抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

114 / 158
嫉妬。

 

 

陽炎よ。

何が起きたのか分からなかった。

突然ドスッ、っていう鈍い音が聞こえてきて。『グハッ』って水鬼が苦しそうに何かを吐き出して、同時に私と司令の方に向いていた水鬼の砲がダラリ、と下がって海面の方を向いてた。

 

『クソッ‥‥‥ゲホッ‥‥‥』

 

「勝ったと思った瞬間が最も危険‥‥‥龍田に散々教わった筈だろ?深海に堕ちて忘れちまったのか?なぁ?『陽炎』?」

 

天龍さんの‥‥‥声?あ、水鬼の左胸から何かが飛び出してる。天龍さんの刀が背中側から突き刺さってるのか。水鬼の口と傷口からは血のようなどす黒い液体が流れ出てるわね。

 

『アト少シダッタノニ‥‥‥チクショウ‥‥‥』

 

刃を両手で掴んで苦しそうに、それでいて悔しそうに背中の天龍さんを睨む水鬼。天龍さんはニヤリ、って不敵な笑みを見せて、刀を更に強く押し込んだわ。水鬼は『カハッ』って血のようなどす黒い液体を吐き出した。

 

「なんだよ、夕立はこれでもオレ達の提督だぞ?考え無しに突っ込んできたとでも思ってたのかよ?」

 

天龍さんの言葉と同時。司令はさっきまで倒れて動いてなかったのに、スクッと立ち上がったわ。‥‥‥えっ?司令、大破の重傷で動けなかった訳じゃ無かったの?

 

「ごめんね陽炎さん。大丈夫‥‥‥では無いっぽいわね」

 

ちょっと‥‥‥まさか全部演技だったの?水鬼を油断させる為の?えっ?えっ?じゃあ不知火も演技してたってわけ?私だけ何も知らなかったって事?

 

両足をやられて自力では立つ事すら出来ない私は、司令に抱き上げられた。所謂『お姫様抱っこ』ってやつね。はぁ。幾ら私の練度が低いせいとはいえ、これはちょっと恥ずかしいわね。

 

天龍さんが刀を引き抜いて、水鬼はその場に膝から崩れ落ちた。やっぱり胸への一突きは効いたみたい。って、天龍さんもボロボロみたいね。主砲も曲がって使い物にならないみたいだし‥‥‥あれ?天龍さんも司令もボロボロ?じゃあやっぱり包囲網を自力で突破してきたって事なの?正直、凄いとしか言えないわ。

 

「何だよ不知火、お前ボロボロじゃねーかよ‥‥‥動けるか?」

 

「問題ありません。不知火に落ち度でも?」

 

不知火もコッチに来たみたいね。大破してるけど、動くのに問題は無いみたい。ホッとした反面、この場に一人だけ立っていられない自分の情け無さが悔しくもあるわ。

 

「先程も言った筈です。『貴女に安息をもたらす』と。さあ。観念なさい陽ろ‥‥‥いえ、駆逐水鬼。沈め!」

 

いつもの鉄面皮に戻った不知火だけど、その頬にはさっき泣いたせいで出来た涙の痕。不知火は駆逐水鬼の咥内に砲を突き立てて‥‥‥迷い無く撃った。

 

頭の無くなった駆逐水鬼の残骸が水底に沈んでいくのを静かに眺めていた不知火。少しの間、瞳を閉じて物思いに耽っていたんだけど。ゆっくりと瞳を開いたあと、私の方に近づいてきた。ふるふると肩を震わせて。あ、もしかして不知火、怒ってるのかな?そりゃそうよね。大した実力も無いのにでしゃばった挙げ句死に損なってるんだから。今回は反論の余地無しね。大人しく怒られるか。

 

 

 

「ポイポイッ!どういう事ですか!!」

 

‥‥‥ん?私にじゃ無い?ポイポイ、って司令の事‥‥‥よね?

 

「だって」

 

「だって、ではありません!二面作戦なら二面作戦と最初から言ってくれれば良いではありませんか!それもそんなにボロボロになって‥‥‥失敗したらどうするつもりだったのですか!」

 

司令に対して怒ってるのね。それにしてもこんな感情的な不知火は滅多に見られないわね。私の事とか全く見えて無いみたいだし。私は完全に蚊帳の外、って感じね。ん?待って、不知火は司令達が別動隊って事知らなかったって事よね?

 

「知らせてたら止めてたでしょ?それに、上手くいったでしょ?」

 

「それに、では済まされませんよ!道中でポイポイにもしもの事が‥‥‥あったら‥‥‥」

 

あれ?さっきまでの剣幕は?と思って不知火の顔に視線を向けたら、言葉に詰まって涙が頬を伝ってる。って事はさっき水鬼にやられそうになってた時も演技じゃなくて本当に泣いてたって事かな?

 

私の頭のほうを支えてた司令の右手が不知火の頭に伸びて、撫でる。「私はほら、大丈夫だから。ね?ヌイヌイちゃん」って微笑む司令。不知火は我慢出来なくなって堰を切ったように泣き出して‥‥‥ん?ヌイヌイ、ちゃんって?

えっ、どうしよう‥‥‥凄くアレな雰囲気なんだけど。これ私、お邪魔じゃない?不知火と司令ってもしかしてそういう関係‥‥‥あっ、夢で先代が言ってた『不知火の事、お願い』ってそういう‥‥‥。

 

‥‥‥あ。不知火と目が合ったわ。やっと私の存在に気付いたみたい。フイッ、と顔を右に逸らせて誤魔化そうとしてるみたいね。まっ、もう遅いけど。取りあえず不知火と司令の関係が少しは理解できたし。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

クッ、不知火の落ち度ですね。なんたる不覚。よりにもよって陽炎に泣き顔を見られるとは。それもこれも全てポイポイのせいです。あんなボロボロになって、装備もタ級を撃ち抜いた砲が最後の一発で。心配しない訳がないではありませんか。全く、どれだけ泣かせれば気が済むというのですか。不知火の涙は高くつきますよ?

 

‥‥‥確かに。ポイポイが出ると知っていたら当然止めていたでしょうし、作戦そのものの練り直しを要求していたに違いありません。しかしながら陽炎が重傷ではあるものの作戦そのものは成功。敵旗艦の駆逐水鬼も撃沈しましたし、此方の轟沈も無し。風雲達も無事戻れたようです。確かに時間は余り残されてはいませんでしたし最も効率的な展開だったかも知れません。先代陽炎にやっと安息をもたらす事が出来たのも事実ではあります。ですが、この始末は一体どうしてくれるのですか!ポイポイのせいで不知火が受けた心労、それに恐らく陽炎には不知火のポイポイへの想いを知られた事でしょうし。はぁ‥‥‥。

 

今は後から現れた川内さん達の先導のもと、ポイポイと天龍さんが切り開いた道を辿って帰投している最中です。

敵旗艦を落としたとはいえ、近くにはまだ敵の艦隊が多数居ますからね。不知火も陽炎も、ポイポイも大破。天龍さんが辛うじて中破ですからね。川内さん達の合流は助かりました。欲を言えばもっと早く、出来ればポイポイが作戦を開始する前に現れて欲しかった所ですがね。

 

それにしても‥‥‥。いえ、分かってはいます。不知火はこうして自力で航行できますし、今の陽炎ではそれが無理で、誰かの助けが必要だという事くらいは。ですがその‥‥‥抱いて航行するのは何もポイポイでなくともいいではないですか。川内さんか天龍さん辺りが陽炎を抱いて行けば良くはないでしょうか?うっ‥‥‥羨ましいわけではありませんよ?そうです。決してそのような意味ではありません。ポイポイだって大破している訳ですから。そんなに負担を掛ける訳にはいかないというだけです。

 

‥‥‥帰投まではもう暫く掛かるでしょうし、気は抜かずに行かねばなりませんね。

 

『ねぇ、不知火』

 

陽炎から通信ですか。喋るのも辛いでしょうし大人しくしていればいいものを。それに‥‥‥貴女に情けを掛けられる謂れなどありません。

 

『ありがとう、ってさ。たぶん先代がそう言ってると思うわ』

 

「‥‥‥はい?」

 

全く、不知火に気を使ったつもりですか?そういう事は先代陽炎に追い付くくらい実力を上げてからにしてください。それよりも帰投するまで精々体を休める事ですね。ショートランドまではまだまだ掛かりますから。

 

 





友軍艦隊が到着しました!からの

夕立(中破)→タ級撃沈
駆逐水鬼→夕立を大破
天龍(中破)→駆逐水鬼を大破

でした。


何かとネタにされやすい天龍ですが、史実では第一次ソロモン海戦で共同戦果ながら連合国側の重巡4隻撃沈、重巡一隻大破、駆逐一隻大破、駆逐一隻中破という武勲を挙げてるんですよね。という訳で天龍のカイニッ!の時は期待してますよ、運営さん?

※※以下ネタです※※

◆◆神風さんの受難◆◆

阿武隈「じゃあ結局異動願いは出さなかったのね」

神風「うん。呉への異動も考えたみたいだけど、司令官もショートランドには何だかんだ思い入れはあるみたいだし」

阿武隈「そっか」

神風「‥‥‥あれっ?」

阿武隈「どうしたの?」

神風「うん、資源の残量がちょっとおかしいって言うか‥‥‥減ってる?」

阿武隈「エッ」ギクッ

神風「この前16万くらいずつまで回復してたんだけど‥‥‥各2万くらいずつ減ってる」

阿武隈「ヘェ~、ソウナンダ~」ドキドキ

神風「‥‥‥阿武隈さん?もしかして何か知ってる?」

阿武隈「エッ、ヤダッ、アタシッ?」

神風「‥‥‥」ジーッ

阿武隈「‥‥‥」ドキドキ

神風「阿武隈さん、ステータス見せてもらっていい?」

阿武隈「」

神風「沈黙は肯定と見るわね‥‥‥あっ!」

阿武隈「」冷や汗ダラダラ ←現在の運28

神風「あれれ~?おっかしいぞ~?」 ←言ってみたかった(※山本ハーロック五十六提督ごめんなさい)

阿武隈「」冷や汗ダラダラ

神風「阿武隈さんの運って確かこの前まで25じゃなかった?」

阿武隈「」冷や汗ダラダラ

神風「阿武隈さんの運改修の為の大型建造‥‥‥ってわけね?」

阿武隈「‥‥‥ハイ」土下座

神風「資源備蓄してるのは分かってるわよね?出撃だって潜水艦組以外は控えてるし。どうして司令官を止めなかったの?」

阿武隈「いや、だって、その‥‥‥ゴメンナサイ」土下座

神風「もうっ。また司令官にお説教しなきゃ」

 い つ も の 
(※このあと資源各18万まで回復しました。アブゥ運改修の道はまだ遠いなぁ。まるゆあと15匹‥‥‥)



サミュエル・B・ロバーツが任務報酬で良かったですよね。てかサミュエルさん五月雨に負けず劣らずのドジッ子やないですか‥‥‥。

サミュエルの声帯妖精(中の人) さんこと白城なおさん、超の付く新人提督として艦これ始めてサミュエル入手任務に挑戦中の模様。がんばれとしか言えない(いや、ド新人に駆逐艦2隻入れて2-4と2-5クリアとか普通なら無理でしょ‥‥‥いや育成時間が有れば行けるのか?)。
スタッフだろうが重役だろうが取引先だろうが身内だろうが忖度しないのが艦これ運営のイイ所ではありますが‥‥‥取らせてあげたい所ですねぇ。

サミュエルの絵師はやはり陽炎少女、鋼鉄少女で知られるZECO氏でしたね。艦艇擬人化の草分けの一人。この人が居なければ艦これは無かったかも、というレベルの方ですね。台湾での艦これオーケストラ講演時に雪風のイラストを好意で寄贈してくれた人、と言えば分かる人も居るかも知れないかな?
‥‥‥因みにZECO氏、新人提督として着任してサミュエル任務完了して入手した模様。しゅごい‥‥‥。

ZECO氏、くーろくろ氏、じじ氏、フミカネ氏等、これで艦これのメンバーは近代の兵器擬人化の祖とも言える『制服兵器兵站局』(2002年)メンバーが再集結した形になりましたね(知ってる人いるかな‥‥‥?)。現役のひゅうが艦長からも祝辞を貰ったようですし、艦これはこれからどこへ向かうんでしょうかね?マクロスの美樹本さんとも縁が出来た(まさか美樹本艦が参戦?)ようですし。

‥‥‥つか日向師匠、最新の公式イラストで海自の制服着てるじゃんよ‥‥‥。
あとZECO氏がサミュエル入手任務挑戦中のツイートで『新キャラの方も頑張らなきゃ』って言ってる‥‥‥。これつまりフレッチャー級の新艦娘はZECO氏担当って事じゃ‥‥‥。




陽炎(改二)「司令!私改二になったんだけど!紹介とか何かないの!?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。