抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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真実

 

 

『サヨナラ、無能ナ ネームシップサン?』

 

これは流石に逃げられないわ。私の身体は辛うじて右の掌が動かせる程度だもの。左足は吹き飛ばされてるし、右足は負傷して満足に動かせないし。もし万が一この砲を避ける事が出来ても動けないんじゃどのみち轟沈は避けられない。

 

陽炎よ。

参ったわね。打つ手が見付からない。

逃げられないし反撃も出来ない。かといって奥の手がある訳でもない。頼みの不知火も大破して助けに来れそうにない。完全に詰みね。これじゃ折角贔屓にしてくれた川内教官に合わせる顔が無いわ。

 

でも私がやられる間ならタ級の注意もこっちに向くかも知れないし、不知火1人なら何とかできるかも知れないわよね。無様でも何でもいい。私は出来る限りタ級の注意まで引くようなやられ方ができればいいんだけど‥‥‥。

 

そう思ってチラッと不知火の方へ視線を向けた。‥‥‥あれ?タ級の姿が無い‥‥‥?何処かに移動したの?いやいや、不知火を前にして目を離すような真似なんてするかしら?あれ?何だか不知火が驚いたような表情してる?

‥‥‥あ、そうよね。もうすぐ私が沈むんだもの。不知火だってあんな表情するわよね。タ級もきっと油断して私が無様にやられる様子が良く見える位置に移動したとかよね?

 

死ぬ間際って時間の流れをゆっくりに感じるらしいけど、今が当にそうね。水鬼に砲を向けられて、不知火の方を気にして、また水鬼に視線を戻す。時間にしたらほんの数秒間だけど、私にとっては長い間に感じられた。

ハァ‥‥‥死ぬのってどんななのかしら。やっぱり凄く痛い?それとも脳内麻薬の過剰分泌のお陰でそうでもないのかしら?でも海の底に沈んでいくのはきっと苦しいわよね。

 

駆逐水鬼の砲が光って。嗚呼、此処までか、って思った時だった。一瞬だけど私と水鬼の間に何かが割って入った、ように見えたわ。その直後、水鬼の主砲が放たれて‥‥‥私の意識は途切れた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

‥‥‥あ。また夢を見てるみたい。今度は海上か。夢の中の私は息も絶え絶え。艤装も大破してるみたい。

 

『愛宕もやられたか‥‥‥化け物め』

 

そう悔しそうに遠くを睨む艦娘。艤装は大破してるし傷だらけだけど‥‥‥大和型‥‥‥?褐色の肌に眼鏡に、筋肉質の身体‥‥‥あ、この人確か武蔵さん、よね?

 

『川内さん、大鳳さんを連れて早く遠くへ』って私が口にして振り向いた視線の先には中破の川内教官が、ピクリとも動かない一目で重体と分かる大鳳さんを抱えた姿があった。

 

『駄目だよ!せめてこの四人だけでも生きて帰らなきゃ!』

 

初めて見る、逼迫した表情の川内教官。何よこれ、一体どういう状況なの?

 

『良いから先に行って。大鳳さんを抱えてるんだし、アイツに追い付かれでもしたら事よ?』

 

『陽炎の言う通りだ。心配するな。私達も必ず追い付く。だから川内、行け』

 

私と武蔵さんの言葉のあと少し悩んだ川内教官、『ちくしょうっ』って吐き捨てたあと背を向け走り始めた。

 

残ったのは私と武蔵さん。それにしても大和型の武蔵さんや川内教官を擁して歯が立たないなんて、相手は一体どんな艦隊なのかしら?

 

『お前も行け、陽炎』

 

『冗談でしょ?行くのは武蔵さんのほうよ?』

 

私と武蔵さん、全く同じ事考えてたみたい。つまりは自分が殿を務めて残った味方を逃がす、って訳ね。

 

『私じゃ、いざって時に川内さんを守り切れない。それに‥‥‥武蔵さんが深海棲艦になるより私がなった方がマシでしょ?』

 

『‥‥‥何故それを?』って聞いてきた武蔵さんに『曙を無理矢理吐かせたわ』って答える私。あ、どうやらこれさっきの夢の続きみたいね。

 

表情はそのままに『私を恨まないのか?』って武蔵さん。私は『恨む?なんで?』って応えて、微かに口元を緩めた。

 

『黙ってたのだって、大方『他の艦娘を大本営から守る為』とかでしょ?曙の事だって、本当は武蔵さん達が必死に大本営の目から守ってきた‥‥‥違う?』

 

そっか。さっきの夢の中での曙秘書艦の話だと、武蔵さん達が黒幕の大本営とつるんでるって話だったけど。真相は逆だったって訳ね。曙秘書艦の動向が大本営にバレないように匿ってくれてたって訳か。

 

『そんな崇高なものではないさ』って不敵に笑う武蔵さん。それから敵が居るであろう方向を見据えて『成る程。陽炎の言い分も一理あるな』って。

 

『でしょ?川内さんが深海棲艦になったら‥‥‥とんでもない化け物が生まれる未来しか見えないわ』

 

『本当に良いんだな?』って言葉に『ええ。任せて』って応えた私。武蔵さんは『‥‥‥すまない』って言葉を残して川内教官の後を追っていった。

 

『さてっ、と』って洩らしてボロボロの艤装と身体に鞭を打つ私‥‥‥ううん、本能的に理解した。私じゃない、これは先代陽炎の記憶か。先代陽炎の最後の記憶。

成る程ね。川内教官が私や萩風に拘った理由が分かった気がするわ。全部、先代陽炎や先代萩風を救えなかった川内教官自身の後悔から来るものだったのね。

 

辛うじて使えそうな12.7㎝連装砲B型改二を構えて、先代陽炎は前を向き走り出す。勿論、玉砕覚悟でね。

 

唐突に空を見上げて、先代陽炎が独りごちる。

 

『はぁ‥‥‥ごめんね、不知火。先に沈まないって約束、破っちゃったわね』

 

‥‥‥。まさか、まさか不知火は‥‥‥。だとしたら私、知らなかったとは言え不知火の傷口に塩を塗り込んでたって事に‥‥‥。

 

『夕立‥‥‥不知火の事、お願い。不知火はアンタの事大好きみたいだから』

 

なんか今とんでもない事実を知ったような‥‥‥。不知火があの化け物駆逐艦夕立を、ねぇ。

あ、停止したみたい。微かにだけど、視線の先に敵の姿が見える。敵は‥‥‥えっ!?たった一人!?戦艦水鬼‥‥‥よね?あれは。でも何だか風貌がちょっと違うような?イレギュラーかしら?

 

『私は逃げも隠れもしないわ。陽炎型ネームシップ最後の意地、見せてやるんだから!さあ来なさい戦艦水鬼‥‥‥ううん、⚫️⚫️さん!』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

‥‥‥今の夢は‥‥‥?

身体中が痛む‥‥‥全身の骨が軋む‥‥‥。あれ?どうして私、生きてるの?確か水鬼の主砲を正面から受け‥‥‥うん?そういえば何かが私の前を横切ったような‥‥‥?

 

混乱してる私の方を見て、今もなお健在な駆逐水鬼が突然笑いだした。え?一体何が起こったっていうのよ?

 

『アハハハハッ、アンタ ノ方カラ ヤラレニ来テクレルナンテネ!飛ンデ火ニ入ル夏ノ虫‥‥‥相変ワラズ馬鹿ネ!』

 

水鬼の言葉で気が付いたわ。私を庇うように誰かが覆い被さってる。その人は艤装も大破だし身体中傷だらけでボロボロになってるみたいだし‥‥‥良かった、どうにかまだ生きてるみたい。気を失ってるみたいね。そっか、この人が私の代わりに砲を受けたから轟沈を免れたのか‥‥‥って!?この人、司令じゃないのよ!なんで此処に居るのよ!?いやいや、どうやって此処まで来たのよ!?風雲達が向こうに合流してから私達を助けに来たんじゃ間に合わない筈でしょ!

 

え‥‥‥?司令の魚雷発射管、空っぽ‥‥‥連装砲も残弾ゼロみたい‥‥‥まさか‥‥‥まさかとは思うけど、あの包囲網を力ずくで抜けてきたって事なの?冗談よね!?

 

『サテ、ト。ジャア陽炎モロトモ沈ンデ貰イマショウカ。マサカ一番厄介ナアンタヲ此処デ潰セルナンテネ。ラッキーダッタワ』

 

‥‥‥水鬼の主砲が改めて此方に向いた。起きて!お願い起きてよ司令!このままじゃ二人ともやられる!

 

‥‥‥えっ!?向こうの不知火が泣いてる!?私がやられそうになっても動揺はしたけど泣かなかった‥‥‥じゃなくて、あの不知火が!?

 

「やめて‥‥‥やめてください‥‥‥やめて‥‥‥」って涙で震える声でその場にへたり込んでる不知火。その不知火を悪魔のような笑みで見ながら砲を構える水鬼は『夕立ト陽炎、アンタノ大事ナ二人ガ沈ンダ後ノ表情ガ楽シミネ。不知火ハドンナ絶望ヲ見セテクレルノカシラ?』って言って高笑い。

えっ?水鬼は今『夕立』って言ってなかった?まさか司令って、あの化け物駆逐艦だったの!?

 

 

 

『ジャアネ』って笑って、水鬼は砲を私達に‥‥‥。今度こそ万事休す、って思った瞬間。司令の右目が開いた。『偶々』その顔の目の前にあった司令の右手の人指し指がその唇に縦に添えられて。え?何?『黙ってろ』って事?何を?‥‥‥私は混乱する事しかできなかった。

 

 

 




陽炎、不知火の負った心の傷に気付く&司令が夕立だと知る。

ポイポイさん現場に辿り着くも一見大ピンチですが‥‥‥?

主役は遅れて登場してオイシイ所をもっていく、とは誰かが言ったものです。という所でまた次回。



※※以下ネタです※※

◆◆神風さんの受難◆◆


神風「報告ありがとう。出撃お疲れ様」

夕立「ぽい~!」

夕張「あ、夕立。例の物だけど」

夕立「!!」

神風「何かあったの?」

夕立「うん!ちょっと夕張さんに頼み事してたっぽい。やっと届いたんだ!」

夕張「はい、これ。例のデジタルリマスター版よ」

夕立「やった!夕張さん大好きっぽい!ありがとう!」

夕張「どういたしまして」

夕立「さっそく島風ちゃんと天津風ちゃん誘ってくるっぽい!」

夕張「OVAは逃げないわよ?先ずは入渠してきたら?」

夕立「はーい!」トテテテ

夕張「走って行ったわね」

神風「えっと‥‥‥でじたる‥‥‥何?」

夕張「え?‥‥‥ああ、デジタルリマスターよ。RX-78-2ガン⚫️ムって知らない?」

神風「が⚫️‥‥‥だ‥‥‥む‥‥‥?」

夕張「あ、そこからか。えっと、ちょっと待って‥‥‥(スマホで画像検索中)‥‥‥ほら、これよ」

神風「あぁ、ろぼっと漫画?って、あれ?このろぼっとの配色って何処かで見たような‥‥‥?」

夕張「島風の制服でしょ?」

神風「‥‥‥ホントだ!?」

夕張「ちなみにだけど‥‥‥(画像検索中)‥‥‥ほら、これはそのRX--78
-2ガンダ⚫️のプロトタイプ。まぁ試作機ね」

神風「あれ?この配色も何処かで‥‥‥あっ!天津風!?」

夕張「当たり!」

神風「え?もしかしてあの二人の制服ってその⚫️んだむ、を意識してるの?」

夕張「多分ね。二人とも好きなんじゃない?」

神風「‥‥‥あれ?じゃあ夕立はなんで?」

夕張「駆逐艦夕立が史実で『ソロモンの悪夢』なんて呼ばれた事なんて無いでしょ?」

神風「えっ?まさかそれも?」

夕張「そうそう。そのガンダ⚫️シリーズの『ガトー』ってパイロットの異名よ?ガ⚫️ダム0083の第9話のタイトルがそのまま『ソロモンの悪夢』だし」

神風「知らなかった‥‥‥」



睦月 ||д=)

睦月「夕立ちゃん楽しそうだなぁ‥‥‥睦月もやってみようかなぁ」

睦月「主魚電カットイン!『スクワ⚫️タトーレ!』」キリッ

睦月「‥‥‥いやいやいや流石に無いにゃしぃ///」



如月 ||д゚) (妄想で恥ずかしがる睦月ちゃんも有りね)

――――――

空母寮、レストルーム

瑞鳳「ニュース!ニュースだよ!」

翔鶴「どうしました?そんなに焦って」

瑞鳳「どうしました?じゃないの!提督がケッコンカッコカリの指輪を買ったって!」

加賀・瑞鶴・千代田・千歳・飛龍・蒼龍・大鳳 ピクッ

翔鶴「‥‥‥金剛さんの分、ですよね?」

瑞鳳「それがね!二個用意したんだって!金剛さんの分ともう1つ!次は絶対空母用だよね!?」

加賀 ガタッ
瑞鶴 ガタッ
千歳 ガタッ
千代田 ガタッ
飛龍 ガタッ

加賀「流石に気分が高揚します」

千歳「まだ加賀さんって決まった訳じゃありませんよ?私かも知れませんし」

千代田「駄目よ!千歳お姉は私が守るわ!」

翔鶴「出来たら私だったら‥‥‥ううん、無理よね‥‥‥」ズーン

瑞鶴「落ち着くのよ瑞鶴‥‥‥まだ私と決まった訳じゃない、私と決まった訳じゃない‥‥‥」ブツブツ

葛城「私は瑞鶴先輩を愛してます!」クワッ

大鳳「クッ‥‥‥新参の私じゃまだ練度が‥‥‥」

飛龍「まあ提督が相手なら悪くは無いわよね、多聞丸の次くらいには。ケッコンすれば更に強くなれるんだし」

瑞鳳「提督とケッコン‥‥‥エヘヘ‥‥‥」



蒼龍(どうしよう‥‥‥ここで『ケッコン決まったのは翔鶴』って言ったら揉めそうだなぁ‥‥‥) ←提督から聞いてるので知ってる



龍驤「今帰ったでー?ってなんやこの空気は!?」

サラトガ「何と言うか」

イントレピッド「シュラバ、という場面ですね」

ガンビア「皆さん怖いです‥‥‥」

赤城 モグモグ(蒼龍さん、私がみんなを説得してみますので)

蒼龍(赤城さん、私の脳内に直接‥‥‥!?)


よみずいランド大盛況のようですね。航空戦艦日向建造も間に合ったようですし。仕事が無ければ見に行きたいところですけど‥‥‥。因みに今回のすりおろしはチーズだった模様。

浦風?に丁改実装でほぼ確定。春はミニイベのようです。資源回復間に合ってないので助かりました。

話は変わりますが、そろそろゼーフント(ドイツの特殊潜航挺、日本で言う所の甲標的)実装あってもいいと思いませんかね?ゼーフントなら甲標的と違って戦果も充分な(これ以上はいけない)
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