抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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作戦開始

 

『このまま何事も無く辿り着ければいいんだけど‥‥‥』

 

阿賀野さんの不安そうな通信が聴こえる。『なるようにしかなりません。見付かった場合はまたその時です』ってそれに応える不知火先輩の声も。

 

『イマイチ信用できないっぴょん』って卯月ちゃんの不審感の隠った声に『卯月‥‥‥そんな事言っちゃ駄目』って淡々とした弥生ちゃんの声。

勿論、卯月ちゃんが『信用できない』って言ってるのは、私に対しての事。

 

「気にしちゃ駄目よ?大丈夫、貴女のその『目』は本物なんだから」

 

私の事を気遣って声をかけてくれたのは、すぐ右を並走してくれてる陽炎。それから『そうそう。イチイチ気にしないのが一番じゃん?』って言ってくれた、提督と一緒にショートランド泊地に付いて来たエメラルドグリーンの髪の妖精さん。

 

陣形は輪形陣。本来なら旗艦の阿賀野さんを中心にする所だけど、今真ん中に居るのは私。私が‥‥‥ううん、私の力が作戦の要だからっていう理由なんだけど‥‥‥。

 

風雲よ。

阿賀野さんを旗艦とした私達の艦隊は今、例の四人が取り残されている孤島へと向かってる所。時刻はフタサンマルマル。昼間の行動は目立つし向こうには空母も居るから危険、って出撃に選ばれたのは深夜のこの時間。もしも戦闘になっても夜戦なら私達駆逐艦にも可能性があるから、っていうのも理由の1つ。

 

鈴谷さんや衣笠さん達は不参加。どうしてかっていうと、この海域の潮の流れ方に問題があるみたいで。

あの孤島周辺は、昼間は沖から島の方へ、夜間は島から沖の方へと潮の流れが変化するらしくて。夜に孤島から沖へ出る分には問題無いけど、海側から孤島へと進入する場合、流れに大きく押し返される事になる。それで、重巡洋艦以上の艦艇だとバルジの関係で思うように前進出来ない。だから、軽巡洋艦と駆逐艦のみで突入する事になって。

阿賀野さんは旗艦での参加が確定してて。不知火先輩、卯月ちゃんが最初にメンバーに立候補して。卯月ちゃんが行くならって弥生ちゃんも立候補。後のメンバーは名取さんと天龍さんかな、って思ってたんだけど、提督は私を指名した。

阿賀野さんと不知火先輩は「危険ですっ!」って止めてくれたんだけど、提督の意志は変わらなくて。

 

提督は『この作戦に風雲ちゃんは欠かせない』って、私の視野、視力の事なんかをみんなに説明してた。

‥‥‥どうして?だって、提督だって知ってる筈。私の『目』は提督のリボン型電探の力の筈なのに。『風雲ちゃんが居ないとこの作戦は成り立たない』なんて断言して。輸送作戦なら未だしも。みんなの生死に関わる重要なポジション‥‥‥私、そんな重大な責任負えないよ‥‥‥それに。まだ死にたくない‥‥‥。

 

提督の決定に異議を唱える勇気も無くって。項垂れるように聞きながらそれを受け入れるしか無かった。陽炎が「私も行くからね。大丈夫よ、風雲の事は命に代えても私が守るわ」って言ってくれた。私のせいで。私のせいでまだ新人の陽炎まで危険な目に遇わせちゃう。私の視界の端に、不知火先輩がギロリとこっちを睨むのも見えた。きっと不知火先輩も、まだ新米で足手纏いの私に命を託すのが不満なんだよね。怖くて顔をあげられなかったなぁ。

 

そんな様子だったから、卯月ちゃんが私を信用出来ないのも当然。弥生ちゃんはイマイチ何を考えてるのか分からないし、阿賀野さんは緊張してるのかずっと険しい表情だし、不知火先輩はそれからずっと不機嫌だし。陽炎が居なかったら私、きっとその場から逃げ出してたと思う。

 

「自信持ちなさいよ、ねっ?」って励ましてくれる陽炎に心から感謝、同時に申し訳ない気持ちを持ちながら、私達はショートランド泊地を出発。敵の索敵網にかからないギリギリの所まで来た所で、提督達は待機。抜錨直前に「大変だと思うけどがんばりなよ」って励ましてくれた鈴谷さんの言葉が本当に有難かったわ。

 

 

 

 

『もうすぐ例の潮流の海域に入るよ!』

 

っと。そうだ。今は索敵に集中しなきゃ。うわっ、急に速度が出せなくなった。流れに逆らって孤島に向かうのは、思ってたよりも時間が掛かるかも知れない。確かにこの潮流じゃ、重巡洋艦では前進できないかも。

 

『駄目っぴょん。本当に電探が役に立たないぴょん』

 

あ。そうなんだ。卯月ちゃん、念の為に電探を持ってきたんだよね。卯月ちゃんだって前回の対深海棲艦戦争の時から戦ってる猛者なんだもん。私みたいな駄目な新人なんて、幾ら提督が説得しても信用出来ないよね。

 

あれ?今、前方に微かに何か見えたような?えっと‥‥‥‥‥‥敵の水雷戦隊だ‥‥‥幸い、まだこっちには気付いてないみたい。阿賀野さんに知らせなきゃ。

 

「風雲です。阿賀野さん、0―1―2に敵水雷戦隊が見えます。こっちにはまだ気付いてないみた‥‥‥あっ、0―3―5にも見えます」

 

右舷の先の方にも深海棲艦の艦隊が居るみたい。『えっ!?本当に?分かった、大廻りになっちゃうけど迂回しよう!みんな付いてきてね』って応えてくれた阿賀野さん、向きを左舷の方へ変えて進み始めた。

 

良かった。この提督のリボン型電探が有れば、会敵せずに孤島に辿り着くのも不可能じゃないかも。それにしてもこのリボン型電探、本当に凄いな。ちゃんと妖精さんの技術で作った卯月ちゃんの電探ですら役に立たなくなってるのに、あの夜間演習の時と変わらなく海を見渡せる。流石は『夕立』の装備ね。少しだけど希望が見えてきた。島にさえ辿り着ければ、後はこの潮の流れに乗って沖へと脱出するだけだし。

 

阿賀野さんは時々羅針盤を出して、羅針盤妖精さんがそれを回して。今日は生憎の曇空だし、孤島へと辿り着く為にはこの妖精さんの技術の結晶、羅針盤を回すしかない。このまま無事に辿り着けるかな‥‥‥?

 

 

 

 

 

けれど。そうそう上手くいく筈もなかった。そもそも、この包囲網自体罠なのは明白。だから、私がもっと警戒しなきゃいけなかったのに。そんな余裕なんて無い私には、視界の前方に気を配るので精一杯。後方になんて意識を割く事はそうそう出来るものじゃ無かった。

 

その、私達の艦隊の遥か後方。私以外のみんなの索敵の範囲外で着かず離れず着いてきていた影が2つあった。1つは、多分この敵包囲網の副官の立ち位置であろう戦艦タ級。その身体はほんのりと赤く光ってて‥‥‥eliteだった。

 

『イイノカ?コノママ行カセレバ島ニ辿リ着クノハ時間ノ問題ダゾ?』

 

タ級のその問いに、その隣を走る、タ級より幾分背の低い深海棲艦‥‥‥多分この包囲網の旗艦‥‥‥はこう答えたの。

 

『イイノ。ココデヤッテモ逃ゲラレルカモ知レナイジャナイ?ケド、負傷者ヲ抱エテイタラソウハイカナイ。交戦セザルヲ得ナイ。野分達ハソノ為ノ『エサ』ヨ』

 

旗艦の、心の底から不快になるような笑みを含んだ答えに、タ級が『チッ』って舌打ち。

 

『面倒ダカラ此処デ殺ッチマエバイイノニ。フンッ、ソレモアノ『クソチビ』の入レ知恵カ?アノ『クソチビ』、最古参ダカ何ダカ知ラナイケド気二入ラン』

 

『ソウカシラ?私ハアノ子ハ嫌イジャナイケド?』って首を傾げたその旗艦‥‥‥『水鬼』は、先を行く私達の方角を見ながら舌舐りして笑ったの。そして‥‥‥小さく呟いた。

 

『待ッテナサイ。スグニ楽ニシテアゲルワ。ソウナレバ貴女ハ絶対ニ逃ゲナイ。ネッ?ソウヨネ、不知火?』

 

 

 

本当に‥‥‥後ろももっと警戒しておけば良かったって後悔してるわ。本当に駄目だよね、私って。

 

 

 




という訳で、撤退作戦開始。同時にフラグ回収しときました。敵旗艦の正体は誰なのかなぁ(棒)

因みにタ級の言う『クソチビ』とは無論、レ級さんの事です。



ポール氏「レイテで西村艦隊(以下略)見つけた」

東京のNPO「比叡見つけました、レイテ関係なくてすいません」

呉市「磯風見っけ!」

うーん、最近のリアル掘りが凄い(小並感)。ポール氏のレイテ掘りも凄いタイミングでしたが、磯風もまた絶妙なタイミングで見つかりましたね‥‥‥ん?磯風見付かったって事は陽炎型初の改二は磯風かな?

限定グラが増える度に見た目が成長していく潮さん。登場当時はどう見てもJSだったのに最新のバレンタイングラでは‥‥‥二十歳前後の幼妻にしか見えないです。そこはかとなくエロい‥‥‥。

今年も三⚫️コラボ始まったようですね。コラボ商品があっという間に完売していく‥‥‥。
そんな中、最速で完売したコラボ商品はスカートのようです‥‥‥スカート?えぇ(困惑)


※以下ネタです※

◆◆神風さんの受難◆◆

神風「司令官、資源の備蓄は大丈夫?もうすぐ大規模作戦なんだから大型建造は控えてね?」

神風「えっ?節分‥‥‥?そうね、神風型の鬼は私がやるわ。だって私がネームシップだもの」

神風「へっ?豆撒き以外にもあるの?恵方巻き‥‥‥?なにそれ、初めて聞いたわ」
(※恵方巻は大阪でも1980年代まで知名度は低かった、駆逐艦神風が現役だった当時は関東は元より関西でも風習無し)

神風「この海苔巻きを食べるの?じゃあ私が切り分けてあげるわね。‥‥‥えっ、切らずに一人でこれを一気に食べるの!?黙々と?無っ、無理よ!私、食は細い方だし‥‥‥」

神風「分かった、分かったから。食べればいいのよね?え?南南東を向いて食べるの?ふぅん、変わった行事なのね」

神風(これが恵方巻き‥‥‥太い‥‥‥)モグモグ

神風「んっ‥‥‥んっ‥‥‥」モグモグ

―――
その頃の第三会議室

『改二が来ない駆逐艦長女の会』



夕雲「村雨さんの改二おめでとう、白露さん‥‥‥はぁ‥‥‥」

白露「そっちこそ長波ちゃんの改二おめでとう‥‥‥溜め息つきたいのは白露だよぉ‥‥‥また妹が先に改二‥‥‥しかもまたステータス高いし‥‥‥司令部施設も乗るとか‥‥‥もう気軽に『いっちばーん!』なんて言えないよぉ」

島風「別にそんなのどうでもいーよ、それより駆けっこしに行ってもいい?」

陽炎「島風はほんっとマイペースよねぇ」

秋月「まあまあ島風さん、多分もうすぐ終わりますから」

夕雲「秋月さんはいいわよね、固有対空カットインがあるし、対空含めて元々ステータスも高いし」

白露「そうだよ、私なんて限定グラのせいで秋イベは『呑気に芋を食べながらレイテ行く艦娘』ってイメージになっちゃったし。『妹の時雨が悲壮感と決意を胸に出撃してるのに、長女ときたら‥‥‥』なんて話まであったみたいで‥‥‥本当は違うのに」グスン

秋月「あっ、いえ、私はそんなつもりは‥‥‥」

夕雲「分かってるわよ。ちょっと羨ましかっただけ。別に嫌ってる訳じゃないから」

秋月「何だかすみません」←lv77

陽炎「そうね、秋月型はみんな優秀だものね。来たばかりの凉月もそれなりに使ってもらえてるみたいだしね。それに比べて私なんて‥‥‥何故か『天然ジゴロ』だの『たらし』だの言われてるし‥‥‥」ハァ ←『陽抜』のせいです

陽炎←lv53
夕雲←lv40
白露←lv47

島風「ねぇ、私居なくてもへーきだよね?駆けっこ行ってもいい?」←lv92

白露「はぁ‥‥‥私達なんて実力は平凡だし‥‥‥限定グラが多いのがせめてもの救いだよぉ」ハァ

夕雲「そうねぇ‥‥‥これで限定グラも来てなかったら悲惨だったわよねぇ‥‥‥」ハァ

陽炎「そうよね、限定グラも来てな‥‥‥(あれ?私限定グラすら来てない‥‥‥?)」ボウゼン

島風「ねえってばー!私居なくてもへーきだよね??」

陽炎「改二はおろか限定グラすら‥‥‥」ボウゼン




―――

神風「んっ‥‥‥んっ‥‥‥」モグモグ

神風「‥‥‥あの、司令官?じっと見られると恥ずかしいんだけど」モグモグ

神風「それに何だか目つきがいやらしいって言うか‥‥‥これって本当にある行事なの?」

神風「‥‥‥えっ!?遊女遊びが由来?海苔巻きをアッ、アレに見立てて咥えさせる?‥‥‥‥‥‥っ、司令官の馬鹿ぁ!!」///
(※諸説あります)



鹿島 扉|д゚)ウラヤマシイデス!


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