な」

 

苦笑いしている龍驤さんの話に依ると、此処はキリバスからそう遠くない無人の孤島。龍驤さん達は重傷で意識の無かった私を抱え、どうにかこの島迄辿り着いたらしいです。龍驤さんの艦載機はその間追手だった深海棲艦達と交戦した時に全滅。唯一残っていた彩雲に救援を託して発艦したそうです。その時に彩雲からの最後の通信でこの孤島が深海棲艦の大群に囲まれている事も‥‥‥。ならどうして奴等は私達を襲ってこないのでしょうか?最早戦う力も満足に残っていない袋の鼠だというのに。

 

と。芝生が擦れるような音。誰かの足音が聞こえました。その音がする方向へ視線を向けてみると、見慣れた陽炎型のブレザーベストにポニーテールの金髪、碧眼の親友の姿。

 

「龍驤さん、使えそうな枝拾って来‥‥‥のわっち!目覚めたんだね!」

 

集めてきたであろう木々の枝をその場で落とし、涙ぐんで抱き着いてきた舞風。心配をかけたようね。けど今は抱き着かれると身体のアチコチが軋む‥‥‥。

 

「ド阿呆。何処に重傷者を締め上げるヤツがおんねん」

 

龍驤さんのツッコミでハッとして私から離れた舞風。良かった、舞風は無事だったようです。あの時身体を張って庇った甲斐があったわ。

 

改めまして。

陽炎型駆逐艦十五番艦、野分です。

どうやら私は丸3日程眠っていたらしいです。キリバス攻略隊の本隊から切り離されこの孤島に辿り着いたのは龍驤さん、私こと野分。それと舞風と白露の四人。彩雲が無事ショートランド泊地に戻る事ができていれば、きっと救援が来てくれる。今はそれを信じて生き延びるしかありません。幸いと言うべきか、湧き水がこの近くで湧いている為飲み水には苦労しません。後は食糧さえ確保できれば。‥‥‥入渠施設も補給施設も資源も無い為に怪我や艤装はどうにもなりませんけれど。

 

そうしているうちに白露も戻ってきました。スカートの前側を両手で掴んで広げて、それを籠代わりにして木の実を乗せて。

 

「目、覚ましたんだね。野分、大丈夫?」

 

私は白露にコクリ、と小さく頷いて応えました。それから‥‥‥白露は舞風を睨みつけました。

 

「舞風が!あんなドジしなければ野分だってこんな酷い怪我しなくて済んだんだよ!此処じゃ入渠なんて出来ないのに!」

 

舞風も。負けじと白露を睨み返して。

 

「白露だって!いっつも『白露型がイッチバーン』なんて言ってる癖に!確かに夕立や時雨、春雨は凄いけど!白露自身はダメダメじゃん!何がイッチバーンよ!あーあ、もしも白露が夕立だったらこんな事にはなってないんだろうなぁ!」

 

どうやら私が眠っている間にも何度かやり合っているらしいです。切っ掛けは、ほんの些細な事らしいです。今はそんな言い合いをしている場合じゃないのに。

 

「じゃかぁしいっ!怪我人の前やぞ!そんな体力あるならまた食糧でも探してこいやっ!」

 

龍驤さんのその一喝で、舞風も白露も押し黙って立ち上がり、食糧を探しに行ってしまいました。不味いですね。二人ともこの環境のせいで気が立っているのでしょう。せめてこの野分の身体が言うことを聞いてくれれば。

 

 

 

‥‥‥私達は、本当に助けて貰えるのでしょうか。私達はたった四人。それに引き換え周りを囲んでいる深海棲艦は多数。私達四人を見捨てた方が被害は大幅に少なくて済むのではないでしょうか。

不安が表情に出ていたのでしょうね。龍驤さんは芝生に座ったままで私から視線を外して空を見上げ、私に言い聞かせるように囁きました。

 

「昔の旧大本営なら兎も角。沖立も山本もウチらを見捨てたりせぇへん。必ず救援は来る」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「キリバスの人達の処遇は?」

 

「はい、提督。周辺各国が受入れを表明していますので、今のところは大丈夫かと。それから、これが例の報告書です」

 

神通です。

ショートランドの衣笠さんの話通りなら、かなり厄介な事になっているようです。ここは慎重に動かなくてなりません。中枢棲姫やレ級の張った罠である可能性も充分にありますから。

私が今、沖立提督に渡した報告書ですか?嘗て阿武隈さん達がキス島に突入した時の作戦『ケ号作戦』の報告書です。はい。察しの通り、当時の突入作戦のような少数精鋭での救助を想定しているようです。というのも、状況がキス島の時に似通っているからです。詳しい事は私からは話せませんが。

 

「神通さん、暫く留守をお願いします。私はショートランドに」

 

詳細な状況を得る為に提督はどうやら何人かを連れてショートランドへ行くようです。そうですね。辿り着いた彩雲に依れば野分さんが重傷の大破らしいですし、余り猶予は無いでしょうから。ですが。

 

「提督、無理だけはしないようお願いします」

 

「分かってるわ、大丈夫」

 

 

 

 




のわっち、遭難す。
本日のゲストは野分さん。ケ号作戦発令‥‥‥?

次回は多分遅くなります。年末に向けて仕事がorz




※※以下ネタです※※

◆◆神風さんの受難◆◆

漣「う~む」

神風「何を悩んでるの?スリガオ海峡への突入作戦に不備があったとか?」

漣「いや、そうじゃなくて演習のメンバーをどうしようかと」

神風「あ、そっか。大規模作戦中でも鎮守府同士の演習はあるものね」

漣「で、これがご主人様に渡されたメンバー候補」つ[提督のメモ]



旗艦:照月(レッド)
親潮(ブラック)
秋雲(ブルー)
萩風(パープル)
春雨(ピンク)



神風「えっと、この名前の隣に書いてある色はなんなの?」

漣「え?むしろ何で分からない?」

神風「春雨と萩風だけなら髪の色とかかも知れないけど、照月は赤い髪じゃないし‥‥‥うーん‥‥‥って何でメンバーが5人編成?」

漣「ご主人様が『普通の艦隊じゃつまらないから駆逐艦の戦隊ものにしよう!』って言ってたからなのだ」

神風「あ、だからレッドとか書いてあるのね。でもなんでこの配色なの?」

漣「あれっ?まだ分からねぇ?」

神風「分からないわよ」

漣「因みに照月はレッドだから主役枠、親潮は真面目枠、秋雲はネタ要員枠、萩風は健康志向の料理できる枠、春雨は気弱系守られ枠、と役割分担もバッチリです!」

神風「だから、どうしてその配色?」

漣「あ、それから秋雲は水玉だから正確には純粋な青って訳じゃないけどね。青なら睦月って手もあるんだけど色モノ枠は必要っしょ?」

神風「水玉ってなんの‥‥‥神風型みたいに服の色って訳では無さそうだし‥‥‥睦月も青、照月が赤、親潮が黒、萩風が紫で春雨がピンク‥‥‥あっ‥‥‥///」←分かった

漣「ピンクはボノと迷ったんだけどね。ボノは志摩艦隊でレイテ行ってるから除外」

神風「司令官ったら、もうっ!ちょっとお説教してくるわ!」///

―――――

神風のお説教タイムの間、その頃の西村艦隊の様子をご覧ください。

最上「よしっ、スリガオ海峡突入するよ!」

扶桑「みんな、行きましょう!」

時雨「通してっ!」

満潮「もらうわよっ!」

山雲「あらぁ~」

朝雲「このっ、ウザいのが次から次へと‥‥‥」

山城「‥‥‥‥‥邪魔だっ、どけぇぇぇぇぇえッ!!」

―――――

神風「ただいま。おっ、お説教してきたわ」///

漣(あ、懐柔されてきたな、コレは)

神風「もうっ、大規模作戦でみんなが頑張ってる時なのに司令官ったら」///

漣「で?今回は何してもらったの?まあ時期が時期だしナデナデくらい?それともデートの約束してもらったとか?」

青葉|д=)●REC

神風「逢い引きなんて約束してません!頭を撫でてもらったくらいで‥‥‥あっ」

漣「ほうほう、それでそれで?」

青葉|д=)●REC

神風「べっ、別に何も‥‥‥って青葉さん!?」

青葉「チッ、バレましたか。仕方ありませんね、今回は新たに着任したしおんさんと対馬さんの所へインタビューにでも行っておきますか」ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

神風「もうっ!」




2017秋イベント終わった方、お疲れ様でした。今回はE4ギミックが面倒な事この上なかったです。とはいえ史実の帝国海軍の動きを再現する上ではあのマップも仕方無かったという事ですね。クリア後の西村艦隊の演出等楽しませてもらったイベントでした。運営の力の入れ様が伝わってきましたね‥‥‥。いやー、深海不幸姉妹は強かった。最後は昼戦で山城が撃破してくれました。今回の山城、台詞もあってか主人公感がありましたね。それに比べて埋護姫は大した事無かっ‥‥‥ゲフンゲフン。
勿論、提督の皆様は史実通りの西村艦隊で突入したんですよね?『戦艦6、潜水艦1』とかの脳筋編成で突破したりしてませんよね?

‥‥‥だから夜戦連戦は止めろとあれほど言ったのに。ボスまでの道中で8戦な上、ボス戦含めて夜戦5連戦とか‥‥‥提督連中が『レイテレイテ』言ってるから‥‥‥。今回は警戒陣様々でした。警戒陣なのに上から二番目に配置した時雨が出撃の度に道中で被弾、ほぼ必ず中破か大破でのボス戦でした‥‥‥警戒陣の筈なのにどういう事なんですかねぇ?

次回メンテナンスで多摩改二がほぼ確定。球磨型提督の皆様おめでとうございます。え?ウチの多摩ですか?まだレベル60ですが何か?



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